著者
松島 理 松島 成夫
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.1350-1356,038, 2003-09-01 (Released:2010-10-27)
参考文献数
17

有限要素法によって, 段ボール箱側板 (幅L=240-302.5mm, 高さ207.5mm) の手かけ穴 (平行部の長さΔL0=0.0-62.5mm, 穴側端は半円弧: 半径r=12.5mm) に一様持上げ応力Pが働く場合の弾性応力解析をおこない, その応力状態を議論した。絶対値の大きい幅および高さ方向の垂直応力σx, σyおよびせん断応力は穴の上辺および側端付近に集中する。|σx|の最大値は, ΔL0<1.6rでは穴上辺に, ΔL0>1.6rでは板上辺の中央泣置にある。|σy|の最大値は, ΔL0<1.6rでは穴上辺に, ΔL0>1.6rでは穴側端にある。τxyは負で, |τxy|の最大値は, ΔL0<1.6rでは穴上辺に, ΔL0>1.6では穴側端からr/2上部位置にある。ΔL0の増加に伴って, σx, σyの最大値は増加し, σ γの最小値の絶対値は減少する。そして, ΔL0の増加に伴って, σx, σyの最小値の絶対値は減少, 増加する。
著者
古川 郁夫 マーク リチャード E. クロスビー クレイ M. パーキンス リチャード W.
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.582-590, 1991-05-01 (Released:2010-04-23)
参考文献数
6
被引用文献数
2 2

The aim of this study is to elucidate post-elastic mechanism and the nature of failure of a machine-made paper under the condition of uniaxial tensile or edgewise compression loading. In order to obtain a direct evidence of the inelastic deformation of the sheet related to its structural changes, observations were made both at the sheet surface and on cross sections of the sheet after reaching prescribed strain levels.In this study, the oriented 80 g/m2, and the 240 g/m2 NBKP machine-made sheets were used. The damaged sites, that is microcracks, on the specimen surface were clearly detected as bright spots, known as electron charging, under SEM observing conditions. From the preliminary test, it was found that these charging spots were not caused by artifacts, but were generated only by the applied external force. The damages occurring within the sheet under loading were counted by using a digitizer along a set of scan lines depicted on the enlarged photo mosaic, which covered the whole sectional view of the test specimen.As a result, the strain at elastic limit of the tested sheets was 0.2%, and the residual strain was increased proportionally as increment of the applied strain. The sheets always behaved as a orthotropic body such as a oriented-fiber reinforced material. This may suggest that mechanical properties for MD and CD highly depend on the amount of load-bearing fibers, thick-walled fibers, laid down in MD and CD, which correspond to the framework components within a sheet. On the other hand, the matrix components, such as thin-walled fibers, fines, loosened fibrils, and exudated hemicelluloses etc., should contribute to carry or to redistribute stress concentrated locally among the load-bearing fibers. As the strain increased into the inelastic regime of the stress-strain curve, partial debondings at the interfiber crossings took place and developed into the minute cracks. The number of the damages increased drastically in the inelastic region. As the strain level approached to the failure point, the fiber breakages began to take place, and they always occurred on the thin-walled fiber aligned parallel to the direction of loading. This damage-developing process was clearly observed on the CD specimen. Furthermore, the internal structure of a sheet also changed by means of the externally applied force. The bonding-ratio (BR) of specimen strained close to the failure point was approximately 7% less than that of the unstrained specimen.These experimental evidences strongly suggest that the post-elastic region of sheet deformation is characterized by the permanent interfiber deformation, accompanying with the partial debonding between the load-bearing fibers and the matrix substances, and the breakage of fiber itself.On the contrary, compression failure is a very localized phenomenon. The appearance of the failure zone shows pronounced out-of-plane deformation such as creases of bucklings. At the failure zone, fiber debondings and fiber bucklings were prominent, but there is no evidence of such damages even at the site 2 mm apart from the crease.
著者
平野 大信 小林 孝男
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.787-793, 2014 (Released:2014-10-01)
参考文献数
3

近年,省資源,省コストなどの観点から,段ボール原紙の軽量化が進行することが予測されている。このような状況において懸念される段ボール原紙の品質トラブルの1つに,巻取の吸湿シワが挙げられる。吸湿シワとは,巻取が吸湿することによって,胴面にドラム缶状の膨れシワが発生する現象であり,その発生メカニズムから,吸湿伸びが大きいこと,座屈のしやすさ,の2点が主な要因として考えられる。しかし,これらに関連する物性と実際に発生する吸湿シワとの関係について,系統的に調査した例は見当たらない。そこで,段ボール原紙巻取における吸湿シワ発生要因を解析するために,異なる複数の工場にて抄造した巻取を同一条件下で保管し,各巻取の吸湿シワ発生状況および水分変化率の調査を実施した。その結果,巻取間で吸湿シワの発生状況,水分変化率に差異が見られ,吸湿シワ発生状況とその関連原紙物性との重回帰分析から,吸湿シワ発生要因として,剛度,吸湿伸び,地合の3要素が重要であることがわかった。吸湿伸びは水分伸縮係数と水分変化率の積の形で表され,水分変化率はワインダー巻取り時の初期水分と原紙の平衡水分に影響されるが,特に初期水分の寄与が大きいと見積もられた。また,有限要素解析シミュレーションから,地合改善は吸湿シワの発生を遅らせる効果はあるものの,一旦吸湿シワが発生してしまえば,成長を抑制するだけの効力は持ち合わせていないことが示唆された。
著者
リンドホルム イェラン
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.1633-1638, 1996

工場内で使用されるプロセス水の水質に対する要求は製品の種類だけでなく, プロセスそれ自体の各段階や部門ごとにかなり異なる。そのため, 各種の水質項目に厳密に限度を設定することはほとんと不可能である。水の特性の測定法の多くも, 酸素要求量や浮遊固形物などの場合のように集合的, 相対的である。プロセスエンジニアは, 水をどの程度再利用できるかを決めるに当たって, 生産性や製品の質の双方を考慮する必要がある。各種の水処理法や, その可能性や限界にも精通していなければならない。それらの知識や原木の質の季節的変動について知識を組み合わせてはじめて, 工程全体の優れた水経済を実現できる。
著者
田中 正次郎 菊地 隆志
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.197-202, 1967-04-01 (Released:2009-11-11)
被引用文献数
1 1

The utilization of CMC (carboxymethyl-cellulose) as a surface sizing agent has been studied. Through several experimental applications on a small size test paper machine, suitable conditions of CMC for the purpose of surface sizing were defined as follows : D.S. 0.50.8 Viscosity 50100 c.p. (3% soln., 25°C) Impurity Less than 25%The paper surface-sized by CMC showed such characteristics as high oil and air resistance and high wet tensile strength. These characteristics might enable us to use CMC for under coating besides general surface sizing. The practicality of CMC surface sizing was also approved qualitatively and economically by a test run on a commercial paper machine.
著者
榊原 正行
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.1234-1238, 2012-11-01

当社は1989年よりドイツ,ビロマティック社と大判フルシンクロカッターでの技術提携をしている。またビロマティック社がヤーゲンベルグ社のカッター部門を買収し,ビロマティック―ヤーゲンベルグという新会社を立ち上げ,2005年5月に新たな技術提携を締結し,ビロマティック―ヤーゲンベルグ社デザインのシートカッターも国内に3基納入してきた。<BR>そのような状況の中,コストダウンが図られた小幅~幅広の大判カッターの要求が国内外より寄せられており,昨年4月,1945年創業の歴史あるカッターメーカーで,幅広く多数の納入実績があるイタリアのピザラト社の全商権を譲り受け,新たに"丸石―ピザラト高速フルシンクロ大判カッター"をラインアップに加えた。<BR>これまで高性能機を中心に展開してきた同事業において,設備の品質を維持しつつ汎用型の大判カッターを提供する体制も確立し,これにより紙パルプ産業はもちろん,断裁加工工場など幅広い客先のニーズに対応していく。<BR>今回はこのコストダウンが図られた小幅~幅広の大判カッター"丸石―ピザラト高速フルシンクロ大判カッター"の特徴を発表させていただく。
著者
中野 準三
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.11, pp.596-602, 1966-11-01 (Released:2009-11-11)
参考文献数
29
被引用文献数
2 2
著者
瀬川 智哉
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.59-63, 2013-01-01

2011年9月3日,高知県東部に上陸した台風12号が紀伊半島において驚異的な雨量をもたらし,熊野川が上流にあるダムの放流の影響もありこれ迄にない水位を記録し,紀州工場から直線で約6km上流にある工業用水取水設備及び工場内KP,ボイラー周りの電気室及び機器が浸水した。これにより工場が16日間に渡って操業が不能となった。<BR>紀州工場における浸水被害は,工場内及び工業用水取水場共に電気設備の被害が大きく,また,工業用水取水口においては熊野川上流の崩落,土砂崩れによる岩及び土砂の流入でほぼ閉塞状態となり,浚渫による復旧に時間を要した。<BR>しかし,全社を挙げての支援体制を被害直後に整え,応援部隊派遣を直ぐに決定するという迅速な対応をとり,また,メーカー他の支援協力があり早期の操業再開を実現した。<BR>更に,今回と同規模の水害発生による工場操業への影響を最小限に抑える対策も復旧直後より検討し,第一期対策の実施を決定した。<BR>本稿では,今回の浸水被害の状況及びその復興作業,そして浸水対策の取り組みについて報告する。
著者
矢野 順一 岸田 幸三 宇多津 誠一郎
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.145-150, 2008-02-01

日本国内においてGL&V社との技術提携のもと,川之江造機が製作販売を開始したBTFダイリューションシステムは,現在納入実績が8台となっている。いずれも既設ヘッドボックスはそのままに,BTFシステムの導入によりCP化するという改造導入である。改造導入による成果は,CDプロファイルの著しい向上をはじめとした製品品質の向上や製品取り幅を広くする,抄き替え時間を短縮するといった操業効率の向上などに大きく寄与している。ここにその事例を紹介する。<BR>さらに川之江造機はGL&V社と共に,抄紙機技術だけでなくケミカルパルピングにおける世界の最新技術を取り扱っている。世界的にも極めて知名度の高い2つの技術ブランドである旧セレコ,旧インプコ社の製品の中から,省エネを目的に開発されたセレコツイスタークリーナー,及びハイキューノッター,スクリーンをご紹介する。また旧アーカークヴァナ社の蒸解,パルプ洗浄,酸素脱リグニン及び漂白にまで及ぶ技術を取り扱うこととなった。これらの技術の中から今回は特にコンパクトプレス及び,その前後の設備についてご紹介する。
著者
神﨑 護
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.11, pp.1224-1227, 2018 (Released:2019-02-01)
参考文献数
13

この小文では東南アジアの森林消失と再生について紹介したい。東南アジアの多くの国では,独立後の外貨獲得手段として,簡単にアクセスできる木材資源がまず経済成長の第一段階として利用された。森林の大規模な農地化がその後1960年から1990年にかけて進行し,森林消失を決定的にした。これに対して,地球規模での伐採反対キャンペーンや森林保全の動きがおこり,それは1998年のリオの地球サミットでの森林原則宣言につながり,さらに1997年の京都プロトコルで採用された植林再植林クリーン開発プログラムにおける炭素クレジット化にもつながった。熱帯各国での森林伐採の方法も変化した。現在多くの国々で,低インパクト伐採の適用が義務化され,国際的な森林認証の取得も加速しつつある。度重なる洪水や土石流被害は,東南アジアの人々の森林保全についての考え方を大きく改善してきた。小規模な森林保有者,農民や地域共同体は木材生産の重要なプレーヤーになりつつある。日本の森林状況は第二次世界大戦直後の悲惨な状況から,70年もかからずに大きく改善された。東南アジア各国の森林状況も今後30年の間に劇的に改善されることが期待できる。
著者
盤指 豪
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.1250-1253, 2012

2012 TAPPI International Conference on Nanotechnology for Renewable Materials が2012年6月4日~7日の4日間に渡ってカナダのモントリオールで開催された。カンファレンスの開催地であるカナダをはじめ,北米ではArboraNano(カナダ),CelluForce(カナダ),Agenda2020(アメリカ)といった産学官のプロジェクトがNano Crystalline Cellulose(以下NCC)を中心にナノセルロース研究を進めている。中でもCelluForceは1t/日の製造能力を有するNCCプラントを完成させ,世界的に注目を集めている。今回は初日にCelluForceのNCCプラントツアーが組まれ,希望者のみの参加であったが,当日はキャンセル待ちが出るほどの人気を博した。<BR>カンファレンスには北米,欧州を中心に20カ国から200名以上の参加があり,口頭発表,ポスター発表,パネルディスカッション,ワークショップなど計60件を超える発表が26セッションに分けて執り行われた。昨年同様,ナノセルロースの基礎研究,応用研究,標準化,安全性評価など多岐に渡る報告がなされ,各国の注目度の高さが伺えた。本稿では,CelluForceのNCCプラントツアーおよびカンファレンスの発表の中から数報を抽出し,その概要を報告する。
著者
鹿糠 広治
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.1689-1697, 2006-11-01
被引用文献数
1

近年,地球温暖化や化石燃料の価格上昇に伴い,製紙業界においても化石燃料からバイオマスへの燃料転換による省エネルギー対策およびCO<SUB>2</SUB>排出量削減対策が盛んに実施されてきている。<BR>三菱製紙(株)八戸工場でも重油からバイオマスへの燃料転換が課題であった。また,既設のペーパースラッジ焼却設備も老朽化が進んでいることから,今回,廃タイヤ・廃木材・工場内で発生するペーパースラッジ・その他の可燃性廃棄物を燃料とするリサイクルボイラーを建設し,2004年7月より操業を開始した。<BR>運転性能を確認した結果,計画値を全て満足しており,現在も順調に稼働を続けている。また,この設備の稼働により,重油・石炭消費量の削減,購入電力量の削減,余剰電力売電量の増加といったエネルギーコストの削減,及びCO<SUB>2</SUB>排出量の削減に大きく寄与することとなった。<BR>本稿では,このリサイクルボイラーの設備概要及び操業経験について紹介する。
著者
轟 英伸 畑野 昭夫 阿部 裕司 竹内 伸夫
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.1641-1650, 1996

紙の寸法安定性をオンラインで予測する計測システム (ウェッブ収縮率計) を開発した。今回開発したシステムは, エッジセンサーとして非接触型のレーザー外径測定器を移動ステージ上に配置した, 紙幅計測ユニット2組より構成されている。この2組のユニットを抄紙機の乾燥工程前後に取付けることにより, 収縮前後の紙幅から製紙工程におけるウェッブ収縮率を計測できる。さらにウェッブ収縮率と製品の浸水伸度や操業条件との関係を調査して以下の知見を得た。<BR>抄紙条件 (原料処方, 濾水度, J/W 比等) が種々異なる製品の浸水伸度 (寸法安定性) とプレドライヤー前からアフタードライヤー後までのウェッブ収縮率に高い相関関係が認められた。したがって, この相関関係を用いたウェッブ収縮率のオンライン計測により, 製品の寸法安定性を抄造段階で予測できる。<BR>抄紙機上において, ドローにより歪み率を1%増加させると, ウェッブ収縮率はポアソン比的な効果により約0.3%増加した。このドローによる収縮は, ワイヤー~ウェットプレス間の紙中水分80%付近では製品の寸法安定性にほとんど影響しないが, サイズプレス~アフタードライヤー間の紙中水分40%付近では寸法安定性を悪化させた。<BR>ドローを増加して, 歪み率を大きくすると, CDの剛度は低下した。また, ワイヤー~ウェットプレス間よりサイズプレス~アフタードライヤー間の方がドローの増加に対する剛度低下の割合が大きかった。<BR>J/W 比の変更により, 繊維をより縦配向にすることでウェッブ収縮率が増加し, 浸水伸度の悪化とCD剛度の低下が認められた。<BR>また操業中のオンライン計測事例として, J/W 比やサイズプレス液付着量の変化に伴う紙幅やウェッブ収縮率の変化挙動を紹介する。
著者
出口 勇次郎
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.37-39, 2016

発電機用燃料の高騰や温暖化ガス対策等により,それまでは他の機器に比べ使用電力に寛容であったパルパーに於いても,省エネルギー対策が必要との要望が出てきた。加えてパルパーで離解を促進させれば,原質工程後の工程であるスクリーン機器等の使用電力が下げられる事が判明した。この事により,それまでのローターベーンより強力な離解をするローターベーンが求められた。SEローターベーンが登場するまでは,省エネルギーは達成出来るが同時に処理量も比例して減ってしまうローターベーンしか存在していなかった。我々はこの相反する条件を同時に具現化するべく,SEローターベーンを開発した。<br>まず,市販化に先立ち20尺パルパー用SEローターベーンのプロトタイプを製作し,約一年間実際の工場ラインの現場で使用していただいた。その結果,換装前と処理量は全く同じ条件下で20%程度の省エネルギーが確認出来た。また換装前と電力量を同じにすると処理量が約1.2倍となった。この実証を得て市販を開始した。<br>市販後は,お客様の好みで省エネルギーと処理量の割合を調整することが出来ると好評を頂いている。20尺パルパー用タイプだけでも発売開始以来,累計18台を販売している。<br>今後もお客様の現場の声を大切に,ローターベーンの一層の高効率・利便性を追求していく。
著者
熊谷 康文 佐々木 幹夫
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.37-41, 2012

2011年3月11日14時46分に三陸沖を震源とする深さ約24km,マグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震が発生。三菱製紙八戸工場では「震度5強」を記録,発生とほぼ同時に東北電力66kV送電線が停電し,県工業用水も断水した。14時49分に太平洋沿岸に津波警報・津波注意報が発令され,15時頃に従業員の避難を開始した。震源地から約330km離れている八戸港へは,15時30分ごろに津波の第一波が到達し,16時40分過ぎに最大規模の大津波が来襲した。<BR>防波堤のある八戸港内の津波の高さは6.2mであったが,湾外南東部の階上町では最大10.73mの高さを記録しており,八戸港の北に位置する八戸工場では8.4mの高さが測定された。<BR>現在も復興途上にあるが,今までに行なってきた作業を基に,<BR>1.地震・津波発生時の状況<BR>2.八戸工場の被害状況<BR>3.復興に向けた取り組み<BR>4.設備復旧の対応(土木建築関係,機械関係,パワープラント関係,電装関係,早期復旧のポイント)<BR>5.設備の復旧状況<BR>等について報告する。
著者
宮西 孝則
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.414-420, 2016

2015年10月29日~11月1日の4日間にかけてTokyo Paper 2015が東京大学にて開催された。本学会は,第9回国際製紙及び塗工化学シンポジウム(IPCCS)と国際紙物性会議(IPPC)との共同開催である。<br>IPCCSは,スウェーデンとカナダのコロイド化学,界面化学の研究者が中心となって約3年毎にスウェーデンとカナダで交互開催されてきた。IPPCは紙物性に関する国際会議であり,IPCCSとIPPCの共同開催は,2012年に次いで2回目である。参加総数は148名で,そのうち海外からの参加者が60%であった。研究発表の割合は海外の研究者が75%に達し,近年国内で開催された紙パルプ研究に関する国際会議では最大規模であった。主な参加国はスウェーデン,カナダ,フィンランド,中国,フランス,韓国,オーストリア,タイ,ノルウェー,ドイツで,米国,英国,オーストラリア,スイス,ルーマニア,ブラジルからの参加もあり,日本を含めて17か国の国際会議となった。<br>日本からは,東京大学,京都大学,九州大学,筑波大学,東京農工大学,高知大学,東京家政大学,慶應義塾大学,王子ホールディングス,日本製紙,北越紀州製紙,大王製紙,荒川化学工業,栗田工業,星光化学が貴重な研究成果を発表し,活発に質疑応答を行った。開会式では,実行委員長である東京大学大学院磯貝明教授が開会挨拶を述べ,続いて紙パルプ技術協会が日本の紙パルプ産業の現状について特別講演を行った。開会式終了後,参加者は2会場に分かれ,IPCCSは東大キャンパス弥生講堂一条ホールにて,IPPCは中島ホールにて口頭発表を行った。全部で78件の口頭発表と28件のポスター発表があった。IPCCSの発表はナノセルロースが多く,大きな関心を集めた。
著者
伊達 宣浩
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.594-598, 2018

<p>秋田工場の省エネルギー活動において,2015年には目標値を大きく下回る結果となった。その状況を打破するために,2016年度は日本ビジネス革新コンサルティング㈱(JBIC)より指導を頂き,ネイガー活動と称する省エネルギー活動を展開した。目標は「工場の前年総エネルギー使用量の3%分の省エネ案件発掘」,月4回の活動で約1年間,工場各部門から選抜されたメンバーが一丸と取り組んだ。</p><p>活動の前半は現状の工程あるいは機器の状況把握,つまりフローシート,マテバラを作成し,その後燃料,電力,水,蒸気,エアの使用量を調査しエネルギー使用量を把握した。後半はその工程や機器の機能状態の分析,設備仕様を振り返り温度や流量,品質等に乖離はないか,エネルギー収支を検討し熱源は有効利用されているか,出入口温度は仕様通りか等を検討し,改善されるべきテーマ素材に気付いたら即座に記録することであった。そして是正のために損失の大きさやエネルギー源,改善の方法により充分な利益をもたらすことを確認して優先順位を決定した。</p><p>検討する際は,集まったメンバーが理解しやすいように手書きの図や写真等を用いて議論したことにより,自部門で気付かない点が発見されるなどお互いに知見が得られたのではと思う。</p><p>活動を通して,ネイガー目標に対しては3.23%となり,秋田工場としての省エネ目標も達成された。</p>
著者
石岡 直洋
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.1006-1014,013, 1997

北米における古紙回収量や利用率の推移は上昇傾向にあり, 特に1980年代後半からはその伸びが著しい。これは廃棄物処理場スペース問題に端を発した行政指導に起因するところが大きい。<BR>北米の古紙処理設備は, 排水規制が緩やかで水の制約がなかった1960-70年代はウオッシャー法が主流であったが, 1980年代後半からは排水規制が一段と厳しくなったことから, 節水型のフローテーション法が主流となった。<BR>弊社関連会社である大昭和アメリカ社ポートアンジェルス工場は, 古電話帳リサイクルのパイオニアとして, 電話帳の生産から再生までのクローズド化を完成させた。1992年のスタートアップ以来, 予想通りの良好な品質が得られ, 各抄紙マシンにおいては40%以上の古紙配合率で, 問題なく操業を行っている。
著者
川島 正典 野々村 文就
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.343-346, 2012

今回の取り組みは,当社が得意とする微塗工紙のなかでも最軽量に位置づけされる,坪量が45g/m<SUP>2</SUP>以下の超軽量微塗工紙の分野で,北米市場へ参入する検討を進めてきた。<BR>販売先は品質の要求基準が最も厳しいとされる米国大手出版社を念頭に置き,そこでの販売実績が,他の出版社や印刷社へのアピールになることを想定した。<BR>検討の過程で,白紙紙質では国内向けと比べて非常に不透明度が高く,逆に白色度が低い用紙が好まれる点,また印刷面では品質よりも印刷作業性を最重要視する点が,この市場における特徴的なポイントと考えられた。またこれまで指標として想定していなかった白紙面感に関しても,品質の基準があることがわかり,基準レベルの達成に向けて取り組んだ。<BR>市場調査の結果から,一般的な超軽量微塗工紙の原紙には機械パルプを高配合し,塗工層に高アスペクト比顔料をベースに高価なプラスチックピグメントや二酸化チタンが配合されていることがわかったが,当社では各種検討の結果,古紙高配合,ショートドゥエル方式,高価顔料の無配合,HSNC(ホットソフトニップカレンダー),日本式のカスタムメードなアプローチ等により,製品の製造処方を確立し,2007年より米国大手出版社への販売を開始した(しかし,現在は諸事情により販売休止中)。本報告では,これまでの取り組みについて概要を報告する。