著者
森 大之 藤本 康之 貴船 博巳 竹中 寿康 大岩 修 稲田 治
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.78-82, 1994

Our Cycle Hit System of Iwakuni Mill started up from Febrary 1993 and Coated paper product waste liquor (Color waste liquor) has been treated succesfully with it.<BR>In this system, primary plus secondary sludges are directed to a slugde conditioning tank, where it is dosed with an inorganic coagulant and mixed to neutralize the surface charge of the sludge particles.<BR>This conditioned sludge is then sent to a pelletizing/thickening tank, where an anionic and an amphoteric polymers are added to pelletize the sludge. Using the same tank, water can be removed with a special built-in device, resuluting in a sludge with an increased concentration of solids.<BR>This report described the summary of operation.
著者
門間 信也
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.89-93, 2000

N 2 PM for newsprint was started up in Feb., 1998, at Yatsushiro mill. This machine is one of the wide and high speed machines in the world. The wire width is 9, 050 mm, and the operating speed is max. 1, 600 mpm. The plan production capacity of newsprint is 700 tpd. Our goal of this new machine is that the Yastushiro mill can win the competition in the world by restructuring of two old machine-lines and cost down, and can continuously supply the best quality newsprint especially to the user of Kyushu area, and N 2 PM can be the most efficient machine in the world. This machine has a lot of the newest equipments. using the highest technologies, in Japan or in the world. For example, those are the first CFD former in Japan as newsprint machine former, the shoe presses at first and third press introduced for the first time in the world. the top and single deck dryer configuration at pre-dryer and after dryer. the jumbo rolls and spools handling system between reel and rewinder, and so on.<BR>After start up. N 2 PM continues to be operated efficiently, improving some problems.<BR>This paper mentions about the N 2 PM outlines and operating experience from start-up.
著者
関根 茂
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.509-517,023, 2003

1951年に日本初のセクショナル駆動方式の抄紙機が稼働開始して以来, セクショナルドライブシステムは飛躍的な進歩を遂げ, 現在は, 最新鋭全デジタルACドライブシステムが完成され, 新設抄紙機には, 広く適用されている。このように長い間に適用されてきたドライブシステムは故障率の増加が心配される磨耗故障期に達しているものでも, まだリニューアルされていないものがある。ドライブ装置は, アナログDCドライブから, デジタルDCドライブ, デジタルACドライブへと急速な変遷を遂げており, アナログドライブ装置については, 予備品確保の困難さ, 制御性能の不安定さ等の問題が表面化する時期が近づこうとしている。今後, 機械のスクラップアンドビルド計画と同様にドライブ装置の早め早めのリニューアル計画が推奨されるが, リニューアルに当っては, 技術的な検討項目をいろいろな観点からクリアーにして行く必要があり, 概略的なポイントの紹介をした。また, 旧来の高圧省エネ用インバータの更新には, 最近になって商品化された高圧インバータの適用が可能になってきた。また今まで固定速で運転していた高圧モータも高圧インバータを適用し, 可変速運転により大幅な省エネ効果も期待できる。
著者
スバルナキッチ クンティニ 江前 敏晴 磯貝 明
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.325-335, 2008
被引用文献数
1

紙のマクロな構造は,いろいろな意味での紙の挙動に影響する。本研究では,紙のマクロな構造と吸水挙動の関係を検討した。坪量,叩解の程度及びウェットプレス条件を変えることにより,マクロな構造の異なる市販広葉樹クラフトパルプの試験用手すき紙を調製した。これらの試料について構造的な特性及び吸水特性を調べた。水との接触角を測定した結果は,自動走査吸液計の結果と同様の傾向を示した。吸水挙動は紙の表面構造に対する高い依存性を示した。平滑な表面ほど,水滴は横に広がりやすく,接触面積が増加する傾向があった。紙の表面構造を変えるどのような調製条件の場合でも,紙の表面平滑性の変化で一貫して説明できるような吸水特性を示した。表面化学的には,坪量の増加はサイズ剤であるAKDの歩留まりを向上させ,水との接触角は大きくなった。
著者
腰塚 哲夫
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.9, pp.912-918, 2011
被引用文献数
1

我が国の本格的な無塩素漂白(ECF漂白)は1998年に北越製紙(株)新潟工場で始まった。その後,各社もECF漂白への転換を開始した。ECF漂白方法としては,二酸化塩素,オゾン,酸素,過酸化水素を組み合わせた漂白シーケンスが採用された。このECF漂白方法の問題点として,製品の褪色性が悪化することが明らかになった。特に,酸性抄紙,パルプ中のヘキセンウロン酸,硫酸バンドの3者が揃うと褪色性がより悪化する事が分かった。我々はヘキセンウロン酸を効率的に除去できる薬剤について検討した結果,モノ過硫酸が効率的に除去できることを見いだした。モノ過硫酸は高濃度過酸化水素と高濃度硫酸を反応させて生成させることができるが,反応熱が大きいこと,腐食が大きいこと等の問題により今まで工業的に連続的に製造する方法は確立されていなかった。我々は,これらの問題を克服して工業的に連続的に製造する方法を確立した。この方法を利用した世界で初めての実用装置が,王子製紙(株)富岡工場で採用された。<BR>その後,モノ過硫酸を導入した漂白シーケンスは,1)褪色問題を解決する,2)コストダウン,3)パルプの高白色度化,4)生産増が可能である,等の特徴が認められ,2工場で採用され,更に2工場で採用される見込みである。
著者
腰塚 哲夫
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.963-975, 2002-07-01 (Released:2009-11-19)
参考文献数
12
被引用文献数
1 2

The amount of production of the hydrogen peroxide in the year 2000 was 145, 744 t. The demand for pulp is 71, 237 t and the ratio has reached 48. 9%. Also, about 60% of the demand for this pulp has been estimated as demand for recycled pulp. Therefore, recycled pulp is an important field of the hydrogen peroxide market.Seven kinds of oxidizing agent (chlorine, hypochlorite. chlorine dioxide, hydrogen peroxide, oxygen, ozone, peracetic acid), three kinds of reducing agent (sodium hydrosulfite, sodium borohydride. formamidine sulfinic acid) were described and especially hydrogen peroxide, sodium hydrosulfite, and formamidine sulfinic acid were described in detail as important bleaching agent.Concerning hydrogen peroxide, the influence of metals, the heat of kneader and catalase were described. The preventative measures were also described.Concerning sodium hydrosulfite, the decomposition by air, water and combustion by water were described. As a measure, “HS master”, which can dissolve sodium hydrosulfite continuously in nitrogen gas atmosphere and can feed it to the pulp bleaching site was introduced. “HS master” was developed by Mitsubishi Gas Chemical.Concerning formamidine sulfinic acid, the “Fosble System” which is able to manufacture it on-site was introduced. The “Fosble System” was developed by Mitsubishi Gas Chemical.
著者
吉田 恒夫
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.55-60, 1980
被引用文献数
1

繊維を横方向に1μmの厚さにカットし, 紫外線吸光度を測定して, アントラキノン (AQ) 添加, 又は無添加時の松材のソーダパルプ化における脱リグニンの相違を研究した。AQを添加した場合, 二次膜と中間層共に脱リグニン度が増加した。これは春材, 秋材に共通して言えることである。いかなる脱リグニンレベルにおいても, リグニン除去率は二次膜, 中間層共に同一であった。Ross図表が示すように, AQによる脱リグニンの促進により, 全リグニンレベルにおいて高収率パルプが得られた。紫外線吸光度は, Halseリグニンと高い相関 (99%) を示した。<BR>1970年代初期にはBachとFiehnにより, また近年ではHoltonによってAQとその誘導体の多くは, ソーダパルプ化, クラフトパルプ化共に脱リグニン促進効果のあることが見出された。この脱リグニン促進効果によって, 全リグニンレベルにおいて高収率パルプが得られる。脱リグニンの促進と還元性末端基の酸化による炭水化物の安定化により, 収率が向上する。AQ添加により黒液の酸化還元電位が低下する。これは脱リグニン促進の間接的証明となる。もし1個の β-0-4結合を持つ分子を, アントラキノンモノスルホン酸塩で処理したならば, フェノールユニットの側鎖において, CαとCβの間で開裂が起こるであろう。この開裂は, 同一リグニン度で比較すると, ソーダパルプ化の場合には起こらなかった。本研究の目的は, 紫外線ミクロ分光光度法を用いて, AQ添加又は無添加時のソーダパルプ化におけるPinus silvestrisの仮道管細胞膜の脱リグニンを検討することにある。この方法を用いて繊維横断面を分析することにより, 二次膜と中間層について個々に脱リグニン度を測定出来る。
著者
永田 耕司
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.58-61, 2011

2009年,日本製紙は,オーストラリアを本拠地とする世界有数の紙専門商社PPX社の子会社であるオーストラリアンペーパー社の全株式を取得する株式売買契約をPPX社と締結し,同年6月に株式取得完了,オーストラリアンペーパー社は日本製紙グループの一員となった。<BR> オーストラリアンペーパー社は,オーストラリア最大の印刷用紙メーカーとして50年以上の歴史を持つ。主力ブランドであるコピー用紙「Reflex&reg;」は,オーストラリアにおいて約60%のシェアを有している。そのメアリーベール工場は,オーストラリア大陸南東部のビクトリア州にあり,メルボルンの東約160kmに立地している。現在,洋紙生産能力は5台の抄紙機で年産約57万t(日産約1,600t),パルプ生産能力は,LBKPとNUKP,NSSCの3系列で日産約1,400tである。パルプ製造設備は,約3億4千万豪ドル(約270億円)を投じた生産能力増強を含む大規模工事が2008年12月に完成したばかりで,LBKP工程はオゾンECF漂白を採用した最新設備が導入された。
著者
ワイス ピーター エリオット ステファン 高野 聡 笠井 隆志
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.1452-1456,025, 2001

今日, 合成潤滑油の優れた面に関する漠然とした理解があり, その一方で, 合成潤滑油を製紙機械に使用した場合, 経費節減をもたらすという現実がある。<BR>本報の目的は, 合成潤滑油の使用に関する理解を深め, 合成潤滑油の製紙機械への適用の手だてとしていただくことである。まず「合成」という言葉を説明し, 異なった特長を持つ, さまざまな合成潤滑油の種類について紹介する。合成潤滑油の特長は, 下記の通りである。<BR>(1) 優れた粘度温度特性,(2) 高い熱・酸化安定性,(3) 優れた流動特性,(4) 鉱物油との親和性 (特にポリアルファオレフイン),(5) オイル交換周期の延長,(6) 摩擦損失の低減,(7) オイル消費量の低減<BR>また, 合成潤滑油がもたらす利益についての技術的なアドバイスと, その製紙機械の適用箇所を見つける方法について述べる。<BR>合成潤滑油が鉱物油と比較して, いかに経費節減に貢献するかについて, 具体的な適用例を取り上げながら説明する。本報が, 実際に製紙機械の運転や管理に携わる方々の経費節減のヒントに繋がることを望む。
著者
澤 一誠
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.1190-1197, 2012

IEAによればバイオ燃料は2010年輸送用燃料の3%を超え6兆円規模に達しポートフォリオの一角を占めるに至ったが,2035年に8%,2050年27%になると予想され,今後は航空機,船舶でも普及する見込み。一昨年Shell,BP等オイルメジャーがブラジルエタノール産業に本格進出。同分野で先行すするADM等穀物メジャーに続きビッグプレーヤーが出揃った。<BR>バイオ燃料は,エネルギー・農業・環境の3つの政策と産業政策の観点から人為的に市場が形成された欧米主導の新戦略産業であり,世界規模で普及・拡大している。<BR>世界一のエタノール国家米国では政府主導で石油・自動車両業界に誘導的規制を課して市場を作り2011年には140億ガロン(53百万kl)3.2兆円の産業となった。トウモロコシには150億ガロンのキャップを設け,それ以上はセルロースエタノール等を導入し2020年360億ガロン(1.3億kl)8兆円超の産業迄拡大する計画。<BR>この様に本格大規模グローバル市場が形成されつつあるバイオマスエネルギー分野で,日本は現在後発ポジションで3.11以降注目される再生可能エネルギーの中での注目度も低い。<BR>今後,日本が取るべき方向は,バイオマスエネルギーを将来有望なグローバル産業と捉え,資源ポテンシャルの高いアジア・大洋州地域で官民連携で製造事業展開を図ることである。また,G―Gベースで事業推進の土台となるインフラ・環境を整備し,日本企業が現地企業とWin―Winの関係を構築して共同でバイオマスリファイナリー(エネルギー/ケミカル/マテリアル製造)を推進。開発輸入+地産地消型産業を展開して持続可能なサプライチェーンを構築することである。
著者
永井 勇一
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.65-68, 1982
被引用文献数
1

紙加工分科会は, 機械振興会館6階65号・66・号室を会場とし, 10月7日午後1時より, 予定どおり開催されたが, 出席者は約160名を数え盛会であった。<BR>本州製紙・今泉乾次郎氏の司会により, 次記の5講演が行われた。<BR>紙加工は, 不振な紙業界にあって, 紙の付加価値を向上するという観点より脚光を浴びている重要な問題であるにもかかわらず, 製紙会社よりの発表は, 株式会社巴川製紙所よりの一題目だけであった。これは, 紙加工について, 製紙会社が, Know-Howにかかわる問題をもっており, 発表し難ったことにも一因があったのであろう。<BR>従って, その他の発表は, 業界外で紙業界に関係のある会社の人々によって行われるという結果になった。
著者
水野 剛
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.726-733, 2014

電力供給状況の変化が見込まれる昨今において,製造工場における回転機械の消費電力削減の意義は大きい。しかしながら,多くの回転機械において現状の消費電力値や効率が最適値であるかどうかを判断する方法はほとんど存在しない。そこで英国Corrocoat社及びコロコートジャパン株式会社は,水ポンプに特化して,現状のポンプ効率を定量化するための計測装置ならびに演算処理方法を確立した。これにより現状の消費電力やポンプ効率が可視化され,製造時と比較した際の現状の劣化レベルを定量化することができるようになった。ユーザーは定量化された劣化レベルから,補修対象や適切な補修処理を判断することができるようになった。また補修処理のための投資に対する補修による効果の事前検証も可能となった。<BR>次なる命題は,劣化した水ポンプをどのように補修し,どのように高効率化するかである。従来の水ポンプの補修は,タールエポキシに代表される部分補修であったが,耐久性に乏しく,水ポンプの高効率化実現に直接つながることはなかった。その状況を鑑み,1986年にCorrocoat社は水ポンプの高効率化を実現するフルグライドコーティングの開発に成功した。同コーティングの適用により,製造時に比べ10%近く低下したポンプ効率は製造時と同等か,それ以上まで回復した。ポンプ効率の上昇は消費電力の削減につながるために,フルグライドコーティング施工で年間数百万円の損失を回避することができた事例が数多く出てきた。<BR>本稿においては,海外・国内における性能計測やコーティング適用事例や統計データを紹介し,ポンプ効率低下の傾向や,フルグライドコーティングの確度を実証する。
著者
石川 雄健
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.146-151, 2020 (Released:2020-05-01)
参考文献数
7

近年では生活環境の向上に伴い,以前では気にならなかったニオイが,不快な悪臭として取り上げられる様になってきている。特に日本ではニオイに対する反応が過剰なほどに敏感になっている。臭気の感じ方には個人差があり,ある人には不快な臭いが他の人には不快に感じないということが発生するため,臭気の根本的な対策は非常に難しい。パルプ製紙工場で発生する臭気は閾値が非常に低く,僅かな量でも不快に感じやすい傾向がある。クラフトパルプ製造時には反応により硫黄系の悪臭が発生するが,その他の工程では微生物による嫌気呼吸によって悪臭が発生する。その中でもデンプンが原因となる有機酸系悪臭,硫酸バンドが原因となる硫黄系悪臭がある。有機酸系悪臭は毒性が低く,工程内の腐敗やスライムの発生に伴って発生するため,製品の品質低下を防ぐことを目的に,防腐剤やスライムコントロール剤による殺菌処方が必要となる。一方,硫黄系悪臭は硫化水素が主体であり,引火性,腐食性,有毒性もあることから,臭気物質の減少を目的に,規模に応じて殺菌処方と消臭処方の両面で考える必要がある。本稿では,これまでの研究成果によって特定した様々な工程で発生する臭いの種類および原因を開示し,解決に至った事例の一部を報告する。
著者
木村 悟朗 草間 俊宏 榎田 順一
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.11, pp.1151-1153, 2016 (Released:2017-02-01)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

本研究は,紫外線領域を含む有色LED照明および白色LED照明へのユスリカ類の飛来量を明らかにするために,野外試験を行った。紫外線領域を含む有色LED照明(UV+blue, UV+green,およびUV+green+blue)3種と白色LED照明(UV+white)1種,合計4種の光源を使用し,各照明へのユスリカ成虫の飛来量を比較した。ユスリカ成虫はUV+green+blueにもっとも多く飛来し,次いでUV+green, UV+white, UV+blueの順であった。本研究で使用したLED照明に飛来しているユスリカ類は主に可視光領域,特に緑>黄緑>青の順に反応していると考えられた。さらに,紫外線領域を含まない防虫有色LED照明のユスリカ類に対する効果についても追加試験を行った。市販されている防虫有色LED照明である黄色LED照明(yellow)と緑色LED照明(green),および白色LED照明(white)の合計3種の光源を使用し,各照明へのユスリカ成虫の飛来量を比較した。各調査日のwhiteを1とした場合の防虫LED照明の相対飛来量を算出した。whiteに対するyellowの相対飛来量は0.2±0.3(n=3)であった。一方,whiteに対するgreenの相対飛来量は0.8±0.4(n=3)であった。これらの結果から,ユスリカ類の防虫には黄(yellow)が有効であると考えられる。