著者
若林 正吉 田村 憲司 小野 信一 六本木 和夫 東 照雄
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.81, no.6, pp.573-583, 2010-12-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
52
被引用文献数
2

大宮台地の西縁部では,荒川の河川敷に存在する沖積土を台地上の火山灰土畑に運びこむ「ドロツケ」という客土作業が続けられていた.本研究は,ドロツケによる人為的土壌生成過程における土壌特性の変化を明らかにすることを目的として,長年のドロツケにより,沖積土が元来の土壌の上に厚く堆積した埼玉県北本市の圃場の土壌,台地上の火山灰土,および河川敷沖積土において,土壌断面調査と土壌理化学性の分析を行い相互に比較した.ドロツケにより,土壌の固相部が増大し,最大容水量および水分含量が減少した.沖積土中のAl_oおよびSi_o含量は,火山灰土の1/10以下であった.この沖積土の客土により,ドロツケ畑では客土層上層ほどリン酸吸収係数が減少し,可溶性無機態リン酸の内のCa型リン酸の割合,有効態リン酸量が増大した.沖積土には多量の交換性Caが含まれることにより,ドロツケ畑にCaが供給され,土壌pHも上昇した.ただし,ドロツケ畑では,Caの溶脱傾向が著しく,とくに,作土層では,土壌pHが低い値を示した.客土層の厚さと乾燥密度ならびにSi_oの分析結果から,この圃場への客土投入量は,1ha当たり5000t程度と試算された.
著者
松本 美枝子
出版者
日本土壌肥料學會
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.345-352, 1990
被引用文献数
1

ハクサイにおける,ゴマ症発生と基肥窒素施用量(10a当たり10,20,30kg)の関係を体内成分の面から検討した.基肥窒素施用量の増加に伴い生育が促進され,ゴマ症の発生も増加した.基肥窒素30kg施用区でとくに発生が著しかったが,10kgおよび20kg施用区であっても生育が促進された場合は発生が多くなった.この発生株ではNO_3-Nおよびαアミノ態窒素濃度が上昇し,糖濃度は逆に低下する傾向を示した.また,機関別体内成分とゴマ症発生の関係では,葉柄よりむしろ葉身中でのNO_3-Nおよびαアミノ態窒素濃度の蓄積が発生を助長した.これらの事実から,ゴマ症の発生を防止するためには,基肥窒素施用量を20kg以下にすることが必要と考えられた.
著者
若澤 秀幸 高橋 和彦 望月 一男
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.1-6, 1998-02-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
14
被引用文献数
9

In this study, the agricultural utilization of coffee grounds was examined. The results were as follows. 1. The application of coffee grounds in soils inhibited the seedling growth of Chinese mustard. From experiments on nitrogen and toxic substance alleviation, it was suggested that this inhibition is rcsultant of nitrogen starvation and the existence of toxic substances. However, in the summer, when 2.5kg m^<-2> of coffee grounds was applied together with nitrogen fertilizer at 15 to 20g m<-2>, the coffee grounds didn't inhibit the seedling growth of Chinese mustaard with a maturing period of more than one month. 2. When more than 10 kg m<-20> of coffee grounds was applied into soil, the aggregated structure of soil was developed.
著者
村上 圭一 篠田 英史 中村 文子 後藤 逸男
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.339-345, 2004-06-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
24
被引用文献数
8

群馬県吾妻郡嬬恋村の土壌は黒ボク土であるが,その下唐土は,根こぶ病の発病抑止的土壌として知られている.本報では,土壌の酸性改良が根こぶ病の発病を抑止するメカニズムおよび黒ボク下層土が根こぶ病の発病を抑止するメカニズムを明らかにする目的で,根こぶ病の発病に及ぼす土壌の種類とpHの影響について検討を行った.1)根こぶ病の発病を抑制するために必要な酸性改良の程度は土壌の種類により著しく相違し,黒ボク表層土や灰色低地土のように発病しやすい土壌では,土壌のpHを少なくとも7以上にまで高める必要がある.一方,発病しにくい黒ボク下層土や赤黄色土では極端な酸性改良を必要としないことが明らかになった.2)土壌の酸性改良による根こぶ病の抑制メカニズムは従来から高pH条件下で土壌中の休眠胞子の発芽を抑制することに起因すると考えられてきたが,高pH条件においても休眠胞子の発芽あるいは,根毛への第一次感染が確認されたことから,これらのメカニズムは第一次感染以降にあると推定された.3)黒ボク下層上が根こぶ病の発病を抑止するメカニズムは,休眠胞子が有する陰電荷と土壌コロイドの電荷特性の変化に起因する.すなわち,腐植質黒ボク土は腐植に由来する陰電荷を,腐植を含まない黒ボク下層土はアロフェン由来の陽電荷を持っている.黒ボク下層土中では休眠胞子が上壌コロイドに電気的に吸着されるため,休眠胞子密度が低下する.このような土壌中での見かけ上の休眠胞子密度の低下が発病を抑止する原因と考えられた.
著者
陽 捷行
出版者
日本土壌肥料學會
巻号頁・発行日
vol.87, no.4, pp.267-277, 2016 (Released:2016-11-22)
著者
中村 隆一 日笠 裕治 村口 美紀
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.317-322, 2003-06-05
被引用文献数
1

1.ブロッコリーの花蕾腐敗病は、窒素施肥量の増加に対応して多発した。発病株率の高い区では低い区に比べて花蕾部の窒素濃度が高かった。カルシウム資材を花蕾部に葉面散布すると、花蕾部のカルシウム濃度が高まり、花蕾腐敗病の発病株率は低下した。2.花蕾腐敗病の発病には花蕾部の窒素濃度の他にカルシウム濃度が影響する。花蕾部のCa/N比が低いほど発病株率は高く、Ca/N比が0.2以上では発病株率は10%以下で、Ca/N比が0.3以上では発病が認められなかった。3.窒素を分施することで、地上部カルシウムの花蕾部への分配比率が高まる傾向が認められた。したがって、花蕾腐敗病が多発する作型では窒素の分施が発病抑制に有効である。4.低地土が主体の地区で花蕾腐敗病発病状況を調査した結果、花蕾腐敗病は有効土層が浅く、下層土のち密度が高いなど排水性が不良な圃場で多発した。5.以上からブロッコリーの花蕾腐敗病の発病には、花蕾部の窒素濃度とカルシウム濃度が関与し、発病の抑制には窒素の分施および土壌物理性の改善、カルシウム資材の葉面散布が有効である。
著者
三枝 正彦 松山 信彦 阿部 篤郎
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.423-430, 1993-08-05
被引用文献数
7

東北各県より代表的耕地黒ボク土393点を入手し,酸性シュウ酸塩可溶アルミニウムに対するピロリン酸可溶アルミニウムの比,酸性シュウ酸塩可溶ケイ酸含量および粘土含量を用いてアロフェン質黒ボク土と非アロフェン質黒ボク土に類型区分することを試みた.さらに,この結果と前報で報告した交換酸度y_1による開拓地土壌の類型区分結果をペドロジスト懇談会作製の土壌図に作図し,火山灰の分布状況,風化に関係する気候要因,火山灰の岩質,火山ガラスの性質を考慮して東北地方における両黒ボク土の分布と分布面積を検討した.アロフェン質黒ボク土は,全黒ボク土の48%,86万haを占め主として完新世テフラが厚く堆積する地域で,降水量が少ない青森県南東部から岩手県北部にかけて,母材が塩基性の岩質あるいは有色火山ガラスを主体とする岩手山,蔵王山周辺,軽石を含む火山灰降下地域と考えられる秋田県北東部,福島県北部に分布していた.これに対して,非アロフェン質黒ボク土は,全黒ボク土の52%,94万haで年降水量の多い日本海側の各地,高標高地あるいは宮城県の内陸部に,また降水量は相対的に少ないが完新世のテフラの降灰の少ない岩手県南部から宮城県北東部に主として分布していた.東北各県における非アロフェン質黒ボク土の分布割合は青森県30%,秋田県80%,岩手県43%,山形県100%,宮城県76%,福島県42%と推定された.
著者
中林 和重 山崎 邦典 斎藤 伸芳 飯泉 正 島根 茂雄
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.479-484, 1990-10-05
被引用文献数
5

メロンのロックウール栽培における培養液の組成と培養液の供給方法について検討し,以下の結果を得た.1)ネット出現後期から窒素の供給を制限した方がよい:ネット発生期以降の培養液中の窒素濃度を,1/2にした場合には,ネットの太さにばらつきがなく外観が美しかった.この制限を始める時期はネット発生期よりも遅い時期がよいと思われた.2)収穫直前の給液制限はしない方がよい:収穫の20日前から給液を制限した場合には,果肉の糖度も低くなり,果実も小さくなる傾向があった.このことから,メロンのロックウール栽培では,培養液の供給量を栽培の全期間にわたって,制限しない方がよいと考えられた.3)培養液への腐植酸の添加は有用:培養液に腐植酸の添加(50 ppm)を行った場合には,果皮色が明るくなった.今後,さらに検討を要する.
著者
水野 直治 堀江 健二 水野 隆文 野坂 志朗
出版者
日本土壌肥料學會
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 = Journal of the science of soil and manure, Japan (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.529-534, 2001-08-05

超ニッケル集積植物であるタカネグンバイThlaspi japonicumは植物体中の多くの成分含有率が大幅に変動する植物である。超塩基性岩質土壌で生育したタカネグンバイの葉身中のニッケルは1553mgkg-1と高いが、カルシウム含有率は2000mgkg-1と低くなるなど他の植物に見られない特徴がある。また、植物体中のニッケル化合物は結晶として存在することが明らかになった。これらの結果はつぎのとおりである。 1)超塩基性岩質土壌のタカネグンバイのカルシウム含有率はニッケルが検出されない安山岩質土壌で生育したタカネグンバイのほぼ1/5であった。また、この植物は亜鉛、銅の含有率が高く、特に安山岩質土壌の植物体中亜鉛含有率は一般植物の約10倍に達した。 2)植物体中のニッケル化合物は棒状の結晶体で、特に表皮細胞や導管内に存在する。気孔周辺では多量の棒状結晶が扇状に分布する。 3)ニッケル化合物の結晶は室温で乾燥した植物体でも観察されるが、70~80℃以上で乾燥した試料では消失することから、結晶水な持つ化合物である。 4)安山岩質土壌で生育したタカネグンバイのカルシウム含有率は10000mgkg-1と高いが、ニッケル化合物の結晶は観察されない。 5)超塩基性岩質土壌と安山岩質土壌を混合した土壌で育てた植物体中のカルシウム含有率は10000mgkg-1と高くなるが、ニッケル含有率は255mgkg-1と低くなる。しかし、ニッケル化合物の結晶は観察される。 6)ニッケル含有率の高い(100~400mgkg-1)他の植物では、植物体内にニッケルの結晶を観察できなかった。