著者
村本 穣司 後藤 逸男 蜷木 翠
出版者
日本土壌肥料學會
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.210-215, 1992
被引用文献数
21

Rapid analysis of exchangeable cations and CEC of soils by a shaking extraction method, which can get similar values to semimicro S_<CHOLLENBERGER> method, was studied. Procedure of the method established is as follows ; Place 2.00 g of <2 mm air-dried soil in an 85 ml Nalgene centrifuge tube. Add 30 ml of 1 M ammonium acetate (pH 7), and shake for 15 min. Centrifuge the tube at 2,500 rpm for 3 min. Decant the supernatant into a 50 ml Buchner funnel fitted with filter paper, and receive the filtrate in a 100 ml volumetric flask. Repeat extraction two more times in the same manner except shaking for 30 s by hand. Add 5 ml of 20,000 ppm Sr into the flask, and make to volume with ammonium acetate. Determine Ca, Mg, K, Na and Mn by ICP-AES using calibration method. To remove free ammonium ion from the soil, add 20 ml of 80% methanol in the centrifuge tube, shake for 30 s by hand, centrifuge, and discard the supernatant through the funnel used on the extractions. Repeat this step two more times. Add 30 ml of 10% potassium chloride in the centrifuge tube, and extract absorbed ammonium ion from the soil in the same way with extracting exchangeable cations using funnel used in previous steps. Make to volume with 10% potassium chloride, dilute 5 times with water, and determine ammonium ion by an ammonia electrode method. The values obtained by this method agreed well with the values obtained by semimicro S_<CHOLLENBERGER> method on exchangeable cations and CEC of 24 soils. All extraction procedures of the method can be finished within 2 h per one sample. Repeatability of the method was about 5% for exchangeable Ca, Mg, K, and about 10% for CEC as coefficient of variance.
著者
佐久間 俊雄 倉持 寛太 斉藤 英樹 増谷 雪雄 望月 美千代 森下 諦三
出版者
日本土壌肥料學會
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.197-202, 1989
被引用文献数
3

以上の実験結果および考察はつぎのように要約できる。 1)軽水電界水素ガスをキャリアーガスとして用いることにより,検出加減を低く維持し,繰返し精度および再現精度を向上することができ,天然存在率以下のD/Hを精度良く測定できる。 2)この場合,較正曲線は良子な直線性を示し,D/H測定の信頼幅は,反複数40以上で3ppm以内(100〜1000ppmの範囲),反複数5でも8ppm以内(100〜260ppmの範囲)であった。3)市販超高純度水素をキャリアーガスとして用いる場合,軸正曲線の直線性には問題はないが,繰返し精度・再現精度は,軽水電界水素ガスをキャリアーガスとして用いたときよりやや悪かった。 4)土壌サンプルを用いた直接真空蒸留にはサンプルフラスコを大容量にするのが効率的であり,精度を損なうこともなかった。 5)テンションライシメータ法は土壌水の継続サンプリングに適しており,pF=2.5相当程度以上の水分率で有用であった。抽出に伴う同位対効果はわずかではあるが認められ,補正の必要があった。6)圃場実験に際しては,土壌水による希釈が著しく,自然存在率付近から300ppm程度までのD/H範囲における測定が多くなり,高い再現性度が要求される。軽水電界水素ガスをキャリアーガスとして用い,一連の測定ごとに2点較正することによって,測定日の違いによる誤差を補正して満足すべき結果を得た。
著者
中野 明正 上原 洋一 山内 章
出版者
日本土壌肥料學會
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.737-742, 2003
参考文献数
27
被引用文献数
5

トマトの隔離床栽培において,5種類の施肥区(CDU化成肥料を与えたCDU区,低硫酸根緩効性肥料を与えたLSR区,窒素の想定必要量の半量ずつをCDUと牛糞堆肥で与えた区をCM+CDU区,同様にCDUと鶏糞堆肥で与えた区をPM+CDU区,牛糞堆肥および鶏糞堆肥のみを与えた区をCM+PM区)を設け年2作,4連作を行った.収量の経年変化,トマト果実の糖度,無機成分組成,土壌と果実のδ^<15>N値を測定した.化学肥料と堆肥施用で収量における有意な差は認められなかった.糖度についてはLSR区で他の処理区に比べ低くなる傾向があったが,CDU区では堆肥を施用した処理区と同程度の糖度を示したので,糖度の低下は化学肥料に特有の現象ではないと考えられた.また,無機成分組成ではマグネシウムだけが,CM+CDU区で増加する結果を得たが,堆肥施用の普遍的な効果とは考えられなかった.以上の結果からは,堆肥施用がトマトの収量,糖度,無機成分含量を増加させるという結論を導くことは困難であると考えられた.一方で,化学肥料および堆肥のδ^<15>N値は,土壌と果実の双方のδ^<15>N値に反映され,土壌と果実のδ^<15>N値の間には高い相関が認められた(R^2=0.89).これらのことから,堆肥施用したものと化学肥料施用したものとを分ける閾値を設け,δ^<15>N値を用いた有機農産物判別の可能性が考えられた.
著者
城 惣吉 間塚 真矢 門脇 正行 佐伯 雄一
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.92, no.3, pp.255-262, 2021-06-05 (Released:2021-06-15)
参考文献数
26

地球温暖化に伴う気候変動の作物生産への影響に関する基礎的知見の蓄積の一環として,異なる栽培温度環境下におけるダイズの生育と有用ダイズ根粒菌の接種効果および感染ダイズ根粒菌群集構造への影響について調査を行った.供試ダイズ品種として,‘オリヒメ’,‘ボンミノリ’,‘フクユタカ’を用い,供試菌株としてBradyrhizobium diazoefficiens USDA110Tを用いた.栽培は温度傾斜型チャンバー内で行い,低温区,中温区,高温区を設けた.異なる温度環境下での栽培試験の結果,無接種区と比較して,USDA110の接種により主茎長,主茎節数,茎葉乾物重,莢数,莢乾物重,地上部乾物重,根粒数が有意に増加したが,栽培温度の上昇により根粒数を除く項目が有意に減少した.各調査項目間の相関係数は根粒数と茎葉乾物重との関係など多くの組み合わせにおいて有意な正の相関関係を示した.USDA110の根粒占有率は,全ての温度区で接種したUSDA110が優占したが,低温区と中温区,低温区と高温区を比較すると栽培温度の上昇により減少する傾向を示した.以上の結果から,高温環境下では根粒数が減少することでダイズの生育が抑制され,その後の生育や収量に影響すると考えられた.しかし,根粒数とUSDA110の根粒占有率を確保することができれば栽培温度の上昇によるダイズの生産性低下を抑制することができると考えられる.
著者
浜中 康弘 豊田 剛己 林(池田) 恭子
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.817-824, 2005-12-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
30
被引用文献数
2

コーヒー粕堆肥を1ha当たり年間40トン,4年間連用したコーヒー粕堆肥連用土壌(コーヒー区)は,トマト根腐萎凋病に対して抑制効果を有した。コーヒー区における各種病原性F.oxysporumの小型分生胞子の発芽率は化学肥料を連用した土壌と比べて低く,コーヒー区は高い静菌作用を示すことがわかった。ついで,リファンピシン・カナマイシンをコーヒーに添加したが,発芽率の増大は認められなかったため,コーヒー区の静菌作用には細菌以外の微生物が関与していると推論された。また,基質誘導呼吸阻害法により,コーヒー区の主要な微生物群集は糸状菌であることが明らかとなった。そこで,土壌中において菌糸状で存在する糸状菌を分離し,それらのトマト根腐萎凋病菌胞子発芽抑制能を評価したところ,49株中F.oxysporumに近縁な3株が特に顕著な抑制能を示した。これらをオートクレーブ処理したコーヒー区土壌に接種したところ,2株により根腐萎凋病が顕著に抑制された。以上から,F.oxysporumに近縁な菌株が病原菌の発芽抑制に関与する可能性が,また,発病抑制にも関与する可能性が示された。
著者
浜崎 忠雄
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.206-211, 1998
参考文献数
16
被引用文献数
1
著者
下野 勝昭
出版者
日本土壌肥料學會
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.8-15, 1990
被引用文献数
2

表層多腐地質多湿黒ボク土の土壌pHが各種畑作物の生育,収量と土壌中の各種成分に与える影響を検討した.得られた結果は以下のように要約できる. 1)トウモロコシを除く各作物は低土壌pHで初期成育が劣り,各作物の耐酸性はトウモロコシ>秋コムギ>インゲン>テンサイ>2条オオムギの順であった. 2)北海道の主要畑作物である秋コムギ,インゲン,テンサイはH_2O-pH 4.5以下で酸性障害を受け,初期成育値が劣った.H_2O-pH 4.5に対応する水溶性(土:水比=1:2.5)Al濃度は,1.9ppm,Al活動度は2.33×10^<-5 (M/l)^<1/3> で,酸性障害の主因はAl過剰害によるものと推定された. 3)酸性障害が発現しない条件下における土壌pHと各作物の収量反応は,バレイショとテンサイは,それぞれH_2O-pH 5.5〜5.7, 5.7〜6.1を頂点とする山形の曲線を示し,秋コムギはH_2O-pH 5.5〜6.3を頂点とする台形形の曲線を示し,これらの作物は炭カル施用による一定程度のH_2O-pH 上昇で収量増になった. 4)炭カル施用によるH_2O-pHの上昇で水溶性(土:水比=1:2.5) P_2O_5濃度とトルオーグP_2O/5含量は低下,減少し,作物体のリン酸吸収量も減少傾向が認められた. 5)炭カル施用による収量増の主因は,テンサイ,インゲン,春コムギでは全乾物重の増加ではなく,収穫指数の向上にあった.また,この場合,リン酸質資材を併施用すると,全乾物重も増加し,収量はさらに高まった.
著者
大内 誠悟 鎌田 悦夫 松枝 直人 西川 晶
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.487-492, 1991-10-05 (Released:2017-06-28)
被引用文献数
1

1)主成分がビニルアルコール・アクリル酸ナトリウム共重合体である高吸水性ポリマー(略称 SIG)およびSIGと同系統のポリマーの保水能は,溶液中の塩濃度の増加によって著しく低下する。しかしながら,その保水量は農業用水中や土壌(溶液)中では自重(乾物)の100〜300倍程度と見積もられる(水中役500倍)。2)高濃度の塩類溶液浸漬によるSIGの保水能の低下は,水または低濃度の塩類溶液で洗浄すると回復する。低pH(4以下)条件での保水能の低下は,カルボキシル基の解離度の低下によるものであり,アルカリ処理により回復する。3)SIGのカルボキシル基のほとんどすべて(5〜6meq/g SIG乾物)が陽イオン交換に関与しており,SIGを土壌に添加した場合無視できない量である。SIGは陰イオンに対しては負吸着を示し,陰イオン交換にはほとんど関与しない。