著者
横山 明敏 佐伯 雄一 柴田 聡子 長友 由隆 赤尾 勝一郎
出版者
日本土壌肥料學會
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 = Journal of the science of soil and manure, Japan (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.475-478, 2004-08-05
参考文献数
9
被引用文献数
2

宮崎県のハウス抑制キュウリ栽培の圃場において、本来ならば側枝となるべき側芽の伸長が抑制されたり、伸長しても途中で枯死する障害が多発した。その原因を究明するために、現地圃場の土壌調査と葉分析の結果から、亜鉛と銅の過剰障害による可能性が推定されたので、水耕法により検証した結果、亜鉛の過剰吸収が原因である可能性が強く示唆された。
著者
森下 智陽 波多野 隆介
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.791-798, 1999-12-05
参考文献数
17
被引用文献数
1

メタンはC02の10数倍の温室効果ガスで,発生源,吸収源の特定・見積もりが重要だがダム湖からのメタン発生の研究は少ない。本研究はダム湖および周辺森林土壌のメタンフラックスを測定し年間のメタン動態を見積もった。 厚田村望来ダムと周辺森林で湖面および地表面のメタンフラックスを97年5月〜98年5月まで観測した。湖面からメタンは常に放出し,秋にかけて上昇した(0.022〜0.431 mgCm^<-2> h^<-1>)。湖面の氷がとけた翌年4月に最大値(0.922 mgCm^<-2> h^<-1>)を示した。その変動は湖面水温,湖面の溶存メタン濃度の挙動(γ=0.98)と類似した。以上の結果からダムの年間放出量は0.83 MgCと見積もられた。0.57MgCが放流期の3ヵ月に放出され,そのうち75%の0.43 MgCが湖水の放流に伴う放出であり,残りが湖面からの放出であった。 一方,森林土壌はメタンを常に吸収していたが,吸収フラックスは湖面からの放出フラックスに比べて小さかった。地温の上昇,土壌メタン濃度の低下に伴い,8月で最大0.1mgCm^<-2> h^<-1>を示し,その後低下した。積雪期も吸収が観測され,その総吸収量は年間吸収量の18%に匹敵した。 ダムの集水域の森林面積を考慮すると,放出量より10倍も大きし・年間8.1MgCのメタンが吸収されてし・た。しかし森林の吸収フラックス(1.12 mgCm^<-2> d^<-1>)は,ダム湖からの放出フラックス(4.64 mgCm^<-2> d^<-1>)の1/4と小さく,ダム湖から放出されたメタンは必ずしも近傍の森林へ直接吸収されているわけではないことを意味していた。
著者
杉山 泰之 吉川 公規 浜崎 櫻 久田 秀彦 大城 晃
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.215-218, 2003-04-05
参考文献数
6
被引用文献数
1

葉中無機成分含有率には樹体の肥料成分吸収状態や栄養状態が反映されることから、ウンシュウミカンでは葉中無機成分による栄養診断が広く行われている。静岡県では生産現場の栄養診断を1963年から、長年行ってきており、それらの結果から葉中無機成分の基準域を設定し、施肥改善、栄養状態改善の対策に生かしてきた。1989年からは冬季の根中デンプン含有率を調査し、収量および次年度の着花数との関連を検討してきた。その結果、根中デンプン含有率が栄養診断の指標となりうることを示した。一方、施肥量や着果量と葉中無機成分含有率や根中炭水化物量との関連性についての報告は、調査が試験研究機関内で行われたものが多く、生産現場で長期にわたり栄養診断を実施し、取りまとめた報告はない。そこで、静岡県内の各産地におけるウンシュウミカン'青島温州'の代表園での近年11年間の栄養状態(葉中無機成分含有率、根中デンプン含有率)と着果数の関係を調査し、生産現場での現状と問題点について知見が得られたので報告する。
著者
井上 克弘 張 一飛 成瀬 敏郎
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.619-628, 1994-12-05
被引用文献数
4

1990年6月から3年間,兵庫県加東群社町において,50点の雨水を採取し,pH,雨水中の風成塵降下量および雨水の化学成分の変動について観測した.採取した雨水のうち,80%が酸性雨であった.雨水中に含まれる降雨風成塵のうち粒径<20μmの画分は41%であり,春期に多い傾向がある.海水の Na^+ 濃度に対する富化率から,SO_4^<2->, NO_3^- , NH_4^+ は大気汚染物質起源,Ca^<2+>,K^+ は広域風成塵起源,Na^+, Mg^<2+>, Cl^- は風送海降塩起源と推定した.雨水の nssSO_4^<2-> ,NO_3^- の年平均降下量はそれぞれ 1.57, 1.69 meq m^<-2gt;であり, Ca^<2+>の年平均 降下量は 1.49 meq m^<-2> であった.雨水中の Ca^<2+> 降下量と<20 μm の風成塵の降下量の間には高い相関が認められた.これは雨水中の Ca^<2+> が,風成塵中のカルサイトと酸性物質の硫酸との反応の結果生成した硫酸カルシウムの雨水への溶解に由来するためと考えた.東アジアにおける雨水は,中国の長江以南地域にくらべ長江以北地域や韓国で pH 値が高く,SO_4^<2-> + NO_3^- 濃度および Ca^<2+> 濃度がいずれも高い.しかし,長江以北地域とほぼ同緯度に位置するわが国の雨水は酸性が強く, SO_4^<2-> + NO_3^- 濃度から推定される程には Ca^<2+> 濃度が高くなかった.この原因は,中国内陸部乾燥地域からわが国に輸送される広域風塵中のカルサイトが,輸送の過程で中国長江以北地域や朝鮮半島上空の酸性物質の中和に消費されてしまい,近年わが国にはカルサイト含量の少ないすなわち酸性雨中和能の低い広域風成塵が輸送されているためであると解釈した.
著者
折本 善之 武井 昌秀 小山田 勉
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.203-206, 2003-04-05
被引用文献数
1

茨城県は日本ナシの栽培面積が1660 haと鳥取、千葉県に次ぐ主産県であり、品種別には'幸水'が全体の約6割と最も多い。茨城県の'幸水'成木に対する窒素施肥基準量は、黒ボク土における裸地栽培の場合、年間総量は250kg ha(-1)で基肥に8割、礼肥に2割の配分としている。従来の'長十郎'ではさらに、玉肥として果実肥大期に50 kg ha(-1)の窒素が加えられている。しかし、'二十世紀'での調査により玉肥は糖度低下や熟期遅延の原因となることが認められ、品質重視の'幸水'では玉肥を適用しない基肥主体の体系がとられている。しかし、本県における'幸水'の収量は近年低下傾向にあり、一部でこれを補うため施肥量や施肥回数が増加するなど施肥法に混乱が生じている。過剰な施肥は生産コストの増大を招くばかりでなく、地下水の硝酸汚染など環境にも悪影響を及ぼす危険性を有している。'幸水'は品質登録後約40年を経過するが、吸肥特性など栄養生理面の知見はそれほど多くない。そこで、効率的な施肥法開発の基礎資料を得るため、基肥を主体とする現行施肥基準のベースとなった'二十世紀'を対照象に、'幸水'の地上部新生器官(新梢、葉、果実)における窒素吸収特性を調査した。その結果、いくつかの知見を得たので報告する。
著者
松本 英明
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.563-572, 1991-10-05
被引用文献数
1
著者
谷川 東子 高橋 正通 今矢 明宏 稲垣 善之 石塚 和裕
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.149-155, 2003-04-05
被引用文献数
3

アンディソルとインセプティソルにおける硫酸イオンの現存量を調査し,以下のことを明らかにした。1)吸着態硫酸イオンが主体であるPO_4可溶性Sは全Sの約30%を占める主要な画分であり,その含有率はアンディソルでは16〜880mg S kg^<-1>と高く,インセプティソルでは10〜296mg S kg^<-1>と低く,明瞭な差があった。また欧米の土壌の既報値に比べ,本邦のアンディソルが含有する吸着態硫酸イオンは著しく多く,全Sに占める割合も高かった。2)溶存態硫酸イオン(Cl可溶性Sおよび水溶性S)は両土壌でPO_4可溶性Sよりも含有率が有意に低く,全Sの10%に満たなかった。そのため硫酸イオンはほとんど吸着態で存在していることが明らかになった。3)両土壌におけるPO_4可溶性Sの断面プロファイルは,表層で低く50cm〜1m深で最大値に達する特徴を持っており,とくにメラニューダンドでは最大値に達してからも,高い含有率が下層で維持されていた。4)PO_4可溶性Sは,硫酸イオン吸着能を持つ鉄やアルミニウムの酸化物,とくに腐植複合体画分を除いた非晶質酸化物やアロフェンといった非晶質粘土鉱物,さらに結晶質鉄酸化物の存在に影響を受けていると推察された。溶存態硫酸イオンのうち,交換性硫酸イオン含有率もまたこれらの土壌因子に影響を受けていることが示された。5)メラニューダンドの下層では,硫酸イオン吸着能が著しく高く,その高い硫酸イオン吸着能が水溶性硫酸イオン含有率を低く維持していることが推察された。6)表層から1m深まで積算したPO_4可溶性Sの現存量は,アンディソルでは870〜2670kg S ha^<-1>,インセプティソルでは91〜1440kg S ha^<-1>であった.溶存態硫酸イオンの現存量はPO_4可溶性Sに比べ著しく低く,表層から1m深までの積算で,Cl可溶性Sはアンディソルで17〜103kg S ha^<-1>,インセプティソルで13〜144kg Sha^<-1>,水溶性Sの現存量はアンディソルで23〜56kg S ha^<-1>,インセプティソルで26〜91kg S ha^<-1>であった。
著者
金田 吉弘 小野寺 拓也 坂下 将 高階 史章 佐藤 孝 伊藤 慶輝 保田 謙太郎
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.83, no.6, pp.681-686, 2012-12-05

我が国の稲作において,代かきは「均平」,「田植え」,「活着」,「肥料混和」,「水もち」,「除草」などのために,古くから不可欠な作業とされてきた。しかし,近年の機械化移植栽培では移植精度が向上したことから「田植え」や「活着」に対する代かきの意義は薄れている。さらに,代かきは土壌を単粒化し,透水性の低下や土壌の還元を促進させることから水稲根の活力維持を阻害する場合があるとされている(熊野ら,1985)。特に,東北の日本海側に広く分布する重粘土水田では,代かきにより作土直下に不透水性の土層が発達し,稲作期間の透水性が低下しやすい。また,近年は機械収穫後の稲わらを春にすき込む事例が多くなり,排水不良水田では,稲わらの分解に伴い土壌は強還元になりやすく根腐れを生じやすい。
著者
進藤 晴夫 平舘 俊太郎 本間 洋美
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.769-774, 1999-12-05
被引用文献数
4

山焼き後の植物炭化物から希硝酸処理後に得られた腐植酸(C-HA)と黒ボク土のA層から得られた腐植酸(S-HA)の分光学的性質(紫外・可視・赤外吸収スペクトル, ^<13>C-NMRスペクトル)および物理化学的性質(腐植化度,元素組成,X線回折図)を比較した。 1)C-HAおよびSHAの紫外・可視吸光曲線は,両者とも特異的な吸収を持たず,滑らかであった。また,これらの腐楯酸はA型に分類された。 2)炭素および水素含量はC-HAとS-HAの間でほとんど差が認められないが,窒素含量はC-HAの方がはるかに高い値を示し,一方,酸素含量はS-HAの方がいくらか高い値を示した。原子数比[H]/[C]は両腐植酸の間でほぼ同じ値を示すが,[0]/[C]および[0]/[H]はS-HAの方が高い値を示した。C-HAのこれらの分析値は,窒素含量を除き,黒ボク土のA型腐植酸に対して報告された既往の分析値の範囲内に分布した。 3)^<13>C-NMRスペクトルによると,C-HAとS-HA両者ともに芳香族炭素>カルボニル炭素>炭水化物炭素≒脂肪族炭素の順であった。また,芳香族炭素とカルボニル炭素は,S-HAの方がC-HAに比べていくらか高い割合を示すが,炭水化物炭素と脂肪族炭素に対しては,逆の関係が示された。 4)C-HAとS-HAのIRスペクトルは,互いによく類似していた。 5)C-HAおよびS-HAのXRD図は,両者がグラファイト様の積層構造を有することを示した。
著者
樗木 直也 吉田 雅一 石橋 裕喜 松永 俊朗 赤木 功
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.86, no.6, pp.527-533, 2015-12-05

鹿児島県出水地域のソラマメ産地で発生しているさや綿状組織黒変障害(綿腐れ症)の原因を明らかにするために,農家ほ場の障害発生率や植物体の栄養元素含有率,土壌化学性の調査を2カ年にわたって行った.1年目の調査では,子実の各部位(さや・種皮・子葉)のホウ素含有率は健全>軽度障害>重度障害と障害程度が重くなるほど有意に低くなった.子実各部位と葉身・葉柄のホウ素含有率は,障害発生ほ場の方が障害未発生ほ場より低かった.2年目の調査では,各ほ場の障害発生率と子実各部位及び葉身・葉柄のホウ素含有率との間には有意な負の相関がみられ,植物体のホウ素含有率が低いほど障害発生率が高まることが示された.またホウ素欠乏症の確定診断に有効だと考えられている細胞壁ラムノガラクツロナンIIのホウ酸架橋率は,重度障害さやで健全さや及び軽度障害さやに比べて低い値を示した.これらの結果はいずれもさや綿状組織黒変障害がホウ素欠乏症であることを示唆しており,これまでにマメ科作物では類似のホウ素欠乏症状の報告は見当たらないが,本障害はホウ素欠乏によるものと考えられた.
著者
佐藤 孝 善本 さゆり 渡邉 俊一 金田 吉弘 佐藤 敦
出版者
日本土壌肥料學會
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.53-60, 2007
参考文献数
24
被引用文献数
2

重粘土水田転換畑では,土壌の物理性(通気性,排水性)が悪いために,畑作物の生育が抑制され,生産性が著しく劣る場合が多い.本報では,マメ科カバークロップのヘアリーベッチによる重粘土の物理性改善効果と,ダイズの初期生育に及ぼす影響について検討した.秋田県八郎潟干拓地内の水田転換畑にヘアリーベッチを水稲立毛間に播種した.ヘアリーベッチは旺盛に生長し,根は深度約45cmまで達していた.HV区では土壌構造が発達し,特に亀裂構造が深度50cmまで形成されており,圃場の排水性は向上していた.また,HV区ではダイズの生育初期において根の吸収活性および根粒の窒素固定活性が高く維持され,生育も良くなっていた.以上の結果から,転換畑においてヘアリーベッチを前作に植栽することで,ヘアリーベッチの蒸散作用により土壌の乾燥化を促進させるとともに,根の伸長により土壌の亀裂構造(粗孔隙)および毛管孔隙が発達し,土壌の物理性が大きく改善されて,ダイズの初期生育が促進されることが明らかになった.
著者
森泉 美穂子 金田 吉弘 福島 裕助
出版者
日本土壌肥料學會
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.372-377, 2010
参考文献数
10

熱分析(熱重量測定:TG、示差熱重量測定:DTA、示差走査熱量測定;DSC)は、有機物の熱分解特性から有機物の化学形態の特徴を知ることのできる簡便法の一つである。田畑輪換の繰り返しにより土壌有機物の化学形態がどのような影響を受けるかを熱分析(DSC分析)により解析した。日本各地の連年水田および田畑輪換田土壌を採集し、それらのDSC分析を行い、DSC曲線の形態から有機物の熱分解特性を検討した。また、田畑輪換が繰り返されている圃場土壌のDSC分析を行い、田畑輪換の繰り返しが土壌有機物の形態に与える影響を調査した。更に、土壌肥沃度の変化と土壌有機物の形態との関わりを調査するために、4種類の土壌型の水田および輪換田土壌を用いて大豆栽培のポット試験を行い、試験前後の土壌の培養窒素量の測定およびDSC分析を行った。
著者
稲原 誠
出版者
日本土壌肥料學會
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.241-242, 2006
被引用文献数
1
著者
新良 力也 西田 瑞彦 森泉 美穂子 赤羽 幾子 棚橋 寿彦 佐藤 孝 鳥山 和伸 木村 武 矢内 純太
出版者
日本土壌肥料學會
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.73-80, 2010
参考文献数
30
被引用文献数
1

我が国の水田ではコメの生産調整のために1969年から転作が開始され、1978年に水田利用再編対策が開始されてからは、連作の回避、地力回復、村落内の負担の公平性等の理由から田畑輪換が広く実施されている。1980年以降は水田面積約2,900,000haのうち調整面積は500,000haを超え、2009年度には作物の作付けされた水田面積2,330,000haの約3分の1(710,000ha)が畑地利用されているとみられる。このような状況の中でダイズ等の収量低下が顕在化し、土壌有機物含量等の肥沃度の低下が懸念されている。しかし、連作水田とは異なり、湛水・還元環境と落水・酸化環境の繰り返しが、有機物の蓄積や分解にどのような影響を及ぼし、土壌窒素給源等をどのように変化させているか、あるいは土壌リン酸の可給性が連作水田とどのように異なっているのか等についての知見は十分整理されていない。このため、田畑輪換条件での肥沃度変動の法則性やメカニズムの解明が必要である。一方、肥沃度維持対策では、家畜ふん堆肥や緑肥等の資材施用の有効性や適正施用量についての知見が必要であり、土壌からの養分供給や土壌への蓄積を踏まえた施用方法の確立が求められている。そこで、土壌肥沃度部門と肥料・資材部門が共同で、田畑輪換水田における肥沃度の現状と関連研究の到達点を共有し、今後の展望を明らかにするため、1.田畑輪換水田の現状と土壌管理についての問題提起、2.田畑輪換水田の土壌窒素と施用有機物の挙動、3.土壌有機態窒素の実体について、4.田畑輪換土壌におけるリン酸の挙動と各種資材による供給、5.家畜ふん堆肥を利用した肥培管理、6.緑肥を利用した肥培管理の6課題でシンポジウムを開催したので概要を報告する。