著者
田中 敬一
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.138-143, 2015-03

ファイナンスの話題から1次元拡散過程の最適停止問題の基本的な解法について論じる.初到達時刻に深く関連する関数を用いた変数変換により,ある関数のグラフから継続領域・停止領域の識別が視覚的に可能となり,議論が見通しよくなる.また,一定条件下で,価値関数の有界性や最適停止時刻の存在・構成が保証されているので有用である.具体例として,リアルオプション,アメリカ型オプション,保有証券の最適売却戦略の問題を議論する.
著者
吉良 知文 稲川 敬介
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.378-384, 2014-07-01

野球をマルコフゲームとしてモデル化すると,攻撃側にとって勝つ確率を最大にするのは打撃か盗塁かあるいは犠打か,守備側にとって,打者を敬遠すべきか否かといった最適な意思決定を状況別に計算することができる.本稿では,野球をモデル化し,それを解く動的計画アプローチを解説する.約645万状態の有限マルコフゲームとして定式化し,状況別の両チームの最善手であるマルコフ完全均衡点とそのときの均衡勝率であるゲームの値を2秒未満で計算できることを紹介する.後攻チームの優位性についても触れる.
著者
穴沢 務
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.189-190, 2002-03-01

本論文では,節集合がVの単純グラフGと「要求」の集合{r_>υω<|υ,ω∈V}が与えられたとき,Huが提示した最適要求木問題の目的関数に似た関数を最小化するハミルトン閉路を求める問題を考察する.そして,Gが完全かつ{r_>υω<}がモンジュ性と関係の深い逆スープニック性を満たすとき,ある特殊なハミルトン閉路C^*(それは陽に定義可能)が最適解であることを示す.興味深いことに,このC^*は(逆でない)スープニック性を伴う対称巡回セールスマン問題の最適解でもある.さらに本論文では,リング型ネットワークの構築において逆スープニック性を自然に仮定できる場合があることと,その場合はC^*が最適なリング型ネットワークとなることを示す.
著者
櫻庭 セルソ 智 柳浦 睦憲
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 = [O]perations research as a management science [r]esearch (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.327-334, 2012-06-01
参考文献数
38

線形順序付け問題は,正方行列の行と列を同じ順列で並べ替え,下三角部分の値の合計を最小化する問題であり,古くから研究されている.この問題は,辺に重みのついた有向グラフから一部の辺を取り除いてすべての有向閉路を除去するとき,取り除いた辺の重みの合計を最小化するフィードバック辺集合問題と等価である.本稿では,この問題に対するさまざまな解法を,実用的解法を中心に紹介する.
著者
山本 政 永井 秀稔
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.19-23, 2016-01-01

計画業務における最適化手法の適用では,最適化問題を適切に解くことも重要であるが,最適化手法に解かせる問題設定と,解を確認・修正するためのユーザインターフェイスの良し悪しも同様に重要なポイントである.これらを考えるうえでは,人とシステムの適切な役割分担を考えることが欠かせない.本稿では,計画業務に最適化手法を適用した事例の一つであるJリーグ・マッチスケジューラー「日程くん」事例を題材に,最適化手法の実務適用における人とシステムの適切な役割分担と,その設計方法について議論する.
著者
神田 雅透
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.125-130, 2009-03-01

情報化社会が安全に機能するための基盤技術の一つに暗号技術があることはよく知られている.しかし,縁の下の力持ち的存在であるがゆえに普段からあまり意識されずに利用されている一方で,その中身は難しいものと思われて興味の対象からは敬遠されがちである.しかし,暗号解読では確率分布などを利用したり,リスクコミュニケーションでは最適値問題としてOR的手法が必要となるなど,ORに近い分野の研究もある.そこで,本特集記事への橋渡しを兼ね,どのような暗号技術がどのような場面で使われているのかについて,最近の動向を交え,紹介する.
著者
池ノ上 晋
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.141-144, 2007-03-01

顧客がいることが前提の作業に取り組んでいると,考え続けている理想としてのあるべき姿などということはまるで虹のようなものである.でもやはり,綺麗な色や形があったほうが何かと都合がよく,また,その仕事の中での過程を楽しむことができる."OR"という茫洋としている範疇の中からそんな素敵なものの一部でも見つけ出すことができれば幸いである.職業としてコンサルタントと称している.現実の仕事での思考のプロセスに沿いながら体感しつつある"OR"の意味や存在意識を考えてみる.
著者
町田 文雄
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.311-317, 2011-06-01

クラウドの信頼性を解析的に評価するアプローチについて紹介する.マルコフ連鎖や確率ペトリネットなどの状態空間モデルを用いてクラウドの信頼性を解析する上では,クラウドのスケーラビリティと複雑性への対処が課題となる.スケーラビリティに対しては,大きなモデルを複数のサブモデルに分割して解析するモデル分解手法が注目される.クラウドの品質評価にモデル分解手法を用いた研究例を紹介する.また,複雑なシステムのモデルをいかに生成するかという課題に対し,筆者が取り組むSystems Modeling Language(SysML)を用いたコンポーネントベースモデリング手法の研究を紹介する.
著者
福西 義幸
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.281-283, 2006-05-01

野洲川の対岸を走るJR草津線の電車の音が水田地帯にこだまする滋賀県甲賀市水口町酒人地区.昭和の終わりから平成の初頭にかけ,ほぼ全戸が第2種兼業農家だったこの集落に農業崩壊が始まった.このままでは集落そのものが壊滅する.不安の中から危機意識が芽生えた.そんな状況下,集落の農地をどう守っていくのかという真剣な議論が始まった.委員会を作り時間をかけたていねいな話し合いをすすめた結果,集落一農場方式で組織営農に取り組む方向で地権者の合意が得られた.「集落の農地は自分たちの責任で後世に引き渡そう」という思いからだった.同時に,圃場基盤の整備と生活環境の改善を進めていくことも決めた.
著者
三道 弘明
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 = [O]perations research as a management science [r]esearch (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.249-254, 2009-05-01
参考文献数
1

OR/MSの教育に携わっている研究者の多くは,理工系出身であることが多い.彼らが文系でOR/MS教育を担当する場合には,理系,文系の文化の違いなどにより,大きな戸惑いを見せることが少なくない.ここでは,理系,文系における教育の考え方や文化の違いについて概観し,学生の行動を単純な経済学的モデルで説明した.次いで導入科目として位置づけられたOR/MSに焦点を絞り,学生の行動を勘案した効果的な教育方法を,筆者の経験を中心に展開した.なおそこでの考え方は,経験に重点がおかれている関係上,かなり主観的ではあるが,何らかの参考になればと考えている.
著者
得居 誠也
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.191-197, 2015-04-01

機械学習において,人手で設計した特徴量にもとづく手法が性能の限界を迎えつつあるなか,計算機性能の進歩とデータセットの大規模化によって,深層学習(ディープラーニング)は圧倒的な認識性能を次々に叩き出し,産業界を巻き込み注目を集めている.本稿では,教師あり学習とニューラルネットの基本的な定式化からはじめ,深層学習において高い性能を実現するための最適化,モデリング,正則化の技術について広く紹介する.
著者
淺田 克暢
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.221-226, 2010-04-01

製造・流通業においては在庫削減,欠品削減を目的に需要予測システムの導入が進んでいる.需要予測システム導入成功のために最も重要なポイントは,搭載されている予測モデルの予測精度ではなく,需給マネジメントシステムの構築である.需給マネジメントシステムとは,需要予測を活用した需給管理業務を継続的に改善していく仕組みのことである.本稿では,需要予測システムの導入効果を整理した上で,需給マネジメントシステムにおける3つのPDCAサイクルと,その構築および効果的運用に欠かせない5つの前提について解説する.
著者
増山 博之
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.671-677, 2014-11-01

「解けない」待ち行列の系内客数分布や待ち時間分布は,しばしば,ある種の構造化マルコフ連鎖の定常分布として数値的に求めることになる.しかし,その構造化マルコフ連鎖の遷移確率行列が無限次元である場合には,何らかの方法で遷移確率行列を切断してから,計算機実装を行う必要がある.無論,切断された遷移確率行列から得られる定常分布は,本来求めるべき定常分布に対する「近似」である.本稿では,「最終列増大切断」によって得られる定常分布の誤差上界と,その導出に必要となる確率行列の「単調性」について述べる.また,関連する結果についても言及する.
著者
塚原 啓司
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.58, no.7, pp.357-363, 2013-07-01

2012年5月22日,634mという自立式電波塔では世界一の高さを誇る「東京スカイツリー^[○!R]」と300店を超える商業施設「東京ソラマチ^[○!R]」,「東京スカイツリーイーストタワー^[○!R]」,これら総称の「東京スカイツリータウン^[○!R]」がオープンした.地域ならびに沿線活性化を目的に,下町のものづくりと都市文化創造の「アトリエコミュニティ」,地球に優しく,安全で安心を提供する「やさしいコミュニティ」,タワーを核とした情報発信の「開かれたコミュニティ」をコンセプトに開発された.これらコンセプトに基づいて,地域性を重視しながら従来から最先端の技術を導入し,省CO_2をはじめとした環境配慮について紹介する.