- 著者
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山本 政幸
- 出版者
- 日本デザイン学会
- 雑誌
- デザイン学研究 (ISSN:09108173)
- 巻号頁・発行日
- vol.46, no.1, pp.27-36, 1999-05-31
本稿は, エドワード・ジョンストンとエリック・ギルのデザインした書体を中心として, 作者の思想や産業との関わりに着目しながら, イギリスにおけるモダン・サンセリフ活字の成立過程を明確にすることを目的としている。ジョンストンとギルの活動の根本に手工芸が据えられていた事実を追い, 並行して二人が近代産業に取り込まれながらサンセリフ体に着手する過程と, 彼らの書体に見出された新しい役割を確認したあと, 幾何学的アプローチと伝統的アプローチという二つの側面から, デザインの特徴についても言及した。彼らのサンセリフ体活字は, 産業との関わりから新しい社会における新しい目的のために作られ, 企業イメージの統一やサインから書籍印刷にいたるまで, 幅広い用途に対応する現代的な役割を備えた。その形態は, 機械的な規則と, ヒューマニスティックな骨格を併せもち, 幾何学的な新しさの中にも, 二人が尊重した伝統的基盤が根付いていた。これはイギリスのモダン・サンセリフ活字が成立する過程で生じた特徴といえる。