著者
津田 新哉 花田 魚 美濃部 侑三 亀谷 満朗 都丸 敬一
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.626-634, 1993-12-25
被引用文献数
5 5

TSWVはわが国においてダリア,ピーマン,トマト,スイカ,タバコおよびトウガンなどから分離されている。本論文では,沖縄県のスイカ(W株),奈良県のトマト(N株),茨城県のピーマン(P株),岩手県のタバコ(M株)及び鹿児島県のトウガン(K株)の各分離株についてヌクレオキャプシドの性状を比較した。各分離株の精製ヌクレオキャプシドについてSDS-PAGE及びアガロースゲル電気泳動を行った結果, W株とK株のヌクレオギャプシド(N)グンパクの分子量は32K, SRNAは1.2l×10^6, N, P及びMの各株ではそれぞれ30K及び1.02×10^6を示し,両グループに差が認められた。N株またはW株のヌクレオキャプシドに対する特異抗体(N抗体およびW抗体)を用いたウェスタンブロッティングでは,N抗体はN,P,Mの各株と,W抗体はW及びK株とのみ反応した。N株とW株のNタンパクを精製しリシルエンドペプチダーゼで消化した後HPLCのクロマトグラムを比較した結果,3ピークのみは一致したがその他異なるピークが多数認められ,アミノ酸配列に差異のあることが示された。N株またはW株のSRNA (N-S及びW-S)をプローブとしたノーザンハイブリダイゼーションでは, N-SはN, P, Mの各株と, W-SはW及びK株のSRNAのみとそれぞれ反応した。以上の結果,本邦産TSWVは普通系(TSWV-O;N,P,M株)及びスイカ系(TSWV-W :W,K株)の2系統に大別されることが判明した。
著者
道家 紀志 酒井 進 冨山 宏平
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.386-393, 1979
被引用文献数
6

ジャガイモ組織に過敏感反応を誘導する<i>Phytophthora infestans</i>の細胞壁成分(CW)とその誘導を抑制する水溶性グルカン(WSG)を各種宿主及び非宿主植物葉に,カーボランダムによる摩擦塗布処理をし,葉組織の過敏感反応性を調べた。ナス科のジャガイモ,トマト,ピーマン,ナス,トウガラシ,ダチュラ,ホーズキ,マメ科のダイズ,インゲン,エンドウ,ソラマメ,ササゲ,ユリ科のタマネギ,ネギ,テッポーユリの葉はCWに反応し,処理後24時間後には褐変え死細胞を生じた。ナス科のタバコ,アカザ科の4種,キク科の3種,十字花科の4種,イネ科の4種,バラ科の3種の各植物葉はいずれも,処理後72時間以内にも肉眼的観察可能な細胞の反応は示さなかった。 トウガラシ,ホーズキ,ダイズ,ササゲ及びシロザの葉はCWと同様に,WSGとも反応し褐変え死細胞を生じた。それらの処理により過敏感反応を起し得る葉は,処理後,5時間以内に異常な電解質の漏出を起した。これらの結果は,特定な科に属する植物が,<i>P. infestans</i>のCW及びWSGに対して,宿主・非宿主とにかかわりなく過敏感反応を起す性質を持つことを示唆した。
著者
道家 紀志 酒井 進 冨山 宏平
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.386-393, 1979
被引用文献数
6

ジャガイモ組織に過敏感反応を誘導する<i>Phytophthora infestans</i>の細胞壁成分(CW)とその誘導を抑制する水溶性グルカン(WSG)を各種宿主及び非宿主植物葉に,カーボランダムによる摩擦塗布処理をし,葉組織の過敏感反応性を調べた。ナス科のジャガイモ,トマト,ピーマン,ナス,トウガラシ,ダチュラ,ホーズキ,マメ科のダイズ,インゲン,エンドウ,ソラマメ,ササゲ,ユリ科のタマネギ,ネギ,テッポーユリの葉はCWに反応し,処理後24時間後には褐変え死細胞を生じた。ナス科のタバコ,アカザ科の4種,キク科の3種,十字花科の4種,イネ科の4種,バラ科の3種の各植物葉はいずれも,処理後72時間以内にも肉眼的観察可能な細胞の反応は示さなかった。 トウガラシ,ホーズキ,ダイズ,ササゲ及びシロザの葉はCWと同様に,WSGとも反応し褐変え死細胞を生じた。それらの処理により過敏感反応を起し得る葉は,処理後,5時間以内に異常な電解質の漏出を起した。これらの結果は,特定な科に属する植物が,<i>P. infestans</i>のCW及びWSGに対して,宿主・非宿主とにかかわりなく過敏感反応を起す性質を持つことを示唆した。
著者
善 正二郎 奥田 充 藤 晋一
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.269-274, 2010

アイリスイエロースポットウイルス(IYSV)はトマト黄化えそウイルス(TSWV)をタイプ種とするトスポウイルス属に属し、ネギアザミウマにより媒介される。IYSVはダッチアイリスから最初に分離されたウイルスであり、我が国ではアルストロメリアで初めて感染が報告された。その後、トルコギキョウ、タマネギ、ネギ、ニラで発生が報告されている。宿主植物のIYSVによる病徴は、えそ輪紋、えそ斑点、えそ条斑など様々であるが、発病部位である葉が商品価値に影響を与えるトルコギキョウやネギなどでは、IYSVの発生が直接、農家経営に影響を与えるため、発生地域では生産上の重要な病害となっている。本研究では、ネギアザミウマまたはアザミウマ類に農薬登録がある数種の殺虫剤について残効期間とIYSV感染に対する抑制効果を検討した。
著者
高橋 賢司 稲葉 忠興 守中 正
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.399-404, 1985-10-25
被引用文献数
3

インゲンマメ(<i>Phaseolus vulgaris</i>)の初生葉にインゲンマメ炭そ病菌(<i>Colletotrichum lindemuthianum</i>)を一次接種し,その後展開した第1複葉にインゲンマメさび病菌(<i>Uromyces appendiculatus</i>)を二次接種すると,さび病菌の夏胞子層の形成数の減少,夏胞子層の形成遅延・成熟遅延,夏胞子層および夏胞子層周囲の黄化部の大きさの縮小が生じた。これらの抑制効果が現われるためには,炭そ病菌の分生胞子5.0×10<sup>4</sup>個/ml以上の濃度が必要であった。一対の初生葉の1枚に炭そ病菌を一次接種し,他方の1枚にさび病菌を二次接種すると夏胞子層の形成数および形成速度・成熟速度には影響がなかったが,夏胞子層および夏胞子層周囲の黄化部の大きさを抑制した。これらの現象はインゲンマメ炭そ病菌の一次接種によって,インゲンマメさび病に対する全身的な抵抗性が誘導されたためと考えられる。
著者
富濱 毅 西 八束 荒井 啓
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.3-13, 2006 (Released:2007-09-14)
参考文献数
31
被引用文献数
5 9

赤焼病細菌の運動性やバイオフィルム形成, 葉圏での生存, 病原力に及ぼす菌体外多糖質 (EPS) 産生および鞭毛の影響について, 突然変異株を用いて検討した. EPS産生はバイオフィルム形成, 葉圏における細菌集合体の形成, 無傷部位での乾燥耐性に関与したが, 病原力に対する影響はなかった. 鞭毛は, Swim型の運動性, バイオフィルム形成, 葉圏における細菌集合体の形成, 有傷部位での生存, 組織内での増殖に関与した. さらに, EPSと鞭毛との交互作用が, バイオフィルム形成および無傷部位での生存に関与することが明らかとなった. Swarm型の運動性には, 鞭毛およびEPS以外の要因が関与し, Swarm型の運動性と病原力との間には高い相関が見られた. 以上の結果から, 赤焼病細菌のEPS産生は主に葉圏の無傷部位における生存に, 鞭毛は葉圏の有傷部位における生存および組織内での増殖に重要な役割を持つことが明らかとなった.
著者
平田 正一
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.21-24, 1953

バイラス罹病の馬鈴薯,大根,蕪菁及び甘藷の塊根並に莖の搾汁ガーゼ濾液の透明度を日立製光電光度計で測定し健病間の比較を試みた。その結果は以下の如くであつた。<BR>(1) 馬鈴薯の透明度は收穫時から貯藏中漸次低下して來る。健薯は病薯よりも高く,その較差は小である。罹病度に應じて透明度は低くなり塊莖の大小とは相關は認められず,又多數塊莖の平均透明度は健薯が高いけれども各個體値は相當亂れている。健病薯間で較差の最大は稀釋度1/8で表される。<BR>(2) 大根の汁液の透明度の健病差は馬鈴薯よりも更に大幅であるがその傾向は兩者共同樣であつた。幼齡期の罹病株では或物質の増大が行われるが老齡化に伴う病勢の進行と共に物質の移動或は生成は阻害され,透明度は幼齢期低く,老化と共に高くなる傾向がある。根部の上位は透明度大で,健病較差の最大値は稀釋度1/8に於て示された。<BR>(3) カブラは大根と略々同樣の傾向であるが,甘藷の健病透明度の差は小さかつた。<BR>(4) この實驗に於ける生體汁液の透明度は含有蛋白量の多寡と略々反比例的に示され,汁液の溷濁度は蛋白量に依て決定される。この整律に從わない場合は多くは汁液中の蛋白イオンの自己脱電による凝集と沈澱の起るためであつて,この事實は採汁後時間を經過した試料において或は罹病體汁液において示される。透明度と蛋白量との關係曲線は比例直線として示されず物質定量のための透明度測定として利用し難いが,診斷上に於ける健病の比較方法としては利用し得る。
著者
小長井 健 坂本 一憲 宇佐見 俊行 雨宮 良幹 宍戸 雅宏
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.101-110, 2005-05-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
34
被引用文献数
6 8

緑肥エンバク野生種の栽培・すき込み後のトマト土壌病害の発生をピシウム苗立枯病,リゾクトニア苗立枯病,萎凋病,半身萎凋病および青枯病を対象に調査した結果,半身養凋病のような進行の遅い土壌病害の発生が抑制され,特に非殺菌時にその効果が顕著に認められた.その原因として,エンバク野生種栽培・すき込みに伴う土着の土壌微生物相の量的および質的変化による影響が,希釈平板法,微生物活性量およびPCR-DGGE法から示唆された.また,エンバク野生種由来の化学物質の抗菌性が関係している可能性も示した.
著者
小林 享夫 高橋 幸吉
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, 2001-08-25
被引用文献数
1
著者
西村 範夫 富山 宏平
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.p159-166, 1978-04

ジャガイモ品種リシリ(R_1-gene)およびダンシャク(r-gene)の塊茎を厚さ1mmのスライスにして24時間, 18C中に静置した。ジャガイモ疫病菌race 0またはrace 1を接種し, 一定時間後に^3H-ロイシン, H_3^<32>PO_4または^<86>RbClを50分間, 接種面から吸収させた。磨砕した後, 20,000×g上清部の放射能活性を測定した。接種1.4時間後に^3H-ロイシンおよび^<32>Pの吸収量は無接種区に比較して約25%低下した。この時間に, ほとんどの遊走子は発芽し始めているが宿主細胞には侵入していなかった。接種2.4時間後から^3H-ロイシンおよび^<32>Pの吸収量は, 親和性の組み合せに比較して非親和性の組み合せで顕著に低下した。この時間に非親和性の組み合せにおいても宿主の細胞死はほとんど起っていなかった。^<86>Rbの吸収では, 非親和性菌を接種したスライスの吸収量は非感染および親和性菌に感染したスライスより高かった。また10Cで吸収させると差はほとんどなくなった。^3H-ロイシンによる予備実験の結果から20,000×g上清部の放射能活性をスライスへの取り込み量とみなすことができる。以上の結果は感染初期(侵入菌糸の貫入とほとんど同時)に宿主原形質膜が感染の影響を受けることを示す。また, 親和性, 非親和性の認識が侵入菌糸の貫入とほとんど同時におこなわれていることを示していると考えられる。また^<86>Rbの結果は^3H-ロイシンおよび^<32>Pの場合と異なるが, その理由は不明である。
著者
西村 範夫 冨山 宏平
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.159-166, 1978
被引用文献数
5

ジャガイモ品種リシリ(R<sub>1</sub>-gene)およびダンシャク(r-gene)の塊茎を厚さ1mmのスライスにして24時間,18C中に静置した。ジャガイモ疫病菌race 0またはrace 1を接種し,一定時間後に<sup>3</sup>H-ロイシン,H<sub>3</sub><sup>32</sup>PO<sub>4</sub>または<sup>86</sup>RbClを50分間,接種面から吸収させた。磨砕した後,20,000×g上清部の放射能活性を測定した。接種1.4時間後に<sup>3</sup>H-ロイシンおよび<sup>32</sup>Pの吸収量は無接種区に比較して約25%低下した。この時間に,ほとんどの遊走子は発芽し始めているが宿主細胞には侵入していなかった。接種2.4時間後から<sup>3</sup>H-ロイシンおよび<sup>32</sup>Pの吸収量は,親和性の組み合せに比較して非親和性の組み合せで顕著に低下した。この時間に非親和性の組み合せにおいても宿主の細胞死はほとんど起っていなかった。<sup>86</sup>Rbの吸収では,非親和性菌を接種したスライスの吸収量は非感染および親和性菌に感染したスライスより高かった。また10Cで吸収させると差はほとんどなくなった。<br><sup>3</sup>H-ロイシンによる予備実験の結果から20,000×g上清部の放射能活性をスライスへの取り込み量とみなすことができる。以上の結果は感染初期(侵入菌糸の貫入とほとんど同時)に宿主原形質膜が感染の影響を受けることを示す。また,親和性,非親和性の認識が侵入菌糸の貫入とほとんど同時におこなわれていることを示していると考えられる。また<sup>86</sup>Rbの結果は<sup>3</sup>H-ロイシンおよび<sup>32</sup>Pの場合と異なるが,その理由は不明である。