著者
鈴木 啓史 黒田 克利 貴田 健一 松澤 章彦 高垣 真喜一
出版者
日本植物病理學會
巻号頁・発行日
vol.77, pp.1-6, 2011 (Released:2012-12-03)

2002~2006年の5年間に、三重県内のトマト・ナス生産ハウスより977菌株の灰色かび病菌を分離し、アニリノピリミジン系殺菌剤であるメパニピリムに対する感受性を検討した。FGAペーパーディスク法では、974菌株のMIC値が3ppm以下であったが、2005年に1ヶ所から分離した3菌株(M0517、M0518、M0520菌株)のMIC値は3ppmより高かった。これらの菌株について接種試験を行ったところ、100ppmでも防除効果の低下が認められ、その程度がヨーロッパで分離された耐性菌と同様であったことから、メパニピリム耐性菌であることが確認された。アニリノピリミジン系薬剤耐性菌は、ヨーロッパの灰色かび病菌で報告されているが、日本では初報告となる。メパニピリム耐性菌を接種した防除効果試験において、メパニピリム水和剤散布は高い防除効果を示したが、無処理区に比べ耐性菌密度が高まる傾向であった。
著者
豊田 秀吉 松田 克礼 平井 篤造
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.32-38, 1985-01-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
15
被引用文献数
4 9

本研究では,マイクロインジェクション法によりトマトのカルス細胞にタバコモザイクウイルス(TMV)を接種するための方法を検討した。トマト品種福寿2号の腋芽から誘導したカルスの単一細胞を,Murashige-Skoogの培地(寒天濃度,0.8%)に包埋した。それを,ペトリ皿に作製した同固形培地(寒天濃度,2%)の中央の穴(直径,3cm)に,厚さが3mm以下になるようにプレートした。包埋された細胞は,インジェクトスコープの位相差顕微鏡により生体観察され,ペトリ皿の中央部底壁面に刻入された格子線によって識別された。マイクロインジェクションには,活発に原形質流動を示す細胞を選び,滅菌ガラス針(先端口孔,0.1∼0.3μm)に無菌濾過したTMV接種液(TMV濃度,100μg/ml)を入れ,その先端部約3μmを原形質に10秒間挿入した。接種操作の成否は,ガラス針をぬいたあとにもその細胞に活発な原形質流動が認められるがどうかで判定した。なお,口径が0.5μm以上のガラス針を接種に使用した場合,そのほとんどの細胞において原質流動の停止や細胞質内容物の流出が認められ,フルオレッセイン二酢酸による生体反応も消失した。TMV接種後,細胞をすみやかに固定しフルオレッセインイソチオシアネートラベル抗体で染色した場合には,螢光化細胞はまったく認められなかったが,接種後26C, 3,000-4,000ルックスの照明下で2日間培養した場合には,接種したほとんどの細胞において顕著な螢光化が観察された。以上の結果から,本方法によってトマトのカルス細胞に効率よくTMVを接種できることが判明した。
著者
由崎 俊道 村山 大記
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.260-266, 1966-12-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
17
被引用文献数
4 4

紫外線照射によって不活性化されたTMVを活性TMVに混ぜて植物に接種すると,照射TMVの干渉作用によって,活性TMVの感染は阻止された。この照射TMVの干渉作用は接種した植物によって異なり,Datura stramoniumでは最高の阻止率を,Nicotiana glutinosaでは最低の阻止率を示した。照射TMVの干渉作用はpH 5.2とpH 7.0では大差がなかった。活性および照射TMVの混合液の感染力は蒸溜水で希釈することによって回復した。干渉(阻止)作用はTMVの蛋白によって示され,紫外線照射によって不活性化されたTMV-RNAでは認められなかった。また,照射TMVを接種したナス科植物汁液のTMV感染阻止作用をしらべたが,未接種植物汁液の阻止作用との間に大きな差は認められなかった。以上の結果から,照射TMVの干渉作用はTMV蛋白の接種植物に対するある種の作用に起因するものと考えられた。
著者
土佐 幸雄 中馬 いづみ
出版者
日本植物病理學會
巻号頁・発行日
vol.80, pp.32-39, 2014 (Released:2015-03-30)
著者
都丸 敬一 日高 醇
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.65-69, 1957

1954年にわが国で製造されていた紙巻6種,刻3種及びそれらの屑,葉巻1種及びパイプ2種の21の製造工場の製品について,TMVの含まれている状態を研究した。紙巻は実験した126例中123例(97%),刻は42例中36例(86%),屑はそれぞれ124例(98%)及び41例(98%),葉巻は3例中3例,パイプの日光は3例中3例TMVが検出された。桃山は3例中にいずれも検出されなかつたが,そのうちの焦がしてない黄色の成分からは検出された。N. glutinosaを用いたlocal lesion法による結果では,紙巻と刻,及び各々とその屑の間の濃度の差には,一定の傾向は認められなかつた。ゴールデンバット新生及び光の3例の濃度は同一重量の罹病生葉に含まれる量の5×10-4~10-4であつた。罹病生葉の汁液は10-6まで病原性をもつから,伝染原としてはかなりの濃度であろう。電子顕微鏡による観察では,製品たばこから抽出して精製したTMVの長さの分布は,紙巻を接種したタバコ及びTMVの普通系を接種したタバコからとつたTMVとほぼ同様であつたが,前2者には短い粒子の多い傾向があつた。
著者
挾間 渉 森田 鈴美 加藤 徳弘
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.243-248, 1993
被引用文献数
11

キュウリの代表的なブルームレス台木として使用されている‘スーパー雲竜’と,従来から使用されブルームの発生が多い台木の‘新土佐1号’を供試して,褐斑病の発病推移を比較検討した。この結果,褐斑病の発生は,ブルームレス台木への接ぎ木により著しく増加する傾向が認められた。この傾向は特にビニールハウス栽培において顕著であった。台木の違いによる葉中無機成分含有率を比較したところ,必須元素の含有率に差異は認められなかったが,ブルームレス台木接ぎ木区のキュウリ葉ではケイ酸含有量がきわめて少なかった。さらに,ケイ酸無施用で栽培したキュウリは,ブルームレス台木栽培の場合と同様,褐斑病に対する侵入阻止および病斑拡大阻止作用が低下する傾向が認められた。これらの結果から,ブルームレス台木への接ぎ木キュウリにおけるケイ酸の吸収阻害と褐斑病に対する病害抵抗性の低下との関連が示唆された。
著者
富岡 啓介 森 充隆 佐藤 豊三
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.620-623, 1999-12-25
参考文献数
9
被引用文献数
2

1999年3月,香川県の施設で栽培中のラナンキュラス(ハナキンポウゲ;Ranunculus asiaticus L.)に灰色かび病の典型的な症状を呈する病害が確認された。葉,茎および花に,初め水浸状の不整形病斑が現れ,病斑はしだいに褐変・乾燥しながら拡大・癒合し,それら器官が腐敗して株全体が早期枯死に至る。病斑上には肺∼灰褐色のビロード病の菌体が観察され,その出現は多湿条件で促進された。この菌体では典型的なBotrytis属菌の分生子柄と分生子がみられ,本菌を主にその形態的特徴からB. cinerea Person:Friesと同定した。本菌分離菌株の分生子を健全宿主に接種した結果,原病徴が再現されるとともに接種菌が再分離され,同菌の病原性が確認された。本病はすでに記録のあるラナンキュラス灰色かび病と思われた。しかし,病徴とともに病原菌の同定根拠および病原性に関する報告がない。本研究はその科学的根拠を示すものである。
著者
後藤 和夫 中西 勇
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.117-120, 1951
被引用文献数
7

麥畑に穗が出揃ふ頃, 緑一色の内に火に焙られたような淡褐色の穗が散生する病氣が昭和20年頃から奈良縣下に注目せられ, 桑原技師から細菌病ではないかと標本と共に提示せられた。この病氣は輕い時には全面に點々と出るが, ひどい時は二, 三坪位の激甚な小集團が麥畑のあちこちにできて, その部分では全穗の1/3位が穗燒になると云う程であつて麥作上からも看過し難い。著者等は昭和22年から餘暇を以て研究に着手し漸く一部の成績が得られたので取纒め報告する。この研究に當り農林省農業技術研究所向技官には種々御指導を賜つた。三重大學農學部岩田教授には多大の御援助を寄せられた。又大阪府立農事試驗場の桑原技師(當時奈良農試)には病材料等につき御骨折頂いた。記して各位に感謝の意を表する。
著者
有江 力 難波 成任 山下 修一 土居 養二 木嶋 利男
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.p570-575, 1987-10
被引用文献数
2

1985年5月, 栃木県今市市の鉢植えおよび苗床のエキザカム (Exacum affine Balf.) で菫葉に萎ちょう, 枝枯れを生じ, 株枯れを起こす未記載の病書が見出された。病株では地際部より発病枝に至る茎内部に褐変が認められた。この褐変部より分離された糸状菌は PDA 培地上で白〜白橙色の菌そうを形成し, 分生胞子は Verticillium 型および, Gliocladium 型の分生子柄から生じるフィアライド上に形成され, 子のうはこん棒〜円柱状で, 2胞の子のう胞子を8個含んでいた。これらの性状より, 本菌は Nectria gliocladioides Smalley et Hansen と同定した。また本菌によりエキザカムに原病徴が再現されたので, 本病をエキザカム株枯病 (stem blight of exacum) としたい。本菌による植物病害はこれまで記載されていないが, 今後土壌病原菌としても十分な注意が必要と考えられた。
著者
堀 正太郎 卜藏 梅之丞
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.27-31, 1918-02

歐洲大戦亂の突發以來菌類並に細菌の培養に殆んど缺くべからざるペプトーンの輸入途絶したる爲其市價は戦前に比すれば八倍乃至十倍に騰貴し内國製品と雖も尚ほ一封十五圓の時價を保てり。之が爲菌類並に細菌研究所の培壤に要する經費は著しく増加し、就中我邦にて汎く野鼠驅除に應用せらるる野鼠窒扶斯菌の培養は甚だ失費多きことゝなれり。是れ著者の一人が培壤製造上ペプトーンに代用すべき經濟的物料の研究に著手せる動機とす。硫酸アムモニア、炒大豆粉、大豆粕等に就て試驗を行ひたるに大豆粕は最も良結果を奏し、其細〓せるもの三十瓦(水一立に對して)は二十瓦のペプトーン(細菌學上普通に使用する分量)に代用し得べきことを發見せり。此大豆粕煎汁にて寒天、膠、ブイヨン培壤を製して野鼠窒扶斯菌、諸種の植物病原菌並に非病原菌の培養を試みしにペプトーン添加の培壤と毫も異なることなく、野鼠窒扶斯菌の如きは一層良好の發育を爲せり。是を以て大正五年以來西ケ原農事試驗場に於ては特別なる研究の場合以外には菌類並に細菌の培養には皆此大豆粕煎汁培壤を使用することとなり、又府縣農事試驗場にて野鼠驅除用の野鼠窒扶斯菌は一般に本培壤を使用するに至れり。之が爲我邦の各農事試驗場の菌類及細菌研究室の培壤に要する經費は著しく節約し得られたり。今時價に依り培壤一立に要する費用を比較すれば次表の如し。 [table] 大豆粕の分析表に據れば微生物の營養となる主要成分は粗蛋白質(カゼイン)及可溶性無窒物(水酸化炭素物)にして、可溶性窒素の量の多少にあらざることは次に記す大豆粕煎汁及ペプトーン溶液中に存在する全窒素量の比較に依りて明かなり。[table] 斯くの如く大豆粕煎汁に溶解せる全窒素の量はペプトーン溶液の其れの約二十分一の少量に過ぎず而も尚は微生物の蕃殖の良好なるは窒素以外に他の螢養分の存在するを以てなり。 製法 能く乾燥せる淡色の光澤ある大豆粕を撰ぶベし、黴菌の蕃殖せるもの、濕りたるもの、褐色のもの等は煎汁褐色を帯ぶるを以て用ゆべからず。先づ大豆粕を鐵槌又は刃物にて適當の大さに碎き次に鐵製乳鉢にて細〓し、其三十瓦を蒸溜水一立の割にてコルベンに盛り蒸氣釜にて一時間半煮沸す。煎汁は中性にして寛るく綿栓を施したる漏斗に注下して濾過し粗渣を去るべし。濾液は帯青黄白色、二%のペプトーン溶液よりも其色遙かに淡し。煮沸中に蒸發せる水の減量は之を補ふも補はざるも可なり。斯く製造したる大豆粕煎汁の濾液を以て普通の方法手續きに依り、ブイヨン、寒天、膠の各培壤を製す。唯注意すべきはカゼインは酸に依りて沈澱するを以て此煎汁にて酸性培壤を製すること能はず。又肉越幾斯は少しく酸性なるが故に先づ重炭酸曹達の飽和液を煎汁に加へて鹽基性ならしめ然る後に肉越幾斯を加ふべし、然らざれば培壤は溷濁す。
著者
小室 康雄 明日山 秀文
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.77-82, 1955
被引用文献数
4

1) 主として東京附近で採集した各種植物モザイク株から判別植物に汁液接種して, キユウリ・モザイク・バイラス (CMV) の分離を試みた。1949年から55年に至る間47科150種 (試料数573点) の植物を供試したが, その中32科68種 (試料数202点) からCMVが分離された。<br>2) 外国でCMVの分離されている植物の中, トマト, タバコ, セルリ等37種の植物では本調査でもCMVを検出することができた。この中わが国で栽培または自生が比較的普通であり, モザイク株からの分離率が50%以上を示したものはキユウリメロン, タバコ, プリムラ, セルリ, ムシトリナデシコ, ハコベ, イヌビユ, フダンソウ, ホウレンソウ, ツユクサ, トウモロコシ等である。しかし次の植物では全く或いは殆んど分離されなかつた。キク, ダリア, マリーゴールド, キキヨウ, トウガラシ, ホオズキ, インゲン, エンドウ, アイリス, スイセン, ヒヤシンス, チユーリツプ, カラー, ユリ類。<br>3) 自然のモザイク株から今回始めてCMVが分離された植物は, シユンギク, カラスウリ, マクワウリ, ヘチマ, ワスレナグサ, シナワスレナグサ, オオトウワタ, ニチニチソウ, オトメザクラ, キバナ, クリンザクラ, ミツバ, イロマツヨイ (ゴデチア), ホウセンカ, アルサイク・クロバー, ダイコン, コマツナ, ヨウシユナタネ, カラシナ, キヤベツ, ハクサイ, セキチク, カワラナデシコ, スイセンノウ, カスミソウ, ミミナグサ, スベリヒユ, センニチコウ, ハゲイトウ, ソバ, ミヨウガ, ムラサキツユクサ, ヤブミヨウガ, サトイモ等30数種である。この中本調査で分離率が50%以上であり, かつわが国で比較的普通に栽培されるものは, シユンギク, ヘチマ, マクワウリ, ミツバ, ダイコン, ソバ, サトイモ等である。<br>4) 東京附近の雑草でCMVによるモザイク株が屡々観察されたのはツユクサ, ハコベ, ミミナグサ, カラスウリ, ミヨウガ等であつた。
著者
SHEKHAWAT G.S. SRIVASTAVA D.N.
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.4-6_1, 1972
被引用文献数
4

えい花および種子の生育ステージごとに,穂にイネ条斑細菌病菌を接種したところ,子房,雄ずいおよび胚乳はいずれも褐変もしくは黒変して枯死し,えいは褐変した。成熟した種子では,えいの内側に病原菌が残存しているのを発見した。<br>幼芽は,発芽中にえいの内側で越冬した菌によって汚染される。鞘葉,不完全葉および第1葉は,それぞれ開口した気孔,半開口および正常な気孔を通して,順次感染する。第1葉の伸長によって,病原菌は地上部へと運ばれる。出穂時の種子感染は,止葉上の噴出菌泥によっておこる。