著者
山内 智史 島津 樹一 佐藤 衛 堀内 誠三 白川 隆
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, 2003-02-25
被引用文献数
1

日本国内ではレタス根腐病菌病原性グループ1,2,3の発生が確認されており,病原性グループ1のみがビオチン要求性を示すことを明らかにしてきた.そこで,病原性グループ1におけるビオチン要求性が菌の諸性質にどのような影響を与えているか検討を行った.合成培地である駒田培地から抗菌性物質を除いた培地(1/2BM)上で11〜28日間培養を継続したところ,4/800の割合でビオチン非要求性変異株が得られた.野生株と変異株の間で形態的特徴,PSA培地上での菌糸伸長に違いは認められなかったが,気中菌糸の生育と胞子形成量は変異株が上回った.さらにVCG,レタス品種のパトリオット,晩抽レッドファイヤー,コスタリカ4号に対する病原性は野性株と同じであった.これらの結果から,病原性グループ1におけるビオチン要求性は生育に関わる代謝系に影響を与えるものであるが,病原性との関連性は低いものと考えられた.
著者
阿久津 克己 大胡 佳子 奥山 哲
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.521-529, 1985-12-25

ネギさび病菌 (Puccinia allii) を接種した4品種のネギ葉部葉肉細胞で, 微細構造的に異なる成分を含むパピラが観察された。パピラ成分はさび病菌の葉肉細胞への侵入前後で異なった。侵入前もしくは侵入時のパピラでは繊維性成分だけが観察されたが, 侵入後のパピラでは繊維性成分の外に非繊維性成分が観察された。非繊維性成分は吸器頸部の周囲でよく見られ, 時々吸器本体部周辺でも観察され, その出現は吸器形成と密接な関係があると推察された。パピラ形成以前の侵入に対する葉肉細胞内の反応を電顕レベルで調べた。吸器母細胞と接した葉肉細胞で, 細胞膜の陥入, 細胞質の凝集がしばしば認められた。細胞膜の陥入で発達した paramural space (細胞壁・細胞膜間隙)で, 細胞膜あるいは小胞体と連絡した管状もしくは小胞状の器官が集積し, その付近には繊維性物質が観察された。パピラ周辺の繊維性物質と隣接した小胞状器官も観察され, パピラ形成にこれらの器官が関与することが示唆された。
著者
海道 正典 森 正之 三瀬 和之 奥野 哲郎 古澤 巌
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.95-98, 1997-04-25
参考文献数
11

形質転換植物におけるブロムモザイクウイルス(BMV)RNAの蓄積量を増加させるため, タバコ輪点ウイルスのサテライトRNA由来のリボザイム配列を利用し, 植物内で転写されたウイルスRNAの複製効率の増加を試みた. カリフラワーモザイクウイルス35SプロモーターとBMV RNAのcDNAとターミネーター配列を含むプラスミドのcDNA配列の3'末端にリボザイム配列を挿入したプラスミドを作製し, BMVの局部病斑宿主であるChenopodium amaranticolorに接種した結果, リボザイム配列を持たない対照プラスミドに比べすて, 約4倍の感染性を示した. 同様の遺伝子カセットをタバコに導入した結果, これら形質転換植物におけるBMV RNAの蓄積レベルは, リボザイム配列を持たない対照植物におけるBMV RNA蓄積の20倍であった.
著者
平松 基弘 一瀬 勇規 白石 友紀 奥 八郎 大内 成志
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.53-58, 1986-01-25
被引用文献数
7

エンドウ褐紋病菌の生産するエリシターによるピサチン生合成の誘導とサプレッサーによるその制御について, ピサチンの前駆体である ^<14>C-フェニールアラニンをエンドウ葉組織に与えてしらべた。放射能のピサチンへのとりこみは, エリシター処理4.5〜6時間後に検出可能となり, その後増加した。エリシター溶液 (500 ppm) に 50ppmのサプレッサー(F5)が共存するとピサチンの生含成が起こらなかった。エリシターで, ピサチン生合成系を活性化したエンドウ葉にF5を与えると, ピサチン生合成は低下し, 一方, その中間産物である桂皮酸への放射能のとりこみが増加した。F5はピサチン生合成系に関与する酵素, PALと cinnamate 4-hydroxylase を in vitro で阻害した。ピサチン生合成系活性化に対するF5の阻害作用は可逆的であると考えられる。
著者
金 章圭 吉野 嶺一 茂木 静夫
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.492-499, 1975-12-25

Experiments in order to know the possibility of leaf blast forecasting by investigation of the number of trapped spores and the wetting period of leaves were conducted. The number of spores which was presumed to penetrate into leaves was calculated from the following equation by investigating the number of trapped spores, wetting period of leaves, leaf area, plant height and wind velocity in the experimental field. PSN=DSN×RA×MIP×RI DSN=CSN×C×LA/GA PSN: The number of spores which was presumed to penetrate into leaves DSN: The number of spores which was presumed to deposit on leaves RA: The rate of spores which formed appressoria MIP: The maximum rate of appressoria which succeeded in penetration under the most favourable condition RI: The ratio of penetrated appressoria to MIP in each day which was calculated by using the wetting period of leaves and the mean temperature during the wetting period CSN: The number of trapped spores was corrected corresponding to wind velocity and plant height C: Correction coefficient LA: Leaf area GA: Cover glass area As a result of calculation, the largest number of spores which was presumed to penetrate into leaves per plant was 3.95 on July 26 and the next was 3.70 on June 29. On July 23 the largest number of spores trapped in the period of investigation, however, the number of spores which presumed to succeed in penetration was only 0.85. The numbers of lesions which were estimated by adding PSN in order of date almost coincided with the numbers of lesions occurred actually in the experimental field. These facts indicate that the degree of leaf blast severity can be forecasted one week before lesion appearance by investigating the number of trapped spores and the wetting period of leaves.
著者
高松 進 一谷 多喜郎
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.82-85, 1986-01-25

本邦未報告の Pythium okanoganense Lipps によるムギ褐色雪腐病の発生を確認した。病徴は P. iwayamai および P. paddicum による既知の褐色雪腐病の場合と同様であった。1982年から1984年にかけて福井県北東部地帯で調査したところ, 本菌は, 157圃場のうち10圃場で分離され, うち2圃場では最優占種であった。本菌は乾田で分離され, 湿田では分離されなかった。コムギ1品種(ナンブコムギ)とオオムギ2品種 (べんけいむぎ, ミユキオオムギ)に対して接種したところ, いずれの品種も雪腐症状を呈したが, ナンブコムギはべんけいむぎ, ミユキオオムギに比べて発病程度が低かった。P. iwayamai と P. paddicum に比べて病原力はやや弱いが, 本菌はわが国におけるムギ褐色雪腐病菌の一つと考えられた。
著者
後藤 正夫 山中 勝司
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.618-626, 1981-12-25

健全なナツミカン葉細胞間汁液(IF)中に見出される21種のアミノ酸について, かいよう病菌X. campestris pv. citriの感染に伴う濃度変化を定量的に調べ, 高濃度の主要アミノ酸について, 病菌増殖との関係を調べた。本病菌は増殖にメチオニンを必須成分として要求した。その最適濃度は0.05〜1.0μmol/mlで, IFはこれに匹敵するメチオニンを含有した。メチオニンの存在下でアスパラギン酸, アスパラギン, グルタミン酸, バリン, ロイシン, プロリン等がIF濃度で有効に増殖に利用された。特にプロリンはIFに多量に含まれ, しかも接種後数日で約10倍量に増加する点で, 重要な栄養源と考えられた。一方セリンおよびヒドロキシリジンはIF内濃度でかいよう病菌の増殖を顕著に抑制した。病原性菌株は非病原性菌株に比較して低濃度で増殖抑制を受けた。この抑制作用はIF内濃度に相当するメチオニンとプロリンの存在下で解除された。プロリンによるこの増殖抑制の解除は, アラニンの共存下で顕著になり, しかも非病原性菌株よりも病原性菌株に対して効果的に現われた。かいよう病抵抗性のキンカン葉磨砕汁は, ナツミカンに比べてプロリン濃度が低く, セリン濃度は高い数値を示したことから, 両アミノ酸の濃度比の相違が, 両カンキッのかいよう病抵抗性の差の一因をなしているものと考えられた。
著者
鈴木 文彦 堀田 光生 青木 孝之 土屋 健一 Francioni J.M. Lattanzi A.R. 本間 善久
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, 2003-02-25

ダイズ急性枯死症(SDS)の病原菌であるFusarium solani f.sp.glycinesのPCR検出をアルゼンチンにおいて検討した.プライマーには同菌のrDNA領域の配列に基づきO'Donnellらが設計したFSPF,FSPRを用いた.現地で採集したSDS病原菌と非病原性Fusarium属菌からそれぞれ抽出した全DNAをテンプレートにしてPCR反応を行った結果,前者からのみ特異的バンド(約950bp)が増幅されることを確認した.次に人工接種により感染したダイズ(播種後約4週間)を供試し,SDS病原菌の検出を試みた結果,発病した全ての個体において主根および側根から特異的なバンドが検出されたが,葉からは全く検出されなかった.-方,圃場から採取した自然発病ダイズについて根部からの検出を試みたが,常法のPCR反応では増幅産物はほとんど得られなかった.そこで上述の検出用プライマーとそれらの外側のプライマー(ITS5,NL4)とを組み合わせたNested PCR法で再検討した結果,主根上部からは58.8%の検出率で明瞭なバンドが増幅できた.