著者
岸 国平 我孫子 和雄 高梨 和雄 矢野 龍
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.288-296_2, 1973

1. 黄色網斑病はスモモのホワイトプラム,Methley, Burbank, Hungarian-prune, Red June, Beauty, Santa Rosa,大石早生などの品種およびサクラの染井吉野,孫普賢,嵐山,類嵐,関山などの品種に自然発生が認められた。<br>2. 本病は接木によってスモモおよびサクラから,モモ,ウメ,アンズ,スモモ,サクラ,オウトウなどに伝染した。<br>3. 本病はスモモおよびサクラではyellow vein net, yellow line pattern, chlorotic ring spot, chlorotic spotなどの症状を示し,モモ,アンズ,オウトウなどでは主としてline patternを,ウメではyellow vein netおよびline patternを生ずるとともに著しい萎縮症状を示した。<br>4. 本病罹病樹からは1種の汁液伝染性ウイルスが分離されたが,本ウイルスはキュウリの接種葉にlocal lesionを生ずるのみでGatjang,ペチュニア,<i>N. tabacum, N. megalosiphon, N. glutinosa, C. amaranticolor, C. quinoa</i>などFulton, Kirkpatrickらがplum line pattern virusの寄主として報告した植物に感染しなかった。<br>5. 本病およびリンゴモザイク病はともにクサボケに伝染し,きわめて類似した症状を示したが,本病はリンゴに感染せず,またリンゴモザイク病はモモに発病しなかった。
著者
笹谷 孝英 野津 祐三 小金澤 碩城
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.24-33, 1998-02-25
参考文献数
38
被引用文献数
3

日本の異なる地域および植物から分離したインゲンマメ黄斑モザイクウイルス(BYMV)28分離株について, 判別植物の反応と血清反応を比較した。BYMVはインゲン15品種の反応で4つのPathotypeに分けることができた。Pathotype Iはインゲン品種の本金時のみに全身感染を示し, 他の品種には局部感染であった。Pathotype IIは本金時, ケンタッキーワンダーおよび他4品種に全身感染を示し, Pathotype IIIは本金時, ケンタッキーワンダー, マスターピースおよび他4品種に全身感染を示し, Pathotype IVは今回用いた15品種すべてに全身感染を示した。Pathotype II に属するBYMVはソラマメにおいて他のPathotypeに属すものより高い種子伝染性を示した。BYMVあるいはクローバ葉脈黄化ウイルス(ClYVV)に対する16種のモノクローナル抗体(MAb)を用いたTAS-ELISAで, BYMV28分離株には血清学的差異が観察され, 病原性とある程度一致したが, ポリクローナル抗体を用いたDAS-ELISAでは, 分離株間での顕著な差異は観察されなかった。MAb-1F3はPathotype I, II, IIIとClYVVの1株と反応した。MAb-2C4はPathotype IIのみと反応し, MAb-5F2は今回用いたBYMVとClYVVすべての株と反応した。MAb-2B4, -2C5, -3F9, -3F11, -4G8および-4H9はPathotype IIとIIIのすべてと, Pathotype IとIVの一部の株と反応した。MAb-1A2と-2H8はPathotype IIIとClYVV2分離株と強く反応した。以上より, 日本のBYMVは病原性および血清学的に変異に富んでおり, 4つのPathotypeに分かれることが明らかとなった。
著者
岸 國平 古川 聡子 小林 享夫 白石 俊昌 酒井 宏 田中 一嘉
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.43-49, 1998-02-25
被引用文献数
1

堀による命名以後, アナモルフの記載等に疑問を残したまま放置されてきたネギ黒渋病について研究し, 以下のような事実を明らかにした。(1) 群馬県下仁田町で, 多年にわたり自家採種と連作が繰り返されてきた同町特産の下仁田ネギに, 本病が毎年激しく発生することが認められた。(2) 本病の発生は下仁田町を含む関東北部,東北,北海道地域で多く認められ, 関東南部および関東以西の地域ではまれにしか認められなかった。(3) 培養菌叢片およびほ場病斑の成熟子のう胞子を用いて行った接種実験において, いずれも自然発病と同様に病徴を再現した。(4) 観察されたすべての自然発病および人工接種病斑においてテレオモルフは形成されたが, アナモルフは全く認められなかった。(5) 本病菌の培地上の生育適温は約20℃, 子のうの成熟適温は20〜25℃, 子のう胞子の発芽管伸長の適温は20〜25℃であり, 生育とpHの関係はpH4〜9で生育し, 6〜9で最も良かった。
著者
三好 孝典 橘 泰宣
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.729-734, 1994-12-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
16
被引用文献数
2

A selective medium for isolation of Pseudomonas syringae (SPS), the causal agent of bacterial blossom blight of Kiwifruit was developed. The composition of the medium was as follows: NH4H2PO4 1.0g, KCl 0.2g, MgSO4⋅7H2O 0.2g, adonitol 2.0g, phenol red 20mg, methyl violet 1mg, pheneticillin potassium 50mg, cetrimide 10mg, agar 15g, pH 6.8 per 1.000ml of distilled water. Thirty two P. syringae strains pathogenic to Kiwifruit were grown on the medium and 31 strains showed convex colonies with entire margin. Color of the colonies was purple at the center and opalescent white at margin. One strain formed small opalescent white colonies. Colony forming efficiency of the medium was less than those of King's medium B. Twenty one isolates of Pseudomonas from Kiwifruit except P. syringae and 21 strains of phytopathogenic bacteria belonging to 5 genera were grown on the medium and they didn't grow with few exceptions which showed distinctive colonies from that of P. syringae. SPS was used for isolation of P. syringae from field-grown Kiwifruit. One hundred candidates were isolated and tentative characterization showed that all of them were identical with the P. syringae. Those results indicated that the possible application of the medium was useful for ecological studies of the bacterium in fields.
著者
古屋 典子 河野 伸二 夏秋 啓子
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理學會報 = Annals of the Phytopathological Society of Japan (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.108-110, 2012-05-25
参考文献数
6
被引用文献数
2

バンチートップ病は,中南米を除く世界各地のバナナ栽培国に広がり,日本の沖縄県では,野原(1968)によって初めて報告された。本病の病原ウイルスは,Babuvirus属バナナバンチートップウイルス(Banana bunchy top virus;BBTV)で,本ウイルスに感染したバナナは,株が著しくわい化して葉は狭く直立し,果実は結実不良となるため,経済的被害が深刻である。そこで,我々は,沖縄県で栽培されている食用バナナおよび繊維用バナナであるイトバショウ(M。balbisiana var。liukiuensis,BBゲノム)において,BBTVに対する感受性を評価したところイトバショウは,BBTVに対して免疫性を有する可能性が認められたので,その結果を報告する。
著者
尹 泰圭 平井 篤造
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.109-113, 1968
被引用文献数
2

1. トマト苗にTMV単独あるいはTMVとPVXの混合接種を行ない,接種前に2時間苗の根部を浸漬し,接種後地上部に対する散布を毎日連続6回行なつた。またバンデングによる薬液の茎への施用も併用した。根部処理と地上部散布の併用では,後者のみの場合に比較して治療効果が顕著であつた。しかしバンデングの効果は少なかつた。以上の効果判定には,発病率,潜伏期間,ならびに根部のウイルス量の化学定量を実施した。発病率と根部のウイルス量との間に相関がみられた。<BR>2. 薬害軽減のためMn<SUP>2+</SUP>を使用した。鉢植のトマトの地上部成長と根の発育の程度を観察し,あるいは薬液にタバコ葉片を浮遊してその変色程度を比較した。Mn<SUP>2+</SUP>は抗ウイルスの薬害をかなり軽減したが, TMVに対する阻害度を低下させることはなかつた。
著者
小原 直美 光原 一朗 瀬尾 茂美 大橋 祐子 長谷川 守文 松浦 雄介
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.94-101, 2007 (Released:2007-07-20)
参考文献数
22
被引用文献数
5 9

アグリボEX(株ビスタ製)は酵母抽出液を原料とする植物活力剤であり,発根促進,徒長抑制などとともに,病害抑制効果もみられる.病害抑制機構としては,この酵母抽出液(アグリボEX)自体に抗菌作用がないことから,本処理が植物が本来有する抵抗性を誘起して効果を発揮するものと考えられた.この酵母抽出液にタバコ葉片を浸漬処理すると,塩基性PR-1, -2および-6遺伝子の発現が誘導された.これら塩基性PR遺伝子群はエチレンで誘導されることが知られているので,エチレン発生剤であるエテホン処理やエチレン作用阻害剤であるチオ硫酸銀錯塩(STS)を処理し,タバコPR-1, -2, -3および-5タンパク質群の増減を調べた.その結果,エテホン処理で誘導される分子種がこの酵母抽出液処理で誘導され,その誘導はSTS処理により阻害されることが分かった.また,この酵母抽出液自身からエチレンが発生すること, およびこの処理により植物からのエチレン発生が促進されることが認められた.これらの結果から,この酵母抽出液はエチレンシグナル伝達経路を介して植物の病害抵抗性誘導に寄与するものと考えられる.
著者
佐々木 大介 芳賀 一 松田 健太郎 三澤 知央
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.158-160, 2018 (Released:2018-09-06)
参考文献数
5
被引用文献数
1

Damping-off of kale (Brassica oleracea L., Acephala group) was found in Iwata, Shizuoka, Japan in 2016. Isolates obtained from basal stems with typical symptoms were identified as Rhizoctonia solani AG-4 HG-I. Original symptoms were reproduced on healthy kale seedlings after inoculation with the isolates, and inoculated fungi were reisolated from the diseased plants. This is the first report of kale damping-off caused by R. solani in Japan; therefore, we refer to this new disease as “damping-off of kale”.
著者
赤石 行雄 關口 昭良
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3-4, pp.129-132, 1953-07-31 (Released:2009-04-21)
参考文献数
12

1. 苹果紫紋羽病は青森縣に於て數十年前より發生して大害を見て居たが,筆者等は本病原菌の純粋分離中本菌に對し拮抗性を有する多數の微生物を發見分離した。2. 分離した微生物について種々調査した結果,拮抗性の強力なるもの假稱A.B.C.D.E.の5型を選出し其の性質について種々調査した。3. 拮抗作用の強度を調査せるに混合培養法に於いてA.E.D.C.B.,培養基混合法に於いてE.A.D. C.B.,培養基點状移植法に於いてE.D.B.C.A.,塗布培養法ではE.C.D.A.B.の順位であつた。4. 又各種培養基について其の生育状況を調査せるに大豆粕培養基は生育最良なるのみならず微生物増量材料としても好適である。又培養液稀釋量に拮抗性との關係を調査せるに5萬倍まで本菌に對し極めて強力なる拮抗性を認めることが出來た。
著者
飯塚 典男 飯田 格
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.46-53, 1965-01-30
被引用文献数
1

1958年,盛岡で罹病ラジノクローバから1つのウイルスを分離した。このウイルスは汁液接種で容易に伝搬され,レンゲ,ナタマメ,クロタラリヤ,スイートピー,インゲン,エンドウ,アルサイククローバ,クリムソンクローバ,レッドクローバ,サブクローバ,ソラマメ,コモンベッチ,ヘァリーベッチ,ササゲなどを全身的に侵した。フジマメ,アルファルファ,キバナルーピン,アズキ,ヤエナリ,スイカ,キウリ,マルバマアサガオ,キンギョソウ,トマト,ダチュラ,フィザーリス,ペチュニア,Nicotiana rutica, N.sylvestris などの接種葉からは本ウイルスが回収できた。これらのうち,ヤエナリおよびスイカの接種葉には常に壊死斑点を生じた。また,タバコ,グルチノーザ,ビート,ホーレンソウ,センニチコウおよび Chenopodium amaranticola には感染しなかった。本ウイルスは汁液のほか低率ながらマメダオシで伝搬された。しかしマメヒゲナガアブラムシ,マメアブラムシおよびモモアカアブラムシでは伝搬されなかった。耐熱性,70〜75℃10分,耐希釈性は10万〜100万倍であり,耐保存性は25℃で60〜90日,室温(18〜20℃)では91日以上であった。Dip法による電子顕微鏡観察で長さ約450mμ前後のひも状粒子を認めた。罹病植物の表皮細胞内には特異な隅体(Corner inclusion body)が観察され,罹病エンドウの超薄切片の観察によって,細胞内にウイルスの集団らしきものを認めた。本ウイルスはカナダのWhite clover mosaic virus 抗血清との間に明らかな沈降反応を示した。寄生範囲,病微,伝搬方法,物理的性質,ウイルス粒子の形態および血清反応などから考察して,本ウイルスは,アメリカ,ニュージーランドおよびヨーロッパ各地で報告されたWhite clover mosaic virus のグループに属すると同定した。
著者
本間 善久 鈴井 孝仁
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.643-652, 1989-12-25
被引用文献数
6

Pseudomonas cepacia RB425およびRB3292は, 抗生物質ピロールニトリンおよびシューダン(HMQ, NMQ)を生産し, ダイコン種子にコーティングすることによって, Rhizoctonia solaniによる苗立枯病を抑制した。Cymbidium spp.の褐色斑点細菌病菌P.cepacia A2およびA4は, シューダンは生産しないがピロールニトリンを生産し, 発病抑制効果が認められた。P.cepacia ATCC No.25416は, いずれの抗生物質も生産せず, 抑制効果がなかった。ニトロソグアニジンで誘導したRB425の突然変異株8菌株は抗生物質生産性に変異が認められ, 培地上の3種の抗生物質生産性と, R.solaniの幼苗への着生率抑制および発病抑制能との間に高い相関関係が認められた。種子当り10^7cfuのRB425の生菌または, 1.Oμgの純化したピロールニトリンを種子にコーティングすることによって, およそ50%の発病抑制率が得られた。シューダンを種子当り40μgコーティングした場合には, ほとんど抑制効果がなかった。RB425のリファンピシンおよびナリジキシ酸耐性菌株を用いて播種後の菌数を測定したところ, 種子当り9.4×10^6, 4.7×10^5および9.4×10^4cfuコーティングした場合, 7日目に幼根1g当り4.6×10^5, 1.8×10^4および5.3×10^3cfuであった。種子コーティングしたRB425は, 播種後, 幼根表皮細胞の縫合部に沿って生育し, 根圏で増殖するのがSEMによって観察された。これらの結果から, P.cepacia RB425はダイコン幼苗根圏で増殖でき, 種子コーティングによるダイコン苗立枯病の抑制効果にピロールニトリンが重要な役割を有すると考えられた。