著者
馬場 菊太郎
出版者
The Malacological Society of Japan
雑誌
貝類学雑誌 (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.141-149, 1989-10-31 (Released:2018-01-31)

The chief specific name used here is Ceratosoma trilobatum (J. E. Gray, 1827) (s. l.) which is said to comprise C. cornigerum (Adams & Reeve in Adams, 1850) (s. s.) as a junior synonym. In Japan there occur three sorts of color variation among the individual specimens of C. trilobatum (in the meaning of C. cornigerum s. s.). C. bicolor Baba, 1949 is left for further study.
著者
足立 尚子 和田 恵次
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.115-120, 1998-07-31
被引用文献数
1

和歌山県那智勝浦ゆかし潟の潮間帯砂泥地に同所的に生息するウミニナとホソウミニナについて, 潮位と植生に対する分布を調査した。ウミニナは, 高潮位において高密度で出現したのに対し, ホソウミニナは, 低潮線付近において高密度で出現した。塩生植物の出現する場所において, 2種が多く出現した植物の種は異なっていた。室内実験では, ホソウミニナは, ウミニナよりも水のある場所を好む傾向を示した。これは, 野外での2種の潮位に関する分布の違いの結果と一致した。
著者
板垣 博
出版者
The Malacological Society of Japan
雑誌
貝類学雑誌 (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.169-_180-3_, 1965-12-30 (Released:2018-01-31)

マメタニシの殻形は雌雄によって差はないが雄のものがやや細長である.歯舌の1列は中歯(1コ), 側歯(2コ), 内縁歯(2コ), 外縁歯(2コ)からなり, それぞれの歯の小鉤には個体差がある.胃は2部からなり, 前部の方が広くて中央に胃楯があり, 後部には晶体と晶体嚢がある.陰茎には鞭状体があるが, その作用は不明である.陰茎基部の皮下には長い盲管があり, その開口は鞭状体の先端にある.この盲管内に白色粘液を含み, その中に円形と洋なし状の細胞がある.陰門は産卵門とは遠く離れ, 陰門は外套腔の奥に, 産卵門は肛門の少し後方に開く.中枢神経系は9神経節, 足神経系は2神経節からなる.血管は発達が悪いが, 血とうはよく発達している.排出孔は直接に外套腔の奥に開き, 尿管はない.
著者
加瀬 友喜 金城 浩之
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.199-205, 1996-09-30
被引用文献数
1

筆者の一人加瀬は速水(神奈川大学)とともに, 熟練したスキューバダイバーの協力を得て, 南西諸島およびその近海の海底洞窟内の貝類群の調査を行ってきた。これまでの調査で, 薄明あるいは暗黒の海底洞窟内から"生きた化石"種を含む進化生態学的に興味ある貝類群が棲息していることを明かにしてきた(Hayami and Kase, 1992, 1993 ; Kase and Hayami, 1992)。本報告では, 南西諸島の伊江島と下地島の通称"小洞窟"および"中ノ島ホール"とよばれる海底洞窟, またフィリピンのバリカサ島の海底洞窟から得られたムシロガイ科の1種について検討した。この種はフィリピン・ネグロス島のドゥマゲッティからA. Adams (1852)により記載報告されたNassa cinnamomeaに同定される。この種は不完全な唯一の標本で記載されたためか, その後はNassarius (Zeuxis) comptus (A. Adams, 1852)の新参シノニムと見なされていた。海底洞窟から新たに得られた標本を詳細に検討した結果, Nassarius (Zeuxis) comptusとは細長い殻形態を持つこと, 初期の螺層に細かな縦肋を持つこと, 縦張肋様の肥厚した外唇を持つこと, 縫合下に一貫して一本の螺溝を持つこと, 成熟した個体では殻口付近の体層上部に数本の螺脈を持つこと, 殻色は褐色ないしは黒褐色で一本の不明瞭な灰褐色の色帯を持つ点で区別され, 独立の種であると判断される。この種は殻形態の特徴からZeuxis亜属に帰属されるので, Nassarius (Zeuxis) cinnamomeus (A. Adams)となる。この種に対し, 新称カクレヨフバイを提唱した。カクレヨフバイは海底洞窟の入り口付近から暗黒の奥部に生息する。洞窟外の付近の浅海域では未だその生息が確認されていない。しかし, フィリピンのバリカサ島では150 m以深の海底に設置された刺網によって採取されているようで, 海底洞窟以外にも生息している可能性がある。
著者
細見 彬文
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.157-171, 1984-07-15

神戸港に近い2カ所の海岸岸壁からムラサキイガイの個体群標本をその定着直後から個体群が消滅するまで連続採集した。そして, それらの標本の個体数を求め, 全ての個体について年齢査定を行い, コホートごとに湿重量を求めた。それにより次のことがわかった。コンクリート壁面が潮間帯に建設されると最初の年に主年齢群が定着して同年齢組成の個体群が作られる。その年以後そこへ移入してくる新規定着年齢群は最初の年に定着したコホートの定着数に比べ個体数が1桁ないし2桁も少ない。移入年齢群の数は定着期には成貝の個体数又は全体重量に比例する。それは移入年齢群が成貝の足糸のみに付着し, コンクリート壁面には直接定着しないためである。一定した移入年齢群は急速にまびかれる。それは成貝との競争の他にイソガニによる捕食の効果が大きいためと考えられる。本種個体群は次世代を維持することなく一代限りで消滅する。この種はこのような世代の維持が同じ場所でできないことから, たえず新しい住み場所をさがし求めなければならない。
著者
奥谷 喬司 大須賀 馨
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.67-69, 1986-03-31

三宅島付近でアミダコOcythoe tuberculataが, オオサルパTethys vaginaの体腔内に入っている生態が観察された。標本の採集が行われなかったので, 性別は不明であるが, これまでサルパの体内で発見された2例(Jatta 1986, Hardwich 1970)はいずれも雄と報告されている。今回の観察は1984年6月1日三宅島沖で著者の一人(大須賀)が潜水中に行ったもので, オオサルパの色彩, 内臓器官が共に明瞭でない所から, 生体に入るのではなく単に外鞘を利用しているのかもしれない。
著者
竹之内 孝一
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.110-122, 1985-06-10

An account was given of the variations of shell color and the patterns of sculpture of an intertidal common gastropod, Monodonta labio (Linne) from the Japanese Islands. Four color forms were recognized. Darkgreen shell color with red or white dots (Form A) and yellow shell color with dark-red dots (Form B) were common, while light green shell color with red dots (Form C) and yellow shell color with green or red dots (Form D) were rare. Forms A, C and D had smaller number of granules on body whorl and smaller numbers of cords, as compared with Form B of the same size. These differences between Forms A and B were significant at the co-occurring areas, except in Amami Ohshima. They occurred sympatrically in southern coast of Honshu, Shikoku, Kyushu, Okinawa islands and in Hong Kong, southern coast of China. But the difference in habitat was observed between the two forms : Form A occurred mainly on the wave-exposed shore, while Form B on the sheltered shore or the reef-barriered shore. Monodonta labio has been considered, by some workers, to consist of two subspecies, Monodonta labio labio and Monodonta labio confusa. Considering shell characters of these forms, Forms A, C, D and Form B were referred to M. labio confusa and M. labio labio, respectively. But from this study, it is evident that these forms are neither allopatric subspecies nor two extreme variations.
著者
奥谷 喬司
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.57-59, 1994-03-31

テレビ東京「ときめきマリンII」のスタッフのご好意により, 沖縄県慶良間諸島に生息するウコンハネガイCtenoides ales (Finley, 1927)の発光をビデオテープを通じて観察することができた。発光は外套膜縁に沿って走る青白く光る筋が素早く明滅するものである。左右の外套膜縁の閃光状の発光はかならずしも同調しないので, しばしば交叉して稲妻のように見えることもある。従来, 二枚貝綱における発光はツクエガイ科のツクエガイGastrochaena cuneiformisとニオガイ科のヒカリカモメガイPholas dactylusとヒカリニオガイBarnea candidaにおける細胞外発光(発光液の分泌)しか知られていなかった。本種における発光は組織学的研究は行われていないが, 光の強さや筋状の発光部位の移動のす早い速度などからみて, 細胞内自家発光と推察される。このような形式の発光と, それが, ミノガイ科において見られるという事実はおそらく世界最初の発見と思われる。
著者
サルセドーバルガス マリオ・アルハンドロ 奥谷 喬司
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.119-127, 1994-08-31
被引用文献数
1

The two genera with two subgenera each are recognized for the squid family Mastigoteuthidae. The genus Mastigoteuthis contains two subgenera, Mastigoteuthis s. str. and Echinoteuthis. The genus Idioteuthis is here resurected, and it is divisible into two subgenera, Idioteuthis s. str. and Magnoteuthis nov.
著者
瀬川 進 井塚 隆 玉城 世雄 奥谷 喬司
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.101-108, 1993-03-31

1992年5月18日に, 沖縄県石垣島の米原沖約1.5kmのサンゴ礁で囲まれた水深約23mのくぼ地に発達した直径約20mの枝状の群体を形成するミドリイシ類を主体とするサンゴ礁において, アオリイカの産卵群を観察する機会が得られた。産卵群は少なくとも, 最後の観察を行った7月2日まで継続的に観察され, その間の産卵群の個体数は目視によると, 最低約20個体から最高100個体以上であった。産卵群の詳細な観察は1992年5月25日および5月28日にスキューバ潜水により行った。数個体を除いたほとんどのアオリイカは雌雄の対をなしており, 雌雄は同一方向を向いて上下にならんで遊泳していた。卵嚢は死んだ枝状のサンゴの上に発育した生きているサンゴの隙間を通して, 死んだサンゴの枝に産み付けられていた。卵嚢は従来報告されているアオリイカの卵嚢のように, 数十の卵嚢が卵嚢の基部から房状に束ねられて産み付けられるのではなく, 個々の卵嚢が比較的ばらばらにサンゴに付着しており, すでに産み付けられた卵嚢の中央部に付着して産み付けられた卵嚢も観察された。卵嚢中には5∿13個(平均9.2個, 標準偏差1.2個)の卵が1列に並んでいた。アオリイカでは1卵嚢中に10個以上の卵を保有する卵嚢の報告は今までに知られていない。産卵を行っている雌雄に他のアオリイカが近付きすぎた場合に, 番(つがい)を成している雄が近付きすぎた個体に対して独特の体色変化を示す例が観察された。他の個体が番を成している雄の上から近付いた場合は, 雄は雌に近い頭部および腕の部分を褐色にし, 相手に近い外套部を白く浮き立たせた。また他の雄が横から近付きすぎた場合には, 雄は雌に近いほうの体半分を褐色にし, 相手の雄の側面半分を白色に, 背中線を境に左右に異なる体色を示した。このような体色変化はアオリイカでは初めての観察である。従来沖縄に生息するアオリイカは, 漁業者によって「アカイカ」, 「シロイカ」, 「クアイカ」などと異なった名前で呼ばれていながら, 形態的には区別が付けられていなかった。しかし, 今回の観察により産卵生態, 1卵嚢中の卵数の違い等から, 明らかになんらかの形で隔離された複数の異なった個体群の存在が示唆される。
著者
奥谷 喬司 中村 征夫 関 勝則
出版者
The Malacological Society of Japan
雑誌
貝類学雑誌 (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.237-239, 1995-09-30 (Released:2018-01-31)
参考文献数
4

著者の一人関は1991年夏, また, 中村は1995年5月, 根室海峡羅臼沖で卵塊を腕に抱えて遊泳しているイカを撮影した。これまでタコ類の卵保護や保育は知られていたが, イカ類の卵保育はいまだかって一例の報告もない。今回標本を直接研究することはできなかったが, 開眼類イカの卵保育行動の世界最初の発見となるので速報する。
著者
堀 成夫 福田 宏
出版者
The Malacological Society of Japan
雑誌
貝類学雑誌 (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.175-190, 1999-12-31 (Released:2018-01-31)
参考文献数
21

During detailed examination of unidentified specimens of the Pyramidellidae in the Yamaguchi Museum and the Hagi City Museum, nine hitherto undescribed species were recognized, and here described as new : Ondina elachisinoides, Chrysallida stupa, Trabecula truncatelliformis, Egilina kotoeae, Eulimella toshikazui, Turbonilla kuraenohamana, T. gloriamishimana, Pyrgiscus yoshikoae and Yoshishigea choshuana. A new genus, Yoshishigea is also elected.