著者
越智 秀樹 片山 憲史 池内 隆治 行待 寿紀 河窪 紳介 堀口 正剛 三船 哲郎 伴 眞二郎
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.247-253, 1990-09-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
23

変形性膝関節症の初期の患者 (20名, 平均年令61歳) に対して鍼治療, Silver Spike Point (以下SSPと略す) 療法および運動療法を併用した治療を行った。効果判定はわれわれが考案した変形性膝関節症評価表のスコアと, 変形性膝関節症の主徴の1つである大腿四頭筋の萎縮に対する客観的効果の指標として膝伸展筋力の測定を用いた。その結果初診時の平均スコアは23.4点であったが最終治療 (平均治療回数6回, 平均治療期間42日) の後では8.2点とスコアが減少し症状が改善した。また初診時の膝伸展筋力に比較し, 最終治療時では平均38.5%の筋力の増強がみられた。
著者
山下 仁 光藤 英彦
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.359-365, 1991-12-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
3

当研究所のケアシステムの役割と課題について, カルテ群の調査とケーススタディーを通して検討した。カルテ群の調査から, 自宅施灸指導に対する調査対象患者のコンプライアンスは全般的には良好であるが, 女性の背部施灸のコンプライアンスは低いことがわかった。またケーススタディーから, いわゆる現代の専門医療と, 当研究所の東洋医学的ケアとの, identity の違いを明確にした。検討の結果, 灸療を活用した東洋医学的ケアシステムは, 今日の医療の中で, 補完的役割を担えることが示唆された。また, 灸療の効果的な活用を妨げる因子の一部について, より具体的な探索を行うことが出来た。
著者
山下 仁 光藤 英彦
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.300-307, 1992-12-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
4
被引用文献数
1

灸療をセルフケアという形態で指導することは, 身体レベルのみならず生活レベルにおいても応用価値が高いと筆者らは考えている。“セルフケアとしての灸療”を推進する上での問題点を明らかにするため, 愛媛県南部の農業地域の住民49名を対象に自宅施灸指導と質問紙調査を1年間行い, (1) 家庭内ケア力の未活性, (2) 施灸行動のもつ時間的拘束性, (3) 灸の熱刺激に対する不耐性, (4) 灸痕に関する皮膚科的障害, (5) 灸療の適応または応用技術の限界, (6) 灸療の推進活動に対する社会的抑制力, という6つの問題点を抽出した。なお, これらの問題点にはそれぞれ対策を検討する余地があった。
著者
山下 仁 光藤 英彦
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.358-364, 1990-12-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
5

日常生活の諸負荷に抗して人が支障なく生活を営む能力を“耐久性”と呼びたい。健康と病気とを異なった次元の価値をもつ概念として位置づけるとき,“耐久性”は健康の次元における健康レベルの具体的指標になると考えられる。病人の“耐久性の低下”を示す諸病症に注目して case study を行ったところ, 慢性健康障害をもつ病人に対して筆者等の行っている灸療が, 積極的なケアとして病人の健康レベルの向上に関与していることが示唆された。東洋医学的伝承医術を運用するにあたっては, 健康への指向性をももつことが可能である。
著者
本田 泰弘 井上 博雅 義田 博 藤原 秀雄 古谷 生 小坂 二度見 杉原 正晟
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.57-61, 1985-06-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
7

最近3年間の鍼灸学校卒業者の進路と実態についてアンケートを行なった。回収数288で, 回収率は28.8%であった。結果, 鍼灸学校卒業者の進路は, 鍼灸院開業41%, 鍼灸院関係勤務27%, 病院関係勤務25%であった。現在開業している者と将来開業を希望している者とを合わせると, 76%であり, 卒業生の多くは開業を目的としており治療費, 患者数, 年収などについてはそれぞれの進路により差があることが判明した。
著者
奥村 裕一
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.292-298, 1997-12-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
13

伝統医学としての日本鍼灸を位置づけ、さらには現代日本における多様な病に対処していく上で古流派の研究は欠かせないものである。室町期以後、徐々に日本的な展開がなされ、日本の風土や民族性にあわせたものが開花していくこととなった。その中でも日本が世界にアピールできるものとして夢分流の腹診や腹部打鍼術などがある。そこで今回、腹診および腹部刺鍼を中心に各種古流派の見解を調査するとともに、多くのものに共通して重視される観点をさぐった。その結果、腹診の診断的意義として人体における上下左右の気血の偏在を察知するに適したものであり、腹部刺鍼においても膀を中心として上下左右の調和をはかるよう工夫が必要であることが明らかとなった。
著者
小川 卓良 形井 秀一 篠原 昭二
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.44-55, 2005-02-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
3

第53回大会シンポジウム「局所治療と遠隔部治療-3」及び、昨年の調査を補完する目的で2回目のアンケート調査を行った。前回は、学会在籍12年以上の会員から無作為で選出したが、今回は我々が見て、学派やグループのリーダーと思わしき鍼灸師を対象とした。回答は全て記述式であった。87名発送し41名から回答があった。調査の概要は、治療方式 (現代派、伝統鍼灸派、中医学派、折衷派など) 、局所及び遠隔部治療が効果的な場合と効果的でない場合、局所及び遠隔部治療で効果がある病症とその選穴法則や刺鍼深度、ひびき、そして、両治療に対する意見等で、単純集計と一部クロス集計を試みた。今回のアンケートでは、対象がリーダー格であることと、前回までのシンポジウムとアンケート結果を踏まえた意見ということもあり、意見や考えが前回に比較してかなり集約されてきており、本シンポジウムの目的達成に一歩近づいたと思われる。
著者
久光 正
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.378-391, 2011 (Released:2012-02-06)
参考文献数
16

血液流動性 (BF) と東洋医学において重要な証であるオ血との関連およびストレス負荷、 鍼刺激、 漢方薬投与、 交感神経作動薬投与の影響および作用メカニズムについて検討した。 その概要について述べる。 BFは血液流動性測定装置 (MC-FAN) あるいは血小板凝集能測定装置(PA20)を用いて測定した。 また、 一部の実験では血中ATPレベル、 酸化ストレス度、 抗酸化力についても測定した。 昭和大学病院漢方外来を受診したオ血証患者は非オ血証患者より有意にBFが低く、 1ヶ月の駆オ血薬投与によりBFが有意に改善した。 ラットに各種のストレスを負荷するとBFは有意に低下した。 また、 血小板凝集能の亢進、 血中ATPレベルの増加、 酸化ストレス度の増大、 抗酸化力の低下が生じた。 電気鍼刺激を毎秒1回、 60分間ラットの足三里、 合谷、 三陰交に加えるとBFは有意に亢進したが、 腎兪、 内関への刺激では有意差は認めなかった。 また、 足三里への電気鍼刺激はストレス負荷によるBFおよびその他の変化を有意に減少させた。 ナロキソン投与は足三里への電気鍼刺激によるBF亢進に有意な影響を示さなかった。 また、 α受容体作動薬およびβ受容体遮断薬投与ではBFが有意に低下し、 α受容体遮断薬およびβ受容体作動薬投与ではBFが亢進した。 オ血には血液流動性の変化が関わり、 また、 BFの変化に交感神経系の活動および血中ATPレベルの変化が影響している可能性が示唆される。 電気鍼刺激によるBF亢進作用にはオピオイド系の関与は少ないと考えられる。 また、 電気鍼刺激がストレス負荷によるBF低下やその他の血液変化に対し拮抗作用を示すことから、 電気鍼刺激にはストレスによる影響を抑制する作用がある可能性が示唆される。
著者
織田 隆三
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.283-291, 1999-06-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
14
被引用文献数
1

わが国のモグサ主産地は江戸初期には岐阜・滋賀の二県だったが現在は新潟県である。この主産地変遷の過程や理由を明らかにしたいと考えこの研究を行った。江戸期については前回報告したので今回は明治以降 (1868~1998年) の分を報告する。1870年代には富山県が国内最大の産地だった。福井・新潟・石川三県がこれに続いていたが1930年前後には新潟県が日本一になっていたようである。現在高級モグサはほぼ百%新潟県で造られている。富山、滋賀両県でも造るが極めてわずかである。昭和の一時期長野・愛媛・福島・群馬県や北海道でも製造されたが今は途絶えている。新潟県が主産地になった理由は (1) 原料用ヨモギが豊富且つ良質であること、 (2) モグサの製造は冬季に行うが新潟では冬に人手が得やすく人件費が安いことの二点である。
著者
織田 隆三
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.371-380, 1998-12-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

江戸時代のモグサ主産地は近江 (滋賀県) と言われていたが現在の主産地は新潟県 (越後) である。この主産地変遷の過程や理由を明らかにしたいと考えこの研究を行った。図書館・県市町村史編纂室・地方史研究者・モグサ業界関係者等を歴訪し、地方史・古文書の閲覧、伝承の聞き取り等を行い、また書面によって照会した。その結果江戸の初期は近江と共に美濃 (岐阜県) が主産地だったこと、ついで北陸地方 (福井・富山・石川県) に伝わり、天保の頃 (1830年代頃) には越後 (新潟県) でも生産されていたことが明らかになった。また伊予 (愛媛県) や筑紫 (福岡県) でも造られていたことを知った。主産地が北陸地方へ移動した主な理由は、1.原草のヨモギ類が豊富なこと、2.モグサ製造は冬に行うが北陸の冬は雪のため仕事が少なく人手が得やすいことの二つである。
著者
織田 隆三
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.85-90, 1996-06-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
6

搗き臼や水車は現在のモグサ工場ではみられないが, 昭和時代まで各地で使用されていた。これら消滅して行く機械装置を記録に残しておきたいと考え, 昔の工場関係者から話を聞き, 現地を訪れ, 文献を調べた。木島モグサ工場の水車は直径3.6mだったが亀屋佐京商店の水車は直径約5mあり30馬力と称され, モグサ生産量は日本一と言われていた。木島の搗き臼はケヤキで造られ, 臼は直径48cm深さ23cm, 杵は長さ280cmの柱状で一辺は11.5cmだった。関原モグサ工場は天保の頃 (1840年前後) の創業と伝えられているが, 昭和期における機械設備は木島モグサ工場と大体同じであった。
著者
織田 隆三
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.263-268, 1995-03-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
6

モグサの製造には原料のヨモギ又はオオヨモギを7~8月に採集し, 直ちに葉を取り, 3~4日間直射日光で乾燥する。工場では更に80°~170°の乾燥室で火力乾燥を行い, 含水率を1~2%以下とする。乾燥した葉は荒砕きした後, 石臼にかけるが, 荒砕き機は農業用脱穀機に似た高速回転装置が主に用いられる。原草の採集からモグサの出来上るまでの全工程をまとめ, 一覧表として示した。採集した生の葉に対するモグサの収得率は最高級品で0.5~0.6%, 最下級品では3~8%であって, この中間に各等級品が分布する。(乾燥葉に対しては最高級品3.0~3.5%, 最下級品では約20~50%となる。)