著者
松枝 秀二
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.2-12, 2008 (Released:2008-05-27)
参考文献数
8

スポーツ栄養を考えるには、 栄養士、 管理栄養士の存在をスポーツを取り巻く関係者に知ってもらわなければなりません。 そこで、 管理栄養士とはいかなるものかを紹介しました。 さて、 栄養素の中でスポーツ選手に必要なものは何でしょうか?私は炭水化物だと思っています。 たんぱく質が最重要ではありません。 最も少なくてよいのは脂質です。 そのように考えると、 従来の日本食でのエネルギー比率に近いものが、 アスリートには適切であると考えられます。 次に、 水分摂取も熱中症予防には重要です。 発汗量を推定するには練習前後の体重と飲水量を把握するとわかります。 それを基準にして水分摂取を考えます。 次に、 女性アスリートには特有の問題があるので、 指導者は気をつけるべきです。
著者
石神 龍代 黒野 保三 絹田 章 冨田 靖延 林 尚臣 渡 仲三 松本 美富士
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.238-243, 1994-09-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
12

名古屋市立大学病院第二内科膠原病・リウマチ専門外来において米国防疫センター (CDC) 及び本邦厚生省調査研究班の診断基準を満足し, 長期経過観察が可能で, informed concent が得られ, かつ従来から報告されている各種薬物療法抵抗性の慢性疲労症候群症例8例に対して鍼治療を施したところ, 慢性疲労症候群の中心的症状である激しい疲労感は明らかに改善し, 随伴症状である様々な身体症状も一部の症例において改善がみられた。また, 免疫学的検査において低下していた末梢血γδT細胞比率が有意に回復した。以上の結果から, 鍼治療は従来からの薬物療法に加えて, 慢性疲労症候群の一つの治療法として有用であることが示唆された。
著者
山下 仁
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.128-129, 2021 (Released:2021-12-01)
参考文献数
6
著者
寺田 和史
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.758-765, 2008-11-01
参考文献数
20
被引用文献数
2

【目的】スポーツ競技者の個人的な特性が、 鍼治療の受療態度に及ぼす影響を検討した。 【方法】T大学で体育学を専攻する学生422人を対象に、 鍼治療に関する知識の量、 鍼治療に対する不安、 および受療態度をそれぞれ知識得点、 不安得点、 態度得点として定量化できる無記名の自記式質問紙による調査を行った。 【結果】対象者の標本特性から、 団体競技(団体群)と個人競技(個人群)、 および、 対人競技(対人群)と競争(競争群)に分類し、 態度得点を比較したところ、 対人群と競争群の間に有意な差がみられた。 また、 態度得点を従属変数、 標本特性や各得点を独立変数としたステップワイズ法による重回帰分析を行ったところ、 不安得点、 知識得点、 家族の鍼治療の経験の有無、 対人競技と競争による分類が説明変数としてモデルに採択された。 【結語】種目特性を含む競技者の持つパーソナリティは、 鍼治療の受療態度を形成するひとつの要因となっていることが示唆された。
著者
向 ありさ 谷口 博志 藤本 英樹 松浦 悠人 貝嶋 弘恒 貝嶋 美哉子 辻内 敬子 古賀 義久 安野 富美子 坂井 友実
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.2-13, 2020 (Released:2020-07-13)
参考文献数
22

【目的】身体的・精神的疲労感を自覚する就労者に対して鍼灸治療と円皮鍼治療を介入し、 疲労感への効果を比較した。 【方法】[研究デザイン] ランダム化比較試験とした。 ランダムに鍼灸治療群 (ACP群)、 円皮鍼治療群 (PTN群) の2群に割付けた。 [セッティング] 関東大都市圏Aクリニック院内鍼灸治療室。 [対象] Aクリニックの就労者。 組入れ基準は、 20歳以上45歳未満、 身体的・精神的疲労感を自覚する者。 除外基準は、 疲労に関わる疾患や症状、 医学的異常、 既往歴を有する者など。 [介入方法] 1か月間週2回。 ACP群、 PTN群とも疲労症状に対する全例共通の基本治療 (心兪、 腎兪、 合谷、 関元、 内関、 足三里、 太渓) に加え、 個々の身体所見に応じた個別治療を行った。 [評価項目] 主要評価項目は4週後の身体的・精神的疲労感Visual Analogue Scale (VAS) の変化、 副次評価項目は身体的・精神的疲労感VASの群内比較と介入直後の変化、 身体症状VAS、 Health and Work Performance Questionnaire 、 GHQ精神健康調査票12項目版、 MOS 36-Item Short-Form Health Survey スタンダード版、 唾液アミラーゼ値。 [試験ID] UMIN000034181 【主な結果】ACP群14例中13例、 PTN群15例中13例が解析対象となった。 主要評価項目の2群の身体的・精神的疲労感VASに有意差はみられなかった。 副次的評価項目の介入前後比較では、 身体的疲労感VASで2群とも有意な減少がみられ、 ACP群でより大きな効果量を示した。 群内比較ではPTN群の精神的疲労感VAS が8回目に有意に減少した。 【考察・結論】鍼灸治療と円皮鍼治療の効果の差は見出せなかった。 しかし、 鍼灸治療では直後効果、 円皮鍼治療では経時的な効果とそれぞれの有用性が示された。
著者
村橋 昌樹 鈴木 雅雄 松浦 知史 宇仁田 明奈 加用 拓己 宗像 源之 三潴 忠道
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.47-56, 2020 (Released:2020-07-13)
参考文献数
10

【目的】Guillain-Barre syndrome (GBS) は、 急性の弛緩性四肢麻痺を特徴とする免疫介在性末梢神経障害である。 今回、 GBSによる脱力感と強い下肢痛を訴える患者に対して、 鍼治療と漢方治療を行い症状の消失を認めたので報告する。 【症例】74歳男性。 主訴は両下肢、 右前腕尺側部の疼痛。 現病歴:X年9月末に感冒症状を認め、 10月14日に両下肢の脱力を自覚し、 その後、 歩行障害に加えて下肢と右前腕部に強い疼痛を自覚したため当院総合内科に入院となった。 入院後GBSと診断され免疫グロブリン療法が開始されたが、 症状の改善が認められなかったため主治医より10月30日に疼痛の緩和を目的に鍼治療が開始となった。 【方法】鍼治療は中医弁証に従い選穴し、 太衝、 合谷、 照海、 太渓、 足三里、 内関、 小海を用いた。 鍼治療の頻度は1日1回、 毎日実施した。 評価は疼痛および灼熱感を Numerical rating scale (以下NRS) にて評価し、 運動機能をHughesの機能グレード尺度 (以下FG)にて評価した。 【経過】初診時の両下肢痛はNRSで10点を示しておりFGは4であった。 鍼治療直後から疼痛は軽減し、 鍼治療7回目では疼痛の著明な改善を認めた。 しかし足底部の灼熱感を訴え始めたため、 弁証論治に従い漢方薬 (釣藤散料エキス製剤、 六味地黄丸料エキス製剤) の併用が開始となった。 併用開始から灼熱感は軽減を認め、 鍼治療20回目以降より疼痛および灼熱感の消失を認めた。 そのためリハビリテーションが強化され、 鍼治療開始から3カ月後にはFGが2まで改善したため退院に至った。 【考察】本症例の下肢痛および灼熱感はGBSに随伴する神経障害性疼痛と考えられた。 通常治療に鍼治療および漢方治療を併用することで疼痛と灼熱感は消失し歩行が可能となった。 【結語】GBSの随伴症状に鍼治療および漢方治療は有効であったと考えられた。
著者
王 財源 遠藤 宏 豊田 住江 河内 明 北出 利勝 兵頭 正義
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.370-373, 1991-12-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
5

『焼山火』は中国古来より刺鍼手技のひとつとして用いられてきた補法の変法手技である。刺鍼時において, 熱感や腫れぼさ覚え, 虚証で冷え症の患者に古くから行われてきた。では果たして刺針時において皮膚表面温度・深部温度・血流量がどのように変化をするか, 古来より伝えられてきた方法を用いて観察を行なった。今回は特に中国の老中医師に指導を賜わり研究を進め, 臨床的試験の結果, 皮膚温度・深部温度に上昇傾向が認められた。特に遠位部における皮膚温度と深部温度は, 刺鍼後40分目には1.0℃以上の上昇が認められた。局所においても0.5℃以上の温度上昇が認められた。
著者
松本 淳 石崎 直人 小野 公裕 矢野 忠 山村 義治
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.779-784, 2004-11-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
14

[目的] 胃内視鏡検査の際には、胃運動抑制を目的に抗コリン薬やグルカゴンなどの前投与を行う。今回、これらの薬剤の代替手段として、中院穴 (CV12) への鍼刺激を行い、その有用性を検討した。[方法] 鍼刺激群は19例で平均年齢66.1±9.9歳、薬剤投与群は41例で平均年齢64.3±12.9歳であった。鍼刺激群は、内視鏡検査前に10分間の中〓穴の雀啄刺激を行い、内視鏡挿入後も刺激を続けた。検査後、内視鏡医が蠕動運動抑制の程度と検査への支障の評価を2種類のVASとカテゴリ分類したスコアを用いて行った。薬剤投与群は、通常の前処置を行い、同様の評価を行って鍼刺激群と比較した。[結果とまとめ] VAS評価及びカテゴリ評価において鍼刺激群が薬剤投与群に若干劣るものの両群に有意差は無かった。このことから中〓穴への鍼刺激が、胃内視鏡検査における薬剤投与の代替手段として有用であることが示唆された。
著者
岡 宗由
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.140-145, 1981

針の鎮痛効果が, 中枢神経系におけるエンドルフィン類の生成ならびに作用機序ときわめて密接な関係にあることが最近次々と証明されつつある。この問題について臨床的立場から, 次の諸実験を行った。<br>1) 各種疾病 25例の針麻酔手術を行った。その結果, 鎮痛効果の個体差はモルヒネ剤の術前術中投与により効果的に解消された。<br>2) 25症例について上下口唇2か所のみの刺針通電で針麻酔手術を行った。また口唇ならびにその他の顔面部分 (三叉神経領域) に限り低周波通電し, これを127例の和痛分娩に応用した。いずれも有効な結果を得た。<br>3) 腰痛患者 (93例), 和痛分娩 (25例) にオピエート剤の腰部硬膜外投与を行った。その結果すべて有効な鎮痛効果を得た。<br>これらの知見は, いずれも実験目的に対し積極的に支持を与えるものと考えられる。
著者
古屋 英治 森山 朝正 片山 憲史 宮本 俊和 室伏 由佳
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.141-154, 2014 (Released:2014-12-24)
参考文献数
15
被引用文献数
1

「スポーツ鍼灸」 は鍼灸治療によって選手が訴える身体の不調を緩和し、スポーツの質の向上に寄与するものである。鍼灸治療の疼痛緩和作用はスポーツ障害に対してよく用いられてきたが、最近では障害の予防、コンディション調整もしくは体調管理にも応用されている。しかしスポーツ鍼灸の定義は明確ではなく、スポーツ選手を対象とした鍼灸治療のガイドラインも整備されていない。 2020年に東京オリンピック・パラリンピックの開催を契機に今日までのスポーツ鍼灸の研究成果を総括することにした。その内容はスポーツ分野における鍼灸の位置づけ、筋痛・筋疲労・筋萎縮及びスポーツ障害と鍼灸に関する研究である。さらに選手が競技生活において鍼灸との関わりを選手自身の言葉として添えていただいた。これらの成果は次なる目標である選手の求めに応じたスポーツ鍼灸を作り出すことに繋がるものである。
著者
箕輪 政博 形井 秀一
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.646-657, 2007-11-01 (Released:2008-05-23)
参考文献数
13
被引用文献数
2

【目的】日本の鍼灸教育における灸療法指導の現状と課題を把握する。【方法】2004年4月現在の (財) 東洋療法研修試験財団の学校養成施設名簿に基づく、全国の鍼灸専門学校66校への郵送によるアンケート調査。【結果】有効回答は62.1% (41/66校) であった。1学年で、基礎実技として習得して、単位数は「2単位」が36.6% (15/41校) で最多、指導内容は透熱灸の時間数が最も長く、無痕灸の4倍以上であった。艾〓の大きさは米粒大以下の小艾〓が主流で、七分灸や八分灸の手法を多く用いていた。8割以上の学校で灸療法は大変有効であると答えていたが、臨床実習での施術指導は約半数に留まっていた。実技指導上の問題点は火傷が最も多かったが、9割以上の学校で学生同士の施灸指導をしていた。【まとめ】日本の鍼灸専門学校における灸療法指導の概要を明らかにした。今後は、日本の伝統的な灸療法を堅持しながらも、特に火傷問題を中心にした安全性に関する議論を早急に始める必要がある。あわせて、現代日本鍼灸臨床における灸療法の実態調査が必要であると考える。
著者
冨田 賢一 北小路 博司 本城 久司 中尾 昌宏
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.116-124, 2009 (Released:2009-09-15)
参考文献数
19

【目的】夜間頻尿に対する温灸治療の有効性を評価するため、 対照として温度が十分に上昇しないsham温灸を用いたランダム化比較試験を行った。 【方法】夜間頻尿を有し薬物療法に抵抗性を示す36名の患者を対象とし、 温灸群 (n=20) とsham温灸群 (n=16) の2群にランダムに割り付けた。 治療は、 患者自身が自宅で下腹部の中極穴に1週間毎日3壮施灸を行った。 温灸群とsham温灸群で治療前1週間と治療中1週間の平均夜間排尿回数の変化について比較検討した。 【結果】1日あたりの平均夜間排尿回数の推移は、 温灸群では治療前と比較すると有意な減少がみられた。 sham温灸群では治療による変化に有意差はみられなかった。 【結語】中極穴への温熱刺激が1週間の平均夜間睡眠中排尿回数を減少させた可能性が示唆された。 中極穴への温灸治療は夜間頻尿に対して有効な治療方法の一つになり得ると思われた。
著者
田原 伊織 宮崎 彰吾
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.4-12, 2021 (Released:2021-10-28)
参考文献数
16

【目的】シワは4割以上の中高年者が美容上の悩みとして抱えている。その予防・改善には、シワの溝が真皮に至る前に保湿成分を継続的に表皮内に送達し、水分の蒸散を防ぐ必要があるが、皮膚表面の角質層はバリア機能が高く、物質の透過性が極めて低い。本研究では、経皮的DDS技術の一つであるマイクロニードルから着想を得て、「小ジワ」 に対して散鍼術を行い、その直後に保湿成分を含む美容液を塗布した際の有効性、安全性について質の高いエビデンスを得ることを目的とした。 【研究デザイン】アウトカム評価者に対して割付結果を盲検化したランダム化比較試験。 【セッティング】単一施設試験。 【参加者】抗シワ製品評価ガイドラインのシワグレード(0:無い~7:著しく深い)において小ジワ(1~3)に該当し、適格基準を満たした25例。 【介入】介入群には、毎日1回、2週間、洗顔・消毒後に片側の目尻に鍼長0.3mmの円皮鍼を用いて、5回/秒程度の頻度で1分間タッピングした直後に指定の美容液を塗布するよう指示した。対照群には、鍼を抜去した円皮鍼を用いて介入群と同様のスキンケアを行うよう指示した。 【主要なアウトカム評価】主要なアウトカム評価項目はシワグレードとし、シワの評価に熟達した者が1/4値で評価した。なお、効能表現として、1未満の減少を軽減、1以上の減少を改善とした。 【主な結果】対照群では12例中3例(25%)が軽減したのに対して、介入群では13例中4例が改善、5例が軽減し、計9例(69%)で効能が認められ、リスク比は2.8(95%信頼区間:1.0~7.9、P =0.03) であった。 【結論】小ジワに対して円皮鍼で散鍼術を行い、直後に美容液を塗布するスキンケアを14日間行うと、わずかな痛みを伴うが約7割の対象者に効能が認められ、その割合は美容液を塗布するだけより約3倍であった。