著者
會澤 重勝 坂本 秀治 吉浜 勲 坂本 浩二
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.27-33, 1981-09-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
8

灸に関する研究の一環として, 艾の構造を明らかにするため, 日向と日陰生育ヨモギの形態および若葉と成葉における葉, 毛の差異を明らかにし, さらに古代ヨモギに代って用いられたオギョウとの形態的差異を明らかにする目的で, 肉眼的観察および透過型, 走査型電子顕徴鏡による観察を行なった。その結果, 日陰生育ヨモギよりも日向生育ヨモギの葉の方が若葉, 成葉とも毛茸が多かった。また若葉の毛茸は、密度が高く, 太く短く, 断面は円形であった。成葉の毛茸の断面は扁平化していた。ヨモギとオギョウの比較では, ヨモギではT字毛以外に数種の腺毛を認めたが, オギョウでは綿毛以外には1種類の頭状毛しか観察されなかった。
著者
堀 紀子 山下 仁 津嘉山 洋 坂井 友実 西條 一止
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.340-344, 1996-12-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
7

当診療所において我々が鍼治療を行った五十肩の症例を集積し、鍼治療の効果について検討した。1) 21例の五十肩の症例が集積された。2) 鍼治療経過中に15例 (71%) の自覚症状が改善した。3) 鍼治療後に運動時痛の67%、安静時痛の44%、夜間痛の56%で一時的軽減 (数時間~数日間) を認めた。4) 治療後に疼痛軽減が得られなかった症例は、脱落する傾向がみられた。五十肩に対する鍼治療は、疼痛の軽減に対して効果的であった。また、運動療法の併用により、拘縮予防に役立つ期待がもたれた。

1 0 0 0 OA がんと鍼灸3

著者
小川 卓良 金井 正博 黒川 胤臣 福田 文彦 真柄 俊一 山口 智 小内 愛 中村 辰三
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.693-706, 2010 (Released:2011-01-20)
参考文献数
19

今回が3回目の 「がんと鍼灸」 のパネルディスカッションである。 西洋医学のがん或いはがん患者に対しての攻撃的で深刻な副作用を伴い、 かつ免疫能を減退させる医療が適切か否か多くの医師・識者より疑問視されている現状がある。 それに対し副作用が無く、 QOLを高め、 免疫能を賦活する鍼灸治療はがん患者の予防から緩和ケア・再発防止までのあらゆる場において有用性は高いとの期待があり、 その成果は蓄積されつつある。 第1回で緩和ケアでの有用性を、 第2回では内外の文献調査結果を報告した明治国際医療大学の福田氏は今回がん化学療法による末梢神経障害に対し鍼治療の安全性と有効性について報告した。 防衛医科大学校の黒川氏は大学病院での補完療法としてがん患者の身体・精神症状の改善、 QOLの改善、 副作用の軽減、 術前・術後の障害対策等に鍼治療を行いその有効性について述べた。 埼玉医科大学の小内氏は、 大学病院での併療治療としての鍼治療の有効性と有効性の背景因子に言及された。 森ノ宮医療大学の中村氏は非摘出のがん患者の化学療法の副作用に対し長期に灸治療を行い、 その有効性について報告した。 以上は、 化学療法と放射線療法を併用した状態での鍼灸治療の有効性、 特に副作用の軽減とQOLの改善に鍼灸治療は有効であるという報告であったが、 第1回より一貫して主に術後の再発予防を目的とした西洋医学的治療を一切含まない鍼治療を含む自律神経免疫療法で報告された素問八王子クリニックの真柄氏は、 免疫に関わる種々のサイトカインの増加等による免疫力の改善や、 時に非摘出の進行癌でさえ縮小が可能であること、 今回は特に自身の臨床例における再発率を現代医学のそれと比較して数段再発率が低いことを報告し、 癌の再発予防に自然治癒力に関する研究に、 今迄以上の関心を持つべきであると強調した。 今回は更に今迄以上がんの鍼灸治療の大規模研究が望まれた結果になった。

1 0 0 0 OA がんと鍼灸2

著者
小川 卓良 金井 正博 福田 文彦 山口 智 真柄 俊一 津嘉山 洋 幸崎 裕次郎
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.587-599, 2007-11-01 (Released:2008-05-23)
参考文献数
26

第53回大会において初めて『癌と鍼灸』をテーマにしたシンポジウムが本学会において開催され、がん (及びがん患者) に対する鍼灸の有用性や可能性が示唆され、本セミナーはその続編である。近年本邦及び世界中でがんの鍼灸治療の関心は高まりその有用性や適応などについて多数報告されているが、エビデンスのある適応範囲は限られており、治癒並びに予防、再発予防などの分野ではまだまだ信頼性に乏しい報告しかなく、症例集積を積み上げていく必要がある。病院内で医療との併療では鍼灸は症状緩和や延命に有用性があり、なるべく早期に頻回治療を行う方が有効性は高く、リンパ球数は鍼治療継続中には上昇するが、治療終了後には元に戻る傾向という報告があった。自律神経免疫療法を行った報告では、長期的に見ると治療継続によりリンパ球数には変化はないものの、リンパ球機能が活性化されIL12, IFNγ, TNFα等のサイトカイン産生能力が高まると同時に、Th1、Th1/Th2値が上昇し、免疫機能が賦活され、かつ腫瘍マーカーも正常になるか正常に近づき、未手術例においてもがんの縮小 (中には消失) や再発が防止され、症状が緩和しQOLも改善して延命になるとのことであった。本セミナーでは前回以上にがん (及びがん患者) に対する鍼灸治療の有用性や治療の可能性が示唆され、益々この方面での研究が必要との認識が高まった。

1 0 0 0 OA 癌と鍼灸

著者
小川 卓良 金井 正博 永田 勝太郎 福田 文彦 真柄 俊一 山口 智 大串 重吉 齋藤 晴香 鈴木 昌子 半田 由美子
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.672-685, 2004-11-01 (Released:2011-03-18)

近年、癌治療における西洋医学の発展は喧伝されるが、癌死は増加の一途で成果は実際にはあまり現れてない。鍼灸においては癌は不適応とされてきたが、緩和ケアやQOLの改善などに有効、そして癌の消滅症例も報告されるようになってきた。このため本テーマについて検討することが求められシンポジウムが企画された。指定発言者からは、癌の治療に一喜一憂し、とまどう鍼灸師の心うちや、ともに肺癌で亡くなったご両親の治療体験報告、西洋医学で不治か治療拒否した患者を鍼灸治療で回復させた症例報告などがあった。病院内で鍼灸治療を行うシンポジストの報告では、終末期癌患者に対し現代医学的治療と併用しての鍼灸治療の有効性やその適応についての報告、有効率と治療期間・回数との相関や、進行度や罹病期間と有効性には相関が無く、末期でも鍼治療を施行する環境が整っていれば十分効果が期待できるとの報告があった。また、鍼治療が自律神経機能に及ぼす影響として、副交感神経機能の方進が若干あることも報告された。安保理論に基づいた鍼治療を実践しているシンポジストは、安保氏の主張より劣るがQOLの改善、延命に有効であること、特に末期スキルス胃癌患者が長期延命している実態と、癌三大療法のうち、放射線治療が一番患者の抵抗力をそぐ治療であることを報告した。健康創成論を唱えるシンポジストは、鍼治療により疼痛緩和や生体の修復力の増強が有意に高いことなどから、鍼が癌に対して直接的効果を有している可能性があることを実証した。病因追求論の限界と健康創生論の重要性を述べ、鍼灸治療のみならず補剤を用いるとともに、患者の心のあり方へのアプローチの必要性を述べた。本シンポジウムでは、鍼灸治療の緩和ケアの有効性が示唆され、現時点では確実なエビデンスはないものの、癌に対する治療の一環としての鍼灸治療の有効性が示唆されたといえよう。今後、癌に対する鍼灸治療の本格的な研究が望まれたシンポジウムであった。
著者
楳田 高士 栗林 恒一 笠原 由紀 若山 育郎
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.137-140, 2002-05-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
10

B型肝炎キャリアの被験者に鍼刺入を行い、抜鍼後の鍼体にB型肝炎ウイルス (HBV) が付着しているのかをPolymerase Chain Reaction (PCR) 法を用いて検討した。その結果、鍼体からHBVのDNAを検出した。治療後の鍼の取り扱いに注意が必要である。
著者
松平 浩 井上 基浩 粕谷 大智 伊藤 和憲 三浦 洋
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.2-16, 2013-02-01
参考文献数
47

腰痛症に対する鍼灸の効果と現状を総合テーマとして、 当該領域のレビューを行った。 <BR>はじめに西洋医学的な立場から特異的腰痛や非特異的腰痛の鑑別や治療効果を中心に紹介した。 次に、 鍼灸治療の治効機序に関して、 基礎研究の成果を文献に基づき紹介した。 最後に、 腰痛に対する鍼灸治療の臨床効果を文献に基づき解説し、 様々な腰痛に効果が示されていることを紹介した。 以上の結果から、 鍼灸治療は様々な腰痛に対して臨床効果が報告されているが、 特に非特異的な腰痛に対して有効である可能性が示唆された。
著者
木下 典穂 木下 晴都
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.60-66, 1981-09-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
13

糖尿病の111例を対象に針灸治療の臨床的研究を行なったが, そのうち血糖値を検査した54例について治療成績を検討した。治療は一般的に常用する共通治療と, 一定の症状に対応する類別治療に分けて施行した。治療成績は血糖値を指標にして, 著効, 良効, 安定, 無効の4段階で評価した。その結果, 著効・良効を合わせた26例 (48%) は, 針灸治療後に血糖値が改善された。治療期間からみると2年以上にわたる長期継続群の成績がよく, 病歴では早期糖尿病群に著効例が比較的高度にみられ, 自覚症状では口渇のみを訴える症例の成績がよかった。血糖値の高度な群は下降率が大きく, 血糖降下剤・インスリンの必要な症例でも, 針灸後には血糖の改善する例があった。
著者
向野 義人 荒川 規矩男
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3-4, pp.211-216, 1985-03-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
9

肥満の耳針療法における右刺激と左刺激の効果差と味覚変化効果を検討した。方法 (1) では39例の単純性肥満を無作為に両側肺点治療群 (BL), 右噴門肺点治療群 (R1) に分けた。方法 (2) では24例の単純性肥満を無作為に右噴門肺点治療群 (R2) と左噴門肺点治療群 (L) とに分けた。各々皮内針で4週間治療し, 食欲抑制効果及び体重と味覚の変化を比較した。その結果 (1) でBLの方が食欲抑制効果及び体重減少量が大で, 塩味覚はBL, R1とも過敏となった。(2) で, R2の治療前塩味覚閾値は体重減少量に正相関 (r=0.794) し, Lでも同様傾向を示し (r=0.536), 塩味覚が鈍い程体重減少量が多かった。この回帰直線の傾きはR2でより急峻 (P<0.05) であり, 右刺激が左刺激より有効であった。
著者
松元 丈明
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.205-216, 1982-01-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
5

針メーカーから販売されている針はどのような実態にあるだろうか。この疑問に答えるために, 今までに針尖と針体の実態を2回, 針の長さと太さの実態を1回報告してきた。方法: 今回は針メーカーに対し再度針の実態調査をして, 実名で公表する旨を事前に予告した。そして, 針メーカー19社よりST製寸6・3番針を50本ずつ総計950本購入し, 針の長さ・太さをすべて実測した。結論: 1) 寸6の針の長さ総平均は67.343mm, 標準偏差0.188mm, バラツキの幅0.88mmである。2) 3番針の太さ総平均は0.1983mm, 標準偏差1.1464μ, バラツキの幅0.005mmである。3) 以上の結果から, 針の長さ・太さの精度が著しく劣るものが多い。故に各針メーカーは十分な品質管理の必要がある。4) 針の長さ・太さなどの規格化を早急に検討し, 実現すべきである。
著者
小川 卓良 金井 正博 福田 文彦 山口 智 真柄 俊一 津嘉山 洋 幸崎 裕次郎
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.587-599, 2007-11-01
参考文献数
26
被引用文献数
1

第53回大会において初めて『癌と鍼灸』をテーマにしたシンポジウムが本学会において開催され、がん (及びがん患者) に対する鍼灸の有用性や可能性が示唆され、本セミナーはその続編である。近年本邦及び世界中でがんの鍼灸治療の関心は高まりその有用性や適応などについて多数報告されているが、エビデンスのある適応範囲は限られており、治癒並びに予防、再発予防などの分野ではまだまだ信頼性に乏しい報告しかなく、症例集積を積み上げていく必要がある。病院内で医療との併療では鍼灸は症状緩和や延命に有用性があり、なるべく早期に頻回治療を行う方が有効性は高く、リンパ球数は鍼治療継続中には上昇するが、治療終了後には元に戻る傾向という報告があった。自律神経免疫療法を行った報告では、長期的に見ると治療継続によりリンパ球数には変化はないものの、リンパ球機能が活性化されIL12, IFN&gamma;, TNF&alpha;等のサイトカイン産生能力が高まると同時に、Th1、Th1/Th2値が上昇し、免疫機能が賦活され、かつ腫瘍マーカーも正常になるか正常に近づき、未手術例においてもがんの縮小 (中には消失) や再発が防止され、症状が緩和しQOLも改善して延命になるとのことであった。本セミナーでは前回以上にがん (及びがん患者) に対する鍼灸治療の有用性や治療の可能性が示唆され、益々この方面での研究が必要との認識が高まった。
著者
岩 昌宏 浦田 繁 小野 直哉 近藤 史生 沢崎 健太 本田 達朗 堀 紀子 矢野 忠 川喜田 健司
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.65-71, 2004-02-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

我国において鍼灸の経済評価に関する研究はほとんどなされていない。そこで鍼灸の経済評価に関する研究方法を確立するために、そのモデルケースとして、「職場 (企業) における鍼治療の経済評価に関する研究」を紹介するとともに、今後の経済評価を加えた鍼灸研究の方向性について考察した。本稿ではモデルケース2例の研究内容の詳細と経済評価を行う際の重要ポイントについて紹介する。
著者
東藤 義公
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.365-378, 1989

ペインクリニック外来へ訪れる疼痛患者で, 疼痛の原因が末梢血流障害であるものは全体の18.4%であった。このように, 末梢血流障害はペインクリニック外来では重要な位置を占めている。末梢血流障害を主病変とする疾患の症状, 診断および治療について自験例を紹介しながら説明を加えた。診断法では, 視診, 触診, 脈波, 体温, 血流量測定, 形態学的検査について述べた。疾患の種類では, 閉塞性動脈硬化症, バージャー病, 急性動脈閉塞症, レイノー病, 静脈疾患, 反射性交感神経性萎縮症について述べた。治療法では, ブロスタグランディン, 硬膜外ブロック, 星状神経節ブロック, 腰部交感神経節ブロック, グアネチジンブロック, 脊髄通電療法についてそれぞれ述べた。このうち, 反射性交感神経性萎縮症は原因不明の疼痛として放置されていることもあり, 重症化すると治療に抵抗することが多い。他の疾患と同様に, 末梢血流障害も早期発見と早期治療が大切である。
著者
池内 隆治 長谷川 汪 田和 宗徳
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.238-242, 1982-01-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
12

東洋医学において古くから消化器疾患に対して種々の経穴が用いられ鍼灸治療が行われている。胃疾患に対しては足三里, 陽陵泉などの経穴がよく用いられているが, 足三里では胃酸の分泌が亢進する傾向があり, 胃酸過多の者には用いず陽陵泉を用いる方がよいといい伝えられている。これら経穴の特性についてはいかなる病態生理に基づいたものであるか不明である。今回, われわれは, テレメトリ胃腸内pH値測定機を用いて, それぞれの経穴と胃疾患と関係の深い胃液pH値の変動について検討を加えた結果, 足三里刺激群, 梁丘刺激群は胃液の塩酸分泌を亢進する傾向がみられ, 陽陵泉刺激群は胃液の塩酸分泌を抑制する傾向がみられた.
著者
山田 鑑照 尾崎 朋文 松岡 憲二 坂口 俊二 王 財源 森川 和宥 森 俊豪 吉田 篤 北村 清一郎 米山 栄 谷口 和久
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.27-56, 2006-02-01
参考文献数
43
被引用文献数
2

経穴研究委員会 (前経穴委員会) は福岡で開催された第54回全日本鍼灸学会学術大会ワークショップIIにおいて、経絡・経穴について3つの検討テーマを6名の委員により報告した。<BR>第1テーマ : 経絡・経穴の解剖学的検討<BR>1) 経絡と類似走行を示す解剖構造について (松岡憲二) : 遺体解剖による経絡の走行と神経・血管の走行との類似性についての研究。<BR>2) 上肢経絡・経穴の肉眼解剖学的研究 (山田鑑照) : 豊田勝良元名古屋市立大学医学部研究員の学位研究である上肢経絡・経穴の解剖学的研究紹介並びに山田の研究として皮下における皮神経・血管の走行と経穴・経絡との関係についての報告。<BR>第2テーマ : 日中における刺鍼安全深度の研究<BR>1) 中国における刺鍼安全深度の研究と進展状況 (王財源) : 中国刺鍼安全深度研究で権威のある上海中医薬大学解剖学教室厳振国教授のデータの紹介と最近の中国における刺鍼安全深度研究の進展状況報告。<BR>2) 経穴の刺鍼安全深度の研究を顧みて (尾崎朋文) : 尾崎が今まで発表してきた経穴部位の刺鍼安全深度の研究並びに厳振国教授のデータと同じ経穴との比較研究。<BR>第3テーマ : 少数経穴の臨床効果の検討<BR>1) 少数穴使用による鍼灸の臨床効果 (坂口俊二) : 1~4穴使用による鍼灸臨床効果ついての医学中央雑誌文献の検索・分析。<BR>2) 合谷-穴への各種鍼刺激が皮膚通電電流量に及ぼす影響 (森川和宥) : 合谷穴-穴への置鍼刺激、直流電気鍼刺激、鍼通電刺激が皮膚通電電流量に及ぼす影響についての研究。
著者
古屋 英治 金子 泰久 小川 裕雄 石川 慎太郎 坂本 歩
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.166-174, 2006-05-01
参考文献数
18
被引用文献数
5 4

【目的】国体セーリング競技会場に設置したコンディショニングルームでセーリング選手の身体愁訴に対する鍼治療の直後効果を検討したので報告する。<BR>【方法】腰部の筋痛 (n=108) 、頚肩背部の筋痛 (n=72) に鍼治療を単独で行った。鍼治療は局所治療とした。調査項目は主訴およびその程度を示すVAS値とした。VAS値の有意差検定は対応のあるt検定とした。<BR>【結果】主訴は腰痛、頚肩背痛、その他の順に多かった。鍼治療は腰部の筋痛 (n=108) のVAS値を治療前53.2±21.5mmから後21.5±16.4mmに減少 (p<0.01) させた。また頚肩背部の筋痛 (n=72) のVAS値は治療前48.0±18.7mmが治療後18.5±15.2mmに減少 (p<0.01) した。<BR>【考察】国体セーリング選手の腰部、頚肩背部の筋痛に対して鍼治療は有効であり、競技現場で行うコンディション調整の一手法として、鍼治療の有効性が示唆された。
著者
七堂 利幸
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.37-55, 1996-03-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
121

時間経過とともにデータを取っていく経時測定データは, 時点間に系列相関があり, 各時点を独立した値と見て解析すると, 間違った結果になる。この経時測定モデルは鍼灸研究では, かなりの頻度で使われている。鍼灸研究における統計誤用が頻発しているため, この経時測定データの解析法について調べても, ほとんど誤用といってよい。そのため, 正確な解析法の情報を学会会員に伝えるため, 経時測定データの解析法の文献とコンピューター・ソフトウェア・パッケージ (統計ソフト) のレビューをした。
著者
村中 僚太 成島 朋美 東條 正典 野口 栄太郎
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.420-424, 2011 (Released:2012-02-06)
参考文献数
6

【目的】耳管開放症は耳閉感、 呼吸音聴取、 自声強聴などの自覚症状を主体とした難治疾患で、 その多くは原因不明である。 そのため耳管開放症に対する鍼治療に関しては、 ほとんど報告されていない。 今回耳管開放症状を訴える希少な症例を経験したので報告する。 【症例】43歳、 男性、 団体職員。 主訴:呼吸音聴取、 自声強聴、 現病歴:X年10月突如自声強聴を自覚。 同月Y耳鼻科を受診、 聴力低下(-)、 通気療法、 薬物療法。 同月Z大学附属病院耳鼻科にてオトスコープ検査により耳管開放症と診断される。 同年12月より鍼治療開始。 現症:ウェーバーテスト (中央)、 聴力正常。 頭板状筋の過緊張。 治療方法:患者からの下顎の運動で開放症状が減少するとの訴えを参考に、 咬筋を支配する三叉神経領域の経穴および後頸部の経穴を治療穴に選択した。 【経過】初診より週1回のペースで計25回の治療を行った。 初診時より耳管開放音をNRS (Numerical Rating Scale) によって評価した。 気圧の変化や精神的ストレスにより増悪緩解を繰り返したが、 症状は初診時の約50%に維持することが出来た。 【考察とまとめ】顔面部の三叉神経領域および後頚部の大後頭神経を介する三叉神経系への鍼治療が耳管開放症状の軽減に有用であることが示唆された。
著者
有働 幸紘 久米 健 竹田 清
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.190-196, 2010 (Released:2010-08-10)
参考文献数
15

【目的】PainVision®は痛みの強さを、 痛み対応電流値 (痛みと同等の電流量) と最小感知電流値 (患者が感じる最小の電流量) から痛み度として算出する装置である。 慢性疼痛患者に対する鍼治療の効果判定にPainVision®を用いVisual analogue scale (VAS) との比較検討を行った。 【方法】継続的に鍼治療を受けている慢性疼痛患者23名を対象としてPainVision®およびVASによる痛みの評価を鍼治療前後に行った。 【結果】治療後にVAS値、 痛み度、 痛み対応電流値は有意に低下した。 最小感知電流値は上昇傾向であったが有意差はなかった。 VAS値と痛み度の治療後の変化は87%において一致していた。 【考察と結語】PainVision®はVASと同様に痛みの強さの評価が可能であり、 慢性疼痛に対する鍼治療の効果判定にPainVision®は有用であると考えられた。