著者
奥西 一夫 諏訪 浩
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.27-37, 1992-04-30
被引用文献数
2

A landslide at a site beside the prefectural road connecting Otsu and Shigaraki, Shiga Prefecture, Japan resulted in the death of two persons. According to a post-disaster inspection, the landslide involved a translational sliding of a V-shaped block, toppling and fall. These movements are thought to have been controlled by the joint system in the granite which composed the slope. A dynamical analysis of the destruction of steel pillars which had supported the protective fence reveals the velocity of debris and suggests the mechanism of the slope failure. Discussion covers the predictability of such roadside hazards and the possible countermeasures. Considering a wide variation in the mode of roadside slope failures, importance of studies of the causes for individual cases is emphasized in conclusion.
著者
石橋 正信 馬場 俊孝 高橋 成実 今井 健太郎
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.125-142, 2019 (Released:2020-02-29)
参考文献数
12

南海トラフの沈み込み帯において,M9クラス巨大地震とそれにともなう巨大津波の発生の可能性が内閣府により指摘されて久しい。この津波被害想定によると,地震域近傍の沿岸地域では地震発生から数分後に巨大な津波が到達してしまうため,津波防災に向けた行動計画の再構築や人的被害軽減のための迅速な対応策の検討が極めて重要になる。その対応策のひとつとして,高速かつ高精度な即時津波予測が有効と考えられる。本研究では,地震と津波観測に向けた稠密海底観測網(DONET)による沖合観測網を利用した即時津波予測システムを構築し,和歌山県沿岸6地域において実装を行い,その有効性の検討を行った。本システムにより,地震と津波の初動到達時間を即時評価できること,沿岸津波高や浸水域の即時予測が可能であることを示した。さらに,1944年昭和東南海地震の事例と内閣府のM9クラス巨大地震の波源シナリオを用いて本システムの予測精度を検証した。本システムで即時予測される沿岸津波高や浸水域面積はやや過大評価傾向にあるものの,おおむね安全側の予測結果となり,津波防災上有効なシステムであることを示した。
著者
佐藤 照子 岸井 徳雄
出版者
自然災害科学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.201-212, 1995-12-31
参考文献数
20
被引用文献数
1

Tokyo, the Metropolis of Japan, frequently has suffered from flood disasters, according to urbanization, since late 1950's. The heavy rainfall due to the Typhoon 9311 on August, of which the daily precipitation was 234.5mm, caused damages in Tokyo. The flood disaster caused by the Typhoon were investigated. The number of houses inundated reached 5,191,but its magnitude reduced to one twentieth of that caused by the Typhoon 6604 in 1966. Two hundred million people were affected by the damage of public transportation systems, being attacked weak points of preparedness for flooding : extra rainwater incidentally coming from outside of disaster stricken area and rainwater flowing into construction fields under the ground, resulted in the suspention of train and subway service.
著者
牛山 素行
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.293-302, 2004-08-31
参考文献数
11
被引用文献数
5 8

Heavy rainfall caused by a baiu-front (stationary front) occurred in Niigata prefecture from July 12 to 13, 2004. The Japan Meteorological Agency called this event the "Niigata and Fukushima heavy rainfall of July 2004". In Tochio city, Niigata prefecture, an hourly precipitation of 58 mm was recorded on July 13, with the precipitation in a 48-hour period amounting to 427 mm. This constitutes the highest amount of rainfall in this period since that recorded in 1936 at Tochio observatory. The highest 1-hour precipitation records in the last 25 years were revised at 3 observatories, and the highest 24-hour precipitation rate was revised at 10 observatories based on the data of the Japan Meteorological Agency. During this heavy rainfall, 16 persons were killed, 476 houses were destroyed, and about 13,500 houses were inundated. Eleven levee breaches occurred in class-A rivers, causing serious inundation damage in Niigata prefecture. Most of the inundation damage occurred in Sanjo city, Mitsuke city, and Nakanoshima town. In particular, 23% of the households in Sanjo sustained over floor inundation. The deaths of 12 persons were due to drowning. This is the largest number of drownings by heavy rainfall since the Nagasaki heavy rainfall disaster on July 1982. Moreover, 14 victims were elderly persons more than 60 years old. Evacuation counsels were issued from 4 hours to 20 minutes before the levee breaches. We could say that as compared with past rainfall disasters, these responses were quick. However, many persons were lost their lives and much property was inundated. The development of a disaster information dissemination system is necessary in local communities.
著者
山本 晴彦 岩谷 潔 高山 成 白水 隆之 土谷 安司 兼石 篤志 原田 陽子 東山 真理子
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.291-306, 2008-11-29
被引用文献数
1

Typhoon No. 0613 (SHANSHAN) went north up the west coast of Kyushu on September 17, 2006. After the typhoon landed near Sasebo city, Nagasaki past 18:00, it escaped from northern Kyushu into the Sea of Japan. As the typhoon passed through, it triggered a tornado in Nobeoka City of Miyazaki Prefecture, with the peak gust speed recorded at 46.0m/s (14:06) at Asahi Kasei Corporation. The length of the tornado path was estimated as 7.5km and the maximum width 300m based on the damage investigation. The tornado caused 3 fatalities, and around 1,300 damaged homes. The Fujita and Pearson scales were estimated to be F2 and P2, based on the extent of the tornado damage, and the length and width of the damage, respectively.
著者
鈴木 素之 片岡 知 川島 尚宗 楮原 京子 松木 宏彰
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.31-42, 2023-05-31 (Released:2023-12-11)
参考文献数
24

2009年7月21日の集中豪雨により崩壊・土石流が多発した山口県佐波川沿いに分布する遺跡の中には,土砂災害警戒区域内に位置するもの,旧河道と接するまたは重なるものがある。本報告は,中世における各遺跡の位置,面積および傾斜を解析した。その結果,佐波川流域沿いに存在する24箇所の遺跡は現地形の傾斜が緩い場所に集落を形成する傾向があり,それらの多くは土砂災害警戒区域と重なることを明らかにした。
著者
片山 和紬 金城 伶奈 山田 孝
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.43-51, 2023-05-31 (Released:2023-12-11)
参考文献数
18

土石流に伴う流木群の国内外の映像資料を収集・判読し,その運動の定性的な特徴を明らかにした。流木群は土石流先頭部の前方に存在し,土石流先頭部に押されて流下しているように観察された。さらに,現地調査により,流木群の規模やその内部構造を調べ,流域内で発生した流木体積量の約9 割が流木群の体積量であること,流木群上流端付近に土石流先頭部の土砂が堆積していることが明らかにされた。
著者
三上 貴仁 末政 直晃 伊藤 和也 田中 剛
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.377-390, 2021 (Released:2021-10-08)
参考文献数
12
被引用文献数
2

2019年10月に日本を襲った台風19号は,東日本を中心に各地で大雨による被害をもたらした。 世田谷区と大田区の区境をまたぐ,多摩川,丸子川,谷沢川に囲まれた地域では,浸水災害が 発生した。本稿では,地域の概況や災害発生時の多摩川流域における雨量や水位の状況につい て整理したうえで,浸水深分布の調査により得られた地域の浸水状況について報告した。調査 により,地域の広い範囲で浸水が生じており,局所的に周囲より標高が低い場所で特に浸水深 が大きく,浸水深は最大で2 m を超えていたことがわかった。浸水高の分布からは,地域内を 西から東に向かって水が流れる状態になっていたことがわかった。
著者
櫻田 歩夢 西山 浩司 清野 聡子
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.137-155, 2020 (Released:2021-02-24)
参考文献数
30

本研究では,平成29年 7 月九州北部豪雨の被害を受けた福岡県東峰村とその隣接地域に立地 する水神を対象に,その立地特性を把握し,現地住民に対するヒアリング調査,災害に関する歴史文献調査を通して,水神と災害との関連性を調査した。その結果,約8割の水神が,土石流を含む渓流の氾濫が起こりやすい場所に立地していることがわかった。また,ヒアリングから得られた4つの水神は災害,または,農業に関連して祀られており,桑鶴地区と葛生地区の水神は,台山の土石流と大肥川の氾濫から地域を守るために祀られていることがわかった。急峻な谷筋を持つ台山では,歴史的に何度も土石流災害が発生してきたと推定できるため,災害の危険性を訴える大切なメッセージが,大蛇の言い伝えとなって桑鶴地区に伝わったと考えられる。以上の結果から桑鶴地区の水神が持つ防災上のメッセージの内容について考察すると,大蛇の言い伝えを介して語り継がれた,繰り返し起こる台山の土石流災害の特徴を水神のメッセージに含ませることによって,水神が台山に繋がる地域の災害の危険性を意識付ける役割と その危険性を後世に伝える役割を持つようになり,地域の防災モニュメントとして水神を活用することができるようになると期待される。
著者
中野 元太 矢守 克也 クラウ ルイザ
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.23-38, 2022-05-31 (Released:2023-07-31)
参考文献数
24

ソフトな介入・干渉によって行動変容を促すナッジ論を生産的に防災・避難領域に導入するための方策を提案することが本研究の目的である。ナッジ論は,その概念を突き詰めれば,縦軸に「合理的・意識的人間モデル/本能的・反射的人間モデル」という二項対立軸を置き,横軸に「選択の強制/選択の自由」という二項対立軸を置いた概念図により整理可能である。概念図上方が合理的な選択に基づくジャッジ領域とし,下方をヒューリスティックな選択に基づくナッジ領域と位置づけた。同概念図に基づいて,現在の防災・避難対策をジャッジ領域とナッジ領域とで概観した。その上で,ナッジ論を用いることの批判等も検討しながら,ナッジの有効な活用のためには,介入者と行為当事者との合意形成や,ナッジ領域とジャッジ領域との間の相互利用が重要であることを指摘した。
著者
兼光 直樹 山本 晴彦 渡邉 祐香 村上 ひとみ
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.39, no.S07, pp.13-31, 2020 (Released:2021-06-30)
参考文献数
14
被引用文献数
1

2018年7月豪雨において岡山県でも特に浸水被害が甚大であった真備町の箭田地区を対象に,アンケート調査を実施した。夜間の急激な水位上昇により避難の判断が困難で,避難率は高かったが住民は切迫した状況下にあり,非避難者では判断の遅れや誤りがあった。また,ハザードマップの理解や防災活動は,実際の避難行動には結びつかず効果があったとは言えない。浸水想定区域であったにも関わらず多数の犠牲者が発生した要因として,80歳代以上の高齢者の避難率の低さが挙げられ,特に同居家族1~2人の80歳代以上の高齢者では,身体的・精神的にも避難が困難であり避難率が低かった。被害拡大防止のため,地域内でのつながりを強め,高齢者への避難時の支援体制をつくることが重要である。
著者
本間 基寛 牛山 素行
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.40, no.S08, pp.157-174, 2021 (Released:2022-03-30)
参考文献数
33
被引用文献数
1

台風等の豪雨災害において,予想される雨量の規模から災害対応の必要性を呼び掛けるにあたり,降雨規模と想定される人的被害規模の関係性を明らかにしておくことは重要である。本研究では,平成30年7 月豪雨,令和元年台風19号,令和2 年7 月豪雨における犠牲者の位置データと1 km メッシュでの降雨観測データを分析することにより,降雨に関する各種指標から「推計犠牲者発生数」を算出する可能性について検討を行った。3 , 6 ,12,24,48,72時間の降雨継続時間雨量や土壌雨量指数といった7 つの降雨指標について,犠牲者発生数との関係性を分析した結果,降雨指標そのものではなく過去の観測最大値との比である「既往最大比」が犠牲者発生との関係性が高いことがわかった。豪雨事例によって災害犠牲者発生との対応がよい降雨指標が異なることから, 7 指標の既往最大比最大値を算出することで,豪雨災害における犠牲者の発生数を大局的に推計できる可能性があることを示した。一方で,球磨川での氾濫のような極めて局所的な豪雨による大規模洪水での犠牲者に関しては,犠牲者発生地点の降雨指標だけではなく,上流域も考慮した雨量指標による評価関数へと改良する必要がある。