著者
黒川 恵子 入江 安子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.114-122, 2017 (Released:2017-11-09)
参考文献数
23
被引用文献数
2

目的:保健師における特定妊婦への妊娠期から出産後の子どもの養育支援を含む,一連の支援プロセスを明らかにする.方法:母子保健5年以上の経験で,同一特定妊婦の妊娠期と出産後に2回以上かかわり,一連の保健師活動を自ら語ることができる保健師11名を対象に半構成的インタビューを行った.分析は修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた.結果と結論:特定妊(産)婦への保健師による支援プロセスは『子どもへの愛着を基に生活する能力の見極め』であった.このプロセスは【妊婦とのつながりづくり】【妊(産)婦の甘えられる居場所探し】【妊(産)婦の生活の見極め】【閉ざされないサポートづくり】【安全のためのネットづくり】で構成された.保健師は脆弱性を抱える特定妊(産)婦の主体性を育てるために,身近な人の潜在的力を活用しながら子どもの安全確認を関係機関に外在化し,特定妊(産)婦の内面に働きかけることが重要である.
著者
植木 美那子 嶋津 多恵子 佐藤 鈴子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.204-212, 2016 (Released:2017-03-18)
参考文献数
28
被引用文献数
2

目的:臥床生活以前のパーキンソン病療養者の配偶者(以下,配偶者)が体験する困難を明らかにすることである.方法:10名の配偶者に半構造化面接を行い,質的記述的に分析した.結果:配偶者は,【捉えどころのない難病に動揺し】ながらも,【揺れ動く症状と向き合おうと努めて】いった.そして,【夫婦で培ってきた歴史があるから今の生活を大切にしたい】と願うが,やがて【捉えきれない症状に翻弄されて】いった.また,【一足先に老いていくかのような療養者との生活を心配して】おり,【症状に翻弄される夫婦を誰かに支えて欲しい】と願っていた.結論:本研究の配偶者は,変動する運動症状の他,発症早期より出現する非運動症状にも翻弄されていた.そのため,発症早期より専門職の役割を伝え,症状を捉えた配偶者の工夫や努力を評価し,捉えにくい症状ゆえ生じやすい夫婦の齟齬に気づいて関わることの必要性が示唆された.
著者
菱沼 典子 平松 則子 春日 美香子 大吉 三千代 香春 知永 操 華子 川島 みどり
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.32-39, 1997-02-28 (Released:2012-10-29)
参考文献数
25
被引用文献数
9 6

腹満や便秘に対し, 経験上有効といわれている熱布による腰背部温罨法の, 腸管の動きに対する影響と, 局所の皮膚に対する影響を明らかにする目的で, 実験研究を行った. 8名の健康な女性 (27~47歳) に, 熱布による温罨法を施行し, 以下のような結果を得た.1) 腸音は施行直後に1.7倍に増加し, 施行前に対し, 有意差が認められた.2) 貼用部の皮膚温は, 41.1-43.1度まで一過性に上昇したが, 火傷は生じなかった.3) 背部の血流および上腕部の血流は, 施行前に比べ1.4倍になり, 全身が暖まった.4) 施行前後で、体温, 脈拍, 血圧に変動は認められなかった.これらの結果から, 熱布による腰背部温罨法は, 腸管の動きを促進し, 便秘や腹満の解消をはかる看護技術となりうることが示唆された.
著者
勝田 仁美 片田 範子 蝦名 美智子 二宮 啓子 半田 浩美 鈴木 敦子 楢木野 裕美 鎌田 佳奈美 筒井 真優美 飯村 直子 込山 洋美 村田 恵子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.12-25, 2001-08-31
参考文献数
17
被引用文献数
14 1

子どもが検査・処置をどのように体験しているのかを明らかにすることを目的として参加観察を行い, 子どもが処置を体験するプロセスの中で「覚悟」という現象と, 覚悟に至る要因が抽出された. 処置を受ける子どもと親, および処置を担当した看護者・医師の4者18組を対象とし, おもにgrounded theory approachを用いて, 処置場面の参加観察, および処置に対する思い・説明内容等について半構成的インタビューを実施し分析を行った. その結果, 以下のことが明らかとなった.<BR>子どもの"覚悟"という現象は,「処置を受けるにあたり, 情緒的・認知的・精神運動的側面のバランスをとり, 処置を主体的に受容している状態」であった. そして, 覚悟に影響を与える要因として【まわりのゆとり】【過去の経験のイメージ】【子どもが選択できる可能性】【まわりとの一体化】【処置に対する代償利益の確認】【自らする覚悟の宣言】が挙げられた.<BR>覚悟に影響する6つの要因はどれもが子どもの自我機能強化につながっており, その強化の仕方によって, (1) 子ども自身がもともと持っている認知・情動との調整をはかって行動化する力 (自我機能) が十分に発揮されるあり方, (2) 子どもが認知と情動との調整をはかる主体であるということをまわりも認めることで, 子どもが自己コントロール感を取り戻し, 自ら行動化しやすくなるあり方, (3) 子どもの中で拭いきれない強い情動のゆれ (自我機能を弱めさせる外界からの力) にタイミングよくふんぎりをつけさせて行動化できるあり方, の3つに大別され構造化されていた.
著者
和田 彩 中村 康香 跡上 富美 佐藤 眞理 吉沢 豊予子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.213-219, 2016 (Released:2017-03-18)
参考文献数
43

目的:近年増加する就労妊婦に特化した支援を実現するには,就労妊婦としての特徴や就労妊婦ならではの心情に着目した知見が必要である.本概念分析の目的は「就労妊婦の罪悪感」の概念を明らかにし,今後の研究や就労妊婦に対する看護支援への示唆を得ることである.方法:分析は,Walkerらによる概念分析の手順に沿って行った.罪悪感の一般的な捉え方,心理学,精神医学・精神分析学,看護学における用法の分析の結果,9つの罪悪感の定義属性を抽出した.分析結果を就労妊婦の経験・実態・否定的感情,働く母親の罪悪感という観点から文献検討した内容と統合した.結果:就労妊婦の罪悪感は,[自己規範に違反した際の否定的感情],[行為の自制をする感情],[利益過剰状態に対する感情]の3概念で構成されていた.結論:就労妊婦の罪悪感は,就労妊婦に対する理解を深める上で重要な概念であり,妊娠期の心理的健康に影響を及ぼす可能性も考えられる.今後の更なる研究の蓄積,測定用具の開発が求められる.
著者
西上 あゆみ
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.257-266, 2016
被引用文献数
4

<b>目的</b>:本研究の目的は,作成した自然災害に対する病院看護部の備え測定尺度の信頼性と妥当性を検証することである.<br><b>方法</b>:尺度項目は文献検討等から作成し,専門家による修正,プレテストを経て,「計画」49項目,「組織化」11項目,「装備」14項目,「トレーニング」22項目,「予行演習」9項目,「評価と改善」9項目の114項目で作成された.対象は全国4,298施設の病院看護部であった.調査は郵送法で実施し,分析には相関係数,信頼性係数等を用いた.調査期間は2013年5~6月であった.<br><b>結果</b>:723施設から回答があり,有効回答は555施設(12.9%)であった.信頼性についてα係数は尺度全体得点で0.987, 下位尺度ごとのα係数も0.843~0.971であった.基準関連妥当性,構成概念妥当性も確保された.<br><b>結論</b>:項目数が多いという課題は残るが,この尺度は自然災害に対する病院看護部の備えを測定するための有用性を認めた.
著者
ライダー 玲子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.10-22, 1983-08-15 (Released:2012-10-29)
参考文献数
22
被引用文献数
1
著者
國方 弘子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.4_36-4_45, 2010-12-21 (Released:2011-08-15)
参考文献数
12
被引用文献数
2 2

本研究の目的は,精神に病をもつ人の自尊心回復に向けた看護支援プログラムの開発をめざして,自尊心が低下した時に,浮かぶ考えやとる行動,気分の経験世界がどのように繋がっているかを記述することである.方法は,34名の地域で住む当事者を対象に,修正版Grounded theory approachを用いて分析した.結果,自尊心が低下する状況が生じた時,《否定的な自己像》が活性化し,それにより,否定的な《バランスを失った思考》が次々に引き出され,それらの思考が頭の中をグルグル回り,《追い詰められた不快な気分》,《不快な身体現象》,自己内外に対し《攻撃または守りとしての行動》が生じ,彼らはその悪循環に巻き込まれていた.悪循環は自己に対する強いこだわりの思いから生じると解釈できた.悪循環から脱出する看護支援として,《否定的な自己像》を認識する,スキーマの修正,リラクゼーション活動,肯定的自己評価を意識化できる,などの必要性が示唆された.
著者
福井 小紀子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.1-9, 2002

本研究ではがん患者の家族の初期および末期における情報ニーズおよび情報伝達に関する認識とその関連要因について検討した. 対象は総合病院一般病棟および緩和ケア病棟へ入院したがん患者の家族であり, 質問紙を用いた面接調査を行い, 疾患, 治療, 予後, 患者および家族へのケアに関する情報ニーズおよび隋報伝達状況について尋ね, さらに各情報の伝達の有無への関連要因を検討した. 各期66名が対象となり, 情報ニーズを持つ家族のうち, 初期に疾患, 治療, 予後の情報伝達のあった家族は6-7割, 患者および家族へのケアに関する情報伝達のあった家族は1-3割であった. 末期は疾患, 治療, 予後および患者へのケアに関する情報伝達のあった家族は7-9割, 家族ケアに関する情報伝達のあった家族は約5割であった. また, 高齢, 患者への病名告知なし, および患者が治療を受けていない家族は情報ニーズがあるにもかかわらず有意に情報が伝達されていないと認識していた.
著者
牧野 智恵
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.10-18, 2000-03-31

本研究は, 未告知状況下におけるがん患者の家族と看護者のありのままの世界を理解し, 未告知状況下の患者・家族への看護の手がかりを見つけることを目的に, 現象学的方法論による面接を行った. 研究参加者は未告知がん患者の家族 (配偶者) 8名と, その受け持ち看護者8名である.<BR>現象学的方法論を用いた面接を行った結果, 以下のことが明らかになった.<BR>1. 未告知状況下におけるがん患者の家族の世界は, 告知後患者が悪い結果になるに違いないという <思いこみ (決めつけ)> から, 告知後の結果への <恐れ>, 告知後のかかわりへの <自信のなさ> の中でつらく, 苦しみ, 不自由な状況がみられた.<BR>2. 未告知状況下のがん患者の受け持ち看護者の世界は, 家族と同様 <思い込み><恐れ><自信のなさ> の要因の他に,<無関心><多忙> の要因のなかで, つらく不自由な状況が見られた.<BR>3. 参加者は面接の初めの頃, 1.2. のような状況であった. しかし, 現象学的方法論を用いた面接をすすめるにしたがって, 参加者は「~したい」気持ちと「~してはいけない」気持ちの中でつらく不自由な自分の姿に気づき始め, 自分の本来のあるがままの気持ちに素直に動き始める世界が見られた.
著者
吉田 久美子 神田 清子
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.23-31, 2010-06-21
被引用文献数
3

目的:がん治療が外来へと移行している動きに伴い,がん患者には治療や進行に伴い変化する心身の状態を調整する能力が求められている.本研究の目的は,がん患者のセルフケアの構成概念を導くことである.<br>方法:分析方法はRodgersのアプローチを用い,概念分析を行った.これまでの看護実践をもとにしたがん患者のセルフケアに焦点をあてるために医中誌とPubMedから文献を検索,収集し,質的に分析した.<br>結果:対象となった76文献の中では,がん患者のセルフケアについての明確な定義づけはされていなかった.分析により,がん患者のセルフケアの概念は,4つの先行要件,4つの属性,2つの帰結,2つの関連概念が抽出された.<br>結論:がん患者のセルフケアの定義は,『がんに関する情報の探索と活用により,生活を保持するための意思決定を行うことである.そしてがん治療に伴う副作用や状態の変化へ対処し,がんの進行を抑えるための保健行動の実行から構成される』と定義づけられた.
著者
赤堀 八重子 飯田 苗恵 大澤 真奈美 原 美弥子 齋藤 基
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.27-35, 2014-03-20 (Released:2014-03-12)
参考文献数
19

目的:特定保健指導における未利用の理由の構造を明らかにすることである.方法:A町の特定保健指導の未利用者10人を対象とし,未利用の理由に関連する3点を質問項目として半構造化面接を行い,KJ法を用いて質的に分析した.結果:特定保健指導における未利用の理由の構造は,【“私という領域”がある】【私には“良好な健康”より大切な生きがいがある】【私に限定せずに必要な人への活動を望む】という3つの要素から構成されていた.各要素の関係性として,【“私という領域”がある】は健康観に基づく自己決定の権利を示し,他の要素の基盤となり支持していた.さらに,各要素には,現在の身体状態を健康と捉える健康観が根底にあり,相互に影響することで未利用の理由が強化される関係にあることが示された.結論:未利用の解決には,未利用者の健康観を考慮した支援を行うことの重要性が示唆された.
著者
高山 成子 水谷 信子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.46-55, 2001-08-31
被引用文献数
5 1

本研究の目的は中等度・重度痴呆症高齢者に残された現実認識の力を明らかにすることである. 65才以上のアルツハイマー型痴呆症高齢者5名を対象に, 研究者が生活の場でケアしながら対話した言葉を, 質的・帰納的方法で分析した.<BR>その結果, 彼らは「照れ笑い」「言い訳, 言い繕う」「自己決定する」と他者に気持ちや感情を表現する力と,「大笑いする」「繰り返し聞き返す」「気遣いをする」「口調を変えて主張する」「行動をリードする」と他者に働きかけて関係を作ろうとする力を示した.残された現実認識の力を示す中心的な概念は彼らが「他者を認識し,他者との相互作用がある」であった.<BR>本研究で明らかにされた痴呆症高齢者に残された力は, 看護者が痴呆症高齢者の残された力に眼を向けるための指標となり, また彼等の力を維持するための助けとなるかもしれない.
著者
佐藤 みほ 朝倉 京子 渡邊 生恵 下條 祐也
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.63-71, 2015-05-15 (Released:2015-05-26)
参考文献数
26
被引用文献数
1 5

目的:北米で作成された職業コミットメント尺度(OCS)を日本語に翻訳し,日本語版OCSの信頼性と妥当性を検証した.対象と方法:看護師を対象とした予備調査において尺度の信頼性と因子構造を確認後,看護師4046名を対象に本調査を実施し,1331名(有効回答率32.9%)を分析対象とした.結果:探索的因子分析により,情緒的職業コミットメント,功利的職業コミットメント,規範的職業コミットメントの3因子が抽出され,確証的因子分析で良好な適合度が得られた.信頼性係数は尺度全体が0.817,下位尺度が0.756~0.837であり,I–T相関はおおむね良好な値が得られた.併存妥当性の基準とした職務満足感とは有意な正の相関が,離職意向とは有意な負の相関が認められた.結論:1項目のみ日本語訳の信頼性,妥当性が十分に得られず,結果の解釈に留意が必要であるものの,日本語版OCSについて,一定の信頼性,構成概念妥当性および併存妥当性が確認された.
著者
福田 珠恵
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.41-50, 2005
被引用文献数
1 2

本研究は, 老年期に痴呆症という病を生きる体験とはどのようなものかを明らかにすることを目的とした. 痴呆性高齢者専門グループホームでケアに参加しながら44日間のフィールドワークを行い, 情報提供者14名に起こった出来事, 会話, 表情, ふるまいの観察記録, 日記をデータとし, グループホームの日誌, 家族と援助員の話を補足データとした. データの意味を解釈し共通する内容をテーマとした. その結果,《痴呆症という病の始まり》《我が家への思い》《閉ざされた感覚》《自分が存在しない》《他者との関係に見える情けない自分》《何もわからなくなる自分と折り合うための対処》《生きる支え》の7つのテーマが抽出された. 老年期に痴呆症という病を生きる体験は, 自己の存在が不確かになる中で, 再び自己の存在の確かさを求めてゆく過程であることが示唆された.
著者
松下 年子
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.4_63-4_66, 2013

消化器外科病棟で手術を受ける65歳以上の患者84名を対象に,看護師が日本語版NEECHAM混乱・錯乱状態スケールを用いて,術後1~7日目までの患者の混乱・錯乱状態を評価した.その後看護師31名を対象に,NEECHAMの使用をルーチンワークとする可能性等について質問紙調査を実施したところ,「スケールを使用してせん妄の観察力や判断力がアップした」という者は全体の22.6%,「スケール使用による業務負担が大きい」という者は76.7%,病棟でのスケール使用のルーティン化については,「今の忙しい病棟では望まないが,もう少し余裕のある状況であれば望む」が35.5%,「望まない」が38.7%,「なんともいえない」が22.6%であった.今後の課題として,事前研修や業務量などの環境調整,NEECHAM評価をいかに患者ケアに生かすかという観点からのスーパービジョンや,事例検討会の開催等の必要性が示唆された.