著者
野高 朋美 荒木田 美香子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.225-233, 2017 (Released:2017-12-21)
参考文献数
26
被引用文献数
1

目的:知的障害者が医療機関の受診を困難と感じるプロセスを保護者の意見から明らかにする.方法:知的障害者の保護者3グループの計14名にフォーカスグループインタビューを行い,M-GTAで分析を行った.結果:保護者から明らかとなった知的障害者が医療機関の受診を困難と感じるプロセスは〔スムーズな受診への不安とその緩和に対する負担〕に加え〔医療機関での不快体験や失敗体験による受診負担の増加〕があり,〔受診負担解決への無力感〕〔受診への自信喪失〕が生じることで【医療機関を訪れることへの気後れ】となっていた.【保護者・医療機関・社会がそれぞれできる取り組み】は【医療機関を訪れることの気後れ】に影響すると保護者は考えていた.結論:知的障害者が医療機関の受診を困難と感じるプロセスは【医療機関を訪れることへの気後れ】であり,保護者・医療機関・社会のそれぞれの努力により軽減できる可能性が示された.
著者
田口 めぐみ 宮坂 道夫
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.350-358, 2019

<p><b>目的:</b>看護師が自己規範とチーム規範との不一致によって経験するジレンマの内容,ジレンマ対応の様式,対応に影響を及ぼす因子を明らかにする.</p><p><b>方法:</b>ジレンマの内容と経験および対応について,看護経験2年以上の看護師21名にインタビューを行い,構造的ナラティヴ分析とテーマ的ナラティヴ分析を組み合わせた分析を行った.</p><p><b>結果と考察:</b>構造的ナラティヴ分析の結果から,ジレンマを経験した際の対応は,イ)ジレンマに対してチーム規範に則って行動した,ロ)-①ジレンマに対して個人の可能な範囲で行動した,ロ)-②ジレンマに対して小集団から同意を得られた場合に行動した,ハ)-①ジレンマに対して自己規範に則って行動したがチーム規範に変化をもたらさなかった,ハ)-②ジレンマに対して自己規範に則って行動しチーム規範に変化をもたらした,に分類できた.テーマ的ナラティヴ分析の結果から,ジレンマ対応に影響を及ぼす因子は,看護経験年数,異動経験の有無,周囲との対立回避,賛同者の獲得,役割意識に基づく行動であった.患者の多様なニーズへの対応には,看護師個人とチームの相互における継続的な検討が必要である.</p>
著者
田中 浩二 長谷川 雅美
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.1-10, 2014-03-20 (Released:2014-02-24)
参考文献数
21
被引用文献数
1

目的:高齢者のうつ病からの回復について,生活世界との関連の中で明らかにすることである. 方法:うつ病と診断され精神科治療を受けており,寛解または維持期にある65歳以上の高齢者8名を対象に,非構成的面接を行い,Giorgiの科学的現象学的方法で分析した. 結果:高齢者は,うつ病の発症から急性期にかけて心身が【生活世界からの疎外や圧迫】を受けており,生活世界の中で自由に生きることができなくなっていた.そのような疎外や圧迫が強くなることによって,【厭世観による死の衝動からの支配】に至っていた.これらの体験は,治療につながるきっかけとなり,精神科治療を受ける中で【生活世界へ帰還するきっかけを実感】することができていた.生活世界への帰還は,うつ病からの寛解を意味していた.うつ病高齢者にとっての生活世界への帰還のあり方は【なじみの人間関係や日常生活に帰還】し,【死の衝動からの解放と天寿全うへの託し】に至ることであった. 結論:看護師は,高齢者のうつ病からの回復を支援するために,【なじみの人間関係や日常生活への帰還】【死の衝動からの解放と天寿全うへの託し】を重視した環境創りをすることが重要である.
著者
坂井 郁恵 水野 恵理子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.3_32-3_41, 2011-09-20 (Released:2011-10-25)
参考文献数
19
被引用文献数
2 3

目的:地域で生活する精神障害者の生きがいの具体的内容と特徴,生きがいに影響を与える体験を明らかにすることを目的とした.方法:対象は,3年以上地域生活を続け研究に同意が得られた精神障害者17名であり,半構成的面接を実施し,得られたデータを質的に分析した.結果:生きがいの内容を示す5つのカテゴリ【他者の存在と関わり】【現在の生活への肯定的な感情】【趣味】【信仰】【仕事】と,生きがいに影響を与える要因を示す6つのカテゴリ【自覚する症状と病気】【他者による肯定的な理解と助言】【現在の生活】【あえて距離をとる対人関係】【家族との関係】【生きがいの気づきにくさ】が抽出された.結論:地域で生活する精神障害者は,自分を理解し支えてくれる他者の存在や,現在の生活への肯定的な感情,現在の趣味を生きがいとしている者が多くみられ,生きがいは普段の生活の中に多様に存在していた.また,生きがいの気づきにくさをもつ者もおり,精神障害者にとって他者の関わりは重要であると考えられた.
著者
稲垣 久美子 古澤 亜矢子 村瀬 智子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.41-50, 2016 (Released:2016-09-30)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

目的:一般病棟で臨床経験を有する看護師が,初めて緩和ケア病棟に配属された後,2年未満に感じる心理的負担と対処の特徴について明らかにする.方法:質的記述的研究方法とし,半構成的インタビュー法を用い,得られたデータを質的帰納的に分析した.結果:7名の緩和ケア病棟看護師の個別分析結果を統合し,4段階の分析過程を経て,心理的負担は8の上位カテゴリーに集約され,心理的負担への対処は9の上位カテゴリーに集約された.結論:1)緩和ケア病棟看護師が配属後2年未満に感じる心理的負担の特徴は,【自分の経験がゼロになったような無力感と戸惑い】が中核となり,三層に構造化され,この中で,心理的負担は看護経験を重ねる過程で変化していたが,その一方で経験を重ねても抱き続ける心理的負担もあることが明らかになった.2)心理的負担に対して,看護経験を重ねる過程で後ろ向きの対処から前向きな対処へと変化しており,これらの変化に影響を与える要因には,緩和ケア病棟看護師のレジリアンスが関係していると考えられた.
著者
岡本 留美 我部山 キヨ子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.194-202, 2015-11-02 (Released:2015-11-17)
参考文献数
28

目的:胎児異常の診断を受けた女性とそのパートナーの支援に関する文献を整理し,支援の方向性と今後の研究課題について示唆を得る.方法:PubMed, Web of Science, 医学中央雑誌を用いて“fetal abnormality (胎児異常)”“women(女性)”“partner(パートナー)”“nursing(看護)”をキーワードに2003年1月から2013年12月の期間に発表された文献を検索.胎児異常を診断された女性の体験や心理に関する研究とパートナーの体験を含む26文献(国内文献10件・海外文献16件)を分析対象とした.結果:妊娠期の女性に焦点を当てた研究がほとんどであった.女性とパートナーの心理特性では,診断時における悲嘆,不安,ショック,などの心理的反応に性別の違いはなく,夫婦間での一致の頻度は高かった.また,夫婦ともにネガティブな感情だけでなく,希望などのポジティブな感情もみられた.医療者には,胎児異常の診断時から正確な情報提供を行うことや共感的で継続的な支援が求められていた.結論:日本の研究は海外に比べ集積が少ない現状にあり,日本の社会文化的背景のなかでの検討が必要である.今後は,ケアシステム構築のため,パートナーも含めたケアニーズやケアの質評価に関する検討が必要である.女性とそのパートナーの支援を行う看護者への教育プログラムの必要性が示唆された.
著者
溝口 全子 松岡 緑 西田 真寿美
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.92-102, 2000-11-30 (Released:2012-10-29)
参考文献数
28
被引用文献数
1

本研究の目的は, 女子大学生のダイエット行動において, 比較的緩やかなダイエット行動をとる人, 健康をも脅かすような過激なダイエット行動をとる人の背景に何が関与しているのか, 各々の行動に及ぼす影響要因の違いについて明らかにすることであった. 調査では, PenderのHealth Promotion Modelの枠組みを参考に, ダイエット行動に関連す る要因を (1) 個人的因子: 生物学的要因 (体脂肪率・年齢・家族の肥満), 心理学的要因 (主観的健康評価・集団回帰傾向・体型不満・ボディイメージ), 社会的要因 (周囲のダイエット行動者・ダイエットに関する話題の頻度), (2) 過去の関連行動: 過去のダイエット経験, ダイエット情報の収集, 情報源, 体型・体重に関する嫌な体験, (3) ダイエット行動に対する特別な認識と感情: 痩せ願望, 自己効力感と設定し, 看護女子大学生203名を対象に調査した. その結果, 以下のことが得られた.1) 緩やかなダイエット行動, 過激なダイエット行動には共通して痩せ願望が影響していた.2) 緩やかなダイエット行動のみに影響する要因は専門的情報, 自己効力感があった. 過激なダイエット行動のみに影響する要因は家族の肥満, 過去のダイエットの成功体験, 体型・体重に関する嫌な体験があった.3) 痩せ願望をもたらす要因では, 過去の関連行動, 生物学的要因, 心理学的要因, 社会的要因の順に影響力が強かった.痩せ願望があっても自己効力感が高ければ, 専門的・健康に基づいたダイエット情報を得て, 緩やかなダイエット行動をとることが示唆された. 今後, 自己効力感を高めていくような介入が必要と考えられる.
著者
安酸 史子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.2_38-2_44, 2009-06-29 (Released:2011-08-30)
参考文献数
10
被引用文献数
1
著者
広瀬 寛子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.45-57, 1992-09-30 (Released:2012-10-29)
参考文献数
32

本論文の目的は看護研究における現象学的アプローチの適用と課題について考察することである. そのために, まず, 現象学的方法の特性を論じ, 次に, 筆者が看護研究において, 現象学的アプローチを選択するまでのプロセス及び現象学的分析方法を完成させるまでの作成過程について論じた.現象学的方法とは, 因果関係を明らかにしようとするものではなく, むしろ生きられた体験としての現象の本質を明らかにしていくことを探究する記述的研究方法である. 筆者は, これまで看護学生の体験世界と, 患者と看護婦との体験世界に焦点を当てた研究を行ってきた. それらの研究に共通に流れているテーマは, 人間の行動・経験にはすべて, その人個々の意味があり, その意味を重視したいということであり, そのテーマを明らかにするためには現象学的方法が一番適していると考えた. そのような経緯から, Giorgi, A.の現象学的分析方法を参考として, 事例分析方法と看護面接過程の分析方法を作成した. 看護面接過程の分析過程は以下のようにまとめられた; (1) 本質的な意味の単位である場面に分ける; (2) 各場面のテーマを記述する; (3) テーマの中心的意味を記述する; (4) テーマの中心的意味を総合し, 統合して, 状況的構造的記述と一般的構造的記述を導き出す.
著者
溝口 全子 松岡 緑 西田 真寿美
出版者
日本看護科学会誌
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.92-102, 2000
被引用文献数
1

本研究の目的は, 女子大学生のダイエット行動において, 比較的緩やかなダイエット行動をとる人, 健康をも脅かすような過激なダイエット行動をとる人の背景に何が関与しているのか, 各々の行動に及ぼす影響要因の違いについて明らかにすることであった. 調査では, PenderのHealth Promotion Modelの枠組みを参考に, ダイエット行動に関連す る要因を (1) 個人的因子: 生物学的要因 (体脂肪率・年齢・家族の肥満), 心理学的要因 (主観的健康評価・集団回帰傾向・体型不満・ボディイメージ), 社会的要因 (周囲のダイエット行動者・ダイエットに関する話題の頻度), (2) 過去の関連行動: 過去のダイエット経験, ダイエット情報の収集, 情報源, 体型・体重に関する嫌な体験, (3) ダイエット行動に対する特別な認識と感情: 痩せ願望, 自己効力感と設定し, 看護女子大学生203名を対象に調査した. その結果, 以下のことが得られた.<BR>1) 緩やかなダイエット行動, 過激なダイエット行動には共通して痩せ願望が影響していた.<BR>2) 緩やかなダイエット行動のみに影響する要因は専門的情報, 自己効力感があった. 過激なダイエット行動のみに影響する要因は家族の肥満, 過去のダイエットの成功体験, 体型・体重に関する嫌な体験があった.<BR>3) 痩せ願望をもたらす要因では, 過去の関連行動, 生物学的要因, 心理学的要因, 社会的要因の順に影響力が強かった.<BR>痩せ願望があっても自己効力感が高ければ, 専門的・健康に基づいたダイエット情報を得て, 緩やかなダイエット行動をとることが示唆された. 今後, 自己効力感を高めていくような介入が必要と考えられる.
著者
大須賀 ゆか
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.3-12, 2005-03-20 (Released:2012-10-29)
参考文献数
38
被引用文献数
9 4

【目的】本研究は, 手洗い行動に関係性の強い因子を明らかにし手洗い行動の改善への示唆を得ることを目的とした.【方法】2病院の看護師93名を対象に構成的観察法と自記式質問紙法を実施し, 手洗い行動 (手洗いの実施・手洗いの質) と経験, 教育, 関心, 知識, 忙しさ (看護業務量・スタッフ不足) の関係の有無・関係の強さを探索した.【結果】手洗いの実施には看護業務量, 教育, 経験が影響していた. 手洗いの質には看護業務量とスタッフ不足が影響していた. 手洗いの実施では, 看護業務量の変数である1時間の仕事数が25を超えるとオッズ比は7.75となり, 35を超えると12.99となった (CI. 1.54~39.03, 1.64~102.72). 手洗いの質では, 仕事数が25を超えるとオッズ比は6.86となり, 35を超えると28.52 (CI. 1.43~32.95, 2.43~335.08) となった.【結論】手洗い行動に関係する因子は, 忙しさ, 教育, 経験であり, 手洗い行動を改善するためには, 看護業務の見直しを中心とした忙しさの改善, 擦式手指消毒剤を使用した手洗いの推奨とトレーニング, 感染に関する院内教育の充実の必要性が示唆された.
著者
大坂 和可子 青木 頼子 江藤 亜矢子 北 奈央子 有森 直子 中山 和弘
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.334-340, 2019 (Released:2020-03-14)
参考文献数
22
被引用文献数
2

目的:本研究の目的は,患者の意思決定の葛藤をスクリーニングするSURE(Sure of myself; Understand information; Risk-benefit ratio; Encouragement)test日本語版を,言語的妥当性を踏まえ開発することである.方法:SURE test日本語版は,第1段階:2名による順翻訳,第2段階:順翻訳統合,第3段階:2名による逆翻訳,第4段階:研究者協議(暫定版作成),第5段階:一般市民,医療者への調査,第6段階:再検討,を経て開発した.結果:暫定版作成後,第5段階の一般市民と医療者32名の調査において,「わかりやすい」と回答した割合は各項目で47%から78%であった.第6段階にて言語的妥当性を再検討し,日本語版を確定した.結論:一連の過程を経て,言語的妥当性を踏まえたSURE test日本語版を開発した.
著者
谷口 綾 大久保 功子 齋藤 真希 廣山 奈津子 小田柿 ふみ 三隅 順子
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.94-102, 2014-03-20 (Released:2014-05-30)
参考文献数
16
被引用文献数
2 1

目的:帝王切開で出産した女性の,妊娠中から産後1か月までの帝王切開に対する心理的プロセスとその影響要因を明らかにし,看護支援への示唆を得ることを目的とした.方法:グラウンデッド・セオリー・アプローチを用い,帝王切開後の女性18名に半構造化面接を行って分析し理論化を試みた.結果:女性は帝王切開に対する〈心づもり〉と〈意味づけ〉のプロセスをたどることで,帝王切開に対する〔覚悟〕と〔納得〕に至る.それらは〈帝王切開の可能性の認識〉をした時点から始まり,〈手術への恐怖〉や〈自然分娩への未練〉は阻害要因,医療者や経験者とのやりとりは促進要因となる.〈意味づけ〉は分娩後にも続く.緊急帝王切開では〈心づもり〉や〈意味づけ〉ができないまま手術に臨む場合があるが,〔納得〕するためには,分娩後に〈意味づけ〉が行われる.考察:帝王切開に対する〔覚悟〕と〔納得〕の理論を軸に,〈心づもり〉と〈意味づけ〉を促すような具体的な看護支援が示唆された.
著者
新宮 洋之 安保 寛明
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.270-277, 2019 (Released:2020-02-29)
参考文献数
27
被引用文献数
6

目的:看護師を対象に,構造的エンパワメントと情動的コミットメント,ワーク・エンゲイジメントの関係を明らかにする.方法:東北地方のA県ならびに政令指定都市B市内の病院に勤務する看護師を対象に,質問紙調査を行った.結果:構造的エンパワメントから情動的コミットメントならびにワーク・エンゲイジメントには,それぞれ有意な正のパスがあった.また,構造的エンパワメントからワーク・エンゲイジメントを介した情動的コミットメントには有意な正のパスがあったが,構造的エンパワメントから情動的コミットメントを介したワーク・エンゲイジメントへのパスは有意な関係になかった.結論:構造的エンパワメントは,看護師の情動的コミットメントならびにワーク・エンゲイジメントを高めることが示唆された.また,看護師における構造的エンパワメントと情動的コミットメント,ワーク・エンゲイジメントの関係には,方向性があることが示唆された.
著者
松本 智里 加藤 真由美 兼氏 歩 福井 清数 髙橋 詠二 平松 知子 谷口 好美
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.309-317, 2018 (Released:2019-03-09)
参考文献数
37

目的:女性変形性股関節症患者の術前後の歩容の自己評価と心理社会的側面を,人工股関節全置換術(THA)患者と低侵襲寛骨臼骨切り術(SPO)患者の2つの視点から比較し検討した.方法:術後6~12ヶ月の女性THA患者とSPO患者に無記名自記式質問紙調査を行い,術前と術後の歩容の自己評価と心理社会的側面を比較した.結果:THA患者70名,SPO患者10名から回答を得た.THA患者とSPO患者の歩容の自己評価はともに術前より術後に改善した.術前の歩容の自己評価と関連したのは,THA患者は跛行への思いと杖歩行への思い,抑うつであった.術後の歩容の自己評価と関連したのは,THA患者は自尊感情と抑うつ,公的自己意識,全体的健康感で,SPO患者は全体的健康感のみであった.結論:女性変形性股関節症患者の歩容の自己評価をアセスメントすることは心理社会的側面の支援の一助となると示唆された.術式によって関係する心理社会的側面の項目には違いがあり,各々の時期や特徴に合わせたケアの必要性が考えられた.
著者
藤井 夕香 磯和 勅子 平松 万由子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.179-188, 2016 (Released:2017-02-25)
参考文献数
18
被引用文献数
2

目的:外来通院をしている高齢糖尿病患者がインスリン自己注射手技を正確に実施することに影響する要因を明らかにする.方法:65歳以上の在宅にてインスリン自己注射を行っている糖尿病患者に対し,正確な自己注射手技に影響すると考えられる15の要因を独立変数,正確な自己注射手技の可否を従属変数として,ロジスティック回帰分析を行った.結果:対象者は105名で,平均年齢は74.0 ± 5.4歳であった.ロジスティック回帰分析の結果,正確な自己注射手技に関連していたのは,改訂長谷川式簡易認知評価スケールで評価した認知機能が高いこと(オッズ比1.16,95%信頼区間1.01~1.33),看護師を中心とした医療従事者の支援があること(オッズ比6.35,95%信頼区間1.43~28.28)であった.結論:認知機能の低下があると,正確なインスリン自己注射手技が困難となる.しかし,看護師を中心とした医療従事者のサポートがあると正確な自己注射手技が実施できる可能性が高まることが示唆された.
著者
福田 和明
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.56-64, 2005-06-20 (Released:2012-10-29)
参考文献数
20

本研究の目的は, 全身性エリテマトーデス女性病者の他者との関係性のおける病気の影響とそれに伴う体験を明らかにすることである. 外来通院している21名の女性に, 半構成的面接を実施し, グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて継続的に比較分析した.女性の他者との関係性における体験は,【病気を見せる】【病気を見せない】と【わかってもらえる】【わかってもらえない】が中心であり, これらは相互に関連していた. また, 発病から現在に至るまで, および将来の病気の見通しを含む病気体験が見出され, それらとの関連も見出された. 女性病者は他者との関係性への病気の影響を最小化するために,【病気を見せる】【病気を見せない】を意図的に行うようになっていた.
著者
片岡 弥恵子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.51-60, 2005-09-15 (Released:2012-10-29)
参考文献数
29
被引用文献数
9 19

本研究は, 日本の周産期で使用できるDVのスクリーニングツール「女性に対する暴力スクリーニング尺度 (Violence Against Women Screen: VAWS)」を開発し, 信頼性および妥当性, 正確度を検討することを目的とした. VAWS (案) は, 9項目から構成される3段階リカート尺度で, 得点が高いほどDVのリスクが高まる得点構成とした. 加えて, 至適基準として日本語版配偶者虐待尺度, 併存妥当性の検討に用いる日本語版GHQ30および自尊感情尺度を用いて, 妊婦328名に調査を実施した.VAWSは, 項目の分析により7項目で最適解となった. VAWSは, 因子分析および主成分分析の結果, 一元性の因子構造であった. 日本語版GHQ30 (r=.30) と自尊感情尺度 (r=-.26) との有意な相関により併存妥当性が認められた. 信頼性係数Cronbach's α は.70であった. カットオフポイントを9点にするとVAWSの感度は86.7%, 特異度は80.2%, 陽性尤度比4.38となった. スクリーニング方法 (自記式とインタビュー) では, 感度は自記式のほうが高く(89%vs.83%), つまり自記式のほうがDV被害を見逃さないことが明らかになった. 以上より, VAWSは妥当性および信頼性を有するDVのスクリーニングツールとして, 特に周産期実践での実用化の可能性が示唆された.
著者
笠原 聡子 杉本 千恵 岡 耕平
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.160-168, 2018 (Released:2018-11-13)
参考文献数
34
被引用文献数
2

目的:二次元レジリエンス要因尺度(BRS; Bidimensional Resilience Scale)の信頼性と妥当性を看護学生と看護師で検討する.方法:看護学生246名と看護師881名に自記式質問紙調査を実施した.BRSについて,Cronbachのα,精神的回復力尺度(ARS; Adolescent Resilience Scale)との相関・偏相関分析,共分散構造分析による高次因子分析を行った.結果:看護学生230名と看護師742名から有効回答を得た.高次因子分析により2尺度(資質/獲得RS)7因子の2次元構造が確認された.統御力を資質RSから獲得RSに移行したモデルでの適合度改善はなかった.Cronbachのαは0.49~0.85であり,ARSと有意な相関があった.結論:BRSの信頼性と妥当性は確認されたが,一部因子では結果の解釈に注意が必要である.
著者
緒方 久美子 佐藤 禮子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.21-29, 2004-09-15 (Released:2012-10-29)
参考文献数
18
被引用文献数
4 4

本研究の目的は, ICUに緊急入室した患者の家族員が表す情緒的反応を明らかにし, 家族員が状況に適切に対応できるための看護援助のあり方を検討することである. ICUに緊急入室した患者の家族員8名を対象に, 情緒的反応に関する内容について半構成的面接と参加観察による調査を行い,質的帰納的に分析し, 以下を明らかにした.ICU緊急入室患者の家族員の情緒的反応は,【先の見通しが立たない】,【医療者を信頼する】,【支えられている】,【負担に感じる】,【患者を守りたい】など, 17の主題にまとめられた. さらに, その意味の性質から,『回復の期待』,『医療への信頼』,『独りではない自分』,『課せられている自己』,『家族の絆』の5つの情緒的反応の本質が抽出された.家族員が状況に適切に対応できるための看護援助のあり方は, 家族員が回復の期待を持ち続けることができる援助, 家族員が医療への信頼を実感できる援助, 家族員が周囲の支援を効果的に使うことができる援助, 家族員が看病を長期的視野に入れることができる援助である.