著者
石川 英輔
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.69, no.12, pp.1273-1276,a3, 2001-12-01 (Released:2011-08-11)

江戸時代の, 水田稲作を中心とした農村地帯の資源循環について述べた。稲作のための豊かな水は, 豊かな山林の生きた土により瀕養され, 水田を潤すとともに人々の生活を支えてきた。そして, そのシステムは今日でも本質的には変わりがない。また, 米とともに収穫された稲わらをはじめとする農産廃棄物は, 有害物質のない貴重な資源として, 農村, 都会で有効に再利用され, 1年以内にはまた土へ戻るという, 物質の循環構造があったるエネルギーは, かつてはほとんどが人力であったが, 環境を汚すようなことはなかった。しかし, 太平洋戦争以降の化石エネルギーの大量消費は, 労働力の削減, 利便性の向上, 産業の近代化に貢献したが, その見返りとして環境の悪化や複雑な社会問題をわれわれに突きつけることとなった。
著者
山本 晴彦 早川 誠而 鈴木 義則
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.65, no.9, pp.943-948,a2, 1997-09-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
11

神戸市長田区と須磨区に立地する小規模な7つの都市公園を対象に, 阪神大震災による公園内に植栽された樹木の被災状況と延焼防止機能を調査した。菅原通公園, 御蔵通公園, 大国公園の植栽の被災率は, 38%, 10%, 58%であった。これらの公園における周辺の焼失地域は1~2方位で, 公園の周縁部に植栽されたクスノキなどの常緑性高木樹が火炎を遮断することで公園内部に植栽された樹木の被災率が低くなった。さらに, 公園内に設けられたオープンスペースの存在が相乗効果となり, 後背部への延焼防止「焼け止り」の現象が発揮されたと考えられた。植栽の被災率が比較的低かった公園では, 被害樹の樹勢が徐々に回復していることがわかった。
著者
三田 長義
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.67, no.9, pp.915-920,a1, 1999-09-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
9
被引用文献数
1

わが国の土地改良に関する法制は, 明治維新から始まり明治・大正・昭和十年代にかけて土地に関する法規と水利に関する法規とが制定され, 主として土地の所有者が農地の改良, 水田の開発, 道水路等の施設維持を行う仕組みとなっていた。戦後における占領制度と農業事情等を背景として, これらの農業関係法制が廃止され新たな土地改良法制が誕生することとなったもので, 本稿は, 土地改良法制定30周年を記念して作成された「土地改良制度資料集成」から要約して土地改良法制定の背景と経緯を紹介する。この法律が占領政策の中にあって, 新たな耕地行政の柱となるべく法案づくりにご苦労された方々を取り巻く背景の一部でも知っていただきたい。
著者
佐藤 常雄
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.5-8,a1, 2005-01-01 (Released:2011-08-11)

江戸時代末期の伊万里焼の絵皿に描かれた農村風景の絵画資料から日本における 「水土文化の原風景」 をさぐってみたい。内径1尺の染付絵皿は, 水源となる霊山の麓で稲作の初めと終わりをそれぞれ象徴するモノとして蛇籠と案山子を左右対照で描いている。ただし, 絵皿には人物は一切登場しない。しかし, 霊山・蛇籠・案山子の三者を結び付けるのは農民であり, 日々の暮らしにかかわる人々の四季を通してのいとなみである。また, 蛇籠と案山子は現在の暮らしにおいて再評価される存在となっている。ここに「水土文化の原風景」を見出すことができる。
著者
橋本 禅 松浦 正浩
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.399-403,a1, 2007

司法制度改革の進展と軌を一にして, 行政においても, 公共事業の計画策定や建設工事における紛争の予防手段として, 裁判外紛争処理手法の一つであるメディエーションの活用に対する関心が高まりつつある。本報では, 紛争処理の実践および研究の両面での先進国である米国の農務省農業メディエーション・プログラム認証事業について, その制度の枠組と運用の実態について報告を行う。本認証事業は, 州政府の農業に関わる紛争の解決に向けたメディエーション・プログラムの設立と運営を認証・支援する事業制度である。本認証事業は, さまざまな農業紛争の当事者へ, 手ごろな価格で, 建設的かつ公正な話合いの場を提供し, 柔軟な問題解決を可能にしたと米国でも高い評価を受けている
著者
増島 博
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 = Journal of the Agricultural Engineering Society, Japan (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.15-18, 2001-01-01
参考文献数
7
被引用文献数
1

世界人口が静止人口に達するまで, あと200年かかる。その間, 世界の食料供給は保証されるであろうか。日本は潜在生産力は高いにかかわらず, 食料自給率を落としている。食料生産のための土地, 水, リン等の生産資源の調達は困難になる一方, 廃棄物は集積する。21世紀には環境保全型農業の確立が強く求められるが, 食料生産と環境保全を両立させるには, 農業を中心とする資源循環型社会の確立が必要である。<BR>20世紀における食料生産手法の問題点の反省から, 新しい循環型生産システムのライフ・サイクル・アセスメントの必要性について論議する。
著者
酒本 義司 小木曽 凡芳 渡邉 圭四郎
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.74, no.10, pp.899-902,a1, 2006-10-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
10

湖底にヘドロが堆積すると, 湖沼内の水を浄化しても, ヘドロより栄養塩類が溶出し湖沼の浄化は進まない。したがって, 現在はヘドロを湊深し水質浄化を図っている。しかし, ヘドロの湊深は工事費用が高価である。今回, 湖底に堆積したヘドロを, 湖面まで吸い上げ, 酸素を供給した後湖底に沈殿させることにより湖底のヘドロを浄化する安価な技術を開発し, 現場で実験した。同実験結果を得たので以下に報告する。(1) 実験結果の要約汚泥の色: 灰色→茶色。硫化物: 0.06→0.01mg S/g/d(2) 経済比較 (計算値) 湊深の場合=1,625円/m2提案技術の場合=53.5円/m2
著者
近田 昌樹
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.1171-1176,a2, 1994

中山間地域の振興は, 過疎地が多く地理的にも不利な地域が多いため成功例は少ない。そこで, 四国山地に位置する久万 (くま) 町の成功しつつある事例を紹介し, その特徴と課題を考察する。<BR>久万町では, 農林兼業の農家が中心であるが, 1960年から町全域の振興計画をたて, 圃場整備を行い高原トマト, 大根等の野菜により農業を発展させてきた。観光では, ふるさと村, 国民宿舎やラグビー場, スキー場等により日帰り, 宿泊客を増やしている。<BR>こうした取組みは, 町主導で行われてきたが, それに続いて民間の参入もでてきている。その特徴は, 活性化計画の早期樹立, 国庫補助の有効利用, 生産基盤と営農との協調, 地域資源の利用等である。
著者
牧山 正男 伊東 太一
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.73, no.9, pp.793-796,a1, 2005

水田や水路を主な生息場所とする外来種, スクミリンゴガイは, 関東以北ではなじみが薄いものの, 九州・四国地方を中心にそのイネに対する食害, 特に直播イネへの初期生育期における食害が今日では深刻な問題となっている。こうした食害の抑制には浅水管理が有効とされているが, それに対する水田管理の観点からの検討は行われていない。本報ではこのスクミリンゴガイのわが国における移入の経緯や生態について紹介し, 分布や被害の実態などについて独自のアンケートによって把握した上で, 水田浅水管理によるスクミリンゴガイ食害の抑制について, 田面均平精度と湛水深管理に着眼してモデル的に検討し, その有効性と限界について言及した。
著者
上田 正勝 工藤 郁二 高間 玉城 佐藤 正昭 居城 勝四郎 濱田 幸博
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.74, no.12, pp.1083-1087,a1, 2006

斜網地域は, ばれいしょ・てんさい・小麦を主な輪作作物とした大規模畑作地帯であるが, 年間降水量800mmの全国有数の寡雨地帯であり, 農業生産性の向上, 高収益作物の導入, 防除・施肥・洗浄等の多目的用水の確保および散水労力節減等のため, 大規模な畑地灌漑システムの導入が期待されていた。<BR>大規模畑地灌漑システム導入に際しては,(1) 散水の省力化,(2) 圧力と流量の安定供給,(3) 供給過剰の抑制,(4) 維持管理費の公平負担,(5) 建設コスト縮減, の課題を克服するため, 仏国の自動定圧定流量分水栓・自走式散水機等について検証を行い, その有効性を確認してわが国で初めて導入を決定した。<BR>本報では, わが国最大の18千haの畑地を対象とした大規模畑地灌漑システムの探求について報告する。