著者
古川 巖
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.50-53, 1957 (Released:2009-09-04)

それは子供の頃のことである.降りたての真白い雪を食べてみたくてしかたがなかった.一と握りの雪をみつめていると, あわてるように母が寄ってきて「雪の中には虫がいるから食べてはいけないよ」と云った.母は, かなり怖ろしい語気で虫のいる訳を話しつづけたようだったが, 話の内容はおぼいていない.真白い雪.こんなきれいの雪の中に虫なんかおるものか, 雪山へ登って水がほしいときなどには雪をすくって食べる.そのたび毎に「虫なんかいない」と心の中で, 母に言訳をしながら食べている.-これは大人になった今でもそうである.
著者
飯倉 茂弘 河島 克久 遠藤 徹 藤井 俊茂
出版者
日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.367-374, 2000-07-15
被引用文献数
4 1 1

鉄道を雪崩災害から守るためには, さまざまな雪崩予防工や防護工を設置するハード対策とともに, 場所によっては雪崩の発生を的確に検知し, 列車の運転を確実に抑止するソフト対策も必要である.そこで本研究では, 雪崩発生時の適切な列車の運転抑止と迅速な点検・除雪作業を支援する雪崩発生検知システムを開発した.このシステムの雪崩検知方法は, 雪崩危険斜面を有する線路の脇に検知ポール (小型振動センサ内蔵) を設置し, 雪崩発生時に雪がポールに当たることによって生じる振動をとらえて雪崩を検知するものである.この方法の特徴は, 検知原理が単純であり, その結果, 簡単かつ安価にシステムを構成できることである.本システムは, 雪崩の発生を検知する機能に加えて, 発生した雪崩の規模に応じた4段階のレベルの警報を出力する機能を有しているので, 列車の運転抑止に有用であるのみならず, 警報レベルを保線区等の監視局に伝送することによって, 現地の線路除雪作業や点検作業の必要性の有無およびそれらの作業規模等を早期に判断することができる.本システムを黒部峡谷の雪崩多発地に設置し, 一冬季間を通して稼動試験を行った結果, 発生した全ての雪崩を正常に検知でき, 実用性の高さが確認された.
著者
福沢 章
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.88-90, 1958

昨年の12月から今年3月にかけて, 雪崩事故を新聞記事から拾い, その時の天候を調べてみると低気圧が通過した後の強風や, 猛吹雪中に起ったものが多い, 天気の鮮しい解説は別の機会にゆづりたいが, その天気図を集録して見た. ( ) 内は死亡者・負傷者数.
著者
中井 専人 熊倉 俊郎
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.31-43, 2007-01-15
参考文献数
22
被引用文献数
2 1

2005/2006冬季は広範囲にわたり多量の降積雪が観測され,「平成18年豪雪」と命名された.12月から1月前半にかけて寒気が断続的に南下し,これに伴って強い降雪が続いた.この冬季のうち2005年12月から2006年2月までについて,10分間隔の気象庁全国合成レーダーデータを使用し,北海道,東北,北信越および中国地方の降雪分布を解析した.解析期間中は4地方とも降水系が入れ替わりながら継続的に出現し,特に線状降雪雲は期間を通して多く見られた.寒気南下の著しかった期間には渦状降雪雲が多く,その後これと入れ替わるように前線等による降雪が増加した.解析期間全体について積算した降雪は特定の地域に集中する分布を示した.北信越地方において降雪分布に最も寄与したのは線状降雪雲で,山沿いから内陸地域に集中する分布を示した.渦状降雪雲と前線などによる降雪は,平地周辺の降雪に多く寄与した.津南から奥只見にかけての降雪の集中については上越近辺の山地の影響が相関解析から示唆された.
著者
前野 紀一
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.449-455, 2006-09-15
参考文献数
26
被引用文献数
1 2

氷・ステンレススチールのせん断付着強度は,温度の低下とともに増加するが,約-13℃でほぼ一定値となる.破壊の様子は,約-13℃を境に高温側では付着破壊,低温側では凝集破壊となる.しかし,引張りの場合はすべて凝集破壊となる.<BR>氷・ポリスチレンの場合,せん断でも引張りでも破壊は付着破壊となり,付着強度は,氷・金属の付着強度に比べて桁違いに小さい.この違いは氷の付着メカニズムの違いで説明される.<BR>氷の滑り摩擦メカニズムは,滑り速度が約1cm/s(時速36m)以上では「摩擦熱による水潤滑」,速度1cm/s以下では「氷の凝着せん断変形」である.前者を説明する定量的理論は組立てられているが,後者を説明するこれまでの凝着理論は金属分野で組立てられたものであった.これを氷の摩擦に適用するには,焼結の効果を加えた新しい理論が必要である.
著者
前 晋爾
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.107-113, 1975-09-30 (Released:2009-07-23)
参考文献数
8

純度の高い氷多結晶内に, 局所的照射を行い, 結晶粒内および粒界内に独立の内部融解像, すなわちチンダル像を形成し, その形態を観測した.結晶粒界に形成したチンダル像は, その形態が結晶粒内チンダル像と異なっていた.結晶粒内チンダル像には, perturbationを持たない円盤型チンダル像, あるいはperturbationのwave numberが6のチンダル像が存在するが, この実験で観測された粒界内チンダル像のperturbationのwave numberの最小は12であった.樹枝状になったチンダル像の樹枝間の角度を測定すると, 粒界内チンダル像では15°の倍数であることがわかった.この結果は底面に平行な樹枝間の角度が60°であることとかなり異なっているが, 粒界内チンダル像の形態はHiguchiにょって単結晶内で発見された, 底面に直交するチンダル像の形態と良く似ている.とがった先端をもつ粒界内チンダル像のperturbationの発生について, 粒内チンダル像と比較して論じた.
著者
松下 拓樹 権頭 芳浩
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.355-365, 2000-07-15
被引用文献数
2 2

雨氷発生の気候学的な地域特性を調べるため, 長野県を解析対象地域として, 雨氷発生日の特定を行い, その年平均日数の地域分布を求めた.<BR>雨氷は, 過冷却の雨滴が地物などにあたり氷になる着氷現象の一種で, 上空暖気層 (気温0℃以上) で雪片が融解して雨滴となり, それが地表付近の寒気層で冷されて過冷却の雨滴 (気温0℃以下の降水) となり発生する (melting ice process).その他, 大気全層の気温が0℃以下の場合 (supercooled warm rain process) でも発生することがあるが, ここではmelting ice processのみを対象とした.<BR>高層資料から上空暖気層の有無を, AMeDAS資料から地表付近の寒気層と降水の有無を調べ, 二つの気象条件を満たす日を雨氷発生日と定義した.過去20冬季 (1979年11月~1999年4月) について調べた結果, 雨氷の発生は3月に最も多く, 次いで12月に多いことがわかった.また, 最近6年間は雨氷発生日数が少ない傾向にある.<BR>次に, 地形因子値を用いた重回帰分析から, 年平均雨氷発生日数のメッシュマップを得た.その結果, 年平均雨氷発生日数は長野県中部と東部で多いことがわかった.特に標高との関係が強く, 山岳地域や高原地域で多くなる傾向が得られた.一方, 北部と南部の低標高地域では少ない傾向にある.
著者
前田 博司
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.383-387, 2007-05-15

2005年12月から2006年2月にかけての豪雪で,岐阜県において発生した被害について調査した.この地域では,人的被害は死者4人・重傷49人・軽傷36人,住家被害は全壊なし・半壊2棟・一部破損601棟・床上浸水なし・床下浸水7棟,非住家被害は451棟であった.被害状況は全国的な傾向とは異なり,高齢者の人的被害が特に多いとはいえず,建物の被害数も多かった.しかし,被害の程度は必ずしも甚大ではなかった.
著者
加藤 喜久雄 福田 正己 藤野 和夫
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.131-139, 1982

永久凍土中に存在する様々の氷体の安定同位体特性を明らかにするために, アラスカのバローならびにカナダ北部, マツケンジーデルタ地帯にあるタクトヤクタークにおいてピンゴ, 集塊氷, 氷楔, ツンドラ構造土を形成する氷体から採取した氷試料について酸素同位体組成を測定し, その結果について氷体の形成過程と水の起源との関連について検討した.<BR>氷体はその形成過程と水の起源を反映した独自の安定同位体特性を示し, したがって, 氷体の安定同位体特性から逆にその形成過程や水の起源に関する情報がえられることが明らかになった.また, 同じ種類の氷体について安定同位体地域特性の存在が指摘され, 水の起源のみならず形成過程についても地域により異なる可能性が示された.<BR>研究例のない, 凍上の際の水の動きに伴う安定同位体分別に関して一つの考えを示し, この考えがえられた結果により裏つげられることを示した.<BR>永久凍土中に存在する様々の氷体について, これまでほとんど測定例のなかった, 安定同位体特性の解明を試みた.<BR>連続的永久凍土分布地域に属し, ツンドラ地帯にあるカナダ北部のタクトヤクタークとアラスカのバローにおいて, 1974年7月と1977年7, 8月にピンゴ, 集塊氷, 氷楔, ツンドラ構造土を形成する氷体から試料を採取した.採取した試料について酸素同位体組成 (δ<SUP>18</SUP>O) を測定し, 氷体の形成過程や水の起源などと関連づけて氷体の酸素同位体特性について検討した.<BR>永久凍土中のいくつかの形態の氷体については, 凍上現象により形成されると考えられている.ところが凍上に伴う水の動きと安定同位体の分別作用との関係に関する研究例はない.そこで, 今日までにえられている知識から考えられる凍上により形成されたときの氷体におけるδ<SUP>18</SUP>Oの変動パターンを示した.<BR>ピンゴの氷体は凍上により形成されたと考えられている.そこで, 前述のδ<SUP>18</SUP>O変動パターンをピンゴの氷体におけるその変動パターンと対比したところ, 巨大なイブークピンゴ以外のピンゴのものとは良く一致した.したがって, 凍上に伴う水の動きと同位体分別作用との関係に関する考え方の正当性が示されたといえる.巨大なイブークピンゴについては, かなり大きな水体の凍結が関与しているものと考えられる.<BR>やはり凍上による形成が有力視されている集塊氷については, 凍上によるδ<SUP>18</SUP>O変動パターンとは必ずしも一致しなかった.冬に割れ目が生じ, そこへの流入した水の凍結, この繰り返しによりできたと考えられている氷楔に関して, この考えを支持する多様なδ<SUP>18</SUP>O値の存在がタクトヤクタークにおいて確認された.ところが, 氷楔が境界部凹地の下にあると考えられているツンドラ構造土の氷体では, バローのものにはδ<SUP>18</SUP>O値の多様性は認められなかった.このことは, 同じ種類の氷体について安定同位体地域特性の存在を指摘するものであり, 水の起源のみならず形成過程についても地域により異なっている可能性を示している.<BR>個々の氷体は独自の安定同位体特性を有し, この同位体特性は氷体の水の起源と形成過程を強く反映しており, それゆえ氷体の同位体特性からその水の起源や形成過程に関する情報がえられることが, 本研究で示されたといえる.
著者
久保 義光
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.161-165, 1958 (Released:2009-09-04)
被引用文献数
1

Mechanical properties of ice are tested about the natural ice of the River Sungari, Manchuria. Considering the relation between the loading direction and the crystal axis of ice, the strength and the elastic modulus of ice for tension, compression, bending and shear are obtained varying the temperature of ice from 0°C to-30°C.
著者
宮内 信之助
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.7-14, 1977

近年, 多雪地帯においてはカラー鉄板を使った屋根が普及してきたが, この屋根は雪との摩擦が小さいことから, 多くの家で雪止めをつけないでそのまま自然に雪を落す方法がとられるようになった.この屋根の使用によって, 雪おろしの労力が省かれる利点がある一方, 雪の滑落による危険性もあわせて存在する.このような屋根の普及にもかかわらず, この自然落下法の欠点についてはこれまで十分検討されてこなかった.<BR>1974年以来新潟県長岡市, 十日町市, 津南町の三地区でカラー鉄板を使用した76軒の屋根の冬期における状況の調査を行った.<BR>この調査から次の三つの結果が得られた.<BR>(1) 新潟地方を襲った1975年1月9日~1月13日および1976年1月18日~1月24日の豪雪においては, 屋根の勾配に関係なく, カラー鉄板を使った屋根に多量の雪が積もった.これは積雪が屋根表面に凍りついたためである.<BR>(2) 降雪後温度が上昇すると, 急激な滑落が起り6m以上も雪が屋根から飛ばされた.<BR>(3) 十日町市で起った事故から屋根面と積雪間の0℃以上の摩擦係数が推定され, その値は約0.1であった.
著者
対馬 勝年 木内 敏裕
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.349-356, 1998-09-15
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

氷の摩擦が結晶面によって変わり,(0001)面が摩擦最小になることに着目し,氷の結晶面をコントロールすることによって,より滑る高速スケートリンクの開発を試みた.天然の氷筍が巨大単結晶になることに注目し,4800個の点滴装置をもつ氷筍育成装置が試作された.単結晶の氷筍1200本から(0001)面を切り出した.その氷片3.6万枚を,ショートトラックリンクに張り付けた.テストスケートによる滑走テストを行った.動摩擦係数は張り付け前のリンクに比べ22%も減少したことから,高速スケートリンクになったことが確認された.
著者
村松 謙生
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.83-85, 1986-06-30 (Released:2009-08-07)
参考文献数
4
著者
高木 秀貴
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.371-378, 1995-11-15 (Released:2009-08-07)
参考文献数
3
著者
山崎 剛
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.131-141, 1998-03-15 (Released:2009-08-07)
参考文献数
33
被引用文献数
6 8

厳寒地に適用することを主目的として,積雪の鉛直1次元モデルを開発した.このモデルは気象データを入力して,積雪の温度,密度,含水量の鉛直分布を計算するものである.モデルは積雪を等間隔に切った単純な構造をもち,液体水の流下やアルベードは非常に簡単な扱いになっている.厳寒地でよく見られるしもざらめ雪を考慮するために,有効温度勾配を導入した.これにより熱伝導率や圧縮粘性係数のしもざらめ化による変化を取り入れた.また,降雪と降雨の比は湿球温度の関数として与えた.モデルの検証として,札幌と北海道東部のアメダス観測点でのひと冬通してのシミュレションを行った.札幌の計算では積雪深,積雪水量,雪温・密度の鉛直分布をほぼ再現できた.北海道東部では,積雪がしもざらめ化していく様子を計算できた.
著者
石川 信敬 中谷 千春 兒玉 裕二 小林 大二
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.31-43, 1994
被引用文献数
4 1

熱収支法を用いて実験流域内の融雪特性を求めた.まず標高,斜面,森林密度の3地形要因で流域の特徴を表現し,次に気象要素と各地形要因の関係を調べ,気温と水蒸気量は標高に,風速は標高と森林密度に,日射量は森林密度と斜面に依存することを明らかにした.さらに得られた気象要素と地形要因との関係を用いて基準点の観測値を補正し,流域内任意の標高の融雪熱収支を求めた.本実験流域においては,流域下部では風速と日射に対する森林の遮蔽効果により融雪量は小さいが,標高に伴って森林面積が減少することにより高地程融雪量が増大するという融雪特性が明らかになった.なお全面積の70%は流域下部にあるため,流域全体の融雪量は基準点の約81%であった.

1 0 0 0 OA 宇宙線雪量計

著者
小玉 正弘
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.207-211, 1977-12-30 (Released:2009-09-04)
参考文献数
9