著者
井上 元哉 高田 吉治
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.239-257, 1971-12-25 (Released:2010-01-20)
参考文献数
10
被引用文献数
1 3
著者
樋口 敬二 渡辺 興亜 牛木 久雄 奥平 文雄 上田 豊
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.129-146, 1970-11-30 (Released:2009-07-23)
参考文献数
38
被引用文献数
1 3

北アルプス, 剱沢圏谷において積雪域の調査を, 1967年5月26日~30日, 7月11日~15日, 9月26日~29日, 10月17日の4回にわたっておこない次のような結果を得た. (1) 9月29日における「はまぐり雪」の面積は, 4778m2で, 質量は0.9×104トンであり, これは, 5月29日にこの一帯に存在した67.5×104トンの1.3%に相当する. (2) コアドリルによる試料サンプリングの結果, はまぐり雪には3年の氷層しかないことがわかった. したがって, はまぐり雪は, 1964年に一度消失または極度に縮小したと考えられるが, そのような変動は, 冬期における雪の蓄積量と夏期の融雪量の変動によって説明できた. (3) 雪渓においても, 涵養域と消耗域とが存在することがわかった。この年における涵養域比は, 0.54であった. (4) 雪渓の氷層を構成する結晶粒は, 1963年に報告されているように大きな単結晶ではなく, 1.5mm以下であった. 結晶粒の結晶主軸の分布は, 表面では方向性をもたないのに, 最下部では, 基盤の最大傾斜の方向につよい集中性を示していた.
著者
土屋 巌
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.178-187, 1976-12-30 (Released:2009-09-04)
参考文献数
29
被引用文献数
1 2

1973, 74年の寒候期に, 東北地方では各地で記録的な豪雪となったが, 日本海に面した山地の極端に大量の積雪現象のあったことが, 1974年4月6日に実施した積雪の航空写真測量によって認められた.飯豊山の北股岳東斜面と御西岳南斜面, 月山南東斜面および鳥海山南斜面について作成した1万分の1積雪深図の中には, 径1km円内の平均が17mになる例もあり, また従来越年性残雪の見られた場所では30mを超え, 一部に50mに達する場合のあることがわかった.40°N付近の東北山地の南東斜面で日当りの良い場所の高度1,400~1,800mでは, 残雪越年臨界量は実測, その他の方法でほぼ30mであると認定できたが, 今回の豪雪は多年性の雪氷の原因となり, 小規模氷河現象発現のもととなった. たとえば, 鳥海山南斜面の “貝形小氷河” は, 45mを超す雪積深を示し, 1974年10月には最深部20m以上で越年し, 1975年夏秋の間に, 2夏継続して残った雪氷は, 大部分氷化して流動現象を発現し, 小型の山岳氷河としての性格を示した.
著者
大丸 裕武 梶本 卓也 小野寺 弘道 岡本 透 関 剛
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.463-471, 2000-09-15 (Released:2009-09-04)
参考文献数
13
被引用文献数
1 3

1999年4月21日, 岩手県岩手郡松尾村籐七温泉付近の斜面で幅約100m長さ約300mの全層雪崩が発生した.雪崩が発生した斜面は谷地形の発達が悪い地すべり滑落崖で, アバランチシュートなどの常習的な雪崩の発生を示唆する地形は見られなかった.この雪崩は発生斜面における雪食地の拡大と堆積地における亜高山帯林の破壊という景観変化を伴っていた.空中写真判読と現地調査の結果, 同様の景観変化は八幡平の稜線部の鏡沼付近においても, 1986年頃に起きたことが明らかになった.これまで雪崩災害の報告が少かった八幡平地域においても, 頻度は低いものの比較的大規模な全層雪崩が発生していると考えられる.
著者
福井 幸太郎
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.187-195, 2004-03-15
参考文献数
24
被引用文献数
3 4

飛騨山脈北部の立山は豪雪かつ多雨という特異な気候環境下にある.ここでは,永久凍土が一年の大半を積雪に覆われるカール内の北向き斜面に分布しているが,その形成維持機構は不明であった.そこで,永久凍土が分布しているカール内と分布していない稜線付近の2地点で2000~2002年にかけて地中温度,降水量,土壌水分の無人観測を行い,両地点の地中温度状況の比較から,永久凍土の形成維持機構を検討した.稜線付近では梅雨期の降水の浸透により地下深部まで熱が速やかに運ばれ,凍土の急速な融解を引き起こす.故に永久凍土が分布できる環境にない.一方,カール内では,10月下旬~11月上旬の積雪から露出している時期に生じる速やかな凍結と1~5月の積雪を冷源とした凍結により凍土が形成,冷却され,夏遅くまで残る積雪により凍土は一年の大半を融解から免れる.このため,カール内では永久凍土が形成維持される.
著者
佐藤 清一 国包 勝栄
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.19-21, 1979-03-31 (Released:2009-09-04)
参考文献数
2
被引用文献数
1

岩木山 (1625m N40°39', E140°18') の東南斜面, 高度1,100~1,470mにあって冬の北西季節風の風かげになる大沢には, 吹きだまり型1年性雪渓がある.雪渓の調査を1974年, 1975年, 1976年に行ない次の結果を得た.1) 1974年8月20日における大沢雪渓は質量230kgであり, 8月21日に消滅した.2) 1975年7月16日における雪渓は標高1,160~1,403mの間にあり, 質量は6,100tであった.この雪渓は8月1日に480tとなり, 8月6日に消滅した.3) 1976年7月29日における雪渓は標高1,290~1,360mの間にあり, 質量は90tであった.これは1975年8月1日に存在した雪渓の20%に相当する.この雪渓は8月2日に消滅した.4) 7月下旬の融雪速度は積雪深で20cm/day, 水当量で120kg/m2・dayである. 2年雪は存在せず, 雪渓は全体が消耗域にある.
著者
関口 辰夫 丸井 英明 秋山 一弥
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.377-387, 2003-07-15 (Released:2009-08-07)
参考文献数
23

平成12年6月18日,新潟県浅草岳でブロック雪崩災害が発生し4名の犠牲者を出した.ブロック雪崩は,浅草岳山頂北西側のヤスノ沢右支谷上流部,地すべり滑落崖の稜線付近で発生した.崩落した雪崩ブロックは筋状地形に沿って流下し,斜面下方の雪渓で犠牲者を直撃した.災害発生直後に撮影された空中写真の判読によれば,災害発生斜面の周辺では,ブロック雪崩が発生している斜面やブロック雪崩発生の可能性が高い斜面が多数みられた.判読されたブロック雪崩はいずれも災害発生斜面と同様に遷急線上から発生し,見通し角が30~42°,到達距離が90~350mとなり,到達距離や見通し角は,既往の全層雪崩や表層雪崩の見通し角や到達距離と同程度であった.また,周辺のブロック雪崩発生の可能性が高い斜面に存在する残雪の多くは,遷急線直上部に位置し,クラックやオーバーハングの形態がみられた.これらのブロック雪崩発生斜面やブロック雪崩発生の可能性が高い斜面の特徴から,ブロック雪崩は残雪が融雪やグライドにより遷急線から崩落して発生したと推定される.また,これらの斜面の多くは全層雪崩頻発斜面にみられる筋状地形が存在し,しかも,デブリ中に削剥物が多数混在していることからブロック雪崩は全層雪崩と同様に地形形成作用の一部を担っていると考えられる.これらを総合すると,調査地におけるブロック雪崩の発生過程は,以下の四つの段階を経るものと考えられる.すなわち,第一段階;降雪と積雪,第二段階;クラックの形成とグライドの発生,第三段階;全層雪崩の発生,第四段階;ブロック雪崩の発生,である.
著者
対馬 勝年 木内 敏裕
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.349-356, 1998-09-15 (Released:2009-08-07)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

氷の摩擦が結晶面によって変わり,(0001)面が摩擦最小になることに着目し,氷の結晶面をコントロールすることによって,より滑る高速スケートリンクの開発を試みた.天然の氷筍が巨大単結晶になることに注目し,4800個の点滴装置をもつ氷筍育成装置が試作された.単結晶の氷筍1200本から(0001)面を切り出した.その氷片3.6万枚を,ショートトラックリンクに張り付けた.テストスケートによる滑走テストを行った.動摩擦係数は張り付け前のリンクに比べ22%も減少したことから,高速スケートリンクになったことが確認された.
著者
和泉 薫
雑誌
雪氷 : 日本雪氷協會雜誌 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, 2009-01-15
参考文献数
1
著者
荒川 政彦
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.147-154, 2005-03-15 (Released:2009-08-07)
参考文献数
7

雪氷のフィールドを地球から太陽系の惑星・衛星にまで広げた時に現れる雪氷学の新たな研究課題を総称して宇宙雪氷学と呼ぶ.この課題の一つに土星の衛星系が持つサイズと平均密度の正の相関関係がある.この関係は,衛星の衝突集積時に起こる衝突分別過程で説明できる.この分別過程は,氷衛星の岩石含有率の差に起因する衝突破壊強度の違いにより引き起されると考えられる.
著者
和泉 正哲
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.397-410, 1997-11-15 (Released:2009-09-04)
参考文献数
1
著者
島田 亙 古川 義純
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.249-257, 2002-05-15 (Released:2009-08-07)
参考文献数
17
被引用文献数
1

過冷却水から成長する氷結晶は,最初は薄い円盤状に成長するが,やがて形態不安定を起こし,以後は樹枝状結晶として成長する.これらの氷結晶は厚さが非常に薄いため二次元的に扱われてきたが,現実の結晶は三次元である.そこでマッハツェンダー干渉計を用いて氷結晶の成長を“その場”観察した.得られた干渉縞から三次元的な形態を解析し,また形態不安定発生機構,円盤状・樹枝状の成長機構を調べた.円盤状結晶は二枚の基底面で挟まれており,基底面の成長が「界面キネティクス」によって律速されているのに対し,側面は「熱拡散」で律速されていた.また,形態不安定発生の臨界値は半径ではなく厚みであり,発生する揺らぎも円周上ではなく厚み方向の形状が先に非対称になることがわかった.一方,樹枝状結晶は一枚の平らな基底面と高次の曲面で構成されており,樹枝先端の成長速度は「熱・物質拡散」と「界面張力」を考慮した普遍法則と一致するが,先端曲率半径は一致しなかった.従って,過冷却水から成長する氷結晶の形態を理解するためには,上記の二要素に「界面キネティクス」を加えた三要素すべての考慮が必要であることが明らかになった.
著者
鈴木 啓助
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.185-196, 2000-05-15 (Released:2009-09-04)
参考文献数
107
被引用文献数
4 4

雪氷学会で最も新しい分科会である雪氷化学分科会の設立の経緯についてまとめるとともに, わが国の研究者による雪氷化学研究について紹介する.しかし, 氷コアの化学と南極における雪氷化学の研究例については言及していない.雪氷化学は地球環境科学として今後ともその研究の重要性が増大すると考えられる.そこで, 本稿では降雪-積雪-融雪-河川水の水循環の流れに沿って雪氷化学研究を概説し, 今後の課題についても提起する.
著者
石川 守 斉藤 和之
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.639-656, 2006-11-25 (Released:2009-08-07)
参考文献数
136
被引用文献数
1

北半球全陸地の約6割に分布する凍土は,地球上最大規模の雪氷現象であり,様々な時空間規模での気候・水循環過程に関与していることは想像に難くない.しかしこれまで水文・気象学分野では凍土過程はブラックボックスとして取り扱われることが多かった.地球温暖化問題の顕在化を受け,これからは凍土過程に焦点を当てるとともに,凍土と水文・気象・気候学的現象との関わりを解明していくような研究を推進する必要がある.このような学際的な研究分野を創出するのに必要な知見として,本稿では凍土の構造や定義,活動層変動,活動層の水熱循環特性,活動層―大気間相互作用,流域規模から全球規模までのモデルを用いた凍土分布,などの研究成果をレビューする.将来的には,観測とモデルが有機的に結びつくような研究体制の構築が強く望まれる.これには,モデルを意識した広域的な観測体制を確立することや,観測で解明されつつあるプロセスを最適にモデル化することなどが含まれる.