著者
岡崎 隆 池田 清朗 沢田 康太 宮崎 隆也 寺島 靖香
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.49-52, 2010
参考文献数
9

振子の等時性とその破れ,ホイヘンスによって考案されたサイクロイド振り子について解説する。サイクロイド振子の運動を解き,等時性が回復される振動解の具体的振る舞いを調べる。作成したサイクロイド振子による振動実験を行い,等時性が回復される様子を示す。また,自転車の車輪を使った実体振子の振動を測定し,大振幅の振動で周期が振幅に依存する様子を示す。
著者
小林 幸夫
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.326-331, 2005
参考文献数
31
被引用文献数
1

測定とは,対象の量が単位量の何倍かを求める操作である。この立場から,物理化学では物理量=数値×単位量の表現を採用する。しかし,物理教育では,単位が量ではないという誤解が生じている。このため,数値と単位量の積の意味が物理教育の中で正しく普及していない。単位が量だからこそ物理量の四則演算が成り立つ。量計算は,高校数学のベクトル算法と同じしくみの計算である。この事情を線型代数の基礎を踏まえて解説する。
著者
斎藤 吉彦
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.209-212, 2012

本誌の企画「変位電流とは何か」で,3編の論文が「変位電流は磁場を創らない」の議論を与えている。これらは,時間変化をする球対称電場の存在の正否が要となっている。本稿は,この電場がマクスウェル方程式と矛盾することを根拠に,設定されたモデルを否定する。さらに,モデルが仮定する荷電粒子の運動が非物理的であることを具体的に示す。本編の議論は電磁場の相対論的理解が背景にあり,教育者にとって電磁気学の相対論的理解の必要性を主張する。
著者
鬼塚 史朗
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.218-223, 2012

高校物理の電磁気分野は難解である。電気の正体は明らかでないし,物理用語にも定義不明語は多い。それらが電磁気を暗記学習の域にとどめている。しかし,昨今の科学の進歩はかつての仮説や試論にも定説化と教材化をうながす。マクスウェル理論はニュートン力学の正統性を継承するもので,その手法は多くの科学理論の模範となった。変位電流は当理論を公理論として確立するための要であり,その検証は電磁波の確認にゆだねられた。本論考ではその意味を歴史的,教育的に考察する。ファラデーとマクスウェルの共同研究には数理研究と実験研究の共軛作用がみえる。
著者
菅野 礼司
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.213-217, 2012

本誌Vol.60, No.1の特集「変位電流とは何か」で「変位電流は磁場をつくらない」と主張した2論文(鈴木・兵頭)に対して以下の問題を取りあげてコメントする。(1)変位電流は閉回路にも必要であること,(2)物理法則を表す式の因果関係にかんする解釈への疑問,そして磁場変化と誘導電流,および変位電流と磁場との因果関係,(3)電場・磁場の源と電磁波の関係について,(4)真空偏極と変位電流の実在性について。
著者
勝木 渥 石井 廣湖
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.114-126, 1995
被引用文献数
2

平成5年度センター試験「物理」の試験結果は,決して難問ではないと思われるのに,平均点が低く,また,その得点分布は"平坦"でガウス分布から大いに隔っていた。われわれは,この試験の解答分析の資料に基づいて,個々の設問にわたる解答状況を調べ,受験生の物理に対する理解の傾向と問題点を探った。
著者
竹中 功
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.278-281, 1996

「放射能・放射線」の学習は,目に見えない現象を扱うので,実験を取り入れた教授方法をとらなければ,本質的な理解は得られない。近年,この分野の教材研究が進展し,放射線測定器の自作方法や教材用放射線源の工夫が示され,実験が容易に実施できるようになった。しかし,放射性物質を使った製品を,製造目的を越えて利用することや,漏洩X線による被曝の問題が指摘されており,実験にあたっての指針を明確にする必要がある。
著者
伊東 正人
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.229-230, 2009
被引用文献数
1
著者
飯田 洋治
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.26-29, 2017-03-16 (Released:2017-04-10)
参考文献数
16
被引用文献数
1

電気伝導モデルに関して,「金属中の自由電子が電場によって加速されるとき,どの電子も一定時間ごとに衝突をくり返すものと仮定する。このとき,衝突から衝突までの電子の平均速度増分は衝突直前の最大速度増分の1/2になる」と記述する書籍等がいくつかみられる。運動量と力積の関係から求めたドリフト速度には係数1/2はつかない。衝突間の時間の2乗平均から求めても係数1/2はつかない。この仮定は物理的に見て本当に妥当な仮定かどうかを検討する。
著者
村田 次郎 塩田 将基
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.95-100, 2023-06-06 (Released:2023-06-10)
参考文献数
7

「重い人ほどすべり台を速く滑るのは何故か」という疑問を動機とした,すべり台の摩擦に関する大学生の探究学習の実践例を報告する。一様重力場中の落下加速度は質量によらず一定であり,これは動摩擦がはたらく状況でも同じであると学習するが,これと生活経験が矛盾する事から生じる疑問である。物体が滑る加速度を実測し,空気抵抗の寄与,動摩擦係数の質量依存性,速度依存性を調べた。ローラー式すべり台では動摩擦係数が一定ではない事が示された一方,金属板式すべり台では一定値からずれる有意な結果は得られなかった。
著者
笹川 民雄
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.201-208, 2009-09-01 (Released:2017-02-10)
参考文献数
13
被引用文献数
2

クントの実験において,管内の粒子にはたらく力について考察し,運動方程式をルンゲ・クッタ法で数値計算して粒子の運動を調べた。その結果,空気抵抗力や音の放射圧を受けることにより,粒子は密度や大きさの違いで変位の節または,腹に集まることがわかった。また,粒子の音波浮揚の安定性を力学的に考察した。さらに,クントの実験で生じる縞状の模様は非線形効果で励起される倍音の放射圧により形成されることを明らかにした。
著者
勝田 仁之
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.37-40, 2021-03-11 (Released:2021-04-05)
参考文献数
12
被引用文献数
3

著者が 2020 年 4〜7 月に行ったオンライン授業の効果測定を行う。力学概念獲得度を測定する FCI のスコアを,科学的思考力を測定する LCTSR のスコアが同程度の生徒集団ごとに,昨年度の通常対面授業のデータと比較することで効果測定とした。その結果,著者のオンライン授業は,科学的思考力の相対的に低い集団については,昨年度の通常対面授業よりも高い効果が認められた。その一方,科学的思考力の相対的に高い集団については,昨年度通常対面授業より効果が低かった。
著者
鬼塚 史朗
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.36-43, 1997-02-05 (Released:2017-02-10)
参考文献数
21
被引用文献数
3

ニュートン力学が創始されたとき,フランスのデカルト派からは"ニュートン力学は,悪魔の算術に依拠した恣意的仮説である"と批判された。ニュートン力学の要諦は天界の力と地上界の力の統一にあったわけであるから,その観測的,実験的検証は不可欠であった。しかし,地球の半径や地球太陽間距離の測定ができなかった当時,その検証は困難を極めた。これらの値の確定に航海学は大きく寄与した。航海学の背後にはポルトガルとイスパニアの世界「2分割支配」がみえる。航海学が天文学の進歩をうながし,天文学の知見が近代科学成立の礎石となった。本稿では,ポルトガルとイスパニアを視座に航海の動機や目的を議論し,ニュートン力学の確立に寄与したハリーの足跡をたどる。
著者
新田 英雄
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.17-22, 2012-03-08 (Released:2017-02-10)
参考文献数
19
被引用文献数
5

生徒は,物理を学習する前から経験に基づいた運動の概念を獲得してきている。それら運動の素朴概念は物理法則と整合しない場合が多く,力学を教える際の隠れた障害となっている。本論では,まず,代表的な先行研究を概観し,生徒の有する運動の素朴概念とはどのようなものかを論じる。次に,先行研究を踏まえて試作した素朴概念の分類表を提示する。
著者
寺島 浩
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.289-292, 1992-12-02 (Released:2017-02-10)
参考文献数
5
被引用文献数
6

有効数字は最下位の桁に誤差を含む数値である。したがって,有効数字の決め方を指導するためには誤差の求め方を教えなければならない。標準誤差(Standard Error)の意味と計算法を講義によって説明し,演習をまじえて有効数字の決め方を実地に指導する。このような指導の内容と方法を述べる。
著者
菅野 礼司
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.290-297, 2003-12-20 (Released:2017-02-10)
参考文献数
5
被引用文献数
1

自然科学は全体として一つの理論体系をなし,その扇の要に物理がある。それゆえ,理科教育は物理を基礎に据えた包括的体系として教えるべきである。その「物理を基礎とした包括理科」を組立てるための基礎概念と骨組みは,自然の階層性と,その全ての階層を貫いて成立する普遍法則であることをまず示す。自然の階層性には,物質の階層性と相互作用(力)の階層性とがある。そして,理科科目の物,化,生,地をそれら階層と対応させ,理科の四科目が「包括理科」の中で占める位置と相互関係を述べる。最後に,情報との関連にも言及する。
著者
根本 和昭
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.545-547, 2001-12-25 (Released:2017-02-10)
参考文献数
4
被引用文献数
5

発色の異なるLEDは,発光する振動数に比例するエネルギー・ギャップを持つので,立上り電圧に達するまでは点灯させることが出来ない。そこで,数色のLEDの発光開始電圧(立上り電圧)を測定し,再結合の結果として放出される光子の持つエネルギーと振動数の関係をグラフに描くと,それらの傾きとしてプランク定数を求めることが出来る。量子分野の導入としては,3色程度の実験で充分であると考えられるが,ここでは8色のLEDを用いた測定を行った。