著者
佐藤 和艮
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.42-46, 1981

音叉の振動エネルギーの一部分は音のエネルギーとして空気中に放出される.また,音叉に共鳴箱を近づけると大きな共鳴音が聞こえる.この場合には音叉のエネルギー消費は当然大きくなり,振動の減衰も早くなる.音叉の振動エネルギーが消費される行く先として,(1)音叉から直接空気中に放出される音のエネルギー,(2)音叉の内部吸収などによるロスエネルギー,(3)共鳴箱の効果によって放出されるエネルギー,の3種類が考えられる.そこで,音叉が1周期振動する間に消費されるこの3種類のエネルギーの割合を求める実験を行った.そのために,共鳴箱の有無及び空気の有無による音叉の減衰時間のちがいを測定した.その結果の一例として,音叉の消費エネルギーは先の順番でおおよそ1:5:22の割合となった.また,共鳴箱のある場合に音叉の音の可聴時間が共鳴箱のない場合の時間に比べて長く感じることがありうることを実験データを使って解析した.なお,減衰時間の測定は,音叉の振幅が半減する間の振動の回数を自動的に数える装置を考案して行った。
著者
高橋 昌一郎
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.103-107, 2002
著者
鬼塚 史朗
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.317-324, 1995

科学には,ギリシア時代から中世にいたる2000年の空白がある。ギリシア時代に確立したアリストテレスの自然観は,その後キリスト教の教義と結びついてキリスト教的自然観を形成していった。これを2000年にわたって継承したのがスコラ学者である。16世紀に入るとコペルニクスやガリレオらによって近代科学の夜明けが告げられた。しかしキリスト教ローマ教会は,この鶏鳴を必死にはばもうとした。天動説と地動説,キリスト教的自然観と近代的自然観,これらの間には,し烈な論争が展開された。論争はやがて宗教裁判で争われ,その結果はすべて教会側の勝利に終わった。そこでの有罪はときに死をも意味し,火刑をまぬがれた者も社会的には完全に葬られた。だが,これらのことを高校物理の教科書が詳述することはない。したがってガリレオ裁判の結果には,高校生は一様に疑問を持つ。地動説を支持することは,なぜ極刑に値するほどの悪事なのか。ローマ教会はなぜかくも執拗に老ガリレオを糾弾しなければならなかったのか。本稿では,これを科学と宗教間の葛藤ととらえ,ガリレオとシンプリチオの対話にその意味をさぐってみる。
著者
米田 隆恒
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.90-92, 2003-06-13 (Released:2017-02-10)
参考文献数
5

超音波の実験はさまざまな利点がある。しかし,超音波の発生方法は難しく,また,耳に聞こえないので観測が抽象的であるという難点がある。ところで,超音波のうなりの振動数が可聴音の領域にあると,うなりを耳で聞くことができる。このうなりを超音波の観測方法として利用し,ハウリングによる超音波発振機1)と組み合わせて,直感的にわかりやすい超音波実験装置を開発した。また,この装置を使って,干渉やドップラー効果などの生徒実験を行った。
著者
鬼塚 史朗
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.1-4, 1987-03-10 (Released:2017-02-10)
被引用文献数
2

長さ4m,内径1.7cmの水道用塩ビパイプの一端にイヤホンをとりつけ,パルス状の音を出す.このイヤホンから4cmはなれたところにマイクロホンをつけ,イヤホンから直接くる音とパイプ内を往復して返ってくる音をキャッチする.この直接音と反射音をオッシロスコープの画面に現し,この時間間隔を読みとって,音速値を計算する.パイプのなかには二酸化炭素などの気体を入れて,そのなかでの音速を求めることもできるし,パイプの他端を金属板などで閉じたり開いたりして,固定端や自由端での音の反射の位相変化を観察することもできる.この実験は簡単に実施できるし,結果も良好である.本稿ではその結果を中心にして報告し,高校物理における教卓実験としての教材化について述べる.
著者
山田 盛夫
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.86-88, 1986-06-05 (Released:2017-02-10)

回転をベクトルで表示し,その合成則を考えることは,無限小回転に限り許される.これにより,微小時間dt間の微小回転角dθから定義される角速度ω=dθ/dtはベクトルとなる.ここでは,角速度ωの合成則を斜面上を転がる小球の運動実験から誘導する.また,フーコー振り子の振動面回転の簡単な説明用モデルを考えたので紹介する.
著者
鈴木 亨
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.1-3, 1998

ホール効果については,センター試験をはじめとする大学入試でも近年,頻出している。受験テクニックとして横行し,一部の教科書にも記載されるに至っている。ところが,固体内の荷電粒子の挙動を,古典的粒子像で説明することには限界があり,高校の指導範囲から逸脱する感がぬぐえない。高校教材としては,できればホール効果は取り扱わないこととし,大学入試問題からは排除することを提言する。
著者
鈴木 重行
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.488-491, 2001

本校で,毎年(もう6年間も)行っている実験,知り尽くしているはずだった,頭の中では分かっていた。時間を節約できるつもりだった。忙しさにかまけて予備実験をせず,頭の中での実験だけで,こうなるだろうと思いこんでしまったためにやってしまった失敗を報告(懺悔)いたします。ひとつ間違えば,生徒の感電という事故につながったかもしれない。今考えるとぞっとする。実験道具を1セットは使いものにならなくしてしまった位ですんだのは,不幸中の幸い。やっぱり実験はやってみないと分からない。
著者
長谷川 誠 石田 宏司
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.68-72, 2005
被引用文献数
4

平成16年度文部科学省・大学等開放推進事業「大学Jr.サイエンス事業」として,「光のふしぎにふれてみよう」と題する講座を開催した。これは,小学生や高校生に理科・科学への興味・関心を持たせることを目的としたものであるが,その中で,大学生から高校生へ,さらに小学生へのリレーティーチングを試みた。大学生及び高校生に他人に教える機会を提供することで,自らの知識を再確認・再構築する機会を提供できたと考えている。
著者
鬼塚 史朗
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.349-356, 1997
被引用文献数
1

科学と社会,両者の接点にコーヒーの姿がみえる。ギリシアを始点とする自然科学と,アラビアを原点とするコーヒーは,イタリア,フランスをへてイギリス,アメリカへとその舞台を移した。その間コーヒーは,科学と社会の間にあって,相互作用因子としての機能をはたした。18世紀中葉,コーヒーはイギリスの地にしばしの安息を得るが,この間にイギリス文化の基礎を築き,その地に近代科学を育んだ。しかしロンドンとパリではその様子は大きくことなっていた。そこにはイギリスとフランスの国力や社会制度のちがいがみえる。英語と仏語の間にも文化的闘争があった。ロンドンのコーヒー店はイギリスの社会制度を育んで自然科学の確立に寄与したのに対し,パリのカフェーは社会科学の揺動因として社会変革の震源となった。本稿では,コーヒー店を視座に近代科学成立の要件をさぐる。
著者
山本 和久
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.23-25, 1998
参考文献数
2
被引用文献数
1

大学新入生を対象に,「スペースシャトルと無重量状態」に関するアンケートを取ってみた。その結果,高校時代に物理学を履修していたか否かに関わらず,シャトルの中の「無重量状態」がなぜ起こるのか,多くの学生が誤った認識をしていることがわかった。彼らにとって,「宇宙」は依然として,地上とは別の不思議な現象が起こる世界なのである。
著者
小久保 慶一
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.50-51, 2009

溶液の組成などの工夫を行えば-2℃程度の気温の中,シャボン玉を凍らせる事ができることがわかってきた。シャボン膜に出来る結晶の形,その結晶が成長する様子や,凍ったシャボン玉が割れる様子などは神秘的で見る人に感動を与えてくれる。また,凍るシャボン玉が理科部の研究対象としてだけでなく,その研究成果が地域イベントなどへ還元されており地域貢献にもなっている。
著者
堀込 智之
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.227-231, 2012

疑似津波実験と,被災地の津波到達水位調査から平野とV字谷を襲う津波のメカニズムを考察した。
著者
霜田 光一
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.303-305, 2006
参考文献数
4

水分子の振動と回転スペクトルによる共鳴吸収は赤外域にあるので,電子レンジのマイクロ波の吸収に関与するのは,液体の水の誘電率の異常分散に伴う吸収である。有極性分子は印加電場の方向に統計的に配向して,固体や液体の分極をつくるが,配向分極の生成・消滅には時間的遅れがある。この誘電緩和に関するDebyeの理論によれば,水はマイクロ波の広い周波数範囲で強い吸収を示す。これが水分をもつ物質が電子レンジで加熱される理由である。そして,無極i生分子からなる物質は電子レンジの加熱が弱い。
著者
斯迪克 艾尓肯 山下 信彦
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.1-5, 2003

食塩水にPbとMnを添加した後,蒸発・乾固させるという簡便な方法によって,蛍光性の食塩を合成することに成功した。著者達のこれまでの研究によると,紫外線の下で蛍光を発するカリフォルニア産岩塩は,不純物としてPbとMnを含んでおり,Pbによって吸収された紫外線エネルギーがMnに伝達され,その後,Mn内の電子遷移により鐙赤色の蛍光を発することが分かっている。蛍光性食塩の合成は,この天然岩塩にヒントを得たものである。この蒸発・乾固法は,電気炉やマッフルなどを使って合成する溶融法に比べて経済的にも時間的にも極めて簡便な方法である。学校教育における授業実践を想定し,明るい蛍光を発する食塩微結晶の合成方法を提示する。
著者
鬼塚 史朗
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.36-43, 1997
参考文献数
21
被引用文献数
2

ニュートン力学が創始されたとき,フランスのデカルト派からは"ニュートン力学は,悪魔の算術に依拠した恣意的仮説である"と批判された。ニュートン力学の要諦は天界の力と地上界の力の統一にあったわけであるから,その観測的,実験的検証は不可欠であった。しかし,地球の半径や地球太陽間距離の測定ができなかった当時,その検証は困難を極めた。これらの値の確定に航海学は大きく寄与した。航海学の背後にはポルトガルとイスパニアの世界「2分割支配」がみえる。航海学が天文学の進歩をうながし,天文学の知見が近代科学成立の礎石となった。本稿では,ポルトガルとイスパニアを視座に航海の動機や目的を議論し,ニュートン力学の確立に寄与したハリーの足跡をたどる。
著者
中川 雅仁
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.141-144, 2007
被引用文献数
1

単極モーターの動作原理について,理論的な考察及び計算を行った。特に,単極モーターの反作用は磁石に働くという誤解を解き,その上に立った解釈を与えた。すなわち,磁石(と流れる電流)の磁場により単極モーターの金属板部分に回転軸まわりの力のモーメントが働き,それによって回転するが,磁石には,金属板や導線に流れる電流からの力のモーメントは働かない。導線部分には金属板部分に働く回転軸まわりの力のモーメントと,大きさは同じで向きが反対の回転軸まわりの力のモーメントが働く。