著者
竹内 昭士郎
出版者
関西病虫害研究会
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.14-19, 1972-02-01 (Released:2012-10-29)
参考文献数
12
被引用文献数
3

作期を変えて栽培した水稲(農林29号)の出穂期にイネ馬鹿苗病菌の分生胞子を噴霧接種し, 得られた種籾からのFusarium菌発生を指標として汚染率を調査した. その結果, 汚染率は接種日前後の気象条件, とくに日平均気温と関係が深く, 高温期の接種ほど汚染率が高い. しかし, 接種日ごろの日射量が極度に少ないことも汚染率を高めるようである.数種の有機水銀剤を用い, 種々の処理方法で汚染籾の種子消毒効果を試験した. その結果, 現在の有機水銀剤ではどのような処理方法によっても完全に本病を防除することはできなかったが, 浸種籾消毒は乾燥籾処理よりも効果が高く, 消毒後の浸種・催芽は発病を多くするようであった.
著者
井村 岳男
出版者
The Kansai Plant Protection Society
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.1-6, 2011 (Released:2011-09-01)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

イチゴハナゾウムシによる春期の蕾被害の発生状況を,奈良県の促成イチゴ栽培施設とその周辺の野生寄主植物において調査した。越冬成虫は3月下旬から4月上旬に活動を開始し,まず野生寄主のクサイチゴを加害した。その2週間後の4月上旬から中旬に施設内のイチゴへの加害が始まった。4月中旬から下旬にノイバラの着蕾が始まるとこれも加害し,異なる寄主植物を着蕾時期に応じて順次利用していた。施設内のイチゴにおける幼虫発生時期は,野外のクサイチゴよりも早かった。また,イチゴにおける蛹の初確認時期から,第1世代成虫の発生時期は少なくとも4月下旬から5月上旬か,それよりも早いと推定された。イチゴにおける被害密度は年次間差が大きかったが,その原因は不明だった。本種成虫に対する殺虫剤の効果を簡易な室内試験で調査したところ,マラソン乳剤とチアクロプリド水和剤,スピノサド水和剤の効果が高かった。
著者
我孫子 和雄
出版者
関西病虫害研究会
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.49-52, 1978-03-31 (Released:2012-10-29)
参考文献数
8
被引用文献数
1

トマトうどんこ病の発病に及ぼす温度ならびに湿度の影響について実験を行ない, 次の結果を得た.1) 分生胞子は10-30℃の間で発芽し, 35℃では発芽しなかった. 最適温度は20℃前後であった. また, 分生胞子は湿度45-100%の範囲で発芽し, 発芽率および発芽管長とも湿度の高低との間に顕著な差異は認められなかった.2) 分生胞子の形成は10-35℃の間で起こり, 最適温度は15℃前後であった. 28℃以上では分生胞子の形成量はきわめて少なかった.3) 発病は15-26℃の間で認められ, 10℃以下および28℃以上では発病しなかった. 発病の最適温度は23℃前後であった. 湿度との関係では, 発病は45-100%の範囲で認められた. 発病に好適な湿度条件は85-95%と考えられ, また湿度100%では発病が抑制された.
著者
松浦 誠
出版者
関西病虫害研究会
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.28-32, 1976

柑橘類の訪花害虫であるコアオハナムグリについて, 成虫の年間の発生消長, 成虫の越冬へ入る時期と越冬後の活動開始期, 越冬後の成虫の死亡時期および孵化時期の異なる幼虫の発育経過について調査を行なった.<BR>本種の成虫は4月下旬より11月上旬まで訪花活動が見られたが, 5月中旬と9月中旬に発生のピークがあり, これらの個体は世代を異にする. 越冬態は通常成虫で, 9月中旬より11月に土中に潜入し, 翌春4月下旬~5月下旬の間に再び地上に現われた. これらの成虫は, 繁殖活動ののち, 7~9月に死亡して, 新世代の成虫と交代する. 6月上旬~7月中旬に孵化した幼虫は3令を経過し, 同年8~10月の間に羽化したが, 室内飼育条件下で12% (5/41) の幼虫が4令に達し, 越冬に入った.
著者
太田 泉 武田 光能
出版者
関西病虫害研究会
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.1-5, 2014
被引用文献数
7

害虫アザミウマ類の捕食性天敵であるタイリクヒメハナカメムシに,コリアンダー,シロツメクサ,スィートアリッサム,スカエボラ,ソバ,ディル,バーベナ,ハゼリソウ,ホーリーバジル,マリーゴールドの花もしくは葉を与えて飼育し,生存期間の比較を行った.フレンチマリーゴールドを除く9種類の植物において,花を与えられた個体は同植物の葉を与えられた個体よりも長く生存できた.特に,コリアンダー,スィートアリッサム,スカエボラ,ソバ,ディル,ホーリーバジルの花では,生存期間が葉の場合の4倍以上長くなった.タイリクヒメハナカメムシ幼虫にソバの花を与えて飼育した場合,成虫までに発育できた個体は,スジコナマダラメイガ卵を与えた個体より少なく,また,成虫まで発育した個体の後脚脛節長もスジコナマダラメイガ卵で発育した個体より短くなった.さらに,雌成虫にソバの花を与えた場合の産卵数も,スジコナマダラメイガ卵を与えた個体の産卵数より少なかった.
著者
岩本 豊 長田 靖之 相野 公孝 神頭 武嗣
出版者
関西病虫害研究会
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.17-21, 2003-05-31 (Released:2012-10-29)
参考文献数
11
被引用文献数
1

チンゲンサイ根こぶ病に対して熱水土壌消毒法の適応性を検討した。 熱処理が根こぶ病菌の生存に及ぼす影響を検討では, 50℃: 8時間, 55℃: 4時間, 60℃: 3時間の熱処理によって, 根こぶ病菌の根毛感染は阻害されたことから, チンゲンサイ根こぶ病を対象に熱水土壌消毒を行う場合は, 55℃では4時間以上, 60℃では3時間以上が必要であると考えられた。 根こぶ病激発圃場において熱水土壌消毒を行ったところ, 地温55℃以上の継続時間は7.4時間であった。 熱水処理区の根こぶ病の発生は著しく抑制され, 収量も増加傾向であった。 熱水土壌消毒法のチンゲンサイ根こぶ病に対する適応性は高いと考えられた。
著者
窪田 昌春 佐藤 衛 西 和文 篠原 信
出版者
関西病虫害研究会
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.1-9, 2010 (Released:2010-09-06)
参考文献数
32

無処理では,トマト苗のほぼ100%が発病する青枯病激発圃場において,耐病性台木(「LS89」,「がんばる根3号」)への接ぎ木苗を利用することにより,発病遅延が認められた。それに加え,土壌深度約70 cmまでの深耕と籾殻の大量(10 kg/m2以上)投入により透水性を改善した後に,熱水土壌消毒処理(95℃,250 L/m2)を行った場合には,発病株率が40%以下となり,大きな防除効果が得られた。土壌温度も,深度50 cmの地点で,熱水処理のみの区での約35℃に対し,透水性改善区では60℃以上まで上がり,消毒効果が立証された。本圃場では微生物資材「セル苗元気」,熱水土壌消毒のみによる防除効果は認められなかった。土壌中の青枯病菌密度は,無処理,熱水処理のみの区では熱水処理後 103 cfu/g 乾土オーダーから発病開始後に急増したが,前述の透水性改善区では,2年目以降,無処理区等の発病開始時まで,本試験での検出限界(102 cfu/g 乾土オーダー)付近以下に抑えられた。
著者
髙柳 春希 西田 隆義
出版者
関西病虫害研究会
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.131-133, 2016-05-31 (Released:2016-09-01)
参考文献数
18
被引用文献数
1

So far a number of studies have confirmed that organic farming and integrated pest management (IPM) enhance environmental conservation in terms of abundance of natural enemies, particularly in farm lands. In contrast, little is known for the corresponding effect in paddy fields. We carried out a factorial experiment, using azolla and paper mulch respectively as a bio-herbicide and a physical weeding measure, to examine whether these methods can enhance density of natural enemy, in paddy fields of Shiga prefecture. The results suggested that only weeding by azolla but not by paper mulch increased the density of natural enemies such as web spiders.