著者
野上 晃司 應田 義雄 松本 譽之
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.3115-3123, 2012 (Released:2012-10-22)
参考文献数
12
被引用文献数
2

ベーチェット病は再発性口腔内アフタ,皮膚症状,眼症状,外陰部潰瘍を4主症状とする難治性の全身炎症性疾患である.さらに5つの副症状として関節炎,副睾丸炎,血管炎,消化管症状,中枢神経症状があげられる.消化管ベーチェット病は,この副症状のひとつである消化管症状が主に出現しているものをいう.ベーチェット病の消化管病変は全消化管に生じうるが,好発部位は回盲部近傍で,典型例では難治性の深い下掘れ傾向をもつ打ち抜き潰瘍を呈する.診断では,これらと同様の粘膜所見を来す疾患を鑑別することが重要である.臨床経過や,それぞれの粘膜所見の類似点・相違点に着目し疾患を除外していく.治療に関しては,依然確立されていないが,抗TNF-α抗体製剤の有用性が認められつつある.
著者
金 〓志 西条 寛平 瀬尾 充 松浦 隆志 一宮 仁 相島 慎一 松本 主之 飯田 三雄
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 = Gastroenterological endoscopy (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.1431-1436, 2009-06-20
参考文献数
23
被引用文献数
1

症例は50歳,男性.タール便を主訴に来院し,上部消化管内視鏡検査で十二指腸下行部傍乳頭部に長径約20mmの広基性ポリープがみられた.観察時にポリープ表面より出血したため,止血術を施行した.再出血の可能性とVater乳頭口側3mmの近傍に位置していたことから,開腹下の外科的粘膜切除術で治療した.家族歴,消化管外徴候,消化管の他病変がないこと,および切除標本の病理組織所見から,孤在性Peutz-Jeghers型ポリープ(以下PJ型ポリープ)と診断した.十二指腸のPJPは比較的少なく,本例は広基性を呈した点で稀と思われた.
著者
遠藤 一夫 山崎 雅彦 葛島 達也 深尾 俊一 横田 広子 中野 貞生
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.79-83, 1997-01-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
28
被引用文献数
3

症例は70歳の男性.内視鏡的大腸ポリープ切除後の経過観察のため施行した大腸内視鏡検査で回腸終末部に腫瘍を認めた.外科的切除した腫瘍は亜有茎性で,大きさ4.5×2.8×高さ2.2cm,病理組織学的に高分化腺癌で,深達度はmであった.極めて稀有な症例と考えられた.回腸癌の早;期発見のためには回腸終末部の観察が重要である.
著者
平田 健一郎 辰口 治樹 望月 環 三谷 正信 矢花 剛 福田 守道
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.323-332, 1992-02-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
13
被引用文献数
1

胃平滑筋腫19例と胃平滑筋肉腫8例について超音波内視鏡(EUS)による超音波断層像を検討し,良・悪性の鑑別診断を試みた.腫瘍の最大径で両者を比較すると平滑筋腫では3.9±1.9cm,平滑筋肉腫では9.9±5.9cmで有意差(p<0.0005)を認めた.腫瘍の最大径別に3cm未満,3~8.9cm,9cm以上の3段階に分類し超音波断層像を検討した.3cm未満では7例中6例が平滑筋腫で,その超音波断層像は辺縁整,内部エコー均一(1例のみ不均川一),径1cm以上の嚢胞(-)で特徴的であった.また,9cm以上の大きな腫瘍は4例全例が平滑筋肉腫で径1cm以上の嚢胞を有していた.しかし3~8.9cmの範囲の腫瘍16例では超音波断層像の組合せで鑑別診断を試みても正診率は60%台に留まった.以上より,最大径3cm未満および9cm以上の腫瘍はEUSでほぼ的確に良・悪性の鑑別が可能であるが,3~8.9cmの腫瘍は鑑別が困難な場合があり,生検を含む積極的なアプローチが必要と考えられた.
著者
小林 研二 青木 太郎 西岡 清訓 高地 耕 小森 孝通 畠野 尚典 吉田 恭太郎 林 英二朗
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 = Gastroenterological endoscopy (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.28-34, 2011-01-20
参考文献数
20
被引用文献数
2

61歳男性.主訴は嚥下時心窩部痛,胸部中部食道(Mt)の長径3cm,IIc,食道扁平上皮癌で,ESDを施行.切除標本では低分化型扁平上皮癌,sm1,ly1,v1であり,追加治療として化学療法を施行.14カ月後に胸部大動脈周囲リンパ節転移再発にて,手術を行い,組織学的にはリンパ節再発,内分泌細胞癌であった.集学的治療をするも,初回治療から2年1カ月,食道切除から10カ月で原病死した.術前診断困難な悪性度の高い食道癌におけるESD後のリンパ節再発死亡例を報告した.