著者
後藤田 卓志 赤松 拓司 阿部 清一郎 島谷 昌明 中井 陽介 八田 和久 細江 直樹 三浦 義正 宮原 良二 山口 太輔 吉田 直久 川口 洋佑 福田 眞作 磯本 一 入澤 篤志 岩男 泰 浦岡 俊夫 横田 美幸 中山 健夫 藤本 一眞 井上 晴洋
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.62, no.9, pp.1635-1681, 2020 (Released:2020-09-23)
参考文献数
225
被引用文献数
1

消化器内視鏡分野における鎮静のニーズがさらに高まり日常診療において重要度の高い医療行為となっている.この度,日本消化器内視鏡学会は日本麻酔科学会の協力のもと「内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン(第2版)」の作成にあたり,安全に検査・治療を遂行するためには何が問われているかを実地診療における疑問や問題として取り上げた.そのうえで,20項目のクリニカルクエスチョンを決定した.作成にあたっては「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017」に従い,推奨の強さとエビデンスの質(強さ)を示した.現在日常的に行われている消化器内視鏡診療(以下,内視鏡)における鎮静の臨床的疑問と問題に関して現時点でのステートメントを示すことができた.なお,この領域における本邦からのメタアナリシスなど質の高い報告は少なく,専門家のコンセンサスを重視せざるを得ない部分も多かった.また,鎮静に主に使用されているベンゾジアゼピン系の薬剤は保険適用外であるのが現状で,費用負担に関する不利益の検討ができなかった.また,診療ガイドライン作成にあたって受益者である患者・市民の視点を反映することが今後の課題である.なお,ガイドラインは現時点でのエビデンスの質(強さ)に基づいた標準的な指針であり,医療の現場で患者と医療者による意思決定を支援するものである.よって,個々の患者の希望,年齢,合併症,社会的状況,施設の事情や医師の裁量権によって柔軟に対応する必要がある.
著者
浜本 哲郎 大谷 正史 松本 栄二 堀 立明 鶴原 一郎 八島 一夫 磯本 一
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.114, no.12, pp.2134-2141, 2017-12-05 (Released:2017-12-05)
参考文献数
30

症例は42歳,男性.禁煙後に血便が出現し潰瘍性大腸炎と診断された.5-ASA,プレドニゾロンの投与で寛解導入したが減量にともなって再燃し,強力静注療法,白血球除去療法,抗TNF-α製剤,タクロリムスなどで加療したが,寛解導入できなかった.ところが,喫煙の再開で血便は消失し,内視鏡的にも粘膜治癒を確認した.禁煙後に発症し,喫煙の再開で寛解に至ったことから,ニコチンや一酸化炭素を介した抗炎症作用が考えられた.
著者
森崎 智仁 大仁田 賢 竹島 史直 赤澤 祐子 山口 直之 宮明 寿光 田浦 直太 市川 辰樹 磯本 一 鳥山 寛 中尾 一彦
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.108, no.2, pp.245-252, 2011 (Released:2011-02-07)
参考文献数
22
被引用文献数
1

79歳,女性.上腹部不快感あり,近医にて上部消化管内視鏡検査を施行.進行胃癌を認め,当院紹介.全身精査にて,全身リンパ節転移を認め,S-1単剤化学療法を開始.2カ月後に黄疸と肝機能障害が出現し,S-1を中止した.内視鏡的逆行性膵胆管造影検査にて,肝門部肝管を中心に多発性の胆管狭窄を認めた.肝門部に腫瘍を認めず,S-1による続発性硬化性胆管炎を疑った.加療を行ったが軽快せず,永眠された.
著者
丸山 茂雄 八島 一夫 池淵 雄一郎 澤田 慎太郎 磯本 一
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.115, no.7, pp.643-654, 2018-07-10 (Released:2018-07-10)
参考文献数
27

虚血性大腸炎(IC)60例の臨床的検討を行った.43例(72%)が5月から10月の時期に発症していた.58例(97%)が夜8時から翌朝の7時までの夕食後比較的短時間に発症し,52例(87%)は,就寝時間帯であった.若年者では,基礎疾患の関与がなく,便秘などの腸管側因子のみが誘因となり軽症例が多いが,高齢者では,基礎疾患に起因する血管側因子に,腸管側因子が複合して重症化する傾向が見られた.内視鏡点数と各臨床因子との相関関係を求めた結果,重症化の要因として,白血球数,年齢,消化器症状が有意な独立因子であった.多くの症例が,比較的湿度の高い時期に発症していることより,湿度も発症の一因になりうると推測した.
著者
杉原 誉明 孝田 雅彦 岡本 敏明 三好 謙一 的野 智光 法正 恵子 岡野 淳一 磯本 一 堤 玲子 江原 由布子
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.571-576, 2016-11-20 (Released:2016-11-29)
参考文献数
16
被引用文献数
8 14

薬物アレルギーの検査であるリンパ球刺激試験(drug-induced lymphocyte stimulation test;DLST)の陽性率は,約4割と報告されているが,偽陽性などの問題がある.今回,薬物性肝障害,薬物アレルギーの患者において2回目のDLSTが起因薬物同定に有用か検討した.対象は2009年から2015年の間に当院で同じ薬物に対して2回DLSTを行った症例を抽出し,後ろ向きに検討した.2回目の測定までは,中央値で82(27-247)日であった.1回目で,原因薬物の同定感度は53.9%,特異度61.5%,陽性適中率(PPV)58.3%,陰性適中率(NPV)57.1%であったが,2回目では感度87.5%,特異度72.2%,PPV58.3%,NPV92.9%であり,感度・特異度,NPVが向上した.DLST2回目測定は起因薬物同定に有用と考えられた.
著者
大津留 晶 ブライデン ベラ 三木 文夫 磯本 一 赤司 有史 小坂 光男 山下 俊一
出版者
日本ハイパーサーミア学会
雑誌
日本ハイパーサーミア学会誌 (ISSN:09112529)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.131-141, 2000

がん遺伝子治療は進行癌や難治性癌の治療において, 副作用が少なくしかも効果的な治療となる可能性を秘めているが, 現段階における治験成績は必ずしも満足いくものではない.一方, 悪性腫瘍に対する温熱療法も, 癌細胞における熱ショック蛋白 (HSP) 誘導に代表される温熱抵抗性機序によりその効果は現況では限られたものである.しかし癌自殺遺伝子治療と温熱療法を併用することにより, 癌細胞に対するFas依存性アポトーシスを介した機序により, 著明な治療効果増強が得られることが見出された.さらに遺伝子治療における副作用をなくす目的で, 癌細胞の温熱耐性獲得時にHSP遺伝子のプロモーター活性が上昇することを応用した, 腫瘍選択的な分子標的治療を新たに考案したので報告する.
著者
浜本 哲郎 大谷 正史 松本 栄二 堀 立明 鶴原 一郎 八島 一夫 磯本 一
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.114, no.12, pp.2134-2141, 2017

<p>症例は42歳,男性.禁煙後に血便が出現し潰瘍性大腸炎と診断された.5-ASA,プレドニゾロンの投与で寛解導入したが減量にともなって再燃し,強力静注療法,白血球除去療法,抗TNF-α製剤,タクロリムスなどで加療したが,寛解導入できなかった.ところが,喫煙の再開で血便は消失し,内視鏡的にも粘膜治癒を確認した.禁煙後に発症し,喫煙の再開で寛解に至ったことから,ニコチンや一酸化炭素を介した抗炎症作用が考えられた.</p>
著者
中根 俊成 向野 晃弘 南 ひとみ 磯本 一 樋口 理 岡西 徹 村田 顕也 井戸 章雄 松尾 秀徳 中尾 一彦 安東 由喜雄
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.309c, 2017 (Released:2017-11-25)

【背景】Autoimmune gastrointestinal dysmotility(AGID)は2008年に米国より提唱された疾患概念であり,食道・胃の運動障害や慢性偽性腸閉塞(CIPO)の一部が相当する.抗自律神経節アセチルコリン受容体(gAChR)抗体による自己免疫性自律神経節障害(AAG)の限局型とも言われているが,臨床像および治療反応性に関する検討は世界的にも少なく,本邦における検討が急務である.【目的】本邦におけるAGIDの臨床像,治療反応性を明らかにする.【方法】1)抗gAChR抗体陽性AAG患者123症例における消化管運動障害(食道機能障害,胃不全麻痺,麻痺性イレウス)の頻度,臨床像,治療内容と反応性を調査する.2)新たにアカラシア28症例,CIPO14症例における抗gAChR抗体陽性頻度,臨床像を検討する.【結果】1)123症例のうち,上部消化管障害を48症例(39%),下部消化管障害を89症例(72%)に認め,そのうち食道機能障害6症例,胃不全麻痺1症例,麻痺性イレウス3症例を確認し,一部には免疫治療による改善症例が存在した.2)アカラシアでは6症例,CIPOでは7症例の抗体陽性者が存在し,自律神経障害(乾燥症状や膀胱機能障害など)の併存を確認した.【結論】AGIDは重度の消化管症状を呈するが,抗gAChR抗体陽性症例が存在し,それらでは自律神経障害の併存が確認された.AGIDがAAGの限局型に相当するか,さらなる集積と検討が必要であるが,免疫治療によって制御できる可能性が示された.
著者
磯本 一
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

内視鏡下に食道癌症例の癌部・周辺非腫瘍粘膜から生検サンプルを用いてマイクロアレイで同定した12種のヒトマイクロRNA(食道扁平上皮癌部で2倍以上の発現変化)を定量的に分析してみると、miR-1246、miR-1290、miR-196a、miR-196b、miR-1914、miR-424、miR-130b、miR-7、miR-455-3pが2倍以上発現上昇した。miR-203が2分の1以下に発現低下した。食道扁平上皮癌組織のmiR発現と臨床病理学的因子の関連性を明らかにするために、多段階に食道癌が発癌する過程においてmiRが果たす役割を解析する。しかしながら、異形成~上皮内癌~早期癌のサンプルが十分でなく、内視鏡下粘膜下層剥離術を用いて切除標本、施行時の血液サンプルを集積して、臨床病理database を構築した。化学放射線療法前後における非腫瘍部食道粘膜のmiRの変動を、6症例において統計的に解析した結果で有意差がなかったが、2倍以上増加したmiR-1914については放射線応答性miRである可能性があり、症例を追加し治療前後でその発現変動を追求する。食道扁平上皮癌における特性をさらに検討するため、アカラシア患者の食道粘膜における発現変化を検討した。対照群と比べて、アカラシアの食道粘膜では12種類のmiRで有意差がみられた。7つが有意に上昇、5つが有意に低下したmiRであった。注目すべき点は、食道癌をはじめとする多くの癌腫で発現上昇が報告されているmiR-21がアカラシア食道粘膜で上昇している点である。miR-21の標的分子として報告されているPDCD4、 SPRY1やCCDC12のmRNAが低下している。しかし、一方でmiR-1246、miR-196a、miR-196b、miR-1914、miR-424、miR-130b、miR-7、miR-455-3p、miR-203 はいずれもアカラシア食道粘膜では変動しておらず、食道扁平上皮癌の発癌過程における特性が示唆された。miR-1290は食道扁平上皮癌において血清miRが上昇している。miR-1290をターゲットに、食道扁平上皮癌特異的miRの特定を確かなものにしたい。