著者
浅木 茂 西村 敏明 岩井 修一 北村 英武 増田 幸久 迫 研一 佐藤 玄徳 渋木 諭 榛沢 清昭 佐藤 彰 大方 俊樹 後藤 由夫
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.792-798_1, 1981-06-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
25
被引用文献数
6

著者らは,高周波電流による内視鏡的胃ポリペクトミー時の大出血例7症例と,緊急内視鏡検査で,大出血のため止血が必要と判断した出血性胃・十二指腸潰瘍9例の出血部に,直視下に99.5%エタノールまたは純エタノールを局注し,全例止血に成功した.局注止血後の再出血例はなく全身状態の急速な改善がみられ,全例外科的処置を必要とせず内科的に管理できた.本法は操作が簡単で,出血血管の周囲に適確に局注できる内視鏡のエキスパートであれば誰れでも,どこででもできる方法で,静脈瘤以外の出血に対して効果的な止血法と考える.
著者
杉本 光繁
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.2345, 2018 (Released:2018-10-22)
参考文献数
1

【目的】プロトンポンプ阻害剤(PPI)の長期投与によって,ヘリコバクターピロリ菌(HP)感染者において胃粘膜萎縮が進行することが報告されている.われわれは,HP除菌治療を受けた既感染者におけるPPI長期使用の胃癌発症に与える影響を明らかにするために本検討を行った.【デザイン】この検討は,2003年から2012年までの間にクラリスロマイシンを使用した3剤除菌治療を行った外来患者を対象として,香港の健康データベースを使用して行われた.このレジメンで除菌できなかった症例,除菌治療後12カ月以内に胃癌の診断がされた症例,除菌治療後に胃潰瘍を発症した症例は除外した.また,胃癌が診断された半年以内にPPIやヒスタミン受容体拮抗薬(H2RA)が開始された患者はバイアスを考慮して除外した.われわれはプロペンシティスコアを利用したCOXハザードモデルを使用してPPI内服による胃癌発症リスクを評価した.【結果】63,397人の対象者の中で153人(0.24%)が平均7.6年の観察期間中に胃癌が発症した.PPIの使用で胃癌発症のリスクが2.44(95%CI:1.42-4.20)倍に有意に増加したが,H2RAの使用時は0.72(1.48-1.07)とリスクの増加は認めなかった.また,胃癌発症のリスクはPPIの投与期間と正の相関を示し,投与期間の延長に伴いリスクが増加した[PPI内服1年:5.04(95% CI:1.23-20.61),2年内服:6.65(1.62-27.26),3年内服:8.34(2.02-34.41)].PPIの非内服者と内服者の10,000人年あたりの胃癌発症リスクの差は,4.29(95%CI:1.25-9.54)であった.【結論】長期間のPPIの使用は,HP除菌治療後にもかかわらず,胃癌発症リスクを増加する可能性があり,使用する際には注意を要する.
著者
阿部 雅則
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.58, no.11, pp.2342, 2016 (Released:2016-11-20)
参考文献数
1

【背景】世界中で大腸癌の患者数や死亡率が増加しており,予防のための新しい対策が求められている.経口糖尿病薬であるメトホルミンには大腸癌を含む癌の化学予防効果の可能性があるが,メトホルミンを用いた大腸癌の化学予防についての臨床試験は報告されていない.本研究では,腺腫再発のリスクの高い患者におけるメトホルミンの安全性と大腸がん化学予防効果(腺腫・ポリープの再発で評価)について1年間の臨床試験を行った.【方法】本研究は多施設二重盲検プラセボ対照ランダム化第3相試験として行われた.日本の5病院において大腸ポリープまたは腺腫を内視鏡下で切除された非糖尿病成人を対象とした.メトホルミン(250mg/日)投与群もしくはプラセボ投与群に無作為に割り付け,試験開始1年後に大腸内視鏡検査を施行し,腺腫・ポリープの数と発生頻度を解析した.【結果】2011年9月1日から2014年12月30日までに大腸腺腫・ポリープに対して内視鏡下切除を行った498人のうち,151人にランダム化を行った(メトホルミン群 79例,プラセボ群 72例).メトホルミン群の71例,プラセボ群の62例が1年後の大腸内視鏡検査を施行した.全ポリープおよび腺腫の発生率はメトホルミン群でプラセボ群に比し有意に低かった.(全ポリープ:メトホルミン群 27/71[38.0%:95%CI 26.7-49.3],プラセボ群 35/62[56.5%:95%CI 44.1-68.8];p=0.034,リスク比0.67[95%CI 0.47-0.97];腺腫:メトホルミン群 22/71[30.6%:95%CI 19.9-41.2],プラセボ群 32/62[51.6%:95%CI 39.2-64.1];p=0.016,リスク比 0.60[95%CI 0.39-0.92]).ポリープ数の中央値はメトホルミン群で0(IQR 0-1),プラセボ群で1(IQR 0-1)であった(p=0.041).腺腫数の中央値はメトホルミン群で0(0-1),プラセボ群0(0-1)であった(p=0.037).有害事象は15例(11%)にみられたが,すべてgrade 1であった.1年間の試験期間中に重篤な有害事象はみられなかった.【結論】非糖尿病患者における1年間の低用量メトホルミン投与は安全に行うことができた.低用量メトホルミンはポリペクトミー後の異時性腺腫・ポリープの発生頻度・個数を減少させたことから,メトホルミンは大腸癌の化学予防に有用である可能性が示された.しかし,最終的な結論を得るためにはさらに大規模な長期間の臨床試験が必要である.
著者
樫田 博史
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.311-325, 2017 (Released:2017-03-22)
参考文献数
18

有茎性病変は通常のポリペクトミーの適応である.無茎性や平坦型病変で大きいもの,小さくとも癌を疑うような病変はEMR(やESD)の適応である.コールドポリペクトミーの適応は,癌を疑わない無茎性ないし平坦型病変で,9mm以下までが妥当な線と思われる.有茎性ポリープでは,頭部寄りにスネアをかける.茎が太い場合は出血予防のために留置スネアも使用する.コールドポリペクトミーの場合,周囲粘膜を含めて切除するため,常に病変をスネアの中央付近に捉えるよう,微調整しながらスネアを閉じる.EMRの成否の大半は,局注にかかっていると言っても過言ではない.屈曲部やヒダにまたがっている病変では口側から局注を開始する.SM癌を除く大きい病変では中央部から局注を開始する方が膨隆を得られやすい.穿刺した針で病変を少し持ち上げるようにし,注入しながら針をゆっくり引き戻していく.スネアをかける際は,軽く病変を押さえ込むようにするが,筋層を巻き込まないよう注意する.患者が痛みを訴える場合や,介助者がゴムのような弾力を感じてなかなか切れない場合は,筋層を巻き込んでいる可能性が高いので中止する.
著者
野津 巧 足立 経一 石村 典久 岸 加奈子 三代 知子 曽田 一也 沖本 英子 川島 耕作 石原 俊治 木下 芳一
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.183-187, 2021 (Released:2021-02-22)
参考文献数
13

症例は41歳女性.健診目的の上部消化管内視鏡検査にて下部食道に限局した白斑所見を認め,生検組織にて高倍率1視野あたり最大78個の好酸球浸潤があり好酸球性食道炎(EoE)と診断した.当センター受診の15日前から標準化スギ花粉エキスによる舌下免疫療法を受けており,EoE診断までは舌下後の薬液は飲み込んでいた.舌下後に薬液を吐き出すようにしたところ,治療継続3カ月後の内視鏡検査では,下部食道の白斑は消失し,生検所見でも改善を認めた.舌下療法を継続しているにもかかわらず,1年6カ月後の検査では,内視鏡所見,組織所見ともEoEの所見を認めなかった.また,スギ花粉症の症状も軽快傾向となっている.
著者
白井 保之 木下 善博 幸本 達矢 川野 道隆 中村 綾子 大石 俊之 原田 克則 吉田 智治
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.2293-2297, 2020 (Released:2020-10-20)
参考文献数
11

上部消化管内視鏡検査後に両側または片側の耳下腺部から頸部の腫脹が認められることがまれにある.われわれが経験した7例は1例が両側性,6例は左側の発症であった.いずれも経口内視鏡後の発症で,6例は無鎮静であり,DBERCP(Double balloon ERCP)後の1例は鎮静下での内視鏡であった.2例は以前にも同様の腫脹の経験があった.6例は疼痛なく,1例は腫脹部の軽度の疼痛があった.6例は約1時間で改善したが,1例は消失まで半日程度かかった.単純X線検査を施行した2例で空気の貯留は見られず,CTを施行した1例より耳下腺部の腫脹と診断した.上部消化管内視鏡後に一過性に起こる耳下腺部・頸部の腫脹自体は無害であり自然に改善するが,本疾患の知識は内視鏡医にとって重要であると考え報告する.
著者
田中 秀典 岡 志郎 田中 信治
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.1382-1388, 2021 (Released:2021-07-20)
参考文献数
16

近年,潰瘍性大腸炎関連腫瘍(ulcerative colitis associated neoplasia;UCAN)に対する内視鏡切除が施行されているが,適応や切除法に関して十分なコンセンサスは得られていない.当科では,UCANに対する内視鏡的粘膜下層剝離術(endoscopic submucosal dissection;ESD)の適応を,1)術前生検でlow grade dysplasia,2)内視鏡的に境界明瞭,3)周囲生検でdysplasia陰性,4)寛解期UCとしている.UCANに対するESDは,粘膜下層高度線維化のため技術的難易度が高く,周到なストラテジーと効果的なデバイス使用が肝要である.
著者
貝瀬 満 田中 重之 鈴木 昭文 小林 義隆 西村 誠 領家 俊雄 村岡 威士
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.93-99, 1990-01-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
17
被引用文献数
1

悪性貧血を伴うGastric Antral Vascular Ectasia (=GAVE)の1例を経験したので報告する.症例は82歳女性.高血圧・大動脈弁狭窄・慢性肝障害を合併.高度の大球性貧血を指摘され当科入院.著明な高ガストリン血症を呈する悪性貧血及び胃前庭部にびまん性のvascular ectasia(=VE)を呈するGAVEと診断した.highriskであり手術を見送り,保存的な治療を試みたが長期間に渡り大量の輸血を必要とし,多臓器不全により死亡した.本邦報告例2例を含む50例のGAVEを検討した.GAVEは高齢の女性に多い傾向を示し,内視鏡的にwatermelon stomachとdiffuse antral vascular ectasiaの2つのタイプに分類出来た.VEを生じうる肝硬変・大動脈弁狭窄・強皮症・慢性腎不全などを合併する症例を認め,GAVEの成因との関連が推測された.また,GAVEには高率に無酸症を合併し,無酸症に伴う高ガストリン血症とGAVEの関係について検討を加えた.
著者
水上 健 杉本 真也
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.19-28, 2023 (Released:2023-01-20)
参考文献数
29

ループ形成や屈曲を招きやすいS状結腸は大腸内視鏡の挿入困難部位とされる.初学者では過送気によってS状結腸を拡張させてしまい,軸保持短縮法を用いても挿入困難となることがある.日本で開発された注水法では,少量の水の注入により短縮直線化が容易となるメリットがある.注水法に直腸S状結腸部での脱気を追加して改良した浸水法では,水と空気の境界面が解消され,視野の改善が得られた.初学者でも修得しやすく,ループ形成抑制による盲腸到達率の向上,患者の苦痛軽減が示されている.また,S状結腸軸捻転解除,過敏性腸症候群や腸管形態異常の評価などにも応用されている.欧米にも浸水法は普及し,腺腫発見率の向上につながるWater Exchangeや,内視鏡挿入手法に留まらず治療時に活用する浸水下内視鏡的粘膜切除術へと応用されている.浸水の特性を生かし,送気法における困難を克服する注水関連手技は,今後ますます普及することが期待される.
著者
水本 孝 北村 清明 高橋 裕子 為我 井道子 重森 恒雄 高田 久之 西島 克己 古川 裕夫 雑賀 興慶
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.283-289_1, 1983-02-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
22

症例は20歳の女学生で,大量の粘血便と腹部激痛を主訴として緊急入院した. 入院する半年前より峻下剤(sennosideA・B,12mg/錠)を服用しはじめた.発症の2日前に上記の下剤を一度に3錠も服用したが,軽度の腹痛を生じただけで排便しえず,発症の約6時間前に更に2錠用いた. 入院2日目に,緊急大腸内視鏡検査を行ったが,直腸から横行結腸の左半分の部位には全く異常がなく,右半分より盲腸に至る部分には広範囲に浮腫及び出血を伴う潰瘍または,びらん形成が見られた.あたかも潰瘍性大腸炎の激症型に酷似していた. 1943年,Heilbrunは下剤を長期間乱用している患者で,上行結腸を中心とした右側半分の大腸に好発する特殊な大腸炎を始めて報告し,cathartic colon(以下c.c.)と命名した. その後,多数の症例報告があるが,腸管の神経叢や筋組織までが変性崩壊し広範囲の不可逆的な病変を生じているのが通常であった. このような症例には最終的に,やむを得ず右側大腸半切除術等の外科的処置も行われるが,それでも充分の効果はなく,なお長期間にわたって腹痛や腹部不快感を訴える上に,低蛋白血症や血清電解質異常を来すものが多い. 著者らの症例は一過性で,便秘薬の服用を禁止し,食餌療法と抗生物質の投与で症状は速やかに軽快しはじめ,三週後の大腸内視鏡検査ではほとんど正常に戻っていた. 一方,cathartic colonはmelanosis coliとの関連性が問題になっているが,われわれの症例でもこれを認めた.われわれのような例もある故,慢性便秘症の患者が安易に下剤を乱用しないように戒しめたい.
著者
村田 洋介 阿部 雅則 道堯 浩二郎 松原 寛 舛本 俊一 山下 善正 堀池 典生 恩地 森一
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.44, no.8, pp.1186-1190, 2002-08-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
15
被引用文献数
1

症例は53歳,女性.初回入院時,抗ミトコンドリア抗体陰性.腹腔鏡では,溝状および広範陥凹があり,肝組織では広範壊死がみられた.自己免疫性肝炎(AIH)と診断,副腎皮質ステロイドの投与を開始.その後,胆道系酵素の上昇がみられた.第2回目の腹腔鏡では,陥凹所見は改善.肝組織では非化膿性破壊性胆管炎がみられた.AIHの経過中に原発性胆汁性肝硬変が顕在化し,その経過を腹腔鏡で観察しえたので報告する.
著者
今村 祐志
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.1444-1449, 2018 (Released:2018-08-20)
参考文献数
31
被引用文献数
2

A型胃炎とは自己免疫性胃炎のことであり,自己免疫的機序により胃底腺領域の高度粘膜萎縮および化生を認め,ビタミンB12や鉄などの吸収障害が起こり,神経内分泌腫瘍や胃癌を合併しうる.特徴的な所見は,胃底腺領域の萎縮を内視鏡や生検組織などで認め,抗壁細胞抗体や抗内因子抗体が陽性となり,ガストリン値が高値,ビタミンB12が低値となる.治療法はなく,ビタミンB12や鉄などの補充を行うとともに,胃癌のサーベイランス,合併症の検索を行う.診断されていない症例が多いと考えられ,自己免疫性胃炎を鑑別に挙げることが大切である.
著者
原 明史 宮澤 祥一 鈴木 剛 相田 久美 江崎 行芳
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.1651-1655, 2012 (Released:2012-07-03)
参考文献数
15

症例は85歳,女性.ランソプラゾール内服中に水様性下痢が出現した.大腸内視鏡検査で下行結腸,S状結腸から直腸に縦走傾向を呈する線状の引っかき傷様の所見が存在し,いわゆるcat scratch colonの内視鏡所見を呈していた.生検で粘膜上皮直下にcollagen bandを認め,collagenous colitisと診断.ランソプラゾール中止により臨床症状は速やかに改善した.Cat scratch colonを呈した示唆に富むcollagenous colitisの1例と考えられた.
著者
斎藤 豊 岡 志郎 河村 卓二 下田 良 関口 正宇 玉井 尚人 堀田 欣一 松田 尚久 三澤 将史 田中 信治 入口 陽介 野崎 良一 山本 博徳 吉田 雅博 藤本 一眞 井上 晴洋
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.1519-1560, 2020 (Released:2020-08-20)
参考文献数
293
被引用文献数
3

日本消化器内視鏡学会は,新たに科学的な手法で作成した基本的な指針として,「大腸内視鏡スクリーニングとサーベイランスガイドライン」を作成した.大腸がんによる死亡率を下げるために,ポリープ・がんの発見までおよび治療後の両方における内視鏡によるスクリーニングおよびサーベイランス施行の重要性が認められてきている.この分野においてはレベルの高いエビデンスは少なく,専門家のコンセンサスに基づき推奨の強さを決定しなければならないものが多かった.本診療ガイドラインは,20のclinical questionおよび8のbackground knowledgeで構成し,現時点での指針とした.
著者
関口 正宇 関根 茂樹 松田 尚久
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.457-469, 2020 (Released:2020-04-20)
参考文献数
59
被引用文献数
1

内視鏡医が日常診療で遭遇する機会の増えている直腸神経内分泌腫瘍(NET)であるが,診断,治療から治療後の対応に至るまで,十分にコンセンサスが得られていない事項が多く,その取り扱いに苦慮することが経験される.内視鏡治療適応についても,腫瘍径1~1.5cmの病変の扱いなどさらなる検証を要するが,少なくとも,最も高頻度に遭遇する,粘膜下層にとどまる1cm未満の直腸NETが内視鏡治療の適応であることについてはコンセンサスが得られている.そのような病変に対する内視鏡治療手技としては,有効性,安全性,患者負担の観点から,ESMR-LやEMR-Cといった通常のEMRに工夫を加えた手技が推奨される.内視鏡治療後には,切除病変の病理評価に基づき追加手術の必要性を判断するが,細胞増殖能や脈管侵襲などの結果によって判断に迷う症例も多い.特に脈管侵襲については,病理における免疫・特殊染色の使用に伴い,粘膜下層にとどまる小さなNET G1病変でも脈管侵襲陽性例が高頻度に見られることが報告されており,その取り扱いについてさらなる議論が望まれる.
著者
露口 利夫
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.143-152, 2022 (Released:2022-02-21)
参考文献数
40

急性胆管炎,胆石性膵炎,急性胆囊炎など胆膵疾患は緊急内視鏡を必要とすることがある.緊急ERCPの適応には中等症以上の急性胆管炎,胆管炎を伴う胆石性膵炎,手術や経皮経肝胆囊ドレナージ(percutaneous transhepatic gallbladder drainage,PTGBD)の適応のない急性胆囊炎などがある.急性胆管炎に対する内視鏡的ドレナージは中等症では早期,重症では直ちに行うべきである.胆管炎を伴わない胆石性膵炎に対するERCPのタイミングは緊急ではなく早期(待機的)とすべきである.ドレナージ方法の選択と施行するタイミングはガイドラインに従うだけでなく各施設において得意とする方法を選択すべきである.新たな手技としてバルーン内視鏡下ERCP,超音波内視鏡下胆道ドレナージなどがあげられるが,これらの緊急内視鏡は基幹病院において経験豊富な胆膵内視鏡医により施行されるべきである.