著者
川田 研郎 河野 辰幸 中島 康晃
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.70-80, 2017 (Released:2017-01-20)
参考文献数
54

近年,欧米においてはバレット食道が急速に増加しており,本邦においても今後増加することが懸念されている.バレット食道を診断するためには,十分に食道胃接合部を伸展させ,下部食道柵状血管の下端もしくは胃の襞の上縁を確認し,胃から連続する円柱上皮を確認する.SSBEの表在癌は右前壁に多いとされ,まず通常内視鏡で発赤・凹凸不整の所見を見落とさないことが重要である.深達度診断には白色光観察に加え,画像強調内視鏡,拡大内視鏡,超音波内視鏡,食道造影が用いられる.凹凸のほとんどない0-Ⅱbや0-Ⅱa,基部にくびれを有する0-Ⅰ型,浅い陥凹を有する0-Ⅱc型は粘膜癌を示唆する.酢酸併用画像強調+拡大内視鏡は癌の側方伸展の診断に有用である.バレット食道癌の深達度診断は治療方針をたてるのに重要である.一部のT1a-DMM癌と粘膜下層癌には転移が見られるため,内視鏡治療の適応拡大は慎重に行う必要がある.
著者
斎藤 清二 田中 三千雄 樋口 清博 窪田 芳樹 青山 圭一 島田 一彦 紺田 健彦 藤倉 信一郎 佐々木 博
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.24, no.8, pp.1238-1247_1, 1982-08-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
15

236例のERCP施行症例につき主に選択的胆管造影率の向上を目的として,超広視野角十二指腸ファイバースコープとストレシチ法の併用の有用性を検討した.Fujinon社製DUO-X(視野角105°)を使用した149例では,膵管造影率はOlympus社製JF-B3(視野角64°)を使用した87例の成績と差はなかったが,胆管造影率は明らかに高値であった(各々93.5%,77.8%).DUO-Xを使用してプッシュ法でERCPを行った群47例の選択的胆管造影率はJF-B3の45例のそれと統計的有意差を認めなかったが(各々89.4%,77.8%),DUO-Xとストレッチ法を併用した群61例では有意に高い胆管造影成績(96.7%)が得られた.DUO-Xとストレッチ法を用いて施行条件を一定としてERCPを行った32例中胆管造影成功30例の所要時間は平均11分24秒であった.ストレッチ法でのERCPは試みた大部分の症例において容易に施行され,症例の胃形態とスコープ走行形態の間には一定の関連は見い出し得なかった.以上よりERCPにおけるストレッチ法は選択的胆管造影に有利な方法であり,超広視野角十二指腸ファイバースコープの併用により比較的容易かつ確実に施行できる勝れた方法であると思われた.
著者
吉田 智治 白石 慶
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.3051-3062, 2009 (Released:2012-04-24)
参考文献数
86

高齢化につれて脳・心血管疾患を有する症例が増加している.脳・心血管疾患において抗血栓療法は大変重要であり,血管イベントの二次予防目的に抗血小板薬を投与されている症例も多い.なかでも頻用されている低用量アスピリンは,食道,胃,十二指腸,小腸,大腸にいたる全消化管の粘膜傷害を引き起こす可能性がある.この消化管粘膜傷害は,出血や穿孔を合併し時に致命的となりうるため,適切な対策が急務である.また,消化管出血に伴い,低用量アスピリンなどの抗血小板薬を休薬中に,重篤な血栓塞栓症を合併した症例も経験される.よって,迅速かつ適切な内視鏡的止血を達成し,早急に抗血小板薬を再開することが求められる.この様な抗血小板薬と消化管傷害に関する情報は,消化器科医のみならず,抗血小板薬の処方医も共有し,各診療科が連携を取りつつ症例毎に適切な抗血小板薬の投与ならびに消化管病変の発生予防,発生時の対処を行うべきであると考えられた.
著者
岩切 龍一 田中 聖人 後藤田 卓志 岡 志郎 大塚 隆生 坂田 資尚 千葉 俊美 樋口 和秀 増山 仁徳 野崎 良一 松田 浩二 下野 信行 藤本 一眞 田尻 久雄
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.1370-1396, 2018 (Released:2018-07-20)
参考文献数
160
被引用文献数
1

日本消化器内視鏡学会は,内視鏡診療ガイドライン作成作業の一環として,消化器内視鏡の洗浄・消毒標準化にむけたガイドラインを作成した.本邦と欧米先進国では消化器内視鏡医療の環境が異なる.欧米先進国では消化器内視鏡の施行は,ほぼ専門施設に限られ,厳格な洗浄・消毒の既定が遵守されている.本邦では小規模クリニックでも消化器内視鏡が行われ,年間に行われる消化器内視鏡数は膨大な数になる.内視鏡の洗浄・消毒法も医療機関によって差が認められるのも事実である.洗浄・消毒に関しての根拠は,エビデンスが乏しいのも事実であるが,内視鏡医療の発展のためにも消化器内視鏡の洗浄・消毒の標準化が必要である.
著者
小池 智幸
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.2661, 2017 (Released:2017-11-20)
参考文献数
2

【背景】ガイドラインでは,早期胃癌ESD非治癒切除患者に対してリンパ節転移の危険性から追加外科切除が推奨されているが,全例に追加外科切除を行うことは過剰医療となる可能性がある.そこで,本研究では,早期胃癌ESD後の治療方針決定のためのスコアリングシステムを確立することを目的とした.【方法】本研究は,2期にわけて行った.Development stageでは,ESD非治癒切除後追加外科切除を行った1,101例を対象とし,ロジスティック回帰分析を用いてリスクスコアリングシステム(eCura system)を作成した.Validation stageでは,eCura systemをESD非治癒切除後経過観察となった905例に当てはめ,癌特異的生存率(CSS)よりeCura systemの検証を行った.【結果】Development stageでは,5つのリンパ節転移リスク因子をβ回帰係数による重みづけから,3点:リンパ管侵襲,1点:腫瘍径>30mm,SM2,静脈侵襲,垂直断端陽性とした.続いて,患者を低リスク(0-1点,リンパ節転移率2.5%),中リスク(2-4点,同6.7%),高リスク(5-7点,同22.7%)の3群に分類した.Validation stageでは,CSSが3群間で有意差を認め(log-rank test:P<0.001),それぞれ5年CSS:99.6%,96.0%,90.1%であった.多変量Coxハザード回帰分析では,低から高リスクになるにつれて胃癌死のリスクが上昇する傾向を認めた(P trend<0.001).また,eCura systemの胃癌死に対するC statisticsは0.78であった.【結論】eCura systemは早期胃癌ESD非治癒切除患者の胃癌死を予測可能であった.eCura systemにて低リスクの場合には,ESD後経過観察もオプションとなりうる.
著者
日山 亨 田中 信治 茶山 一彰 吉原 正治
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.1437-1443, 2018 (Released:2018-08-20)
参考文献数
22

判例データベースで検索可能で,かつ,判決文が入手可能な上部消化管内視鏡・X線検査が関係した民事訴訟事例は,13事例(内視鏡検査関連9事例およびX線検査関連4事例)認められた.内視鏡検査が関係した9事例の内訳は,前処置後のショックが関係したものが4事例,胃癌の見落としおよび生検後の大量出血に関係したものがそれぞれ2事例,鎮静後の交通事故に関係したものが1事例であった.X線検査が関係した4事例の内訳は,胃癌の見落としとバリウムによる腸管穿孔に関係したものがそれぞれ2事例であった.5事例で医療機関側が勝訴しており,患者に悪い結果が生じたからといって,必ずしも医療機関側の責任とされてはいなかった.医療機関側の責任が認められるためには,3つの要件(患者側の損害,医療機関側の過失,因果関係)が揃う必要がある.事故時には,速やかに上記3要件について検討し,患者側に対する医療機関側の態度を決定する必要がある.
著者
冨永 直之 樋口 徹 山口 太輔 宮原 貢一 緒方 伸一 梶原 哲郎
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.3137-3141, 2013 (Released:2013-09-28)
参考文献数
16
被引用文献数
2

食道のESD後の狭窄予防として,近年ではステロイド内服が使用されつつあるが,副作用の危惧から,糖尿病・ウイルス性肝炎などの患者は除外されている.ブデソニドはアンテドラッグステロイドで,局所での抗炎症反応効果が高く,全身作用が極めて低いとされているため,従来は除外されてきた症例の対象拡大が期待できる.内服であり,投薬も簡便である.今回われわれは,ブデソニドを用いて狭窄予防を試みた,食道2/3周以上剥離した5例について検討を行った.全周剥離症例に対しては効果不十分であるが,現在のところ4/5周までは狭窄予防できている.症例を重ね,今後も更なる検討を行う予定である.
著者
細川 治 渡邊 透 佐藤 広隆 真田 治人
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.3551-3559, 2012 (Released:2012-11-30)
参考文献数
37
被引用文献数
3

我が国においてX線を用いた胃がん検診は50年以上続いて来たが,日常臨床においてX線検査が減少したことから今後の持続性が疑問視されている.内視鏡がこれに替わる位置にいるべきだが,円滑な移行にはほど遠く,検診件数は5%に満たない.その最大の理由は胃がん死亡率減少のエビデンスがないことで,僅かずつではあるがこれを証明しようとする試みが行われている.現在の段階では,内視鏡検診がX線検診に比較して胃がん発見率ならびに陽性反応適中率,早期胃がん比率において高く,胃がん1例あたりの発見費用が安価であることを主張して,自治体に働きかけざるを得ない.内視鏡検診は精度管理を行うことが必須であり,苦痛を少なくするために経鼻内視鏡スコープの導入などが必要と思われる.血液検査でリスクを評価して対象を選定する試みは議論の途上にある.
著者
高添 正和 畑田 康政 金井 隆典
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.3000-3013, 2011 (Released:2011-11-07)
参考文献数
45

クローン病画像診断及び治療の変遷クローン病に対しては,腸管病変の部位,範囲,解剖学的重症度を踏まえてこそ合理的治療が可能となる.画像情報はクローン病の治療選択に必須である.CDを診断する上で,ひとつだけでゴールドスタンダードとなる基準はない.診断は臨床的評価のほか内視鏡的,組織学的,放射線学的および/または生化学的検査の組み合わせで確定される.小腸CDが疑われる症候性患者で狭窄が除外された場合,回腸終末部の内視鏡検査が正常もしくは不可能な場合,またはX線透視もしくは断面イメージングで病変が認められない場合,カプセル内視鏡検査を検討する.X線検査,特に小腸二重造影検査は粘膜病変および腸管壁全層の病態を把握するのに最も有用である.この検査はCDで最も重要な小腸の過去,現在の病態を評価する上で欠くべからざるものである.またダブルバルーン小腸内視鏡は小腸病変部の生検が可能となり,さらには小腸狭窄部を拡張するのにも用いられる.
著者
松井 敏幸 久部 高司 矢野 豊 平井 郁仁
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.237-249, 2014 (Released:2014-02-26)
参考文献数
66

炎症性腸疾患(IBD)である潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)はそれぞれ長期罹患者が増加し,種々の合併症が発症する.その中でも大腸癌(CRC)は最も重大な合併症であり,生命予後にも強く関与するため,その軽減に努力が重ねられてきた.本稿では,IBDにともなうCRCの近年の疫学的特徴について述べ,特に欧米とは異なったわが国独自の特徴にも触れた.CRC早期発見にはサーベイランス内視鏡(SC)の意義は高い.その適応などについて概要を解説する.
著者
葛西 恭一 石田 恵梨 小林 由佳 曽我 幸一 金光 大石 坂本 京子 竹中 信也 柳田 國雄 伊谷 賢次
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.257-261, 2013 (Released:2013-05-21)
参考文献数
12

症例1は75歳男性.心房細動にてダビガトラン220mg/日服用開始したところ,5日後より食道閉塞感,ゲップを自覚.上部消化管内視鏡検査にて中部食道に白色の膜様付着物を伴った潰瘍性病変を認めた.ダビガトランを継続しながらプロトンポンプ阻害剤(以下PPI)を服用したところ潰瘍は治癒した.症例2は68歳,女性.発作性心房細動に対しダビガトラン300mg/日服用開始77日後より胸焼けを自覚.上部消化管内視鏡検査にて中部食道に白色の膜様付着物を伴った潰瘍性病変を認めた.ダビガトランを中止しPPI投与したところ潰瘍は治癒した.ダビガトランは循環器領域で使用頻度が高まると予想される薬剤であり,薬剤性食道潰瘍の原因となり得ることを念頭に置く必要がある.
著者
坂本 広登 張 淑美 林 幸治 下平 和久 松澤 正浩 坂口 みほ 赤松 泰次
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.1661-1666, 2013 (Released:2013-08-28)
参考文献数
11

症例は21歳,男性.再燃,寛解を繰り返す潰瘍性大腸炎(全結腸炎型)の加療中に,治療に抵抗する発熱,粘血便,排便回数の増加を認めた.血液検査にてCMVpp65抗原が陽性を示し,サイトメガロウイルス(CMV)感染を伴った潰瘍性大腸炎の再燃と考えられた.ガンシクロビル(デノシン®)を投与したが改善せず,下部消化管内視鏡検査にて横行結腸に多発する下掘れ潰瘍を認め,CMVpp65抗原の著明な増悪を認めた.大腸全摘術を視野に入れながらガンシクロビルに変えてホスカルネットナトリウム(ホスカビル®)を投与したところ,CMVpp65抗原の陰性化と症状の著明な改善を認めた.
著者
篠﨑 聡 小林 泰俊 林 芳和 坂本 博次 レフォー アラン 瓦井 山本 博徳
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.1272-1281, 2019 (Released:2019-06-20)
参考文献数
30

【背景と目的】大腸ポリープに対する内視鏡的切除において,熱凝固を加えないでスネアで切除するコールドスネアポリペクトミー(CSP)と熱凝固を加えながらスネアで切除するホットスネアポリペクトミー(HSP)の比較研究がなされてきた.CSPとHSPの有効性と安全性をシステマティックレビューとメタ解析を用いて評価した.【方法】大腸ポリペクトミーに関してCSPとHSPを比較したランダム化比較研究(RCT)のみを解析の対象とした.評価項目は,完全切除率,ポリープ回収率,遅発性出血率,穿孔率および所要時間である.Mantel-Haenszel random effect modelを用いてpooled risk ratio(RR)と95%信頼区間(CI)を算出した.【結果】8つのRCT(症例数1,665名,切除ポリープ3,195個)に対しメタ解析を行った.完全切除率において,CSPとHSPは同程度であった(RR 1.02,95%CI 0.98-1.07,p=0.31).ポリープ回収率もCSPとHSPは同程度であった(RR 1.00,95%CI 1.00-1.01,p=0.60).遅発性出血率は,統計学的有意差を認めなかったもののHSPのほうがCSPより多い傾向にあった(症例単位:RR 7.53,95%CI 0.94-60.24,p=0.06,ポリープ単位:RR 7.35,95%CI 0.91-59.33,p=0.06).すべてのRCTで穿孔は報告されなかった.大腸内視鏡時間はHSPでCSPより有意に長かった(平均差 7.13分,95%CI 5.32-8.94,p<0.001).ポリペクトミー時間もHSPでCSPより有意に長かった(平均差 30.92秒,95%CI 9.15-52.68,p=0.005).【結論】今回のメタ解析ではHSPと比較してCSPで所要時間が有意に短かった.また,遅発性出血率もHSPと比べてCSPで低い傾向にあった.したがって,小さな大腸ポリープに対するポリペクトミーにおいてCSPを標準的治療として推奨する.
著者
平野 敦之 伊藤 恵介 川井 祐輔 山本 俊勇 濱野 真吾 長谷川 千尋 水野 芳樹 柴田 康行 小川 久美子 中村 誠 城 卓志
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.1533-1540, 2010 (Released:2011-11-07)
参考文献数
33
被引用文献数
1

症例は57歳男性.上部消化管内視鏡検査にて頸部食道に異所性胃粘膜に連続する0-I+IIc病変を認めた.同部からの生検により腺癌と診断し,頸部胸部食道切除+遊離空腸移植術を施行した.切除標本の病理組織的検索にて異所性胃粘膜より発生した食道腺癌,深達度sm3と診断し,さらにMUC5AC,MUC6,MUC2,Cdx2の免疫染色により腸上皮化生を伴った異所性胃粘膜より発生した胃腸混合型の腺癌と診断した.
著者
中西 徹 坂田 泰昭
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.28, no.7, pp.1567-1573_1, 1986-07-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
37

今回われわれは初診時に著明な高ガストリン血症と汎血球減少症を呈しgastrinomaや悪性貧血も疑われたが,最終的には自己免疫性(A型)胃炎に合併した微小胃カルチノイドであった稀な症例を経験したので報告した. 症例は35歳の女性で汎血球減少の精査のため当科を紹介された.入院後再生不良性貧血,悪性貧血は否定され,鉄欠乏性貧血が考慮され全消化管を精査した結果,胃内視鏡下生検で径5mmの微小胃カルチノイドを発見した.また1,900ρg/mlという著明な高ガストリン血症を認めたが,胃液は無酸でgastrinomaは否定され,抗胃壁細胞抗体が陽性であった事からガストリン高値の原因は自己免疫性胃炎による無酸と考えられた.A型胃炎,胃カルチノイド共に稀であるため,A型胃炎に合併した胃カルチノイド例は自験例を含め本邦で5例にすぎないが,文献的及び本例の組織的検討で両者の関連が示唆されており,この点につき考察を加えた.
著者
原田 一道 横田 欽一 相馬 光宏 北川 隆 北守 茂 柴田 好 梶 厳 水島 和雄 岡村 毅与志 並木 正義
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.23, no.7, pp.961-967_1, 1981-07-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
32

胃結核は稀な疾患であるが,われわれは最近の5年間に3例の胃結核を経験した. 第1例は46歳の男性で胃体上部後壁に不整形で,潰瘍底が凹凸不整の大きな潰瘍をみた.内視鏡直視下胃生検による組織像でラングハンス巨細胞と類上皮結節の所見を得,結核による潰瘍性病変と診断した. この病変にストレプトマイシン(SM100mg/ml)3~5mlの局注療法を行い,約3ヵ月後に潰瘍の疲痕をみた.第2例は67歳の男性で,胃前庭部にIIa+IIcの早期胃癌を,また胃体上部前壁に粘膜下腫瘍をみとめた.この腫瘍が術後の組織学的検討で結核性病変と診断し得た.第3例は66歳の女性で噴門直下に不整形の潰瘍性病変を伴う腫瘤があり,内視鏡直視下生検による組織学的所見から結核性病変と診断し,抗結核剤(PAS,KM,INAH)の投与と共にSMの局注療法を試みた.その結果約4ヵ月後に腫瘤はほぼ消失し,潰瘍性病変は瘢痕化した.胃結核が内科的治療で治癒した例は極めて稀で,抗結核剤の局注療法を試みたものは過去にないので報告する.
著者
田口 純 石橋 陽子 菅井 望 関 英幸 三浦 淳彦 藤田 淳 鈴木 潤一 鈴木 昭 深澤 雄一郎
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.1866-1873, 2010 (Released:2011-03-03)
参考文献数
17

症例は75歳女性.嚥下困難,食欲不振と唾液が常に流れてくる症状で近医を受診.上部消化管内視鏡検査で,逆流性食道炎と慢性胃炎の診断でプロトンポンプ阻害薬(PPI)を処方されていた.しかし,症状の改善を認めず当科を受診.難治性かつ上部消化管内視鏡検査にて食道粘膜に非連続性に地図状のびらんが散在し,易粘膜剥離も認めたため食道天疱瘡を疑った.抗デスモグレイン(Dsg)3抗体価が23 Indexと陽性であり,蛍光抗体直接法にて食道の表皮細胞間にIgG,IgA,C3の沈着を認めた.皮膚,口腔粘膜病変はないものの,食道天疱瘡と診断しプレドニゾロン(PSL)30mg/日を開始したところ,2日後より自覚症状が著明に改善し,食事も摂取できるようになった.その後はPSLを漸減し,現在はPSL 5.5mg/日投与中で再発を認めていない.本症例は,皮膚,口腔粘膜病変がなく内視鏡検査で食道天疱瘡の診断となった1例であり,また併存した胃病変もPSLにて改善したことから,食道天疱瘡と何らかの関係がある可能性も示唆される.