著者
吉田 直久 内藤 裕二 小木曽 聖 廣瀬 亮平 稲田 裕 半田 修 小西 英幸 八木 信明 柳澤 昭夫 伊藤 義人
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.3810-3815, 2014 (Released:2014-11-28)
参考文献数
14

【目的】大腸内視鏡検査における高濃度ポリエチレングリコール(PEG)であるモビプレップ®の服用量減少の検討を行った.【方法】対象患者は前日に検査食,ピコスルファートナトリウム20mlを,当日はモビプレップ®1L+水0.5Lを服用した.洗浄時間,内視鏡的洗浄度,服用前後の血液検査を検討した.なお従来PEG服用123名を比較対象とした.【結果】モビプレップ®投与111名において平均洗浄時間は165±53分であり従来PEGの192±72分に比し有意に短時間であった.良好な内視鏡的洗浄度が得られた割合は右側結腸で85.8%であった.血液検査で投与後血清Cl値の有意な低下を認めた.【結語】モビプレップ®は前日の検査食,緩下剤を併用することで服用量を減量しえた.
著者
仲瀬 裕志
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.2455-2465, 2019 (Released:2019-11-20)
参考文献数
20
被引用文献数
2

家族性地中海熱(Familial Mediterranean fever:FMF)は遺伝性周期熱症候群の1つで,周期性発熱と漿膜炎を特徴とする.一般的に,FMFの主な発症機序は腹膜炎であるため,消化管粘膜病変はFMF患者では稀な状態であると考えられてきた.近年,FMF患者が炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)に似た消化管病変を有する報告例が増加傾向にある.しかしながら,FMF関連の腸管病変に関する情報は限られている.本総説ではFMF発症の機序ならびにFMF患者における腸管病変に焦点を当て,さらに内視鏡的特徴についても述べた.いままでの報告をまとめると,直腸病変を伴わない,全周性の発赤粘膜,浮腫,びらん,および潰瘍などのUC様病変がFMF患者で主に観察された.一方,クローン病で観察されるような縦走潰瘍性病変および狭窄も認められている.FMF関連腸炎の患者の罹患率は未だ不明である.従って,今後FMF関連腸病変の症例を蓄積することが,本疾患の臨床的特徴を解明するために必要である.
著者
青木 智則 永田 尚義 藤城 光弘
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.335-343, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
25

大腸憩室出血には特異的な薬物治療が存在しないことから,再出血の多さが臨床上の課題である.内視鏡治療による止血効果や再出血抑制効果が重要視され,これまで様々な治療法が提唱されてきた.しかしながら,2020年頃までの報告は大多数が単施設研究であり症例数が少なかったため,十分なエビデンス構築に至っていなかった.近年,本邦の全国規模の急性血便症例データベース(CODE BLUE-J study)より,憩室出血研究の成果が複数報告された.①憩室出血を疑う患者の内視鏡検査時に積極的に出血所見を同定して治療することは,再出血を抑制するため意義があり,②内視鏡治療は左側結腸出血よりも特に右側結腸出血において推奨され,③バンド結紮法はクリップ法よりも治療効果が期待でき,特に右側結腸出血では出血状況に応じた治療法の選択(クリップ直達法か縫縮法かも含めて)が望ましい,ことが大規模データより示唆された.大腸憩室出血に対する内視鏡治療の適応や戦略の標準化に寄与すると考えられる.
著者
伊藤 錬磨 金子 佳史 中西 宏佳 辻 国広 吉田 尚弘 冨永 桂 辻 重継 竹村 健一 山田 真也 土山 寿志
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.1457-1463, 2012 (Released:2012-05-28)
参考文献数
14

症例は60歳男性.ニガクリタケを摂取した30分後に嘔吐,腹痛が出現し来院.第2病日に症状は一旦軽快したが,第3病日に嘔吐,腹痛,黒色便を認めた.第4病日の上部消化管内視鏡検査にて上十二指腸角から十二指腸下行部にかけ連続性,全周性に発赤,浮腫,びらん,出血を認めた.保存的加療にて症状は経時的に軽快した.第9病日の内視鏡検査では十二指腸下行部に出血はみられず,顆粒状粘膜や線状潰瘍を認めた.第18病日に症状軽快し退院.退院後の内視鏡検査では線状潰瘍瘢痕を残すのみであった.キノコ中毒における消化管病変の報告は少なく,またその経時的変化を内視鏡的に追えた自験例は貴重であると考えられた.
著者
井上 晴洋 塩飽 洋生 岩切 勝彦 鬼丸 学 小林 泰俊 南 ひとみ 佐藤 裕樹 北野 正剛 岩切 龍一 小村 伸朗 村上 和成 深見 悟生 藤本 一眞 田尻 久雄
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.1249-1271, 2018 (Released:2018-06-20)
参考文献数
143

日本消化器内視鏡学会は,新たに科学的な手法で作成した基本的な指針として,「POEM診療ガイドライン」を作成した.POEM(Peroral endoscopic myotomy)は,食道アカラシアおよび類縁疾患に対して本邦で開発された新しい内視鏡的治療法であり,国内外で急速に普及しつつある.したがって,本診療ガイドラインの作成が強く望まれた.しかしながら,この分野においてこれまでに発表された論文はエビデンスレベルの低いものが多く,また長期成績はまだ出ていないため,専門家のコンセンサスに基づき推奨の強さを決定しなければならなかった.主として,トレーニング,適応,検査法,前処置,麻酔,方法,成績,有効性,偶発症,他治療との比較などの項目について,現時点での指針をまとめた.
著者
木下 芳一 石原 俊二 天野 祐二 清村 志乃 多田 育賢 丸山 理留敬
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.1797-1805, 2012 (Released:2012-07-03)
参考文献数
35
被引用文献数
4

好酸球性胃腸炎の原因は明らかとはなっていないが,Th2反応をおこしやすい個人が食物抗原等に反応して消化管でのIL-5,-13,-15,eotaxin等のサイトカインの産生が高まり好酸球やマスト細胞が活性化されて消化管上皮に傷害をおこすアレルギー疾患であると考えられている.本疾患は40歳頃を発症ピークとし男女共にほぼ同様に発症するが,喘息などのアレルギー歴を有する例が多い.主訴は腹痛と下痢であることが多く,末梢血白血球の増加や好酸球の増加を80%以上の例でみとめる.粘膜に病変を有する例では内視鏡検査で,びらん,発赤,浮腫などをみとめるが,内視鏡検査では確定診断はできず複数個の生検が必須である.漿膜下に病変のある例では腹水をみとめ腹水中に好酸球を多数みとめる.治療はグルココルチコイドが主となるが,減量・中止後に再発をきたしやすく,減量を補助するため種々の抗アレルギー薬が使用されることがあるが,その有効性に関するエビデンスは十分ではない.
著者
葛西 恭一 石田 恵梨 小林 由佳 曽我 幸一 金光 大石 坂本 京子 竹中 信也 柳田 國雄 伊谷 賢次
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 = Gastroenterological endoscopy (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.257-261, 2013-02-20
参考文献数
12

症例1は75歳男性.心房細動にてダビガトラン220mg/日服用開始したところ,5日後より食道閉塞感,ゲップを自覚.上部消化管内視鏡検査にて中部食道に白色の膜様付着物を伴った潰瘍性病変を認めた.ダビガトランを継続しながらプロトンポンプ阻害剤(以下PPI)を服用したところ潰瘍は治癒した.症例2は68歳,女性.発作性心房細動に対しダビガトラン300mg/日服用開始77日後より胸焼けを自覚.上部消化管内視鏡検査にて中部食道に白色の膜様付着物を伴った潰瘍性病変を認めた.ダビガトランを中止しPPI投与したところ潰瘍は治癒した.ダビガトランは循環器領域で使用頻度が高まると予想される薬剤であり,薬剤性食道潰瘍の原因となり得ることを念頭に置く必要がある.
著者
藤田 直孝 平澤 大 横山 直記 大友 泰裕
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.65, no.11, pp.2283-2289, 2023 (Released:2023-11-20)
参考文献数
35

人間ドックでのスクリーニングEGDで発見された,無症状の食道アニサキス症の2例を報告する.症例は42歳と55歳の男性で,特に自覚症状なく人間ドックのスクリーニング検査としてEGDを受検した.ともに食道扁平上皮円柱上皮接合部近傍に細長い白色調の虫体が発見され,穿入部は各々Barrett上皮部,扁平上皮部であった.生検鉗子により摘除し,術後特変なく経過した.消化管アニサキス症は大部分が胃にみられ,残りの大半を小腸が占め,大腸,食道は稀である.食道アニサキス症に関する無症状例の報告は文献的にはほとんどないものの,健診の場などでは診断されていることが予想され,虫体摘除のみならず食事・調理指導が対応として重要と考えられる.
著者
清水 誠治
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.2357-2368, 2018 (Released:2018-11-20)
参考文献数
114
被引用文献数
2

collagenous colitisは非血性の慢性下痢をきたし,病理組織学的に大腸の上皮基底膜直下に膠原線維束を認める疾患であり,おもに生検組織で診断される.CCはlymphocytic colitis(LC)とともにmicroscopic colitis(MC)に包括されている.MCは欧米で1980年代から1990年代にかけて経年的に罹患率が増加していたが,2000年以降はほぼ一定の水準であり,CCよりむしろLCの方が多い.病因は未だに明確ではなく発症には多因子の関与が想定されているが,欧米では複数の症例対照研究でNSAID,PPIがCCの発症リスクを高めることが示されており,近年はとくにPPIの関与が注目されている.本邦では2000年代に入って以降CCの報告が増加している.本邦には疫学的データは存在しないが,頻度は欧米に比べかなり低率である.LCは本邦でほとんど報告がなく,CCもほとんどがPPI(とくにランソプラゾールやNSAID)などの薬剤に関連して発症しており,欧米より薬剤起因性と考えられる症例の割合がかなり高い.このように欧米と本邦ではMCに関する実態に大きな乖離がみられる.CCでは元々,画像上異常を認めないと記載されていたが,内視鏡所見の異常がまれでないことが明らかになってきた.内視鏡所見としては,1)色調変化:発赤,発赤斑,褪色など,2)血管像の異常:血管透見低下・消失,血管増生など,3)粘膜表面性状の異常:浮腫,易出血性,粗糙粘膜,顆粒状粘膜,偽膜,粘膜裂創(線状・縦走潰瘍/瘢痕,“cat scratch”),ひび割れ様所見など,4)その他:ハウストラ消失,が挙げられる.とくに粘膜裂創と顆粒状粘膜は本症を疑う上で重要な所見である.内視鏡的有所見率は欧米で約20%と報告されているのに対して,本邦では70%以上である.治療としては,原因と考えられる薬剤を中止することでほとんどの症例で下痢が軽快する.MCの病態に関してはなお不明な点が多く,疾患のheterogeneityを含めた問題点の解明を期待したい.
著者
長尾 和宏 篠村 恭久 東本 好文 安永 祐一 宮崎 義司 金山 周次 石川 秀樹 藪 道弘 垂井 清一郎
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.291-298_1, 1991-02-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
24

10カ月の経過観察中に自然消失した胃底腺ポリポージスの1例を経験した.症例は53歳女性.検診時,胃X線検査で胃体部を中心に分布する計30~40個の直径5~6mm大,山田II型のポリープを指摘された.組織学的にポリープの構成主体は胃底腺であり,背景粘膜に萎縮を認めないことより胃底腺ポリポージスと診断した.しかし10カ月後の胃X線検査にて,多発性ポリープはほぼ完全に消失しており,胃体部粘膜の生検組織像は著明な細胞浸潤を伴った胃底腺の萎縮と変性を呈していた.また,酸分泌能の低下と高ガストリン血症が認められた. 胃底腺ポリポージスの自然消失に関する報告例は少なく,ポリープ消失前後の胃粘膜像もほとんど検討されておらず,消失機序は不明である.ポリープ消失前後における背景粘膜像の比較検討より,本例のポリープは,短期間に進展した胃体部を中心とする萎縮性胃炎に伴って消失したと考えられた.
著者
黒木 暢一 堀口 みなみ 田井 博 谷口 正次
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.65, no.7, pp.1225-1231, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
21

症例は69歳女性.腹痛,嘔吐を主訴に来院した.CTにて最大37mm大の含気性の腫瘤像が胃に4個と空腸に1個みられた.空腸の腫瘤は内腔を占め,口側腸管は拡張して腸液が充満していた.柿の嗜好歴があり腫瘤は柿胃石と考え,胃石が空腸に陥頓したものと診断した.腹膜刺激症状はみられず,緊急手術ではなく,まず保存的加療を選択した.イレウス管を挿入し減圧後,コーラ溶解療法を行ったところ,胃石は回腸まで移動した.最終的に回腸に嵌頓したため,経肛門的にシングルバルーン内視鏡を挿入し,鉗子口からコーラを注入,スネア破砕を行い,胃石を回収することに成功した.結石分析はタンニン98%であり,柿胃石に矛盾しなかった.
著者
小野 裕之 八尾 建史 藤城 光弘 小田 一郎 上堂 文也 二村 聡 矢作 直久 飯石 浩康 岡 政志 味岡 洋一 藤本 一眞
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.273-290, 2020 (Released:2020-02-20)
参考文献数
138
被引用文献数
2

早期胃癌に対する内視鏡治療が急速な拡がりを見せている現況において,日本消化器内視鏡学会は,日本胃癌学会の協力を得て,新たに科学的な手法で作成した基本的な指針として,“胃癌に対するESD/EMRガイドライン”を2014年に作成した.この分野においてはエビデンスレベルが低いものが多く,コンセンサスに基づき推奨度を決定しなければならないものが多かったが,近年,よくデザインされた臨床研究が増加している.新しい知見を踏まえて,適応・術前診断・手技・根治性の評価・偶発症・術後長期経過・病理の7つのカテゴリーに関して,改訂第2版を刊行し,現時点での指針とした.
著者
大宮 直木
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.1209-1217, 2019 (Released:2019-06-20)
参考文献数
34

共焦点レーザー内視鏡とは,蛍光色素でラベルされた組織を顕微鏡レベルの解像度で観察できる内視鏡のことである.以前は内視鏡一体型であったが,現在はプローブ型,ニードル型となり内視鏡の鉗子孔や穿刺針から挿入し,目的とする部位に接触させることでリアルタイムに組織構造が観察可能である.消化管に限らず,胆道・膵管,肝臓,気管支・肺胞,膀胱,甲状腺などの臓器の組織画像も得ることができる.蛍光色素の投与経路には経静脈的投与と局所散布がある.その造影態度や形態異常をリアルタイムに観察することで,通常の内視鏡では検出できない病態も解明しうる.また今後,蛍光標識プローブによる分子イメージングも期待される.本稿では,共焦点レーザー内視鏡の原理,機種,観察法と特徴を概説し,その後文献的考察を交えて臨床応用例を紹介する.
著者
郷田 憲一
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.2478-2488, 2015 (Released:2015-10-29)
参考文献数
21
被引用文献数
1

十二指腸の腫瘍性病変はまれな疾患であるため,概して十二指腸病変に対する臨床医の関心は薄かった.しかし,近年におけるEsophagogastroduodenoscopy(いわゆるパンエンドスコピー)の普及・標準化や最近の急速な高齢化社会の進展によって,十二指腸腫瘍性病変に遭遇する機会は増加している.それに伴い胃や大腸の腫瘍性病変と同様に,拡大内視鏡による鑑別診断あるいは腫瘍範囲の診断の精度向上が追求されるようになった.また,narrow-band imagingをはじめとする新規画像強調技術と拡大内視鏡との併用は表面微細構造に加え,微小血管構造の詳細な検討を可能にした.まずは通常内視鏡で拡大観察のよいターゲットなる小病変を見落とさないことが重要である.本稿では,われわれが行っている通常観察手技を紹介した後,十二指腸の臓器組織特性に即した拡大内視鏡による観察手技と診断のポイントについて言及したい.
著者
清水 誠治 横溝 千尋 石田 哲士 森 敬弘 富岡 秀夫
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.3-14, 2014 (Released:2014-02-22)
参考文献数
37
被引用文献数
1

潰瘍性大腸炎とCrohn病はいずれも原因不明の慢性疾患であるが,慣例的に狭義の炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease;IBD)と呼ばれ,それぞれに診断基準が定められている.診断においては画像診断が重要な役割を担うが,IBDと画像所見が類似する様々な疾患を鑑別する必要がある.近年,IBDの治療が進歩するとともに,さらに正確な診断が求められている.特に,カンピロバクター腸炎,アメーバ性大腸炎,腸結核,エルシニア腸炎などの腸管感染症をIBDと誤診することは回避しなければならない.また,潰瘍性大腸炎とCrohn病の鑑別が問題となる症例の対応にも注意を要する.本稿ではIBDと鑑別を要する疾患との大腸内視鏡による鑑別診断について解説した.
著者
小原 勝敏
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.1347-1360, 2015 (Released:2015-07-01)
参考文献数
32

食道静脈瘤の治療法として,保存的治療(薬物療法,バルーンタンポナーデ法),内視鏡的治療(EIS,EVL),外科的治療が施行されてきたが,本邦における出血例に対する第一選択の治療法はEVLであり,待期・予防例ではEISやEVLが一般的に施行されている.しかしながら,待期・予防例を安全かつ効果的に治療するためには,食道・胃静脈瘤の内視鏡所見記載基準の知識,治療適応および禁忌例の把握,使用する各種硬化剤の作用機序の熟知,患者の病態および門脈血行動態(特にEUSおよび3D-CT)からみた適切な治療法の選択,各種治療手技の習得,起こり得る合併症とその防止対策,治療後の定期的な経過観察といった総合的な知識力や各種手技の習得が必要である.ここでは,EBMに基づいた国外での食道静脈瘤治療を含め,本邦の食道静脈瘤患者に適した最良の治療戦略について述べる.
著者
三上 栄 中村 武寛 池田 英司 住友 靖彦 山下 幸政 織野 彬雄
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.1443-1449, 2009 (Released:2012-07-17)
参考文献数
26

症例は56歳の男性.腹痛を主訴に来院し,小腸イレウスと診断され,入院となった.腹部CTでは骨盤内回腸に限局した腸管の壁肥厚を認めた.イレウス改善後に行った小腸内視鏡では下部回腸に著明な粘膜浮腫と発赤,および浮腫性狭窄を認めた.問診でホタルイカの生食をしていたこと,その後の精査で旋尾線虫幼虫type Xに対する抗体が陽性であったことより本症による感染症と診断した.旋尾線虫幼虫type X感染に関する小腸内視鏡所見の報告は現在までになく,貴重な症例と考えられた.
著者
橋口 裕樹 熊野 良平 山田 恵一 竹山 成奎 坂田 豊博 大野 栄三郎
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.1572-1578, 2022 (Released:2022-09-20)
参考文献数
20

症例は73歳男性.主膵管内の膵石を伴うアルコール性慢性膵炎で定期通院中.自宅にて突然,心窩部痛を認め,改善がみられないため当科を受診した.CT検査でVater乳頭部に10mm大の膵石を認め,同部位を閉塞起点とした総胆管および主膵管の拡張を認め,膵石嵌頓による閉塞性黄疸および急性胆管炎,急性膵炎と診断した.緊急ERCPでは乳白色調の膵石が膵管開口部から露出しており,緊急で内視鏡的膵管口切開術およびバルーンカテーテルを用いた膵石除去術を施行したところ症状改善を得た.