著者
天野 祐二 結城 崇史 石村 典久 藤代 浩史
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.3189-3203, 2012 (Released:2012-10-22)
参考文献数
37

食道胃接合部の内視鏡診療は対象疾患の増加により,近年,その重要性が高まりつつある.しかしながら,本邦及び欧米の間には,食道胃接合線の内視鏡診断において診断基準の乖離を認めるという大きな問題が存在する.食道胃接合部観察の基本は,胃内の空気を抜き,大きく吸気させて食道下部を十分に伸展させることであり,本邦ではこの手技により食道胃接合線として食道柵状血管の下端を探ることになるが,欧米では逆に可能な限り食道の空気を抜き,胃のヒダ上端を診断するのが一般的であるためである.現在,食道胃接合部において最も重要と考えられているのは,Barrett食道およびBarrett腺癌の内視鏡診断である.本邦では画像強調内視鏡を用いた診断が主流になりつつあるが,それらの内視鏡分類は臨床応用を考えた場合に未だ不十分なものも多い.今後は,正確な食道胃接合線の診断を基軸とし,同部位の特性がよく理解された画像強調内視鏡による精緻な内視鏡診断・分類が早急に必要とされる.
著者
藤原 省三 佐藤 博 野口 琢矢 長門 仁 尾崎 任昭 菊池 隆一 野口 剛 内田 雄三
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.146-150, 2002-02-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
13

症例は69歳,男性.脳梗塞後遺症のため胃瘻が造設されていた.出血性胃潰瘍のため緊急入院.H2受容体拮抗剤により一時は軽快したが,2カ月後,潰瘍は一再発した.その後3カ月間の治療にて潰瘍は瘢痕化しなかったため,オメプラゾール坐剤を調製し投与した.投与中の24時間胃内pHモニタリングでは酸分泌抑制効果はほぼ完全であり,潰瘍は速やかに瘢痕化した.嚥下困難な患者の難治性胃潰瘍に対し,オメプラゾール坐剤の投与は極めて有効な治療法であると考えられた.
著者
新田 敏勝 川崎 浩資 芥川 寛 江頭 由太郎 石橋 孝嗣
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.3034-3039, 2011 (Released:2011-11-07)
参考文献数
14

症例は76歳,女性.突然の心窩部痛,嘔吐を主訴に当院救急外来を受診された.上部消化管内視鏡検査所見では,胃穹窿部から索状物が認められ,幽門洞へ引き込まれていた.また腹部造影CT検査では,十二指腸球部に占有する5cm大の腫瘤陰影を認めた.まず,術前に用手圧迫を併用し内視鏡下に整復を行い,胃穹窿部から発生したGISTと診断し,小切開による胃部分切除術を施行した.病理組織学的にもKIT(+)CD34(+)でGISTであった.ball valve syndromeをきたした症例に対し,内視鏡下に嵌頓を解除し,適切な加療を行えた1例を経験したので報告する.
著者
中原 一有 立石 敬介
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.65, no.10, pp.2217-2230, 2023 (Released:2023-10-20)
参考文献数
32

急性胆囊炎に対する胆囊ドレナージ法には,経皮経肝ドレナージ,内視鏡的経乳頭ドレナージ(endoscopic transpapillary gallbladder drainage:ETGBD),超音波内視鏡下経消化管ドレナージがある.ETGBDは生理的ルートを介した非観血(非穿刺)手技であるため,抗血栓薬内服などの出血傾向例や腹水症例に対しても施行可能である.しかし,胆囊管を通じた手技は難易度が高く,手技成功率が低いことが課題である.ETGBDを安全に成功させるためには,ETGBDの基本手技を習得し,さらには手技困難例への対応策を身につけておくことが重要である.
著者
永田 尚義
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.3180-3188, 2012 (Released:2012-10-22)
参考文献数
23
被引用文献数
1

感染性腸炎は日常臨床上頻度の高い疾患群である.細菌性腸炎を疑う場合には便培養検査により病原菌を同定するが,便培養の病原菌同定率は非常に低い.内視鏡検査は,特徴的な画像所見が得られるだけでなく,病変部からの腸液の吸引や生検を行えるため,感染性腸炎の診断に有用である.内視鏡検査により得られた腸液あるいは生検検体を,可能性の高い病原微生物を想定し,鏡検法,培養法,PCR法,免疫組織化学的検査などを用いて検討することにより,診断の精度が上昇する.これらを各検査部門に依頼する場合には,臨床情報を十分伝えることが肝要である.
著者
木村 圭一 岩崎 哲也 山田 拓哉 岩崎 竜一朗 榊原 祐子 中水流 正一 石田 永 山口 真二郎 尾下 正秀 三田 英治
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.1420-1425, 2016 (Released:2016-09-20)
参考文献数
13

89歳,女性.腹痛,嘔吐の精査加療目的で入院となった.CT検査で小腸異物による食餌性イレウスが疑われた.イレウス管挿入を行い減圧を図ったが異物の自然排出は認めず,ダブルバルーン小腸内視鏡検査を施行し異物(梅の種子)を回収した.その後,偶発症なく退院となった.イレウス管併用ダブルバルーン小腸内視鏡検査はトリプルバルーンメソッドとして報告されている.今回,トリプルバルーンメソッドにて食餌性イレウスを加療し得た症例を経験した.
著者
葛西 恭一 石田 恵梨 小林 由佳 曽我 幸一 金光 大石 坂本 京子 竹中 信也 柳田 國雄 伊谷 賢次
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 = Gastroenterological endoscopy (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.257-261, 2013-02-20

症例1は75歳男性.心房細動にてダビガトラン220mg/日服用開始したところ,5日後より食道閉塞感,ゲップを自覚.上部消化管内視鏡検査にて中部食道に白色の膜様付着物を伴った潰瘍性病変を認めた.ダビガトランを継続しながらプロトンポンプ阻害剤(以下PPI)を服用したところ潰瘍は治癒した.症例2は68歳,女性.発作性心房細動に対しダビガトラン300mg/日服用開始77日後より胸焼けを自覚.上部消化管内視鏡検査にて中部食道に白色の膜様付着物を伴った潰瘍性病変を認めた.ダビガトランを中止しPPI投与したところ潰瘍は治癒した.ダビガトランは循環器領域で使用頻度が高まると予想される薬剤であり,薬剤性食道潰瘍の原因となり得ることを念頭に置く必要がある.
著者
峯 徹哉 川口 義明 小川 真実 川嶌 洋平
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.2393-2402, 2017 (Released:2017-09-20)
参考文献数
54

従来の診断基準は日本消化器内視鏡学会で作成されたが,国内でも十分に活用されているとはいいがたい.外国でも診断基準は作られているが長い間改正されないので,現実的ではなくなっていると思われる.われわれの作成したガイドラインはEBMに基づいたものであり,世界を見回してもEBMに基づくERCP後膵炎ガイドラインは見あたらないと思われる.われわれは将来的にERCP後膵炎の診断基準を見直し,より早く治療を行い救命すると同時に如何に重症のERCP後膵炎を生じさせないかその予防法を検討する必要がある.
著者
齋田 将之 関 英一郎 丹羽 浩一郎 呉 一眞 柴田 將 加賀 浩之
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.442-447, 2023 (Released:2023-05-22)
参考文献数
8

症例は88歳男性.若年期に完全内臓逆位を指摘されていた.上部消化管内視鏡検査で胃前庭部小彎後壁に20mm大の0-Ⅱc型早期胃癌を疑う病変を認めた.左側臥位では病変の存在する前庭部の伸展が不良であったため,右側臥位で再度内視鏡検査を行った.右側臥位では左側臥位と比べ前庭部の伸展は保たれていた.しかし,右側臥位では通常と異なる術者姿勢と周辺機器配置を要し,ESDにおける繊細な内視鏡操作は困難であることが想定され,実際のESDは左側臥位にて行った.左側臥位におけるESDでは合併症なく一括切除可能であった.完全内臓逆位における早期胃癌に対しESDを行う際,左側および右側の側臥位における術前シミュレーションは有用であると考えられた.
著者
三宅 茂太 芦刈 圭一 加藤 真吾 高津 智弘 桑島 拓史 金子 裕明 永井 康貴 亘 育江 佐藤 高光 山岡 悠太郎 山本 哲哉 梁 明秀 前田 愼 中島 淳 日暮 琢磨
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.2533-2543, 2022 (Released:2022-12-20)
参考文献数
27

【目的】消化管内視鏡検査(Gastrointestinal endoscopy:GIE)は,多くの疾患の早期発見および治療に有用であるが,GIEはコロナウイルス病2019(COVID-19)大流行期における高リスク処置と考えられている.本研究は,医療スタッフが曝露される唾液,胃液および腸液における重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)陽性割合を明らかにすることを目的とした.【方法】本研究は単一施設における横断研究であり,2020年6月1日から7月31日まで,横浜市立大学附属病院でGIEを受けた患者を対象とした.すべての研究参加者は3mlの唾液を提出した.上部GIEの場合,10mlの胃液を内視鏡を通して採取し,下部GIEの場合,10mlの腸液を内視鏡を介して採取した.主要評価項目は唾液,胃液および腸液中のSARS-CoV-2の陽性率とした.また,SARS-CoV-2の血清特異的抗体や患者の背景情報についても検討した.【結果】合計783検体(上部GIE:560および下部GIE:223)を分析した.唾液検体のPCRでは,全例が陰性であった.一方で,消化管液検体においては2.0%(16/783)がSARS-CoV-2陽性であった.PCR陽性症例とPCR陰性症例の間では,年齢,性別,内視鏡検査の目的,投薬,抗体検査陽性率に有意差は認めなかった.【結論】無症候性の患者において,唾液中に検出可能なウイルスを持たない患者であっても,消化管にSARS-CoV-2を有していた.内視鏡検査の医療スタッフは処置を行う際に感染に留意する必要がある.本研究はUMIN 000040587として登録されている.
著者
石井 圭太 三橋 利温 今泉 弘 内藤 吉隆 芦原 毅 大井田 正人 安海 義曜 西元寺 克禮
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.363-371_1, 1992-02-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
42
被引用文献数
2

過去10年間に当科にて経験した上中部食道潰瘍31例につき検討した.平均年齢は,42.1歳と下部食道潰瘍症例(平均58.5歳)に比し,比較的若年者に多く,男15例,女16例と性差は認めなかった.原因の明らかなものは17例で,薬剤によるものが12例と多く,その他,異物,放射線治療,飲食物および扁平苔癬によるものを認めたが,原因が不明のものも14例みられた.症状は,胸骨後部痛,つかえ感,嚥下痛が多かった.潰瘍の性状は,不整形,略円形,剥離型の3つに分類できた.不整形と略円形が,大半を占め,剥離型は4例のみであった.症状消失期間および内視鏡的治癒期間を比較すると,不整形と略円形では,ほとんど差を認めないのに対し,剥離型は早期に治癒する傾向を認めた.このように剥離型は,その特徴的な形態はもちろんのこと臨床経過においても,不整形及び略円形とは明らかに異なり,これは剥離型では病変がより表層にあるためと思われた.剥離型とした症例は,いわゆる剥離性食道炎の範疇に入るもので,本邦における剥離性食道炎50例につき併せて検討した.なお,同期間に経験した下部食道潰瘍130例との比較も行った.
著者
卜部 繁俊 佐藤 航平 堀 朋子 川﨑 寛子 荒木 智徳 竹下 茂之 楠本 浩一郎 大畑 一幸 重野 賢也
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.145-151, 2018 (Released:2018-02-20)
参考文献数
25

症例1は74歳男性.2015年6月,胃癌に対し胃全摘術及びRoux-en-Y再建術施行.高度逆流症状を呈し,上部消化管内視鏡検査にて食道内に胆汁を含む黄色の腸管内容物貯留と逆流性食道炎が認められた.膵酵素阻害薬や蠕動促進薬も効果不良であったが六君子湯追加により摂食可能となり退院し得た.症例2は75歳男性.2011年11月,胃癌に対し腹腔鏡下幽門側胃切除術及びBillroth-Ⅰ再建術を施行.嘔吐・吃逆,摂食不良,体重減少を呈し,術後5年の時点で当科紹介.同様に逆流性食道炎と診断され,六君子湯追加で軽快した.六君子湯の効果として消化管運動改善や食欲増進の他,胆汁吸着作用が報告されており,胃切除術後逆流性食道炎の症状改善に寄与すると考えられる.
著者
木村 哲夫 六車 直樹 板垣 達三 井本 佳孝 梶 雅子 宮本 弘志 岡村 誠介 高山 哲治 春藤 譲治
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.1448-1454, 2008

症例は63歳,男性.つるし柿6個を一度に食べた後に,腹痛・嘔吐が出現し近医を受診した.上部消化管内視鏡検査にて6cm大の胃石を認めた.柿胃石と判断し,近年の報告を参考にコカ・コーラの経口摂取や内視鏡下にERCP力ニューレを用いて直接散布などを行ったところ,数個の破片に崩壊,消失する経過が内視鏡的に観察された.本疾患に対するコカ・コーラによる溶解療法は安全かつ簡便で,医療経済的にも有用な方法であると考えられた.
著者
串上 元彦 東 冬彦 炭谷 昌克 国正 紀彦 玉置 幸子 玉置 英人 玉置 政子 玉置 英夫 河合 純 伊藤 秀一 西岡 新吾
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.144-149, 1994-01-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
15
被引用文献数
2

従来,胃アニサキス症の治療に関しては内視鏡による虫体の摘出が確実と言われている.最近われわれは腫大した胃皺襞の間に刺入して観察も摘出も困難であった胃アニサキス症の1例に対してガストログラフィンを散布したところ,アニサキス幼虫の運動が停止し,鉗子で幼虫の体部を容易に摘み,抵抗なく摘出しえた.他の2症例に対してもガストログラフィンを散布したがほぼ同様に摘出が容易であった.胃アニサキス症において内視鏡検査後に発生するAGMLの誘因として大量の送気による胃粘膜の過伸展も推定されており,このことからも巨大皺襞間隙に刺入した胃アニサキス症や複数匹の穿入例,また部位的にアニサキス幼虫の頭部を摘まみ難い例などにはガストログラフィン散布は非常に有用であると思われる.胃アニサキス症の虫体摘出にガストログラフィンを初めて試み,良好な結果が得られたのでここに報告する.
著者
武藤 徹一郎 上谷 潤二郎 沢田 俊夫 杉原 健一 草間 悟
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.241-247, 1981-02-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
5

内視鏡的ポリープ摘除によって診断した早期癌(m,sm癌)21病変中7病変の周囲粘膜に内視鏡的に観察しうる白斑を認めた.同時期に観察した良性腺腫には,同様の所見は1例にしか認められなかった. 組織学的には,この白斑はH.E.で淡く染まる顆粒を含有する組織球の,表層上皮直下の粘膜固有層への集簇よりなっており,PAS-alcian blueで淡青色に,Mucicarmine,Toluidine blueで弱陽性に染った.電顕では,electron-densityのない円形顆粒の中に,わずかにdensityのある顆粒が混在して認められた.組織化学的にはこの白斑の性状はMuciphageに最も類似していると考えられた.その本態については,いくつかの可能性が示唆されたが,完全には解明しえなかった。 この所見は,良性腺腫・大腸腺腫症の腺腫の周囲粘膜,潰瘍性大腸炎などにも稀に見出されたが,内視鏡的にポリープ周囲粘膜に白斑を認めた場合には,悪性を強く疑うことができるという点で,臨床的に重要な所見であることを指摘した.
著者
矢山 貴之 岩崎 丈紘 内多 訓久 藤井 翔平 窪田 綾子 大家 力矢 小島 康司 岡崎 三千代 賴田 顕辞
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.1117-1122, 2023 (Released:2023-06-20)
参考文献数
13

患者は46歳,女性.健康診断で上部消化管内視鏡を行い,Helicobacter pylori感染に加え,胃体中部小彎に0-Ⅱc病変を指摘され,組織生検でsig,早期胃癌の診断で当院に紹介となった.精査の結果ESDの適応拡大病変(現在のガイドラインでは絶対適応病変)であり2013年10月にESDを施行した.病理組織ではサイズは10mm,組織型はsig>tub2,深達度はM,pUL0,脈管侵襲及び断端陰性で治癒切除と診断した.以降5年間は内視鏡に加え胸腹部造影CTでフォロー,再発は認めていなかった.しかし,ESDから7年後に左鼠径部の腫瘤を契機に胃癌の鼠径リンパ節,骨転移の診断となり化学療法を施行したが救命できなかった症例を経験した.