著者
黒島 晨汎
出版者
Japanese Society of Biometeorology
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.25-34, 2003

体温の認識から,体温計の開発,発熱を含む体温調節反応の発見とそれらの調節機序の解明に至るまでの体温医学の歴史的発展について概観した.<br>
著者
柴田 祥江 飛田 国人 松原 斎樹 藏澄 美仁
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.119-129, 2010 (Released:2010-07-16)
参考文献数
28
被引用文献数
5

近年,高齢者が住宅内で熱中症を発症する事例が報告されている.重症の場合には命にかかわるため,予防策は緊急の課題となっている.本研究は,高齢者の住宅内での熱中症予防を目的として,高齢者を対象に熱中症の認知度と住宅内における暑熱障害の体験,予防策,夏期の住まい方についてアンケート調査を行い,高齢者の意識について分析した.本調査の対象者は生涯学習講座受講生であるが,調査の結果,熱中症の認知度は 89.7%であったが,住宅内で発症することの認知度は 65.7%であった.暑熱障害の体験場所では寝室,居間,台所が多く,女性では 40.0%が台所で経験していた.休養目的の部屋が,高齢者にとっては必ずしも安全で快適な空間とはなっていないこと,また,台所の夏期温熱環境はやや危険な現状であることが分かった.予防策では,「水分補給」は 92.6%,「塩分補給」は 25%が行っていた.予防には,温熱環境の改善とともに,熱中症の認知と正しい予防策の普及が必要である.結果については高齢者の熱中症予防のための基礎資料として有益である.
著者
田村 憲治 小野 雅司 安藤 満 村上 正孝
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.111-114, 1995-08-01
被引用文献数
9
著者
入來 正躬
出版者
Japanese Society of Biometeorology
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.63-72, 2000-08-01
参考文献数
15
被引用文献数
8

1995年より1999年までの5年間に亘り,7,8月に山梨県で発症した熱中症の症例について,山梨県医師会会員への質問紙郵送法調査結果及び救急搬送データを用いて解析した.5年間に205例が報告された.質問紙郵送法調査62例,救急搬送152例で,両者に共通の症例9例であった.8月の平均最高気温が高い年ほど症例数が多かった.5年間に症例数が次第に増加又は減少する一定の傾向は認められなかった.環境温28°Cより症発がみられ,35°Cをこえると症発の著しい増加がみられた.発症は気温が急に上昇した日に最も多くみられた.発症数のピークは10歳代と70歳代の2つある.発症の大部分(88%)は屋外(および体育館)での運動中または作業中であった.特に60歳以下では(第1のピーク),車中の症例を除く全例が屋外での運動中,作業中の症例であった.一方70歳代以上になると(第2のピーク),屋外での日常生活行動中(歩行中,買物など)にも発症し、さらに慢性疾患のある場合には屋内でも発症した.男性に多く,全例の2/3を占める.死亡例は5年間で5例であった.5例中4例では核心温が40°Cを超え,意識障害などの中枢神経機能異常がみられた.治療には輸液と,核心温が38°Cを超えた場合には体外·体内冷却(体表冷却,冷却点滴,冷却胃洗浄など)が行われ効果がみられた.
著者
入來 正躬
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.55-61, 1996-04-01
参考文献数
18
被引用文献数
2
著者
長野 和雄 高柴 日香 小松 充典 兼子 朋也 堀越 哲美
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.141-164, 2009-01-01
参考文献数
60
被引用文献数
2

島根県吉田町の 2 集落を対象に,集落気候と室内気候の実測,住まい方や生活実感に対する住民へのアンケート調査を行い,伝統的住宅自身が備える,あるいは住まい方の中に隠れた,地域気候に対する適応の技術を検証した.集落気候の空間的分布と経時的な変化を体感指標 ETV で評価した.これにより,山間部の起伏に富んだ地形によって大きく変化する日射量や風速の影響,時間や季節による放射や着衣の影響を詳細に捉えた.室内気象は,建物自身の熱的性能によってある程度緩和されつつも,その外界気象に応じて変化した.特に夏季については日射の影響が明らかであった.夏季は至適域よりも高く,冬季は至適域よりも低い室内気候が形成されていた.その室内気候に対する居住者の実感,暑さ・寒さの対処法の実態を明らかにした.夏季には,エアコンの使用を控えて扇風機の使用に留め,通風や着衣による調節,環境選択などのエネルギー消費を要しない手法を多用した,地域気候に適応した生活が展開されていた.冬季にはほとんどの世帯でコタツまたは炭コタツが多用されていた.開放式燃焼器具も多くの世帯で併用されていたが,間欠的に使用していた世帯よりも常時使用していた世帯の方がむしろ不満と感じていた.また,室内での着衣の多さなど,ここでも過度にエネルギーを消費しないよう工夫されていた. / The purpose of this research is to verify techniques of adaptation to the local climate in traditional homes themselves, or in the lifestyle, in two villages in Yoshida-cho, Shimane Prefecture. This was done by measuring the outdoor and indoor climate, and conducting a questionnaire survey of residents regarding their lifestyle and actual living experience. The spatial distribution and variation over time in local climate were evaluated by using the ETV temperature index. This made it possible to capture the detailed effects of the amount of insolation and wind speed, which vary greatly due to the highly undulous mountain terrain, and the impact of long-wave radiation and clothing depending on the time and season. Although the thermal performance of buildings themselves eased slightly the effects of weather outside, the indoor temperature varied in response to the outdoor weather. The effect of solar radiation was particularly clear in the summer. The indoor climate was above the comfort zone in summer and below the comfort zone in winter. The results of questionnaire survey showed that, in summer, the lifestyle was adapted to the local climate, and residents frequently used techniques with lower energy consumption, such as refraining from using air-conditioners and making do with electric fans, regulating temperature with ventilation and clothing, and engaging in environment selection behavior. In winter, almost all households provided local heating with an electric or charcoal kotatsu. Open-type heaters were also used in many households, but the households who used them constantly tended to feel more dissatisfaction than those who used them intermittently or in an auxiliary fashion. Here too, creative techniques were used to avoid excessive energy consumption, such as wearing more clothing indoors.
著者
大橋 唯太 竜門 洋 重田 祥範
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.59-68, 2009-06-01
被引用文献数
1
著者
橋本 好弘 森谷 [キヨシ] 大塚 吉則
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.109-119, 2009-01-01
被引用文献数
1

消防活動は重装備の激しい活動であり,過労・ストレスによる隊員の死傷者が多い.本研究では,寒冷環境下における消防活動が隊員に及ぼす身体負担を経時的に分析し,休憩の必要性を検討した.北海道S市の消防隊員71名に対して24時間の拘束勤務中にボルター心電計を装着させ,消防活動中の心拍数変化を測定し,Wu, et al.(2001)のmaximum acceptable work duration(MAWD)でその負担を評価した.出動途上の平均最高心拍数は145.5拍/分であり,急激に心拍数が上昇していた.現場活動中の最大心拍数と活動時間には正の有意な(P<0.01)相関が認められた,小規模火災2件でMAWDを大きく超え,活動開始5分間の負担は平均で92.6並びに93.6%heaft rate reserve(HRR),活動全体の平均でも72.3と70.2%HRRであった.災害現場での消防隊員の死傷事故減少には,寒冷環境下の小規模火災でも,火勢制圧後,隊員に休憩・交替を与え,過労・ストレスを軽減させる必要がある,