著者
冨田 明美 宮本 征一 堀越 哲美
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.43-51, 1999-04-01 (Released:2010-10-13)
参考文献数
14
被引用文献数
3

日本人青年男女の体表面積を得るため, 人間生活工学研究センター (HQL) による日本人の人体計測データ平均値を基準に体型の異なる男性3名, 女性3名を被験者として選出した.6名の被験者について非伸縮性接着テープ法により体表面積の実測を行った.また, 体表面積と既往研究の体表面積推定式との適合性について検討した.シルエッターにより得られるシルエット写像の面積を測定し, 体表面積との関係を検討した.得られた結果は次のようである.1) 体表面積は, 男性の平均で17895cm2, 女性の平均で14443cm2であった.2) 体表解剖学体表区分に準拠した体表区分の面積比率から, 男女とも臀部, 大腿部, 下腿部に被験者間の差が大きいことがわかった.蔵澄らの面積比率に比較して, 大腿部, 胸部が大きく, 臀部が小さくなる傾向がみられた.また, DuBiousの面積比率に比較して, 大腿部, 腕部が大きく, 体幹部が小さくなる傾向がみられた.3) 蔵澄, 高比良, DuBious, 新谷, Meeh, 村田, 藤本の体表面積推定式の適合性を検討した.男性では, DuBious, 蔵澄, 新谷, 高比良の計算式が被験者の実測体表面積と適合することが確認できた.女性では, DuBious, 蔵澄, 高比良の計算式が適合した.4) シルエッターにより得られたシルエット面積 (x) と体表面積 (y) との一次回帰式を求めた.人体方位角0°と90°において, シルエット面積と体表面積との間には, r=0.989以上の高い相関が認められた.シルエット面積から体表面積を推定する式として次式を提案した.方位角0°の場合は, y=3.430x+0.003, 方位角90°の場合は, y=6.264x-0.22
著者
佐藤 純 溝口 博之 深谷 佳乃子
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.3-7, 2011-04-01
参考文献数
12
被引用文献数
1

1 0 0 0 OA 気候療法

著者
大塚 吉則
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.5-10, 2012 (Released:2012-03-24)
参考文献数
12

日常生活とは異なった気候環境に転地し,病気の治療や保養を行う自然療法を気候療法という.心身に作用する気候要素には,気温・湿度・風・気圧・日光そして森林内環境ではフィトンチッド(芳香性テルペン類)などがある.地形分類上は海岸,森林,平地,高山などがあり,それぞれ特色のある保養地気候を呈している.気候療法には,転地により有害な気候環境から心身を保護する作用と,新しい気候刺激に心身が反応して疾病の治癒や健康増進が促される作用とがある.気候療法の例としては,森林気候を利用した森林浴,山岳・高地気候で,標高差や勾配を利用して歩行運動を行う地形療法,海洋性気候の下で,寒さへの適応と運動を行うタラソテラピーなどが挙げられる.超高齢社会,ストレス社会の現代,気候療法を用いた健康増進,疾病治療などは幅広い適応があるためより一層の利用が望まれ,そのためには気候保養地の整備が必要である.
著者
宇野 美幸
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.17-22, 1987-04-01 (Released:2010-12-10)
参考文献数
16

帝京大学病院における1972年から1980年までの単胎分娩3, 220件の, 産科異常の頻度を, 児および母の出生季節から検討した.1.産科異常の発生の月別分布を分娩月から調べた.その結果,1) 早産は6~7月に多く, 過期産は1月と4月に多い傾向がみられたが有意ではなかった.2) 微弱陣痛は, 5~9月に少なく, 早期破水および前期破水は7~11月に多く, 羊水混濁は2~4月に多いが, 分娩遷延の発生には有意な季節性は認められなかった.3) 分娩時出血多量は, 8~12月に少なかった.臍帯巻絡は4~10月に多いが, 胎児仮死, 骨盤位には季節性は認められなかった.2.産科異常の発生を, 母の生まれ月から調べた.その結果,1) 3~7月生まれの母では過期産になる頻度が高い.2) 微弱陣痛, およびこの微弱陣痛と合併することが知られている分娩遷延, 早期破水および前期破水, 羊水混濁で, 夏季生まれの母にその発生が少ない傾向が共通して認められた.3) 分娩時出血多量も, 5~9月の夏季生まれの母で少なかった.臍帯巻絡は10~11月生まれで多く, 胎児仮死, 骨盤位では母の生まれ月による差は認められなかった.4) 産科異常のまったくなかった例は4~9月生まれに多かったが, 微弱陣痛およびその関連する産科異常に限ってなかった例の方がより顕著に4~9月生まれに多かった.
著者
星 秋夫 稲葉 裕 村山 貢司
出版者
Japanese Society of Biometeorology
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.3-11, 2007-06-01
被引用文献数
7

東京都と千葉市における 2000~2004 年の熱中症発生について解析した.熱中症発生率は東京都(人口 10 万対:4.4 人)よりも千葉市(9.4 人)で高かった.年齢階級別熱中症の発生は両都市共,5~19 歳と 65 歳以上とに,発生のピークを示す二峰性を示した.5~19 歳における熱中症発生は東京都,千葉市共に平日よりも日曜日,祭日で多かった.千葉市において,スポーツ時の発生は大部分が 5~19 歳であった.高齢者(65 歳以上)では大部分が生活活動時に発生した.熱中症の発生した日の日最高気温分布は東京都よりも千葉市で低温域にあった.日最高気温と日平均発生率との間に東京都と千葉市にそれぞれ異なる有意な相関関係を認め,千葉市で急勾配であった.日最高気温時 WBGT 分布は東京都と千葉市で同様であり,東京都と千葉市における日最高気温時 WBGT と日平均発生率との間に有意な相関関係を認めた.多重ロジスティックモデルの結果,日最高気温時 WBGT,日平均海面気圧,日照時間,降水量の因子について有意性を認めた.<br>
著者
田中 正敏 徳留 省悟 大中 忠勝 藤井 幸雄
出版者
Japanese Society of Biometeorology
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.119-127, 1988

東京都監察医務院の記録による1978年より1982年までの5年間の凍死症例は83件であり, 検案数に対する割合は平均0.29%である.40, 50歳代の男子が多く, 浮浪者なども含め無職ないし職業不詳の場合が男子全体の80%以上を示している.<BR>発生は1, 2, 12月の3か月で全体の80%近くを占めている.ほとんどの症例は気温11℃以下において発生し, 屋外では気温0~5℃での発生が多い.酩酊状態の場合には, 屋外で気温15~19℃といった場合にも発生がみられる.症例の75%は屋外における発生であり, わけても酩酊し路上での発生が多い.<BR>剖検時の血中アルコール濃度は1.5~2.4mg/m<I>l</I>の中等度酩酊が多いが, 40, 50歳代では2.5mg/m<I>l</I>以上の強度酩酊の場合が多い.剖検時の臓器所見としてアルコールによるとみられる肝障害も多くみられた.ローレル指数も一般に小さく, 栄養状態の劣っている者が多く, 都市型低体温症の場合には低栄養とむすびつきやすい.
著者
横山 太郎 福岡 義隆
出版者
Japanese Society of Biometeorology
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.145-151, 2007-02-01
被引用文献数
3

本報では熱中症の発生は地方によってどのように違いが見られるのかを明らかにすることを目的とした.一般的には熱中症の発生は日中,特に昼間に集中しているが,人口流出入が一日の中の発生頻度に影響を及ぼしていると考えられる.また,全国各地の熱中症の発生頻度は34℃台で地方ごとの顕著な違いが見られ,同じ気温であれば北日本,東日本,西日本の順に高いことが分かった.同じような気候条件にも関わらず,西日本と東日本の発生頻度に差が見られた.60歳以上の高齢者は不快指数77から82にかけて急激に熱中症が増えることも分かった.<br>
著者
張 季平 茅 志成
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.77-82, 1990-08-01 (Released:2010-10-13)
参考文献数
22
被引用文献数
4

1988年夏南京を襲った熱波に際し, およそ4500例の熱中症が発症し, 400名以上の重症患者が8箇所の病院に入院した.本稿では高齢者271例の重症熱中症の臨床と疫学について検討した.大部分の症例は気温が最も高い日に突然発症し, 症状としては皮膚温の上昇と皮膚の乾燥を呈した127例 (46.9%) , 体温が40℃以上のもの149例 (55.0%) せん妾や痙攣あるいは昏睡など中枢神経系の症状を呈した251例 (92.6%) であった.ほぼ半数の患者に白血球数の増加が認められたが, 血清のNa, K, Cl, Ca値は低下ないしはやや低下を示し, 2例に於いてのみ高カリウム血症を認めた.積極的な救急治療を行ったが, 死亡率は35.4%であった.
著者
荒川 恭子 石井 由香 香川 靖雄
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.199-211, 2015-12-01 (Released:2015-12-17)
参考文献数
42

本研究の目的は,健康な若年女性を対象に,冷え症の要因として遺伝子変異が関わっているか否かを明らかにし,冷えの発症機序を自律神経機能から解明することである.女子学生 27 人を冷え症 17 人と非・冷え症 10 人の 2 群に分け,肥満関連遺伝子(UCP-1, β2-AR, β3-AR)と高血圧関連遺伝子(AGT)の変異の出現頻度を検討した.その結果,冷え症体質者では非冷え性体質者に較べ冷水負荷後の皮膚温度回復が遅く(P=0.006),β3-AR 遺伝子変異の出現率が高いことがわかった.次に,β3-AR 遺伝子を wild 群と mutant 群の 2 群に分けて,冷水負荷時の自律神経活動の変化を心電図の R-R 間隔から検討した.冷水負荷により心臓交感神経活動は抑制されその後回復するが,mutant 群では wild 群と比較して回復が遅延し,有意差が認められた.以上から,冷え症は β3-AR 遺伝子変異が引き起こす交感神経の反応性の低下に起因する可能性が示唆された.
著者
長野 和雄 堀越 哲美
出版者
Japanese Society of Biometeorology
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.5-18, 2004-08-01
被引用文献数
4

本研究は,熱的中立から寒冷側の熱条件および交通騒音条件下において人体の心理反応に及ぼす複合影響を定量的に捉え,新しい環境評価指標を作成・提案することを目的としている.作用温度(19, 22, 25, 28°C)・等価騒音レベル(46.6 dB(A):空調騒音;58.5, 72.9, 79.9, 95.5 dB(A):交通騒音)の組合せ20条件について,男子学生22名の被験者の申告を得た.その結果,熱条件は暑さだけでなくうるささに,音条件はうるささだけでなく暑さに有意に影響した.熱と音の両方が明らかに総合的快適性・不快性に影響した.熱的快適性・不快性と聴覚的快適性・不快性をそれぞれ軸とした,そして作用温度と等価騒音レベルをそれぞれ軸とした等快適線図および等不快線図が提案された.これらは新しい快適性指標として本実験条件の範囲内で有効であると考えられる.<br>
著者
鈴木パーカー 明日香 日下 博幸
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.59-72, 2015-03-10 (Released:2015-04-14)
参考文献数
33

暑熱指標 WBGT(wet-bulb globe temperature)に基づき,将来の日本の暑熱環境予測を行なった.これに先立ち,全国の官署データを基に 1991–2010 年 8 月を対象とした現状把握を行った所,現在の日本はすでに厳しい暑熱環境にあることが示された.特に関東以西の地域では 8 月の日中平均 WBGT 気候値が 26℃以上となっているが,これは日本生気象学会等が定める熱中症指針では「警戒レベル」に相当する.比較的冷涼な札幌や仙台などでも,WBGT 値が「危険レベル」に達することもあるという結果が得られた.将来予測は 21 世紀末の 20 年間をターゲットとし,全球気候モデルによる予測データを領域気候モデルによって高解像度化する力学的ダウンスケール手法を用いて行なった.その結果,将来の暑熱環境は現在よりさらに悪化し,特に中部以西の多くの地点で 8 月中 20 日以上が「危険レベル」(日最高 WBGT≧31℃)になると予測された.予測 WBGT 昇温量は東北地方で大きく,例えば将来の秋田市は現在の大阪市のような気候になる可能性が示唆された.
著者
福岡 義隆
出版者
Japanese Society of Biometeorology
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.101-107, 1985

瀬戸内地域は, 平均値気候学の立場からは温和な気候を示す地域と考えられている.しかし実際には, 時折, 太平洋側や日本海側よりも夏に蒸し暑く冬に寒いことがある.とくに夏の夕凪は西日本で非常に有名で, かなり暑く, 心理的にも蒸し暑いと思われやすい.<BR>著者は夕凪の蒸し暑さ (YS) を次式のように表現することを試みた.<BR>YS=P1+P2+P3+P4<BR>ここに, P1, P2, P3およびP4はそれぞれ, 物理的要因, 人為的な熱汚染, 生理学的気候および心理学的気候を意味する.<BR>YSは広島, 岡山や他の都市で観測されたような都市温度により強められること, およびYSは明らかに不快指数の時間的変化によって認識されることなどが結論される.
著者
三上 功生 吉田 燦 青木 和夫 蜂巣 浩生
出版者
Japanese Society of Biometeorology
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.97-107, 2005-10-01
被引用文献数
3

交通事故等で頸椎を骨折し,ほぼ全身に及ぶ発汗障害と温冷感麻痺,末梢部の血流調節障害等の重度体温調節障害を持つ頸髄損傷者の温熱環境に対する意識・実態把握を目的としたアンケート調査を行った.回収数は338人であった.その結果,(1)暑さ,寒さを苦手に感じている者がほとんどであった.(2)体調が悪くなってから暑さ,寒さに気付くことを経験している者が多かった.(3)自室の冷暖房使用率はほぼ100%であったが,トイレ,脱衣所は低く,冷暖房の必要性を感じている者が多かった.(4)様々な公共施設の冷暖房に対して不満を感じていた.(5)夏季と冬季の外出時,体温上昇予防と寒さ対策として様々な手段を必要としていた.(6)体温調節障害のために,生活行動範囲が狭まっていると感じている者が多かった.本調査より頸髄損傷者が日常生活で,体温調節障害のために多くの困難に直面していることが明らかとなった.<br>