著者
小田 僚子 橋北 太樹 菅原 広史 清野 直子 稲垣 厚至
出版者
一般社団法人環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.37-42, 2016

<p><tt>首都圏では局地的大雨が多発し都市水害が深刻化しており,その発生場所や時間,降雨の規模などを予測し災害を最小限にすることが望まれている。本研究では,東京湾周辺の沿岸部</tt>4 <tt>地点に屋外ネットワークカメラを設置し,都心および東京湾上の大気場を常時観測するシステムを構築した。ステレオ観測により,都心で発生した積乱雲の成長初期段階から発生場所と発達高度を定量的に評価できることを示した。また,夏季における雲の流れ場から,雲の存在高度が</tt>2 <tt>層となっている状況は約</tt>35<tt>%あった。下層の雲の動きは衛星画像から捉えることは困難である一方,降雨の発生には下層の大気の流れを把握することが重要であることを指摘した。</tt></p>
著者
和田 有朗 品川 崇
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.179-184, 2018

食品ロスに関する個人の内的要因と食材を捨てない行動との関連を調査した。また,食品ロス対策の評価シートを用いて,消費者の意識に変化が生じるのかを調査した。その結果,食材を捨てない行動と無駄にしない調理技術の間には,やや強い関連が認められた。評価シート実施後に変化した意識項目の結果からは,まずは家庭でできる食品ロス削減案の提案と一人一人が容易に取り組めそうな行動から行っていくことが必要だと考えられる。
著者
對馬 孝治 舩橋 亨 笹田 勝寛 河野 英一
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.49-54, 2014

本研究では,河川に広く生息するオイカワ(<i>Zacco platypus</i>)を対象に,体組織の炭素と窒素の安定同位体比が食物源の違いを反映して河川(およそ-26‰と16‰)と遊水地(およそ-22‰と11‰)で異なったことを利用し,水域間の移動を明らかにした。同種の採補は,神奈川県内の境川,境川支流の和泉川,神奈川県立境川遊水地公園内の俣野遊水地,下飯田遊水地の隣接する4水域で実施した。出水による越流前後で河川と遊水地で採補された個体の安定同位体比の比較から,越流による河川から遊水地内へのオイカワの移動が確認された。遊水地は出水による生息域の流下を防ぐ役割があり,遊水地は河川のオイカワの生育場として重要な場所であることが示唆された。
著者
ソ ユファン 本條 毅
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.125-130, 2018

天空率は,都市構造を表す指標の一つである。天空率測定を,魚眼レンズカメラ,全天球カメラ,Google Street View,DSM などの手法を用いて行い結果を比較した。その結果,従来使用されてきた魚眼レンズカメラに加え,これらの方法で全て実用的に天空率を求められることが分かった。Google Street View やDSM を使用する場合には,撮影した時期の建物や土地利用などが,変化していないかの確認が必要であった。樹林内や街路樹のある道路での天空率測定の場合,二値化後の枝や葉の大小が誤差の原因であり,二値化の閾値の選定に注意が必要であることが分かった。
著者
宮内 大策 藤原 一繪
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.69-74, 2007
被引用文献数
1

大分県大分市の埋立地に造成された植栽後30 年を経過した環境保全林で,常緑広葉樹24 本(クスノキ,アラカシ,タブノキ,ホルトノキ,マテバシイ)を伐倒し,幹の直径や樹高を測定したのち,幹重・枝重・葉重を秤量し,相対生長関係を作成した。同林内で胸高直径測定可能な樹木を対象に毎木調査をおこない,伐倒調査で作成した相対生長関係を適用して,二酸化炭素固定量推定の礎となる地上部現存量の推定を行った。その結果,地上部現存量は327.3(幹:230.1,枝:82.3,葉:14.9)t/ha と推定され,日本の常緑広葉樹林の50~60 年生の既往研究と同程度の地上部現存量であることが分かった。
著者
上東 伸洋 坂部 創一 山崎 秀夫
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.273-278, 2016

<p>本研究ではSNS 交流が,共感力や現実の友人関係,QOL(Quality of Life)を連鎖的に向上させるという仮説を設定した。そして,情報系大学生を対象に集合調査法で調査し,共分散構造分析で検証した。その結果,SNS 交流がそれらの要素を向上させていることが検証された。また,SNS 交流のネットと現実の共感力へ及ぼす促進効果が現実友人関係やQOL に与える影響は,SNS 疲れやテクノ・ネット依存症傾向の悪影響よりもその向上効果が高いことが示された。さらに,ネット共感力が現実共感力を向上させる可能性も示唆された。 </p>
著者
市原 純
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.295-300, 2012

<tt>本研究は、地方自治体における国際環境協力の実施に影響を及ぼす要因を明確にすることを目的とする。とりわけ、政治的要因、行政余力などの行政的要因および地域間の波及要因が環境協力の実施や関連予算額の決定に対して影響を与えるのか、計量分析により検討する。計量分析の結果、革新知事、職員数に占める環境関連職員の割合や地域間の波及要因が環境協力実施に影響を及ぼすこと、また、職員数に占める環境関連職員の割合が、環境協力予算額の決定に影響を及ぼすことが確認された</tt><tt>。 </tt>
著者
嶋田 喜昭
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.167-172, 2011

近年わが国では,ペット(犬猫)飼育数の増加に伴い,三大ペット公害(鳴き声,悪臭,不衛生)をはじめとするさまざまな問題が発生している。本研究は,名古屋を事例とした住民意識により,特に犬の飼育を考慮した際の都市環境の改善のための課題を検討したものである。まず,ペット飼育に関わる問題や法令など,わが国のペット飼育を取り巻く現況を把握した。次に、名古量市・北名古屋市の住民を対象とした意識調査を実施し,犬の飼育実態や,犬の飼育に関連した都市施設ならびに政策に対する必要意識等を分析した。そして,街路や公園内の各種施設のニーズやその費用負担に対する意識,また重視されている政策等を示した。
著者
金澤 朋子 鳥谷 明子 小島 仁志 小谷 幸司 安藤 正人 村田 浩一
出版者
一般社団法人環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.103-106, 2016

<p><tt>本研究では,動物園の役割のひとつである「環境教育」に着眼し,その効果を高める上で重要なツールである解説板の設置位置と来園者行動との関係性を検討した。横浜市立金沢動物園のインドゾウ展示場を対象に,解説板の設置位置を</tt>3 <tt>パターンに分け,展示場前の観覧通路を</tt>7 <tt>区分した上で来園者行動の観察および来園者に直接解説板への関心の有無を確認し,解説板に対する関心度合の把握を行った。その結果,来園者の解説板に対する関心は高いことに加え,解説板を展示場の両端に設置した場合と中央に設置した場合とでは来園者行動が異なることなど,動物園における「環境教育」の機会がより広がる有用な知見が得られた。</tt></p>
著者
黒木 翔吾 真鳥 晃一 松村 隆
出版者
一般社団法人環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.455-460, 2011

大学生を対象に携帯電話リサイクルに関する意識調査を行った。携帯電話端末にレアメタル等が使用されていることを知っている学生は約64%であった。機種変更時に使用済み携帯電話端末を返却・リサイクルしたものは約25%で,約67%の学生はそのまま所持していた。返却・リサイクルしなかった理由は,電話機能以外の目的で所持(約27%),思い出として手元に保管(約28%),処理が面倒(約19%),リサイクルできることを知らなかった(約11%),個人情報流出への懸念(約10%)であった。返却・リサイクルをしなかった学生約90 名を対象に携帯電話リサイクルに関する経済的なインセンティブに関する調査も行った。
著者
佐藤 秀樹
出版者
一般社団法人環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.151-156, 2016

<p>バングラデシュ・クルナ市では,「ウエイスト・ピッカー」と呼ばれるインフォーマルセクターの労働者が街のごみ集積場や最終処分場で有価廃棄物を収集し生計を立てている。手袋や長靴を身につけない人が多いため, 彼らの約70%は皮膚そう痒の疾患を患っている。彼らの労働衛生の環境改善に関する必要性は指摘されてきたが,能力向上を図るための衛生教育は十分でない。そこで,本研究では彼らの衛生教育の必要性と教材開発の内容に関する方向性を考察した。その結果,視覚教材開発や体験学習を通じて,「ごみ」,「安全管理」,「健康」の視点から,彼らの生活環境やメンタルケアを含めた教育の重要性が認識された。</p>
著者
藤野 友和
出版者
一般社団法人環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.303-308, 2015

本研究では,環境保護に対する意識と環境配慮型商品の購買行動との関連性を,アンケート調査と実際の購買履歴データを用いて分析することの可能性について,実際にこれらのデータの基本的な分析を行って考察を与えた。用いたデータは,株式会社マクロミルが提供している消費者購買履歴データと,そのモニタに対する意識調査データである。意識調査データについては,環境に関する質問項目の回答に対して因子分析を行い,5 因子を抽出した。一方,消費者購買履歴データからは,環境配慮型商品として,環境に関する単語を含むトイレットペーパーの購買履歴を抽出し,これらの購買傾向と因子得点との関連性について考察を行った。
著者
立入 郁 武内 和彦
出版者
日本造園学会
雑誌
環境情報科学. 別冊, 環境情報科学論文集 = Environmental information science. Extra, Papers on environmental information science (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.107-112, 1998-11-16
参考文献数
10
被引用文献数
3

旧日本軍が作成した1930年代の地形図と中国科学院が作成した1980年代の砂漠化類型園を比べた結果,中国内蒙古自治区奈量旗でも,周辺で報告された結果にほぼ一致する約1.8倍の流動砂丘の拡大がみられた。 1980年代における砂漠化程度は,地形では砂丘,低位段丘,氾濫原の順に大きく,土壌では風積砂土が湿草地を上回った。大半のカテゴリでは, 1930年代に砂漠化地域だったところのほうがそうでなかったところより1980年代の砂漠化の度合いが大きかったか,例外的に逆の結果になるものもあった。
著者
黒田 貴綱
出版者
一般社団法人環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.129-132, 2016

<p><tt>カヤネズミは,里地では水田内,畦畔,耕作放棄地などの草地に営巣することが知られているが,我が国に一般的に見られる,草地の農的管理が十分に実施されている水田地域において,その営巣状況は不明な点が多い。本研究では,営農者を中心とした住民へのアンケートと営巣確認調査により,本種の営巣状況の把握を目的とした調査研究を実施した。農的管理が十分に実施され、草本類が伸長した畦畔や耕作放棄地が存在しない地域において本種の営巣が確認され,稲が成長した水田が本種の営巣環境として機能していた。</tt></p>
著者
大森 将希 大木 宜章 大沢 吉範 木科 大介
出版者
一般社団法人環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.145-150, 2013

本研究は,廃棄物を利用した効率的なエタノール発酵の可能性を見出すため,糖化工程を省略したエタノール発酵におけるエタノール生成および有機酸の生成量と割合特性について検討を行った。試料には,模擬生ごみを用い,これにS.cerevisiae を接種した。その結果, S.cerevisiae と模擬生ごみに生息している嫌気性細菌による複合微生物系によって,優先的にエタノールが生成され,有機酸の種類と割合が同様な傾向になった。また,酵母接種比が高くなるにつれて,固形分減少率も高くなる傾向がみられた。 これらの検討結果より,糖化工程を省略したエタノール発酵における最適反応時間は18 時間であり,最適酵母接種比は3.45g-湿潤酵母/kg-模擬生ごみであることが分かった。
著者
東 淳樹 武内 和彦 恒川 篤史
出版者
社団法人環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学. 別冊, 環境情報科学論文集 = Environmental information science. Extra, Papers on environmental information science (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.239-244, 1998-11-16
被引用文献数
17

千葉県印譜沼流域鹿島川水系において,サシバの分布および生息環境について調べた・まず,サシバの繁殖期間中にあたる1997年4月下旬から6月初旬にかけて,生息分布を調査した・また,同年5月下旬から7月下旬にかけて,ラジオ・テレメトリ法により繁殖期間中の繁殖雄4羽の行動追跡を行なった・その結果,サシバは,谷津環境に生息し,生息分布は,谷津田の幅の広さと関連があった・サシバは斜面林を移動しながら採食し, 6月初旬までは谷津田を採食場所として利用したが,それ以降は林縁部,林冠部へと採食場所を移行させた.これらのことから,サシバは採食効率の面から谷津環境を営巣および採食場所として利用していると推察された.We studied the distribution and habitat use of the Gray-faced Buzzard Eagle, Butastur indicus, along the Kashima river, watershed of lnba Marsh, Chiba Prefecture. Eagles were censused on maps from late in April to early in June, 1997. Four male eagles were radio-tracked from late May to late July inthe same year. The eagles occurred at Yatsu-environment, which is composed of Yatsuda (small paddy held) and forests on terrace scarp, and they preferred narrow Yatsuda. The eagles perched in trees on terrace scarp through the breeding season, and foraged in Yatsuda until early June. But, in June and August, the foraging site shifted from Yatsuda to forest edge and canopy. These results suggest that the eagles selected Yatsu-environment as nesting and foraging habitat to increase their foraging efficiency through seasons.