著者
吉留 大雅 平井 経太 堀内 隆彦
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6+, pp.53-56, 2017-11-01 (Released:2018-02-20)
参考文献数
8

食肉の加熱調理において,色は焼き加減を判断する重要な指標の一つとして用いられており,加熱調理中の肉色変化の予測および視覚化は,スマートキッチンなどの調理支援技術に大きく貢献する.本研究では,肉色の決定に大きく関与している色素分子,ミオグロビンの熱変性に焦点を当て,加熱による肉色変化を分光ベースで推定するモデルを提案した.また,提案モデルによる肉色変化の結果を可視化するために,時間変化に基づく肉の加熱CGシミュレーションを作成した.提案モデルにおいて,加熱した肉の分光反射率は,ミオグロビンの誘導体3形態および変性ミオグロビンの分光反射率の線形和で表されると仮定した.ミオグロビン各形態の割合は,誘導体3形態および加熱した肉試料の分光反射率をK/S値(吸収散乱係数比)に変換することで導出した.推定モデルによる分光反射率と実測による分光反射率を比較すると,変性前の推定モデルの分光反射率には一部の誘導体の分光的特徴が反映されなかったが,変性が進行すると,推定モデルに各誘導体の特徴が確認されるようになり,肉色も実測値に近くなった.
著者
遠藤 聡 石田 泰一郎
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.31-34, 2017

<p> 近年,照明技術の発展に伴い,機能的な側面だけでなく,芸術性までも照明に求める場面が増えてきた.また,歴史都市として発展してきた京都は,夜間であってもほかの都市と異なる雰囲気を感じる人は多くいると思う.そんな京都の夜間照明に関して,現地調査により測定された実測値と,写真による印象実験によって得られた結果とを分析した既往研究は少ない.また,京都の観光地の夜間照明を対象にした既往研究は多く見られるが,京都市内広域を対象とした既往研究は少ない.本研究では,京都の都市照明における独自性に着目し,無作為サンプリングを行い,京都市内広域に渡って,さまざまな地点で照度の測定などの現地調査を行い,そこで撮影した写真を用いて印象評価実験を行い,その結果を分析し,結果と実測値や撮影写真を照らし合わせて「京都らしい」都市照明とはいかなるものかを検証した.そして「京都らしい」夜間照明の印象評価や物理量などに関して,一定の特徴が明らかになったことを論じる.</p>
著者
若田 忠之 森谷 春花 齋藤 美穂
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3+, pp.96, 2018-05-01 (Released:2018-07-17)
参考文献数
2
被引用文献数
1

前報であるWakata&Saito(2017)に引き続き,複数の感覚間の関係性に着目したCross-modal 研究における,色(視覚),音楽(聴覚),香り(嗅覚)の3つの感覚に共通する印象次元を抽出し,その印象次元における各感覚の関係性の検討および前報の結果に加えて香り,音楽に対する調和色の傾向と印象との関係性を検討することを目的とした.その結果,色の明るさとあざやかさと対応する印象次元が認められ,特に因子1は明るさ,あざやかさの判断と関連し,その判断が香りと色,音楽と色の感覚間の調和関係に影響を与える傾向が示された.
著者
岡嶋 克典 山下 亮 高瀬 正典
出版者
日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.16-17, 1998-05-01
参考文献数
2
被引用文献数
4
著者
桂 重仁 須長 正治
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.189-200, 2017-09-01 (Released:2017-09-25)
参考文献数
9

色彩や色名はコミュニケーションの情報として日常的に使用されている.しかし,色覚異常を持つ幼児は,色覚という概念が理解できないため,困惑すると思われる.そのような幼児に対し,まず,家族や保育士が色覚異常に気づき,そして,対処することが望まれる.そこで,本研究では,幼児の色覚異常に気づくために,色覚異常特有のクレヨンの色使い,すなわち,混同して使われることがある色に着目し,色彩科学的見地から市販されているクレヨンの混同色の解析を行った.さらに,2色覚のクレヨンの混同のしやすさに対し,“混同色対指数”という新たな指標を導入し,クレヨンの混同色のランク付けを行った.そして,幼児のクレヨンの色使いにて混同色対指数0.6以上のクレヨンの混同が色覚異常の可能性を示すひとつの目安となることを論じた.
著者
菱川 優介 桂 重仁 須長 正治
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.141-144, 2017

色覚異常を持つ人の日常生活におけるトラブルとして,焼肉の焼け具合がわからないという報告がされている.このことから,色覚異常を持つ人は,一人で焼肉を行うことが難しいと言える.本研究では,2色覚の一人焼肉を補助すべく,焼肉が焼けたかどうかを知らせるアプリを作成した.実験では,肉の表面を測色すると同時に,3色覚と2色覚に焼肉の見た目の焼け具合を評価してもらった.焼肉の色変化の過程は,錐体刺激値LM平面にて特徴が現れていた.この変化過程は,2色覚に対してL軸またはM軸への射影となる.その結果,生肉の色が,肉が焼けていく過程の色変化のなかに埋もれてしまい,2色覚は色変化からでは焼け具合がわかりにくいことが示された.また評価結果をもとに,LM平面上にアプリによる焼け具合判断の閾値を設定した.作成したアプリと3色覚の判断がどれくらい一致するかを調べた.焼けた肉と焼けていない肉を,アプリが正しく判断する確率はそれぞれ63%と94%であった.また,焼けた肉,焼けていない肉に対して誤った判断をする確率はそれぞれ37%,6%であった.以上のことから,おおよそ正しく肉の焼け具合を判断するアプリを作成した.
著者
鳥居 修晃
出版者
一般社団法人日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.33-37, 1976-03-31
著者
益満 大志 溝上 陽子
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3+, pp.26, 2018-05-01 (Released:2018-07-17)
参考文献数
2

本研究では,画像の鮮やかさの知覚が,彩度変調画像および彩度・明度コントラスト変調画像への順応によって影響を受けるか検証した.自然画像において彩度の上昇(低下)と同時に輝度コントラストを上昇(低下)させると,彩度のみを上昇(低下)させた場合より自然に見える範囲が広がるとされ,この知覚される自然さの違いが彩度の順応効果に影響を与える可能性がある.実験では,同じ変調係数にて変調した彩度・明度コントラストを有する複数の画像に順応後,彩度のみを変調したテスト画像を呈示し,その彩度知覚を測定した.結果,彩度のみを変調した画像と,彩度・明度コントラストを同時に変調した画像に順応した条件では,順応効果に有意な違いは現れなかった.しかし,彩度の上昇(低下)と同時に明度コントラストを低下(上昇)させ,明らかに不自然と感じられる画像に順応した条件では,順応効果がそれらと比べて極めて小さくなった.この変調方向においては,被験者の自然に見える範囲も他の変調方向と比べて狭いという結果となった.したがって,この知覚される画像の自然さの違いにより,彩度順応効果に違いが表れると考えられる.
著者
浅野 晃 出口 絢那 浅野(村木) 千恵
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6+, pp.37, 2018-11-01 (Released:2019-01-29)
参考文献数
5

本研究では,製品の色の嗜好を,上の「事物の介在による選好の変化」という観点から検討する.ここでは,色そのものに対して持つ「選好」と,どういう色の製品を好むかという「嗜好」との違いに注目し,両者の一致度が各条件でどのように異なるかを調べた.調査では,まず色だけについての選好を被験者に尋ね,さらに,冷蔵庫・ノートパソコン・スマートフォンを対象として,色の嗜好を調べて,「色自身の選好」と「製品の色についての嗜好」を比較した.その結果,「選好」と「嗜好」の一致度は,製品によって異なるのみならず,男性と女性の間でも差があることが示唆された.とくに,女性は男性に比べて,製品が「身に付けるもの」かどうかが,色の選好と製品色の嗜好の一致度に影響している傾向が見られた.
著者
北嶋 秀子
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.15, 2018-01-01 (Released:2018-02-07)
参考文献数
21

暈繝彩色は7 世紀に中国からわが国へ伝来した彩色技法である.主に仏教的なものに使用され,「鮮やかな多彩感」や「立体感」を表す.中国と日本の暈繝彩色は,同じ画材,同じ描法であるにも関わらず,違いが認められる.敦煌莫高窟に代表される中国の暈繝彩色は「立体感」を,それに対して日本の場合は,「鮮やかな多彩感」を重視した.その結果,日本の暈繝彩色は平面的で,その後装飾的なものになったと考えられる. 本稿ではもともと立体感を表す彩色技法であった暈繝彩色が,なぜ日本では平面的で,後に装飾的になったのかを考察した.奈良時代までは立体感を帯びた暈繝彩色であったが,徐々に日本独自の暈繝彩色へと変容する.そこには当時の平面的な絵画(仏画)の影響があり,その変容の時期は,密教請来との関係が考えられる. 8 世紀に立体的であった暈繝彩色は,9 世紀の過渡期を経て,10 世紀に平面的になった.そして11 世紀の平等院鳳凰堂では,平安貴族の耽美主義の影響により,装飾性を重視した暈繝彩色へ推移したと考えられる.日本の暈繝彩色で「鮮やかな多彩感」をどこよりも発揮しているのが,平等院鳳凰堂である.
著者
吉村由利香 大江 猛
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3+, pp.185, 2018-05-01 (Released:2018-07-17)
参考文献数
3

現在,最も普及している照明用白色LEDは青色ダイオードとこれを励起光とする黄色蛍光体による疑似白色光である.このLEDの光色は人間の脳には白と認識されるが,物体色の見え方は従来白色光と異なっている.そこで,本研究ではLEDの疑似白色光のスペクトル波形がその照明下の物体色に及ぼす影響について検討した.LEDの450nmのピーク強度を減少させた場合,赤系の物体色ではa*値が増大し,青系では逆にa*値が減少した.L*値とb*値への影響はほとんどなかった.これらは,450nm付近に感度を持つ三刺激値(X値,Z値)の変化に起因するものと考えられた.この物体色と太陽光(D65)との色差⊿E*値を算出すると,450nmのピーク強度を85%程度に低下させた場合に,赤系以外の物体色では⊿E*値が小さくなり,太陽光との見え方に近づく結果が得られた.一方,550nmのピーク位置を長波長側にシフトさせた場合,赤の色相ではa*値の減少とb*値の増大,青の色相の場合には,逆にa*値の増大とb*値の減少が認められた.これらの変化はいずれも彩度の高い物体色ほど顕著になることが分かった.
著者
馬場 靖人
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3+, pp.118, 2018-05-01 (Released:2018-07-17)
参考文献数
20

J. ドルトンによる歴史上初めての学問的な色覚異常論の発表から遅れること十余年,ゲーテは『色彩論』(1810年)を上梓する.彼はそのなかで色彩一般についての研究とは別に色覚異常についての研究も行なったが,その著書の出版に先立つ1790年代に,すでに色覚異常の被験者を相手に独自の実験を行なっていた.本発表では,W. イェーガーによるゲーテの色覚異常実験法についての研究やゲーテ自身の著作を参考にしつつ,ゲーテが行なった実験の仔細な内容を検討し,その実験からどのようにしてゲーテが有名な「青色盲」説を導き出したのかを論じる(彼は,現在では赤ないし緑の知覚機能の欠如として説明される(赤緑)色覚異常を「青」の欠如として説明し,彼の被験者を「青色盲」と名づけた).彼の行なった実験とは具体的には,(1)灰色のグラデーションの提示,(2)複数の色彩斑点による混同色の特定,(3)茶碗に色を塗りつける実験,(4)紙片に塗った色による実験――以上の四種である.これらの実験を再検討することによって,18世紀末‐19世紀初頭における色彩にまつわる技術や文化と色覚異常研究との関係性の一端を明らかにすることができるだろう.
著者
菊地 久美子 片桐 千華 溝上 陽子 矢口 博久
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3+, pp.44-47, 2017-05-01 (Released:2017-10-07)
被引用文献数
1

顔は部位により肌色が異なることが知られている.肌色の部位差については,これまで多くの報告があり,接触式の測色計により指定部位を測色するほか,デジタルカメラなどの画像色彩計を用いて顔の特定部位を指定し,評価する例などが挙げられる.しかし,これらの方法では指定部位の理解に限定され,顔における肌色分布を連続的に,詳細に把握することはできない.本研究では,顔全体の肌色分布を評価する方法を開発し,肌色分布の加齢変化の特徴および季節変化の特徴を把握することを目的とした.まず,目・鼻・口といった顔のパーツから特徴点を指定し,特徴点から顔の肌色領域を分割した.次に,分割された領域毎に色彩値やメラニン・ヘモグロビンといった肌の色素量の平均値を算出することで,肌色分布を視覚的な分割画像と定量的な分割データの両方で表現する手法を開発した.本手法を20~78歳の女性,522名の顔画像に対し適用させることで,加齢による肌色分布の色彩値の変化を可視化および定量化した.さらに,女性25名の肌色分布の季節変化を可視化した.本研究により,加齢による色変化が生じやすい領域,季節変化が生じやすい領域を明確化することができた.
著者
山田 雅子
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.55-61, 2017-03-01 (Released:2017-04-03)
参考文献数
13
被引用文献数
1

肌の色に対する心的イメージ(心の中に抱く像)には,現実とのずれがある(山田, 2010, 2015).実際には男性の肌の方が女性よりも赤み寄りであるにもかかわらず,平均的な男女の肌の心的イメージとして選ばれた色票の特徴は全く逆であったとの報告もある(山田, 2010).そこで本研究では,言語表現の面から自身と男女の肌について抱かれる心的イメージの傾向を探ることとした. 82名の日本人女子学生を対象とし,6種の肌について明るさと色みを選択させたところ,明るさについては,対象の性別に従って明瞭に区別される一方,色みについては「中庸」との選択が大半を占め,明確には意識されていないことが明らかとなった.また,対象の性別や自他の区別を問わず,理想は現実に比べて色白であり,回答者自身の肌については,現実の方が理想に比して黄みに寄るとの特徴も加わることが分かった.更に,言語表現の選択傾向は一定のパタンに分類できることも示唆された.
著者
宮崎 綾乃 田代 知範 山内 陽子 山内 泰樹
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6+, pp.58, 2018-11-01 (Released:2019-01-29)
参考文献数
2

パーソナルカラー診断に用いる属性である「清色・濁色」について,肌の印象や質感が違って見えることは主観的には広く認められているが,測色値から算出する色差などによる客観的な裏付けがなされておらず,客観的評価を行う上での着眼点も定まっていない.本実験はこの着眼点を見つける第一歩として,「清色・濁色」に関する主観的評価と色相,明度,彩度の関係を明らかにすることを目的とした.パーソナルカラー診断に用いられるドレープ(7色)と肌パッチ(ブルーベース,イエローベース)より周辺色刺激を作成し,その中央にある肌色の印象について被験者9名に10項目のアンケート方式により回答させた.結果から,シーズンに関わらず中~低明度の色刺激では清色の印象を受けやすく,高~中明度の色刺激での評価が濁色の印象を受けやすい傾向が見られた.また,清色の色刺激で濁色,または濁色の色刺激で清色の評価を受けてしまう色刺激や,清色とも濁色ともとれない結果になった色刺激も存在した.これらは明度や彩度が相互関係を持った上で,非線形に中央の色刺激の色の見えに影響を与えている可能性が考えられるが,今後さらに詳細にデータを収集する必要がある.
著者
斎藤 了一 富永 昌治 堀内 隆彦
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.39-42, 2017

<p> 本研究では著名な印象派画家の色彩表現に着目して色使いの特徴解析を行っている.研究開始当初は,画家ごとの作品全体での色度点分布から主成分分析による解析や,3属性で作品ごとの平均値を用いた多面判別面による解析で色使い傾向を検討してきた.また,分布全体主成分や平均値では詳細な特徴を抽出し切れないため,画家ごとの色度点分布を属性ごとに均等分割し,分割中心値と分割域幅の関係を関数表現することで詳細な色特徴の解析を考案した.本報では,この分割による解析法を発展させて,各画家の作品ごとに3属性の近似曲線を数値表現することで,より詳細な解析をしたので報告する.対象としたのは,マネ,セザンヌ,ゴッホ,モネ,ルノアールの5画家における全65作品である.各画家作品の色分布を3属性ごとで色度点の個数が均等になるよう8分割し,この分割結果から分割中心値と分割域幅の関係を近似した曲線を求め,色相については余弦関数で近似し,明度と彩度では2次関数で近似曲線を得た.この近似曲線を数値表現して作品の比較をすることで色分布状態による特徴を示すことができ,且つ,平均値を合わせた検討により詳細な特徴を見出すことができた.</p>
著者
高松 操 石上 桂子 乾 宏子 丸山 眞澄 市場 丈規 髙橋 晋也
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.102-105, 2017

25名の女性の頬を測色し,分光反射率曲線と物理測色値を得た.また,510-600nmの凹み面積をヘモグロビン(Hb)影響度として算出した.同時に,「色白さ」や「色み(赤み−黄み)」,「透明感」といった肌の印象を視感評価した.Hb影響度を含む測色値と視感評価の結果を比較した結果,肌の色特有の色の見えを確認した.明度が高い肌(L*>68)は,色相値やHb影響度に依らず「色み(赤み−黄み)」評価が中庸となり「色白」と評価された.明度が低い肌(L*<63)はHb影響度が高い場合が多く,色相は赤み寄りであったにも関わらず「色黒」で「黄み」と評価された.中明度の肌(63≦L*≦68)では,Hb影響度が高く赤み寄りの場合は「赤み」で「色白」に,Hb影響度が低く黄み寄りの場合は「黄み」で「色黒」と評価されやすかった.このように,「色白さ」は明度や白さだけでなく色相にも依存する一方,「色み(赤み−黄み)」の判断も色相だけでなく明度や白さに依存するという結果が示された.この結果から,肌の色を高明度・中明度でHb影響度が高い・中明度でHb影響度が低い・低明度の4タイプに分け,分光反射率曲線と肌印象視感評価プロフィールからその特徴をまとめた.