著者
清井 計弥 山本 信次 森川 収
出版者
一般社団法人日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.9-15, 2006-03-01
被引用文献数
1

本研究は、メタリック/パール色の粒子感を定量評価するためのハードウェアとアルコリズムを確立することを目的とした。粒子感の定量化は、(1)CCDを用いて試料面を撮像し、(2)画像データを人間が感じるイメージに合わせて加工し、(2)光輝材によってキラキラとした高輝度部分の特徴を抽出して粒子感を求めるという手順で行った。(2)の画像データの加工については、解像度や明るさのスケールを人間の感じるイメージに合わせることで、高い目視相関が得られると考えた。(2)の粒子感の計算については、まず、光輝材によってキラキラとした明るい部分を高輝度部と定義し、粒子怪を3つの物理量、高輝度部明るさ、高輝度部面積、高輝度部の数で表した。これらのパラメータを説明変数とした重回帰式によって目視相関のある粒子感を定量化できると考えた。39種のメタリック/パール塗板を用いて目視相関を検証した結果、高輝度郡明るさと目視粒子感の相関が非常に強く、それ以外のパラメータは相関があまり強くないことが分かった。
著者
槙 究 山本 早里
出版者
一般社団法人日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.127-139, 1998-11-01
被引用文献数
3 1

似合う色についての理論であるパーソナルカラーシステムについて, その妥当性を検討するために, 胸のところにさまざまな色の布地をあてて, 女子大生6名に印象評価してもらう実験を行った。その結果, 次のようなことがわかった。(1)似合う色の個人差が小さいこと(2)高明度・中彩度色や中明度・高彩度色は, 地味な印象を与える方が似合うと評定されること(3)暗い色は, それ自体では好まれないが, 似合いの評定では, それが改善されること(4)似合う色の個人差は, 髪の色との関連が大きいこと(5)人々をイエローベースの色が似合うグループ, ブルーベースの色が似合うグループに分離できないこと
著者
池田 光男 小浜 朋子 久住 亜津沙 篠田 博之
出版者
一般社団法人日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.26-35, 2004-03-01
被引用文献数
5

白内障手術を69歳で受けた筆者の一人を被験者として、物の見え方、携帯電話の見え方、および色の見え方を手術前後で検討した。手術前の物の見え方は、たとえば人の顔が判別できないとか、文章中の文字に分からないものがあるとか、あるいはグレアが嫌であるとかの不具合がはっきり経験された。携帯電話については手術前は画面が明るすぎる、画面のなかの区分けがはっきりしないなどの不具合があったが、手術後にはそれらは消滅した。色の見え方については手術後に青色の物体が目立つとか新鮮とかの驚きはあるが、手術前の不具合としては自覚しなかった。しかし光覚感については手術前はそれが高く、照度レベルの低いところで黒っぽい色つきの物体の色が見えないという不具合が経験された。つぎに色の見え方に関する3つの実験を行った。白内障の左眼と眼内レンズの入った右眼とで同じ色に見える白票の決定、JIS標草色票のシートで同じ色に見える全領域の決定、N8の参照刺激と同じ明るさに見える白票の輝度の測定である。いずれの実験でも白内障の眼では彩度が低下することが示唆された。また白内障眼による見えの色は、明るいところでは、青系が大きく黄方向へ、黄系はわずかに青方向へ移勤し、暗いところでは黄系が大きく青方向へ、青系はわずかに黄方向へ移動した。しかしいずれにおいても赤や緑方向への移動は見られなかった。
著者
稲葉 隆
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.247, 2020-11-01 (Released:2021-11-28)
参考文献数
24

1つのピアノ曲の印象を多色配色として視覚化する際に生じる多様性と共通性について,色属性・配色構成・印象カテゴリーの点から検討した.実験1では,曲の印象を5色配色で表現する課題を実験参加者202名に対して実施し,実験2では,その曲の印象にふさわしい配色を30の配色サンプルの中から選択する課題を30名に対して実施した.実験1の結果,配色を構成する色の属性は明度の高い明清色調と明濁色調のトーンに偏り,配色は狭いトーン域の中で色相構成の違いにより多様化した.そして,作られた配色は「イメージスケール」上でソフトなイメージを中心にした12の印象カテゴリーに分類された.実験2の結果選択された配色の色属性と印象カテゴリーもほぼ同様であった.様々な音楽により喚起される印象は多様な色により表現されると予想されるが,本研究は1つの曲において,その印象が色属性(トーン,色相)と配色構成に反映され,多様化して視覚化される1例を示した.
著者
山下 真知子
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6+, pp.25-28, 2017-11-01 (Released:2018-02-20)
参考文献数
4

色彩空間における味覚,嗅覚,広・狭感,時間的体感,記憶等,空間の色彩がヒトに及ぼす影響を探る.同時にこれまでの定説ともなっている色彩心理効果の内容を吟味検討し,今後,新たに空間色における色彩心理効果を体系的に提示する計画で,まず本報ではVRによる色彩空間での味覚,嗅覚,快・不快感の評価実験を通して,色彩空間が味覚・嗅覚に及ぼす影響の手がかりを報告する.
著者
森田 亜紀 早川 文代 香西 みどり
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.107, 2020-07-01 (Released:2020-08-09)
参考文献数
26
被引用文献数
1

パンの品質は主に外観,香り,食感,風味から総合的に判断されるが,中でも香りは消費者のパンの嗜好性を左右する重要な品質要因とされている.パンの香りの評価方法として官能評価や香気成分分析などがあるが,パンの香りのイメージを専門家以外で共有することは難しい.本研究では,パンの香りの官能特性を明らかにし,色彩評価による結果と合わせて考察した. パンに含まれる7成分を添加した香りの異なるワンローフ成形の食パンを調製した.パンの香りの強さや質の違いは,10語の評価用語による9段階評定尺度法を用いた評価により表現できた.またPCCS表色系の新配色カード199を用いてパンの香りのイメージに合致する色を選択させたところ,パンの香りは橙,乳に由来する香りは黄と相関があった.また,焼成で生じる香りは明度の高い方向で表現された. 本評価法を利用することにより,パンの香りは言葉で表現可能なだけでなく色彩により可視化できる可能性が示され,より消費者にもわかりやすくパンの香りを伝える手段として提案できた.
著者
金 聖愛 川端 康弘
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.143-153, 2017-07-01 (Released:2017-07-20)
参考文献数
31

本研究は北海道在住の20代から30代前半の学生に対して,単色及び左右並びの2色配色に対する好ましさの評価を行い,現代の若者の色の嗜好性について検討するとともに,評価にかかる反応時間および視線の動きをあわせて測定した.色の好ましさの評価については,配色の構成色間の距離に関わらず,ライトトーン(高輝度,低彩度)の配色構成がビビットトーン(低輝度,高彩度)やダークトーン(低輝度,低彩度)より好まれ,赤-緑系より青-黄系の方に人気があった.さらに,使用した2色が同じであっても,左から右へ暖色から寒色を並べた2色配色は,寒色から暖色を並べた2色配色より好まれた.また反応時間については,単色及び配色の好ましさの評価が高いほど短く,全般的に配色よりも単色の方が長かった.視線の動きに関しては左から右の順が暖色から寒色の場合,配色構成の距離に関わらずどの2色配色でも左より右の色に視線を多く向け,注視時間も長かった.
著者
川端 美穂 川端 康弘 佐々木 三公子 高橋 文代 笠井 有利子
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.163, 2020-07-01 (Released:2020-08-15)
参考文献数
53

100 hue testの総エラー値(TES)について,大学生280人を対象に制限時間が120秒と短縮条件の90秒の2群に分けて調査を行った.90秒条件において一般3色覚者の色識別力に大きな個人差が見られ,非常に良好な色識別力(TES=0)を有する人から異常3色覚に近い成績(TES=184)の人まで多岐にわたることがわかった.TESの分布は90秒条件の方がより典型的な正規分布を示し,120秒条件はTES=0で床効果がみられる.一般3色覚者では,3年以上芸術系のサークルや習い事などの経験を持つ,色識別との関わりが深い人のTESは,経験がない人や3年未満の人のTESを有意に下回っている.この傾向は120秒条件よりも90秒条件で顕著にみられる.この色識別力における個人差は日常生活における色に関する経験や学習の影響が大きいようであり,高次の視覚過程における高い可塑性が反映されていると考えられる.
著者
國本 学史
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3+, pp.200, 2020-05-01 (Released:2021-09-06)
参考文献数
15

黄櫨染は令和のお代替わりに際して,天皇が身につける袍・束帯の色と見なされた.しかし,即位礼において天皇が黄櫨染袍・束帯を身に付けるのは,明治天皇以降である.孝明天皇の代までは,即位礼には冕服を天皇は着用していた.黄櫨染は,櫨を用いた染色とされる.位色がもたらされた中国の影響が大きいと考えられるが,中国の櫨と日本の櫨は文字が同じながら異なる植物と推測され,両国の櫨材染色を比較しても同色ではない.平安時代の『延喜式』の記録では,黄櫨と蘇芳の交染であるとされたが,これは中国皇帝の袍・衫の赭黄や赤黄の色に似せるためとも考えられる.中国の服色制度の受容に際して,黄櫨染以外は唐の常服の色を日本の礼服(後,束帯)に適用している.しかし,中国皇帝の常服の赭黄・赤黄の色は,日本の律令制度における「衣服令」の天皇の礼服位色としては適用されず,後代に規定されるようになる.天皇が神事等に着用する帛衣・斎服の「白」,「麹塵の青」,「赤白橡」,などの天皇位色も生じたが,黄櫨染のみ天皇に絶対的に限定されていた.そして黄櫨染は,近代の即位礼における天皇の服色として規定されることで,新たな意味性を付加されている.
著者
早川 照美 乾 宏子 市場 丈規
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3+, pp.110-113, 2017-05-01 (Released:2017-10-07)
被引用文献数
2

本研究は日本色彩学会第47回全国大会において,パーソナルカラー診断時にドレープが肌の色の見えに及ぼす影響について反射光の影響を除いた条件で観察した研究の続編である.前大会では「黄み」のピンクと「青み」のピンクのドレープにそれぞれ同時に手を置いたときの肌の色の見えが「同化」ではなく色相対比であることを報告した.今回はブラウン,イエロー,グリーン,ブルー(肌の色の類似~補色色相)の異なるドレープに手を置いて肌の色の見えを観察した.同時に異なるドレープの間にグレイのドレープを置いて単独で手の色の見えを観察した.その結果,肌の色と類似または対照色相のイエロー,グリーンでは色相対比が観察できた.一方,ブラウンでは肌と明度対比が起こり複雑な見えをした.肌の色の補色色相であるブルーのドレープに置いた手は色相的には複雑な見えを示したが,肌の色の彩度が高く感じられたことにより補色対比が起きていることが見て取れた.このように背景色に置いた肌に起こる主な視覚効果は色票における背景色と図色の関係と類似しているが,ドレープの明度が肌の明度と著しく異なり明度対比が生じる場合には肌独特の見え方をしたことを報告する.
著者
山下 真知子
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3+, pp.25, 2020-07-01 (Released:2021-09-06)
参考文献数
8

本研究は視覚から色彩を捉えることで想起される人間の感情に及ぼす影響に関する実証を経て,五感(味覚・嗅覚)や空間の広・狭感,記憶,時間的体感など色彩空間がヒトに及ぼす認知的な問題に迫る.本研究成果により,まだ十分に解明されていない色彩心理効果の定説の裏付けと吟味検討を含めて,抜本的に新しい知見を見出すことが目的の一つである.本論はこれらのうち,「時間的体感」の評価結果について報告するものである.方法は立体可視化装置で投影した部屋空間内(高さ3m×奥行3m×横幅7.8mの投影スタジオに間口3.75m の2つの部屋モデル投影)で被験者に時間経過感覚を評価させた.結果,既知の通説である「赤空間は実際の時間経過よりも長く体感し,青空間は実際の時間経過より短く体感する」とは合致しない結果となり,「赤空間は実際の時間よりその経過を短く感じ,青空間は実際の時間よりその経過を長く感じる」とする経緯を報告する.
著者
島倉 瞳 坂田 勝亮
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.3, 2020-01-01 (Released:2020-03-24)
参考文献数
31
被引用文献数
2

顔における肌色は健康や魅力のシグナルになるなど,社会的なコミュニケーションを取るうえで重要な意味をもつことが知られている.東アジア諸国で理想とされる美白感の高い肌は明るさと白さにより表現されることが多いが,両者は異なる概念であるため美白の心理物理的要因が十分に解明されているとはいえない. そこで実験1では日本人女性の平均顔画像を用い,明るさに起因するメトリック明度と白さに影響を及ぼす白色点からの距離を独立に操作することにより,美白感の知覚が顔の明るさと白さのどちらの知覚に規定されるのかを検討した.その結果,美白感は明るさとは異なり,白さに起因する感覚であることが示唆された.実験2では美白感の予測性を明らかにするため,白色点からの距離とこれまで検討されてきた種々の要因を,恒常法による主観的等価点の測定により比較した.回帰分析の結果,美白感の知覚に影響を及ぼす要因は肌のメトリック明度や色相,彩度ではなく,白さを規定する白色点からの距離であることが明らかになった.
著者
三栖 貴行 小田原 健雄 渡部 智樹 一色 正男
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3+, pp.205, 2018-05-01 (Released:2018-07-17)
参考文献数
6
被引用文献数
1

我々は生活空間における照明光色を有彩色にすることで,生体へ良い影響を与え,照明機器の利用価値を向上させることを目的とし,生体への影響を心理面および生理面の二つの調査を行っている.心理的影響の評価として,離散的な結果にならず,主観的な評価において信頼性と妥当性が認められているVisual Analogue Scale(VAS)法を採用した.VASの評価項目は,体感温度と疲労についての評価を行なった.生理的影響は,特にサーモグラフィカメラを利用した体表面温度(顔面表面温度)の測定を行った.また,唾液アミラーゼの含有量と心電データからLF/HFを測定し,それぞれをストレス指標として評価した.実験環境は,温度,湿度を一定に管理し,一般的な一人暮らしの部屋に模した実験室にフルカラーシーリングライトを設置した.このような条件下において,被験者が着座する机上面照度を同一にした赤,緑,青の光色を被験者に暴露した.被験者は既往研究と同様に赤で体感温度が上昇し,青で減少する傾向が見られた.
著者
土岐 珠未 田淵 拓也 辻 恵子 山口 智彦
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3+, pp.225, 2020-05-01 (Released:2021-09-06)
参考文献数
6

「透明感」は女性が憧れる肌質の重要な要素の一つであるが,その測定方法や評価基準は統一されておらず,限られた評価者の主観による評価に頼らざるを得ないという状況がある.そこで本研究では,幅広い評価者の感覚を数値化することで客観的に評価できる手法の開発に着手した. はじめに,同一の条件で作成した肌画像に対し,一般評価者の女性80名により,透明感の目視評価スコアを7段階で付与した.次に,それらの肌画像を解析してL* a* b*値及び輝度等の色情報を取得し,目視評価スコアと色情報の相関関係を解析した.最後に,重回帰分析により,透明感の目視評価スコアを最も精度高く再現できる色情報の組み合わせを検討した. その結果,目視評価スコアは,肌画像の輝度と極めて高い相関性を示すことが分かった.さらに,b*値のSDを加味することで,「透明感」をより精度高く予測できる式を導き出した.b*値のSDは,色ムラと解釈できることから,人が感じる「透明感のある肌」とは,輝度が高く,色ムラが小さい肌であることと結論付けることが出来た.今後はこの予測式を用いることで,「肌の透明感」を数値的に評価することが出来るようになった.
著者
山下 彩花 森田 愛子
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3+, pp.110, 2020-07-01 (Released:2021-09-06)
参考文献数
1

ノートや時間割などにおいて,教科はしばしば色で弁別されるが,教科の色イメージが共有されているのか,どの教科がどのような色イメージを有しているのかは未解明である.本研究では,教科の色イメージを調査し,その一致度や世代による違いを検討した.また,教科から当該の色をイメージする理由についても検討した.10代から80代の参加者313名を対象に,国語,数学,理科,社会,英語の5教科について色イメージ調査を行った.各教科について,基本色彩語13語からイメージする色を選択させ,選択理由を記述させた.その結果,一致度が最も高かったのは数学で,約半数が青を選択した.理科は緑,社会は茶が最も多く選ばれた.国語と英語はばらつきが大きく,複数の色が同程度選択された.教科の色イメージは必ずしも一致しないことがわかった.年代別にみると,数学以外では,年代によって色イメージの違いが比較的大きいことが明らかになった.色の選択理由としては,具体的な物以外が原因と考えられる「教科そのものに対する印象」「なんとなく」「理由なし」の合計が85%であり,色イメージが形成された後には具体的な理由が想起されない場合も多いことが示唆された.
著者
中曽根 春菜 北口 紗織
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3+, pp.165, 2020-05-01 (Released:2021-09-06)
参考文献数
2

食べ物の食感に関するオノマトペ(擬態語・擬音語)による色彩連想を検討した.特に菓子の食感に関する9の刺激語(かりかり,ざくざく,ぱりぱり,ふわふわ,もちもち,ぷにぷに,ぷるぷる,とろとろ,しゅわしゅわ)について,色彩印象,単語の印象,連想語を調査した.色彩印象については,被験者にディスプレイ上で各刺激語から連想される1色を調色させた.単語の印象については5段階,15項目のSD法を用いて印象評価を行った.最後に刺激語から連想される語を2語までの自由記述により調査した.得られた色データは分光放射輝度計で測色し,a*b*色度図,L*C*色調図を作成した.その結果,色彩印象は1語(しゅわしゅわ)のみ9割の被験者が類似色相色を連想し,他8語については刺激語ごとに特徴が表れ,全体として3グループに分類された.グループごとの特徴は単語の印象との関連が示唆され,色彩印象と単語の印象の相関を考察したところ,5つの印象項目は色彩印象との相関が確認された.また,いくつかの連想語は刺激語の色彩印象との関連の可能性が示された.