著者
木村 專太郎
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1192-1193, 1998-10-25

●O'Donoghue's Triad (オゥドナヒューズ・トラィアッド) これは外科医や整形外科医には“unhappy triad”や“terrible triad”として知られているが,“O'Donoghue'sTriad”が正式なものである.“triad”は英語で三徴候を意味する.日本でいう“trias”はギリシャ語とラテン語に由来している. ラテン語の“trias”の属格は“triadis”であり,ギリシャ語のそれは“triados”である.これは“三つ組”を意味し,英語ではこの属格から派生した言葉“triad”を使う.さて“unhappy triad”とは,米国ではアメフトにおいて横からタックルしたときによく起こる外傷のことある.膝の外側からの力(valgus stress)と膝の内旋(external rotation)の力で起こり,このとき三つの障害が起こる.すなわち,内側側副靱帯(medial col―lateral ligament)と前十字靱帯(anterior cruciate lig―ament)の両靱帯の破裂,そして内側半月板の損傷の“三つ組”である.
著者
斎藤 充 丸毛 啓史
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1218-1224, 2009-12-25

■はじめに コラーゲン架橋とは,コラーゲンの分子間をつなぎ止める構造体(共有結合)のことである.コラーゲン架橋に関する研究は,本邦においても30年以上前に整形外科医を中心に盛んに基礎研究が行われていた.しかし,当時は数あるコラーゲン架橋のうち一部の構造体のみしか同定されていなかった.このためコラーゲン架橋の生物学的な機能の解明は進まず,この分野の研究は廃れてしまった.しかし,その後,成熟型のピリジノリン架橋や,老化型架橋である最終糖化/酸化生成物(advanced glycation end products;AGEs)といった架橋構造体が同定され,コラーゲンにおける架橋形成の生物学的意義が次々と明らかにされ,臨床につながる基礎研究として新たな時代を迎えるに至っている18).そこで,本稿では,コラーゲン架橋の代表的機能である骨強度規定因子(骨質因子)としての役割と,その臨床的意義について述べたい.
著者
中嶋 隆行
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.997-1002, 2020-09-25

インプラント周囲骨折のうち,治療に難渋する横・斜骨折と非定型大腿骨骨折(atypical femoral fracture:AFF)の関連が注目されている.Vancouver type B1,AO分類32A2,A3(斜骨折,横骨折)の9骨折に関してAFFの診断項目,大腿骨の外弯,骨癒合期間,偽関節の発生に関して検討した.全例AFFの診断基準を満たし,ビスフォスフォネート製剤,大腿骨外弯の影響も示唆された.治療はプレートによる骨接合術を選択する場合,外側ロッキングプレート単独でgapを残した場合には遷延癒合となる可能性が高いため,骨片間圧迫をかけたうえでの前方と側方へのdouble platingが有用であると考えられた.
著者
大川 裕輝 川上 幸雄
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1021-1024, 2020-09-25

大腿骨ステム周囲骨折に対する手術は侵襲が大きくなりがちであり,骨癒合に長期間を要することから臥床期間が長くなり,術後に移動能力の低下を認める症例が多くみられる.ステム周囲骨折の治療選択は主にステムのゆるみがあるかどうかで区別されるが,ステムのゆるみがない骨折型でも症例に応じてステム再置換の適応を拡大し,術後免荷期間を短縮することでADLの維持につながる可能性があり,患者背景を考慮した術式選択が重要であると考える.
著者
堀内 圭輔 千葉 一裕
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.946-950, 2020-08-25

前回はIntroductionで終わってしまいましたが,今回はその続きです.Introductionに続くCase presentationは症例報告の柱になりますが,患者情報がそろっていれば,比較的スムーズに執筆できます.初心者が症例報告を書くときは,ここから始めるのがおすすめです.Discussionはおそらく一番難しいところです.英語表記にも若干の訓練が必要となりますが,まずは何を書くべきかあらかじめ考えておくことが重要です.
著者
岡 久仁洋 中尾 良二 村瀬 剛
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.899-905, 2020-08-25

橈骨遠位端骨折X線画像を用いて,骨折の診断と関節内外の骨折型の判定を行うartificial intelligence (AI)の開発を行った.症状,画像検査による整形外科専門医の臨床診断をゴールドスタンダードとした.学習には橈骨遠位端骨折369例729画像,正常129例254画像の単純X線を用いた.それぞれのデータ拡張を行い,骨折3,245画像,正常3,210画像として,骨折の有無を判定する学習を行った.骨折の診断率は97.2±1.4%,感度98.6±1.8%,特異度94.4%±3.9%であった.Area under curve(AUC)は0.993と高い骨折識別能が得られた.AIを用いた骨折診断は,救急医療の現場で専門外である医師が,適切な治療を行うための初期診断のための有用なツールとなる可能性がある.
著者
廣瀬 正幸 田島 康介 平川 昭彦 山田 成樹
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.939-944, 2020-08-25

緒言:高齢者に対するアセトアミノフェンの安全性を評価するため,本剤を投与した大腿骨近位部骨折患者250例を対象に,患者背景や1日投与量などから肝酵素上昇の発現頻度とそのリスク因子を検討した. 結果:97例(39%)が正常値上限以上の肝酵素上昇を認めた.しかしながら肝酵素上昇群と非上昇群との間で,患者背景に明らかな差は認められなかった. まとめ:高齢者に対する肝酵素上昇は,過去の一般成人での報告より高頻度に認められたものの,これを予測する事は困難であると考えられた.長期処方時はとくに留意されるべきである.
著者
小原 安喜子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.656-658, 2003-05-01

1993年12月,ウガンダ共和国西ナイル地区を訪れた.北はスーダン,西はコンゴに接する地域で,西ナイルウイルスの名を思い起す地名である. 訪問のきっかけは韓国の医大の先生からのお便りだった.前年のクリスマス・カードに国立療養所を辞し,生活の軸足を国際ヴォランティアに移したと書いたことへの思いがけない反応で,その先生方の国際協力フィールドがウガンダにあり,女性ワーカーが助産婦として常駐しているので,協力の意志があれば,という内容である.私が韓国のハンセン病医療に関わり始めたのは1969年だった.以来,韓国の医療界の方々と続いた交流からの呼びかけである.一度フィールドをお訪ね致しますとお応えした.その帰途ケニヤに足を延ばそう,ふとそう思う.というのは,韓国のフィールドに仲間入りした1972年から7年程一緒だった医師夫妻が,帰米して子供達の教育を終え,60歳代に入る頃からケニヤのフィールドに行かれたと聞いていたからである.
著者
渡部 欣忍 新井 通浩 竹中 信之 松下 隆
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.993-996, 2013-10-25

大規模コホート研究を含む臨床研究の結果では,低出力超音波パルス(LIPUS)照射による遷延癒合・偽関節の治癒率は67~90%と報告されている.しかし,①偽関節が萎縮型である,②骨折部に不安定性がある,③主骨片間の間げきが8~9mm以上である,という特徴をもつ遷延癒合・偽関節にはLIPUSの効果が低い.これに該当する遷延癒合・偽関節に対しては,LIPUSは偽関節手術後の補助療法として使用するのがよいと考えている. 現行の健康保険制度では,骨切り術や骨延長術に対してはLIPUSを術直後から使用することができない.ランダム化比較臨床試験の結果では,LIPUS照射により延長仮骨の成熟が促進されることが証明されている.骨延長術の術後早期からLIPUSが保険適用されることを期待する.
著者
鈴木 基広 永野 柾巨 泰江 輝雄 福島 明 佐藤 功一 小勝 薫 三浦 妙太
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1103-1106, 1985-09-25

坐骨神経に発生した巨大な孤立性神経鞘腫の一例を経験したので報告した.症例は48歳男性.約10年前,左大腿後面に無自覚性の小結節を生じ,漸次増大した.来院時,腫瘤は24cm×25cm,弾性硬で圧痛があった.術前検査により悪性新生物を考えて手術を行った.腫瘤は大腿二頭筋の深部に存在し,被膜に包まれ,坐骨神経本幹に連続していた.大きさは19cm×13cm×12cm,重さ1,852gと巨大な腫瘍であった.割面は充実性で,肉眼的には黄白色で一部に出血巣が認められた.病理組織はAntoni A型とAntoni B型の混合型の神経鞘腫であった.坐骨神経に発生する腫瘍には悪性のものが多く,神経鞘腫で,本症例のごとく巨大なものは,今日まで報告がなされていない.症例は術後5年間の経過観察をするも,再発の徴候なく,元気に社会生活を送っている.
著者
大谷 和之 中井 修 黒佐 義郎 進藤 重雄 安部 理寛 北原 建彰 山浦 伊裟吉
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.413-418, 1997-04-25

抄録:脊椎手術後の髄液漏の自然経過を明らかにする目的で,術後7日以上漏出が続いた14例,偽性髄膜瘤を形成した9例,胸腔内に髄液が貯留した8例の合計31例を調査した.発生率は脊椎手術1408例中2.2%で,平均漏出日数は19.4日(7日~57日)であった.全例が硬膜修復やくも膜下ドレナージを要することなく治癒した.偽性髄膜瘤や胸腔内貯留も数カ月以内に自然吸収された.感染は2例あり,1例は髄膜炎,1例は表在感染であった.長期化する髄液漏はすべて頚胸部での発症例であり,腰仙部で7日以上漏出が続いた症例はなかった.前方手術後の髄液漏は後方のものと比べ早期に閉鎖し偽性髄膜瘤を形成する傾向があった.治癒過程において漏出部とクモ膜下腔との圧の差が大きな役割を果たすためと考えられる.術後髄液漏は自然治癒傾向があり特に処置を施さなくとも問題となることは少ないが,その病態と治癒機序を考慮し体位による治療を行えば漏出期間の短縮が可能であろう.
著者
杉谷 繁樹 野口 耕司 松下 睦 下地 昭昌 柴田 博次 赤星 義彦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.987-989, 1989-08-25

抄録:22歳男子で両側性に長母趾屈筋腱腱鞘炎があり,右側は狭窄性腱鞘炎が著明で疼痛を伴った弾撥現象及びlockingを生じたため腰麻下に腱鞘切開術を施行して良好な結果を得られた.手術時所見は他の報告例のほとんどが示すように,踵骨載距突起下の線維性pulley内で腱は著明に変性して紡錘状に肥大しており,これが弾撥現象の原因と推察された.また変性部位には比較的新しいと思われる縦断裂を認めた.この弾撥現象は14歳頃に発現しており,この発生機転には明らかにスポーツの関与(短距離走)が考えられ,長母趾屈筋腱が繰り返しbowstringの作用を受けたため腱の変性を生じたものと推察される.主にクラシックバレエによる障害として同様の報告が散見されるが,他のスポーツを含めて一種のスポーツ障害として本障害を念頭に置く必要があろう.
著者
堀内 圭輔 千葉 一裕
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.362-367, 2020-04-25

Figureをデジタル画像として扱うようになってから,さまざまな画像処理が容易にできるようになりました.その恩恵によって,以前は困難だった高度で複雑なFigureを,誰でも作れるようになりましたが,データを美しく提示しようとするあまり,つい過剰に画像処理をしがちではないでしょうか.また,時折ニュースを賑わしているように,論文画像の捏造や改竄が,昨今大きな問題となっています.あらぬ誤解を受けないようにするためにも,適切な画像処理を理解しておくことは重要です. 今回は,論文を準備するうえで必要と考えられる,画像処理についてお話しします.
著者
水野 直樹 佐々木 康夫 中島 敏光 東倉 萃 岡 義春
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1049-1051, 1996-09-25

抄録:分娩時の生理的恥骨結合離開は10mm以上の離開をきたすことは稀である.われわれは,吸引分娩により40mmの恥骨結合離開をきたし,保存的治療では改善しなかった症例に対して,創外固定を行い良好な結果を得たので報告する.症例は40歳(妊娠5,出産2),37週0日,胎位は第2前方後頭位,吸引分娩にて4574gの女児を出産した.出産後より恥骨付近の疼痛が著明で,腰を動かせず,体交も困難.理学的所見では股関節屈曲困難で,恥骨結合上に圧痛があった.単純X線写真にて40mm恥骨結合離開が認められ,CTでは,恥骨結合左側に小骨片が認められた.同日よりキャンバス牽引を開始し,10日目には離開13mmと改善傾向がみられたが,牽引部分の皮膚に水疱形成が認められたため,11日目に牽引を中止した.16日目には離開が25mmと再度拡大したため,保存的治療ではこれ以上は無理と判断し,受傷から22日目にAce創外固定器にて整復固定術を施行し,離開は6mmと改善した.
著者
堀内 圭輔 千葉 一裕
出版者
医学書院
雑誌
臨床整形外科 (ISSN:05570433)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.182-185, 2020-02-25

論文作成には,文章執筆はもちろん,データ集計,グラフ作成,写真編集,Figure編集,文献リスト作成など,さまざまな作業をこなす必要があります.それぞれ,多少の知識と経験を要求されますが,適切なソフトを用意し,それらを使いこなすことで負担を減らすことができます.長年研究に携わっている指導医・principal investigatorであれば,使い慣れたソフトをそろえているものです.今回は,若手の医師・研究者が対象に,論文作成に先立って用意すべきソフトをご紹介いたします.
著者
三澤 弘道
出版者
医学書院
雑誌
臨床整形外科 (ISSN:05570433)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.480-481, 2008-05-25

第5回International Society of Orthopaedic Surgery and Traumatology(SICOT) Annual International Conference(AIC)が,2007年8月29日から9月1日にかけて,北アフリカ,モロッコ王国のマラケシュで開催されました.SICOTはTriennial World Congressが3年に1回,それ以外の年にはAICが世界各地で行われています.2006年の第4回AICは南米のアルゼンチンの首都ブエノスアイレスで開催され,President's dinnerの会場で,SICOT日本代表である清水克時先生(岐阜大学)から,マラケシュがすばらしいとのお話を伺って,abstractを送り参加させていただきました.またScoliosis Research Society(SRS)も8月30日の午前中にspinal deformity sessionsとして行われ,Société Marocaine de Chirurgie Orthopédique et Traumatlogique(SMACOT),International Federation of Pediatric Orthopaedic Societies(IFPOS)などのsocietyも学会の一部となっていました. 学会はDr. Thami Benzakour会長(Zerktouni Orthopaedic Clinic)のもと,国王Mohammed Ⅵの多大な後援で,マラケシュのfive-star garden hotelである“Hotel Mansour Eddahbi”(図1)で開催されました.学会場は旧市街であるred cityの中にあり,周囲は高い城壁で囲まれ,市内観光には都合の良い場所にありました.Red cityの外のモロッコは,最近話題になった映画『BABEL』でブラッド・ピットやケイト・ブランシェットが観光した場面と同じで,どこまで行っても原野で同じ景色,川の周囲だけに緑がある世界でした.8月のモロッコは朝夜は涼しいのですが,日中は想像を絶するほどの暑さでした.
著者
宗重 博 生田 義和 木村 浩彰 戸田 克広
出版者
医学書院
雑誌
臨床整形外科 (ISSN:05570433)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.185-192, 1994-02-25

抄録:我々は1970~1992(昭和45年から平成4年)までに,当科を受診した上肢の反射性交感神経性ジストロフィー86症例について,手術治療,内服治療,transcutaneous electric stimulation system,星状神経節ブロック(SGB)の結果について検討した.また我々は,1889年にワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(ノイロトロピン®)が特定のタイプの反射性交感神経性ジストロフィーの早期投与として有効である31)ことを発見したので,投与結果と投与量について述べた.対象は男性38例,女性48例で,年齢は12~87歳で平均51.5歳であった.結果は,以下の通りであった.①ノイロトロピン®は,特にminor traumatic dystrophyに有効であった.②ノイロトロピン®は,1日4~6錠で有効であつた.③ノイロトロピン®の治療効果発現時期は,5週までであった.④手術成績は不良であった.⑤SGBは有効であった.
著者
金 明博 納田 真也 山田 将雄 小坂 理也 阿部 宗昭
出版者
医学書院
雑誌
臨床整形外科 (ISSN:05570433)
巻号頁・発行日
vol.35, no.11, pp.1289-1293, 2000-10-25

抄録:Klippel-Feil症候群に伴う頭蓋底陥入に対し、後方除圧とinstrumentによる整復固定術を行い良好な結果を得たので報告する.症例は14歳,男子.外傷などの誘因なく頚部から両肩にかけての疼痛と上肢の筋力低下にて発症した.来院時には上肢の挙上困難とふらつき歩行を呈していた.単純X線では頚椎の癒合椎と高度の頭蓋底陥入を,MRIでは大後頭孔内に陥入した歯突起と環軸椎亜脱臼に伴う環椎後弓による脊髄圧迫像を認めた.Halo-vestを装着し整復を試みたが困難であった.手術は後頭下減圧・環椎後弓切除および後頭骨頚椎間整復固定術(CO-C3)を施行した.術中,instrument (CCD―Cervical)のrodを利用した整復操作を加え,wake-up testにて新たな麻痺が生じていないことを確認した後,骨移植し手術を終了した.術後13カ月の現在,疼痛は消失し上肢の挙上,ランニングとも可能となっている,本法は術前に整復不可能な頭蓋頚椎移行部病変に対し有効な一手術方法と考える.
著者
川村 正英 井上 一 花川 志郎 横山 良樹 長島 弘明
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1001-1003, 1990-08-25

抄録:全人工股関節置換術(THR)後抜去のやむなきに至り,Girdlestone関節形成術と同じ状態になった症例について,歩行機能を中心に評価した.1975年以来私たちが扱った.THR抜去症例,8例9関節を対象として,直接検診を行った.原疾患は慢性関節リウマチ(RA)4例5関節,変形性股関節症(OA)2例2関節,大腿骨頭壊死(AN)1例1関節,大腿骨頸部骨折1例1関節である.抜去原因は感染が7例8関節,著明なゆるみと骨折が1例あった.RA以外の4例は杖と補高装具を使用して少なくとも自宅周辺は歩行可能であり,うち3例は就労もしていた.しかしRAの4例は,調査時には全例車椅子生活か寝たきりであった.THR抜去を行った場合,杖が使える上肢機能があって他の関節障害が重篤でない症例では,術後の筋力増強訓練や補助具の使用により実用的な歩行が十分期待できる.