著者
和田 淳一郎
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.26-39, 2012 (Released:2017-09-29)
参考文献数
22

2012年夏に提案されている0増5減の定数再配分の提案は,人口のより少ない県(大阪府)に人口のより多い県(神奈川県)よりも多い定数を配分することを是認するなど,不公正なものである。不衡平な代表制はより多くの代議員を持つ人々の厚生をも悪化させる。こういった提案は不衡平なだけでなく,パレートの意味で非効率である。ナッシュ社会的厚生関数に基づく分離可能な指数によって選挙区割りにおける代表制の不公正さを検討した後,較差是正方式ではなく,ロールズ型,ナッシュ型,ベンサム型の社会的厚生関数を包括するアトキンソン社会的厚生関数から導かれた目的関数の最小化という形で,除数方式による定数配分を紹介する。その後人間の手による区割りの問題点を指摘した後,比例代表制と地理的な区割りの問題点に触れて論を閉じる。
著者
浅野 正彦
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.174-189,258, 2003

本稿の目的は,選挙制度の変更が政党エリートの行動に与える影響を,日本の自由民主党における公認発行を事例として,実証分析することにある。本稿は,中選挙区制から小選挙区制へ移行し選挙区定数が1になることが,公認発行において,総裁派閥と幹事長派閥に所属する候補者への優遇傾向を加速させる,と主張する。政党公認の決定プロセスを自民党執行部と自民党県連間のゲームとみなし,中選挙区制下では,政党執行部が強く支持しない非現職候補者が公認され,小選挙区制下では,執行部が強く支持する非現職候補者が公認される傾向があることを示した。さらに二つの選挙制度下における衆院選データ(1960-2000)を使って比較分析を試みた結果,中選挙区制下と比べると小選挙区制下において,総裁派閥と幹事長派閥がバックアップした非現職候補者が公認される確率が増していることが確認された。
著者
Takeshi KAWASAKI
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
Japanese Journal of Electoral Studies (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.226-235,276, 1998-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
31

The German electoral system is known as a system which combines the principle of proportionality with the relative-majority system of single-member constituencies. In the discussions on electoral reform in Japan, the German electoral system was regarded as an ideal model for the Japanese one. But does the German system really deserve to be admired as an ideal model?In some constituencies in elections to the German ‘Bundestag’, where political parties are more familiar to voters than individual candidates, voters do not in fact choose a candidate from candidates of two major parties, but one of several candidates belonging to same party. For example, at a constituency in Land Baden-Württemberg, the ‘first vote’ means that a candidate from the CDU in this constituency is selected and that one of the candidates on the CDU party list is selected.On the other hand there is a tendency in the proportional system for voters to select a party based not only on the party ideology and/or party program, but also on the candidate for Federal Chancellor. For that position the party leader of major parties is often selected. The election in 1990 was noted as a victory by the government parties (CDU/CSU/FDP), because both Chancellor Kohl and Foreign Minister Genscher greatly contributed to the German Unification.But was it true? The Greens failed in the election due to the ‘5 percent clause’. One of the reasons for that was, that Lafontaine, the Chancellor candidate from the opposition party SPD, was popular among Greens supporters. He asserted that the environmental policy and peace movement, which were proposed by the Greens, are vital. The failure of the Greens increased the numher of ineffectual votes, consequently the shere of votes obtained the greatest parties, the CDU/CSU, rose.
著者
鬼塚 尚子
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.139-151,189, 2000-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
19
被引用文献数
1

本稿は,自発的市民から成る運動組織においても個人の合理性と集団利益の達成との間の乖離から生じる「公共財問題」が内在する可能性を指摘し,市民参加の課題を提起するものである。市民団体とそこから派生した地方政党によって行われている選挙活動を分析対象とし,実験社会心理学的アプローチを交えて調査を行った結果,僅かながらも戦略的な非協力者(=フリーライダー)が存在することが明らかとなった。フリーライダーと単純(非戦略的)非協力者間においては政治関心の高低が,またフリーライダーと協力者間にはコスト認知の高低が質的差異として顕れた。現状ではこの市民組織が多くの献身的な成員によって支えられていることが確認されたが,それら成員が比較的短期間で新旧交替することを考慮すれば,市民組織はその維持のために常に新しい成員を取り込む必要があることも示唆された。今後は成員の追跡的調査の実施,分析手法の問題点克服が課題となろう。
著者
谷口 尚子
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.15-28, 2011

本稿は,2009年衆院選後に起きた政権交代の長期的背景を自民党の衰退,短期的背景を民主党の成長と捉え,その過程と特徴を記述するものである。前者に関しては,Merrill, Grofman, & Brunell (2008) によって挙げられた政治再編の4つの特徴,すなわち①政党制の変化,②有権者の政党支持構造の変化,③政党支持構造の地理的変化,④政党間競争の質的変化を追った。①②③いずれにおいても,自民党の優位性と支持構造の揺らぎは明らかであり,概ね,1980年代に安定期,90年代に動揺期,2000年代に変動期が観察された。民主党の成長に関しては,自民党と政策位置の変化を比較し,また党内の政策的分散の大きさを示した。政策的分散を「多様性」と積極的に解釈すれば,これが多様な有権者の票を獲得することに繋がった可能性も示された。
著者
竹中 治堅
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.5-19,212, 2008-02-28 (Released:2011-05-20)
参考文献数
55
被引用文献数
1

本稿は, 戦後日本政治における首相と参議院の関係を分析している。より具体的には, 首相は, 日本の国会制度における法案審議時間の制約と日本の議院内閣制における参議院の独自性を踏まえた上で, 内閣提出法案の成立を確実にするためにさまざまな方策を用いて, 法案審議以前の段階で予め法案に対する支持を参議院の多数派から獲得してきたことを明らかにしている。これまでの参議院研究では, 参議院の審議過程で法案の内容や成立が左右されることがないため, 参議院には限られた影響力しかないというカーボンコピー論が通説的地位を占めてきた。しかし, 本稿はその分析を通じて, 参議院の審議過程で法案の内容や成立が左右されることが少ないのは, 首相の法案成立に向けた事前の努力の結果に過ぎず, 参議院は法案審議以前の政治過程で広範な影響力を及ぼしていることを明らかにしている。
著者
山田 真裕
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.45-57,205, 2002

小選挙区比例代表並立制のもとで2回目となる第42回総選挙における棄権を,明るい選挙推進協会の衆院選後調査データ(明推協データ)に基づいて第41回総選挙と対比しつつ分析した。その結果,主に以下のような知見を得た。<br>(1)有権者全体の選挙に対する関心はやや回復したものの,棄権者については関心の低下が見られること,(2)96年選挙では行政改革問題が有権者を動員する効果を持っていたと思われるのに対して,2000年選挙では目立った争点の効果はなく,政党支持と選挙への関心が投票-棄権を決定する大きな要素であったこと,(3)棄権者の政治的信頼は投票者よりも低いこと,(4)政治満足度は前回選挙に比べて低下しており,このことは投票者にも棄権者にも該当すること。
著者
清水 唯一朗
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.101-112,256, 2003

本稿は,明治31(1898)年に実施された,わが国初の政党内閣による選挙である第6回衆議院議員総選挙を分析する。これに先立ち,自由,進歩の二大政党を中心とした民党は大合同を果たし,実に8割近い議席を有する憲政党が誕生した。選挙は,この憲政党を与党とするわが国初の政党内閣である第一次大隈内閣によって実施された。<br>本選挙で注目されるのは与党憲政党における候補者調整である。本選挙は前回選挙からわずか5ヶ月しか経ておらず,いかに中央において合同が達成されたとはいえ,地方においては当然,候補者調整が難航した。本稿はこの問題を中心に,ミクロな視点から地方における候補者選定の事例を検討した上で,マクロな視点から全国的な傾向を分析し総体を把握するものである。
著者
山崎 新 荒井 紀一郎
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.120-134, 2011 (Released:2017-07-03)
参考文献数
24

政治的洗練性は,政治的態度の形成や投票行動を説明する主要な要素として,これまでの政治意識・投票行動研究において様々に用いられてきた概念の1つである。これまでの研究の多くは,この概念を表す指標を調査データから作成するために,複数の質問項目を「まとめる」過程で各質問項目固有の情報が捨象された結果,政治的洗練性の程度の解釈が曖昧になる傾向があった。そこで本稿では,まず項目反応理論によって洗練性の測定に用いた質問項目の評価をより明示的に行った。次いで,洗練性が有権者の政治的態度の安定性に与える影響を検証した。分析の結果,投票義務感とイデオロギー位置については洗練性が高いほど態度は安定していたが,政治的有効性感覚については洗練性が高いほど態度が変化する傾向があることが明らかとなった。
著者
山本 竜大
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.214-228,259, 2003

本稿は,日本の国会議員本人やその事務所によるホームページ(HP)の開設要因の探求を目的とする。2000年末までに開設が確認された状況をもとに,社会的属性,選挙競争,公約の視点から全議員,衆議院小選挙区,最大党の自民党とHP開設率が最も高かった民主党を対象に分析した。社会的属性と選挙競争によるモデルでは,全体的に年齢と都市度,特定大学出身者,自民党の少数派閥所属者がHPを個人で開設する要因になっている。衆議院小選挙区では,都市度,自民党の特定派閥,民主党議員であった。公約モデルでは,IT関連,政治,農林漁業,憲法•司法制度が作用した。これらを総合した結果,HP開設に都市度とIT公約が影響した。自民党は政治キャリア,得票率差,ある私立大学出身者が作用した。民主党は公約で説明されず,年齢がマイナスに,政治キャリアがプラスになる特異性を示した。
著者
尾崎 和典
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.17-24,194, 2007-02-28 (Released:2009-01-27)
被引用文献数
1

郵政民営化法案否決による05年衆院選では,メディアによる「小泉劇場」報道が自民党圧勝の大きな要因となった。衆院解散直後までは,「小泉vs抵抗勢力」という,旧来型の対決構図だったが,法案反対議員全員に対抗馬を立てる「刺客」作戦によって情勢が一変した。これまでにない新たな政治ドラマが展開し,これをワイドショーなどが大々的に取り上げたからだ。世論調査の結果を見ても,「刺客」作戦を機に,小泉自民党への支持が増加したことがわかる。テレビを見る時間が長いほど,自民党支持が強くなる傾向も見られた。その一方で,メディアは「小泉劇場」と同時に進んだ自民党政治の構造変化も有権者に伝えた。そのことが改革への期待となり,小泉自民党の支持につながったといえる。
著者
中井 孔人
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.25-35,194, 2007

2005年の総選挙は自民党が296議席を獲得し大勝した。「小泉劇場」といわれた今回の選挙にテレビの報道は多大な影響を与えたといわれている。日々のニュースは郵政民営化を巡って繰り広げられる自民党内の争いに終始し,野党の存在を置き去りにした。自民党は争点設定の主導権を握り,さらには「映像」というテレビの特性をうまく利用して「劇場」を盛り上げ選挙に勝利することに成功した。小選挙区においては報道の公平さがより一層重視されるにもかかわらず,なぜ特定の政党•候補者に利すると有権者が感じる報道がなされたのか。実際の夕方の全国ニュースを中心に項目の頻度や内容を検証しながらどこに問題点があったのかを見ていく。また,CMも含めて今回の選挙報道が次回からの報道にいかなる影響を及ぼしていくのか。テレビメディアの課せられた問題は多く,メディア自身の検証が求められている。
著者
富崎 隆
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.58-77,255, 2003-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
12

本稿は2001年イギリス総選挙の投票行動を,British Election Study 2001年調査の生データ資料を使用して分折した。その際,投票行動の一般モデルから予測できる要因をできる限り幅広く取り上げた。多変量解析の結果,以下の点が明らかになった。(1)社会的属性特に職業階級は以前程の規定力を有しない。(2)政党帰属意識の規定力はモデル上有意である。(3)首相•党首評価,最重要争点への対応評価は保守•労働•自民党への投票に,経済危機対応能力評価は2大政党への投票に,階級•強い政党帰属意識とは独立に連関関係を有し,経済業績投票,保守党の政策ポジション失敗•労働党の中道化戦略の成功の影響も概ね確認できる。戦後最低となった投票参加を規定する多変量解析では,年齢•選挙関心•投票義務感•投票経験頻度•政党帰属意識強度•党首評価度が影響を与えるモデルが選択され,労働党勝利の予想が選挙関心と投票率を低めた可能性が指摘できる。
著者
森脇 俊雅
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.40-52,139, 1994

Since the end of September in 1992 Amagasaki city council had been severely criticized by citizen groups due to the council members' mismanagement on their official observation trips to other cities in the past. At that time the council members denied their wrong doings and attempted to hide their official records on the trips despite citizen's strong request. Citizen groups accused them and required them to make all the records public. A neutral, independent and special investigation committee was organized in the end of January, 1993. This committee intensively investigated the records and interviewed individual council members in the spring. Finally the committee concluded most of their reports on the trips were false and inappropriate. Then, the committee suggested council members should return the money and resign from the council.<br>At first, the council members resisted resignation, but were forced to dissolve before overwhelming criticism on May 25. New council members were elected on June 27. In this election almost half of the former members were forced to retire from the council. Then, two-thirds of the city council were new members. The number of women doubled. The members from new party and citizen movements increased. Thus Amagasaki city council drastically changed after the election. The new city council organized subcommittee for reform and began to make reform plans. Now, traditional style of politics or the so-called boss control disappeared. New democratic politics has jnst started in Amagasaki city council.<br>The process and activities in Amagasaki were similar to the tide of national politics in recent Japan. In other words, Amagasaki city council election in 1993 was a harbinger of the drastic change of Japanese politics in the summer of 1993. More important is that this structural change was brought by citizens' participation.
著者
河村 和徳
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.57-65,213, 2008

2007年の統一地方選挙において, 民主党は, これまでの地方選挙の選挙戦略を大きく変更した。自民党との対決姿勢を地方選挙に持ち込んだのである。本稿は, 地方選挙における政党の選挙戦略に注目し, 2007年統一地方選挙までの地方選挙の構図について検討を行う。政党の選挙戦略に関する先行研究としては,既にSchlesingerのものがあり, 本稿では彼の議論を日本の二元代表制にあうように応用し使っている。2007年統一地方選挙における民主党の選挙戦略は, 一般の有権者から広く集票しようとする第四戦略と位置づけられ, また選挙戦術としてのローカル・マニフェストのあり方にも影響を与えるものになったといえる。ただし, 2007年統一地方選挙の結果については, 直近の参議院議員選挙を見据える必要があり, 「平成の大合併」による地方政界の再編にも留意し吟味する必要がある。
著者
小平 修
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.69-89, 1988-03-25 (Released:2009-01-22)
著者
水崎 節文 森 裕城
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.16-31,123, 1995

The multimember constituency system of the Japanese House of Representatives adopted in 1925 has lasted up to the present time, with the exception of a general election in 1946. This system is unique in the world and has influenced the electoral behavior of candidates as well as voters in Japan. It is inevitable that candidates from the same party are in competition.<br>One remarkable characteristic of the election results at the district level is that votes obtained by an individual candidate show a tendency to concentrate into the particular area. To examine the regional distribution of votes, we use the RS index and the DS index which was devised by Mizusaki, and trace the scores in the general elections from 1958 to 1993. The computed values have been decreasing year by year, but in some rural districts both indices show still very high scores.<br>The phenomenon of the concentration of votes in a particular area in a district has been considered as a reflection of premodern electoral behavior. Although this view cannot be denied in this paper, we try to explain the phenomenon in a different way. We would like to show that the spatial competitions aomng the plural candidates from the same party can be interpreted as a rational behavior with the strategy to win elections.