著者
粕谷 祐子
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.48-61, 2015

本稿では,東南アジア諸国における現行の選挙制度を概観したうえで,1990年代以降に選挙制度改革のあった3カ国をとりあげ,その改革導入の経緯と帰結を検討する。インドネシアにおける非拘束名簿式比例代表制,阻止条項,女性クオータ,タイにおける小選挙区比例代表並立制,およびフィリピンにおける政党名簿制の導入がここでの主な分析対象である。これらの制度改革に共通するおおまかな特徴として,多数決型への変更とコンセンサス型への変更とが混在していること,民主化という体制変動を契機に制度改革がおこっていること,そして,制度設計者が意図したとおりの変化はほとんどの場合おこっていないこと,の3つを指摘する。
著者
西平 重喜
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.149-158,272, 1998-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
17

Since 1928 in Japan, 24 times of general elections, except 1945, were carried out with constituencies returning several members but single vote. However the 1996 general election was fought under a mixed system. The new system consist of the 300 members elected in single-member constituency and the 200 proportionally distributed for parties in 11 blokes. The elector has two votes, one vote for a candidate in a constituency and anther for a party in a block. We could find some kind of mixed system in 19 century, but the proposal by Leon Bulum, in 1926, was first attempt in national election, in which 332 seats elected in single-member constituency and 212 divided proportionally in nation wide. But it was not adapted. Now a days, 18 countries out of 181 use mixed system. In this paper, we compare the systems of Japan, Germany, Italy, Hungary and a variation of Italian method, according to simulation by the Japanese, German and Italian election data. In a word, Japanese system are profitable for a big party as single-member constituency system, but it is insufficient to reflect minor opinion in Diet.
著者
古賀 光生
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.143-158, 2014 (Released:2018-01-05)
参考文献数
60

この論文の目的は,西欧の右翼ポピュリスト政党に見られた,経済政策の転換について検討することである。具体的には,以下の2つの論点を提示する。まず,台頭初期の1980年代においては新自由主義的な改革を主張していたこれらの党が,1990年代半ば以降,社会保障を重視して,「福祉排外主義」と呼ばれる姿勢に転じたことを明らかにする。次に,こうした方針転換が党勢の維持と拡大に貢献したことを示す。前者については計量的な手法を用いて,後者については,経済政策を争点の1つとして分裂を経験したオーストリア 自由党とデンマークの進歩党の事例を比較して,仮説を検証する。西欧における右翼ポピュリスト政党の研究は,マクロな台頭要因の研究から,党勢維持をめぐるメゾ・レベルの研究に関心を移している。本稿は,先行研究の間で論争となっている経済政策と党支持の関係について,新たな知見を提示する。
著者
西川 賢
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.88-98, 2012 (Released:2017-09-01)
参考文献数
71

本論文においては,第一に,政治的保守主義に関する有意な経験的実証研究を行うために,客観的に正当な根拠があると考えうる基準において,政治的保守主義を概念化することを試みる。第二に,先行研究を検討することでアメリカの共和党の保守化を対象にして,政治的保守化という現象の説明可能な三つの競合する理論を提示する。(1)政治的活動家に関する理論:これは共和党の保守化を保守主義の理念を媒介する政治的活動家の活動とそれを媒介する政治制度から説明する。(2)決定的選挙と政党再編に関する理論:この理論によれば共和党の保守化は決定的選挙とそれに伴う再編を通じて生じたものとして説明できる。(3)イシュー・エヴォリューション:これは共和党の保守化を個々の争点領域におけるイシュー・エヴォリューションが長期間にわたって重畳的に蓄積されて生じたものとして説明する。
著者
西澤 由隆
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.5-16,268, 1998-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
62

The concept of partisanship has been one of the central topics of the voting research in Japan as in other democratic countries. While whether the original concept of party identification developed in the U. S. is transportable to other countries is still under debate, the party support variable (measured by the question, “which party do you usually support?”) is often treated as functional equivalent to the party identification measure in Japan.This review article reminds researchers of Japanese voting study of a need for a careful look at the party support variable. It does so by going “back to the basics.” It evaluates the party support variable against the four basic assumptions of the original party identification concept: the sense of identification, its stability, its unidimensionality, and its transitiveness.Citing the existing works and drawing some new data, the article concludes that 1) the party support variable is not exactly measuring the sense of self-idenification with a party, 2) it is not as stable as its counterpart is assumed to be, 3) it is increasingly difficult to map the Japanese current political parties on the left-right uni-dimensional scale, and 4) whether its operational definition meets the transitiveness assumption is questionable.
著者
木村 高宏
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.125-136,257, 2003

本稿では不満な有権者の棄権を,ハーシュマン(Hirschman, Albert O.)の提示した「退出」であると考える。この理論枠組みを敷衍して,不満な者の投票参加がいくつかの要因によって影響を受けるという仮説を検証する。<br>本稿の分析を通じて,不満であっても何らかの政治課題を重要だと考えれば投票し,あるいは,社会をよくするために何かができると考えれば投票する,という有権者の存在を示すことができた。このことは,有権者自身の態度形成を問題にしており,政策距離を中心に考える期待効用差からの研究に対して,有権者の政治を理解する能力が十分に成熟していない場合にも採用可能であるという利点があるだろう。また,分析において,政治的疎外感を示す質問と,「社会をよくする」というような有力感に関する質問とが,質的に異なることを示すことができた。
著者
高見 勝利
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.36-42,195, 2007

衆院において賛成多数で可決され,参院に送付された内閣提出法案が,参院で否決されたとき,内閣が,これを内閣不信任だとして,衆議院を解散することは,日本国憲法上,どう評価すべきかが,いわゆる小泉解散の最大の争点である。解散理由について,首相自身は,参院における法案否決を内閣に対する不信任だと受け止めたからだという以上のことは語っていない。が,「衆院が可決した法案を参院が否決した場合,衆院が出席議員の3分の2の特別多数で再可決すれば法案が成立するのだから,当該議席数確保のためにする解散は認められる」とする見解がある。しかし,解散理由として,再議決権を持ち出すことは,解散•総選挙の趣旨や議会政のあり方からして是認されないこと,小泉解散は不当な解散事例であり,「国民投票的」解散に途を拓いた事例として積極的に評価すべきではないこと等を指摘した。
著者
西澤 由隆
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.23-34,144, 1996

Using the 1994 American National Election Study data, this article tests five different hypotheses that attempt to explain the Republican victory at the 1994 Mid-term Congressional Election. Because the 1994 ANES data contains panel samples who responded at both 1992 and 1994 waves, it permits a researcher to study the reasons of the 1994 Republican vote gain from the previous election. The hypothesis tested here include: 1) Disapproval-of-Clinton-administration hypotheses, 2) personal-economic-condition hypothesis, 3) party-support-realignment hypothesis, 4) distrust-against-incumbent-candidates hypothesis, and 5) party-mobilization hypothesis. The cross-sectional analysis indicates that each factors, except for the personal economic condition, has statistically significant association with the vote choice while controlling for the effect of other factors. The panel analysis, however, suggests that the mobilization hypothesis only explains the Republican gain from the previous election. The analysis implies that unlike most journalistic accounts that tend to attribute the Republican victory to the change in voters' attitude and behavior, the electorate took only a passive role.
著者
鬼塚 尚子
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.113-127,206, 2002-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
27

近年我が国で実施された衆議院の選挙制度改革に際し,中小政党は次の三つの戦略-合同して大政党を作り政権奪取を目指す「合同戦略」,一貫して野党にとどまり「抵抗政党」としての存在をアピールする「非合同野党戦略」,自民党との連立政権に参加して与党としての政策実現や利益誘導を計る「非合同政権参加戦略」-を採ってこれに対処したと考えられる。しかし,第三の戦略を採った政党は選挙で苦戦していることが観察される。本研究ではこの理由として,(1)連立参加に伴う政策転換が潜在的な支持層の票を失わせること,(2)中小政党の与党としての業績は有権者に認知されにくいこと,(3)新選挙制度が自民党と連立を組む政党に不利に働くこと,(4)選挙協力を阻害する要因が自民党支持者側にあることを挙げ,個別に分析を行ったところ,おおむねそれぞれを肯定する結果を得た。
著者
前嶋 和弘
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.203-213,259, 2003

本論文は,連邦議会で2002年春,可決された選挙資金改革法案の決定要因を計量的に解明し,政治資金制度はどのような力学で決定されているか,分析する。同法は,現行の1974年連邦選挙運動法を改正し,党勢拡大を名目とする政党向け献金などを含めた現行の政治資金規制を受けない「ソフトマネー」を規制する一方で,個人献金の上限をこれまでの2倍に拡大する点などがうたわれている。分析では,「得票マージン差が少なく激戦区であるほど,法案に反対する」とした仮説などが実証された。しかし,「在職年数が長ければ長いほど,反対票を投じる確率が高い」とする仮説については,民主党の議員の場合には,検証されたが,共和党の議員の場合,在職年数につれて,法案に賛成する確率が高くなるなど,仮説で捉え切れなかった議員の論理などもいくつか,明らかになった。
著者
河崎 健
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.17-27,171, 2004-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
33

シュレーダー政権初の国政選挙となった2002年総選挙はドイツ連邦共和国史上まれにみる与野党伯仲という結果になり,シュレーダー首相は辛くも続投することになった。過去4年間の政権の業績,首相の人気,野党の停滞状況にもかかわらず,シュレーダー政権が辛勝だったのは何故なのだろうか。マスコミは選挙直前の経済状況の悪化を大きな要因として挙げている。確かに経済運営に対する社民党への世論の評価は高くない。だが果たしてそれだけで十分に説明できるのであろうか。本稿では,短期的な経済動向のみならず,中長期的な政党支持の推移を追うことでシュレーダー政権支持の変化を分析する。具体的には,今回までの連邦議会選挙で実施された出口調査における男女差,年齢,職業,旧東西ドイツ地域間の差を見た上で,ドイツの投票行動に見られる中長期的な変化の特徴を考察してみたい。
著者
竹内 桂
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.35-46, 2016

本稿は,1974年の第10回参議院議員選挙の徳島地方区における保守系候補者の対立を検討する。徳島地方区では,三木武夫副総理の直系で現職だった久次米健太郎と,田中角栄総理の系統で新人の後藤田正晴との間で事実上の一騎打ちとなり,その争いは「阿波戦争」や「徳島戦争」などと称されるほど激しいものとなった。 本稿では,その争いの発端から選挙の結果までを対象に,①徳島地方区の自民党公認候補の決定過程,②公示までの動向,③選挙戦の展開を明らかにする。その上で,久次米が当選を果たした要因を検証する。さらに,この参院選が,三木武夫が権勢を誇っていた徳島県政の勢力図を変えていく契機となったことを指摘する。
著者
谷 聖美
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.84-99,206, 2002

社会党は,60年代に入ると停滞し,その後は長期低落の道をたどった。この停滞と衰退をめぐってはさまざまな原因が指摘されてきた。なかでも,党の非現実的イデオロギーが党の適応力を奪ったという見方はもっとも一般的なものであった。<br>本稿は,衰退の原因をめぐる諸々の説明を逐一検討し,それらの多くが必ずしも説得力を持たないことを明らかにする。ついで,選挙におけるこの党の集票戦術を分析し,労組依存に安住して個人後援会などの集票組織の構築に努力しなかったことが衰退の一因であることを示す。さらに,片山•芦田内閣失敗の負の影響はあったものの,この党の連合戦略と政策展開は60年代中葉までは巷間いわれているよりもずっと現実的で,党が活力を失ったのは,そうした現実派が党内抗争で社会主義協会などの教条的左派に敗れたあとになってからのことであることを指摘した。
著者
西平 重喜
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.5-18,224, 2005

選挙制度を議員の選出方法に限れば,小選挙区制と比例代表制の理念ははっきりしている。前者はなるべく狭い地域で選挙をして,選挙民が人柄のよく分かった代表を議会に送り出そうとする。後者は選挙民の意見の縮図を議会に作り出そうというものである。これ以外の選挙制度の理念は,この2つの制度を,それぞれの社会の実情に合わせようということで,やや違った次元の理念といえるだろう。<br>「政治改革から10年」の特集といえば,中選挙区制を廃止し並立制が採用されたのは,どんな理念によるものかが問題になる。この変更にあたっての論議の重点は,安定した政権の樹立や政権交替がしやすい選挙方法という点におかれた。あるいは少しでも中選挙区制による閉塞状態を動かしてみようという主張が強かったようだ。<br>ここではまず各選挙制度の理念や長所短所の検討から始める。そして最後に私の選挙制度についての理念である比例代表制の提案で結ぶ。
著者
栗田 宣義
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.122-138,188, 2000-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
36

「教育水準」「被雇用者」「消費財保有」「資産保有」といった4系統の社会経済カテゴリーの通時的変動をみると,1955年から1995年にかけての40年間における日本社会の変動は,(1)高学歴化,(2)被雇用者化,(3)消費財普及,(4)資産格差の持続,といった4点に要約できるが,この社会経済変動と社共支持率低落を関連づけ,インテリ左翼溶解仮説,労働者左翼溶解仮説,脱物質仮説,資産格差仮説からなる左翼主義逓減の説明モデルを提示する。SSMデータを用いた5時点のロジスティック回帰分析によれば,労働者左翼溶解仮説を除いては,ほぼ仮説の確認がなされた。かつて,1955年時点では,高学歴層,被雇用者層,消費財を持たない層,資産を持たない層が左翼主義であった。日本社会の変貌は左翼主義への支持を溶解,矮小化させ,40年後の1995年時点には,被雇用者層,資産を持たない層のみが左翼主義である構造にとって代わられたのである。社民党が左翼大衆政党としての歴史的使命を終えた構造的背景がここにある。

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出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.109-118, 1995-03-30 (Released:2009-01-22)