著者
田中 和夫
出版者
日本家屋害虫学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.101-106, 2003-11-29
参考文献数
19
被引用文献数
1

トルキスタンゴキブリBlatta lateralisの分類と形態について概略を述べ,近似の屋内害虫種との区別点に就いて記し,日本産ゴキブリ科Blattidaeの4属の識別点を検索表で示す.再移入の可能性に就いて簡単に言及する.
著者
田村 正人
出版者
日本家屋害虫学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.149-157, 2004-12-15
参考文献数
21

昆虫の社会とは,「同種の2個体以上の個体間で起こる,種を維持していくうえの協同的相互関係」と定義され,単独生活をするものも含めて,種はすべて社会をなしているとみなされる.したがって「真社会性」とは,(1)両親以外に子育てを手伝う個体がいる(共同育児),(2)2世代以上が同居して一緒に暮している(世代の重なり),(3)子を産む個体と産まない個体(不妊カスト)とがいる(繁殖に関する分業)の3つを完全に備えた「高度に発達した社会」を指す.ハチ(膜翅)目の,このような真社会性に至る道すじには2つのルートが想定される.その1つは,母娘による単一家族ルート(サブソシアル・ルート)で,まず母親が長期間子を世話することで世代の重複が起こり,次に成長した子が妹や弟の世話,巣の掃除や防衛などを分坦するようになり,最終的には自分では繁殖しなくなって繁殖上の分業が成立する.もう1つは,複合家族による共同巣ルート(セミソシアル・ルート)である.まず繁殖メスが複数集まり近接して営巣することから始まって巣や子の防衛に共同で当たるようになり,次に最優位のメスがしだいに独占的に繁殖するようになって,最終的には繁殖の分業が成立するとともに世代の重複によって若いメスが完全にワーカー化するのである.シロアリとミツバチの階級分化には違いがある.シロアリの階級分化は,内因説と外因説があり,前者は遺伝的,あるいは胚の時代に階級分化が決定されているとするもので,後者は卵からふ化した幼虫は,あらゆる階級に分化する能力をもっているが,コロニーの状態によってどの階級に分化されるかが決定される,その決定にはフェロモン,栄養,行動刺激が関係するという説である.一方ミツバチでは,未受精卵(染色体数n=16)からは雄バチが,受精卵(2n=32)からは雌バチが産まれる.さらに女王バチと働きバチの分化は,与えられる餌の質と量の違いにより幼虫期の前期に決定し,階級の維持には起動フェロモン(primer pheromone)が関与する.
著者
岩田 隆太郎
出版者
都市有害生物管理学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.25-27, 1991-07-20

In an apartment building in Yokohama, Japan, a brood of Stenhomalus taiwanus MATSUSHITA (Coleoptera: Cerambycidae: Cerambycmae) was observed to infest a kitchen pestle made of a stem of Japanese prickly ash, Zanthoxylum piperitum (L.). Adult emergence was observed indoors firstly in late summer to early autumn, and then in next spring.
著者
木村 悟朗 春成 常仁 谷川 力
出版者
日本家屋害虫学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.73-76, 2010-12-30
参考文献数
14

実験昆虫飼育室内に発生したケナガコナダニTyrophagus putrescentiaeを防除するために高温による駆除を行った.ケナガコナダニは47.4±1.6℃で1時間または40.3±1.7℃で24時間の室温に暴露することにより,全ての個体が死亡した.これらの結果は,高温処理によって現場に発生するケナガコナダニを防除可能であることを示唆している.特に,恒温恒湿室は温度管理が容易であり,そこに発生する本種のもっとも簡便な防除方法であると考えられる.駆除作業前に室内で観察されたケナガコナダニの分布は,本種が誘虫灯に誘引される可能性も示している.
著者
洗 幸夫 胡 衛軍
出版者
日本家屋害虫学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.86-91, 1997-12-01

前回はイエバエ Musca domestica L. 成虫の口器の構造と機能について解説したが,今回はイエバエ成虫の胸部・腹部の構造を取り上げた。構造は前回と同様に走査電子顕微鏡写真を中心に解説する。
著者
小川 賢一 平林 公男 中本 信忠
出版者
都市有害生物管理学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.14-22, 2001-07-30

長野県の諏訪湖で大量発生して,周辺住民や地域の観光施設,工場施設に健康被害や経済的被害等をおよぼしているアカムシユスリカ成虫の群飛形成や音響に対する応答特性を紹介するとともに,これまでに調べられたユスリカ類の音響応答とも比較した.アカムシユスリカ成虫は日中,湖岸の植物の葉上で静止しているが,夕刻に雄は巨大な群飛を形成した.その間,雄は音響トラップから発せられる周波数150Hzと180Hzの音響に顕著に応答し,誘引捕獲された.これらの音響周波数はこれまでに明らかになったユスリカ類の音響応答の中で最も低い周波数であった.諏訪湖で発生するアカムシユスリカとオオユスリカ,および神奈川県川崎市内の都市河川で発生するセスジユスリカとミヤコナガレユスリカの3属4種間で,雄を最も多く誘引捕獲できた音響周波数とその時の気温との間に正の相関関係が認められた.本研究のような,音響による物理的方法や他のさまざまな手段や発想を組み合わせた「環境に優しい」対策や防除法の考えが今後のユスリカ類を始めとする害虫防除法にとって重要なものになっていくと考える.
著者
宮ノ下 明大
出版者
都市有害生物管理学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.19-21, 2008-11-28
被引用文献数
1
著者
中野 敬一
出版者
都市有害生物管理学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.17-23, 2002-07-30
被引用文献数
4

都市におけるヒトスジシマカの生息状況を把握するため,2000年5月から11月にかけて東京都港区の4箇所でオビトラップにより調査を行った.産卵はオビトラップに5月から11月まで確認された.産卵数は9月中旬にピークがあった.オビトラップに水道水と雑草浸漬水,エビオス混釈水を使用した場合の産卵数を比較したが,はっきりした結果は得られなかった.また,オビトラップの7日後の水質を検査したが,水質と産卵数との相関係数は低かった.さらに産卵数50個以上と5個以下のトラップの水質を比較したが,有意差はなかった.
著者
森 勇一
出版者
都市有害生物管理学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.23-40, 2001-07-30
被引用文献数
1

文明の進展に伴って人が集中居住するようになり,都市が生まれた.都市には,人の生活や生産に関わる生活ゴミや汚物・産業廃棄物が集積され,これらはやがて自然界に大量廃棄されることとなった.昆虫の中のいくつかは,こうした人為度の高い環境に適応するため,食性やライフスタイルを変化させるものが現れた.いわゆる都市型昆虫である.今から約5,000年前の縄文時代前期の頃,青森県三内丸山遺跡では,汚物や生活ゴミに集まるハエ類や食糞性昆虫を多産した.この結果,日本における都市型昆虫のルーツは縄文時代にまで遡ることが明らかになった.本遺跡では,果実酒造りに利用されたと考えられる種子集積層が確認され,この中からショウジョウバエDrosophilidaeのサナギが多量に見いだされた.発酵物に群がる食品害虫の前身は,縄文時代前期の三内丸山遺跡に求めることができる.いっぽう,中国湖南省の城頭山遺跡では,約5,000年前にはすでに城壁と大環濠に囲まれた都城が建造され,この中に多くの人々が居住していた.環濠に堆積した地層中から見つかった多くの都市型昆虫の出現から,その繁栄ぶりが窺われる.時代が下り,弥生時代中期(約2,000年前)の愛知県朝日遺跡,奈良時代の静岡県川合遺跡では,人の集中居住やこれに伴う環境汚染を物語る食糞性昆虫や食屍性昆虫を多産した.また,中世後期の愛知県清洲城下町遺跡からは,コクゾウSitophilus zeamaisやノコギリヒラタムシOryzaephilus surinamensisなどの貯穀性害虫が見いだされ,穀物の貯蔵施設に関する情報が得られている.
著者
井上 嘉幸
出版者
都市有害生物管理学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.1-13, 1993-06-30

木材防腐防虫剤の安全性について,住宅環境に用いられる処理木材の安全性を調べるため,処理木材から揮散した物質を吸入した場合の毒性を調べることにし,処理木材で2種の飼育箱をつくり,マウスを90日間飼育して,飼育箱内の環境条件,マウスに及ぼす処理木材の作用等について検討を行った。別に,処理木粉による皮膚刺激試験,経口投与による毒性,薬剤の揮散速度等について検討を行った。得られた結果は,つぎのとおりである。(1) 2種の飼育箱では,A型の方がB型に比較して飼育箱内の環境条件が良好で飼育に適していることを明らかにした。(2) ペンタクロルフェノールおよびボリデン塩K-33については,マウスの体温が高くなったが,この理由は酸化的リン酸化の解除剤としての作用と考えられる。(3) 臓器重量について,B型飼育箱では肝臓重量が増大し,とくにクレオソート油の場合に著しいが,この理由として接触による吸収および一般に嚼む傾向があるため,その影響が肝臓に表れたものと思われる。脾臓については,ビス-(n-トリブチルスズ)オキシドの場合,肥大が認められた。(4) 全般的にナフテン酸銅は,マウスの行動等を含め毒性が少ないものと考察される。(5)処理木粉による皮膚刺激試験では,ビス-(n-トリブチルスズ)オキシド,クレオソト油などの刺激が大であった。(6) 経口投与による毒性につき,ラットにγ-BHCを投与し,これを継続した結果,飼育箱から飛び出ようとして体を強打するなど異常行動が認められ,組織標本を作成して検討した結果,脳に異常が推定された。(7) 薬剤の揮散速度について測定した結果,重量現象速度は,クロルデン>γ-BHC>クレオソート油の順となり,クロルデンの重量現象速度は従来の値より大きくなった。(8)飼育箱内に昆虫または微生物を置き,揮散による影響を調べることができ,アズキゾウムシ成虫では,γ-BHCの殺虫速度が最も大であった。(9)住環境調和型木材防腐防虫剤の安全性を検討するためには,今後,処理木材の毒性を検討することが重要である。
著者
谷川 力
出版者
日本家屋害虫学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.125-127, 2009-12-28
著者
洗 幸夫
出版者
日本家屋害虫学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.99-106, 2004-12-15
参考文献数
13
被引用文献数
1

超音波防鼠器の効力を確認するため,クマネズミとドブネズミを用いて室内試験を行った.慣らし飼育に比べ,20kHz±3kHz自動可変プラス衝撃波の超音波防鼠器を作動させた初日,ネズミの行動が活発となり,給餌ボックスへの進入回数は大幅に増加し,防鼠器のある給餌ボックスでの摂食量および排泄した糞量が減ったが,3~4日後その行動と摂食状況が慣らし飼育期間とほぼ同様な状態に戻った.また,2つがいのクマネズミは超音波防鼠器で30日続けて処理を受けたが,異常な行動が見られず,体重が増え,1匹の雌が妊娠した.その結果から,超音波防鼠器はクマネズミとドブネズミに一定の影響を与えることが認められたが,一過性のもので,持続期間が短いことが判明した.
著者
洗 幸夫
出版者
都市有害生物管理学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.112-115, 1996-12-25

ハエはハエ目(双翅目)Dipteraに属する昆虫の総称で,一般に,ハエ,アブ,ブユ,カなどと呼ばれる昆虫の仲間で,世界中には25万種はいると推定されている。本当の意味でのハエはハエ目環縫群(Cyclorrhapha)に属するもので,日本からは約50科, 3,000 種が記録されている。しかし,その95%は人間の生活に関与していないもので,衛生害虫と考えられるものは約10科,数十種だけである。そのうち,イエバエ(Musca domestica L.)はイエバエ科(Muscidae)に属するハエで,幼虫はゴミなどの有機廃棄物に発生し,成虫になってから好んで家屋内に侵入する習性があるため,室内でよくみられる衛生害虫である。イエバエは成長が早く,25℃の場合は卵から成虫になるまでの日数は13〜14日だけで,温度が高くなると,日数はさらに短くなる。人口密度が高く,経済活動の活発な都市では大量なゴミを排出し,イエバエの生育に好条件がそろっているといえる。1965年6〜7月に夢の島,1989年秋に東京湾ゴミ埋立地で大発生したハエによる騒動の主はこのイエバエであった。本稿は著者が走査電子顕微鏡でイエバエの微細形態を観察し,成虫の複眼,単眼および触角の部分をまとめたものである。諸賢の研究に参考資料として役立てば幸いである。
著者
辻 英明
出版者
日本家屋害虫学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.61-63, 2007-06

2006年8月に,東西両壁(窓面内側)にUVライトトラップ1台ずつを設置した540cm×360cmの室内の床面中心に,餌表面出現後1週間以内の雄雌混在成虫の入った放飼カップを置き,カップから脱出した成虫がトラップに捕獲される数を調査した.一方のトラップはランプを2球,他方は1球取り付けたものである.参考用にライトトラップ直下の壁面にフェロモントラップ1個ずつを設置した.8月23日17時30分,2個のカップに成虫を計245匹入れて設置し,翌24日17時に154匹を入れたカップ1個を追加設置,それぞれの夕方から翌日の朝までライトトラップを点灯した.設置成虫合計399匹のうち,8月25日朝までにカップから室内に脱出した個体は245匹(61.4%)であった.そのうちライトトラップに119匹(48.6%)が捕獲された.このときランプを2本つけたトラップの捕獲成虫数は,1本つけたトラップのほぼ2倍であった.この実験状況下ではUVライトトラップ直近のフェロモントラップによる捕獲成虫数は2匹ずつ計4匹(1.6%)と少なかった.
著者
今村 太郎 岡留 博司 大坪 研一 宮ノ下 明大
出版者
日本家屋害虫学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.61-66, 2006-02-28
参考文献数
21

新形質米7品種とコシヒカリの玄米について,品種間の相違がノシメマダラメイガ,バクガ,コクゾウムシの発育に及ぼす影響を調べた.その結果,それぞれの貯穀害虫について品種の違いは,発育期間や羽化直後の成虫の体重に影響することが明らかとなった.その一方で,品種の違いはいずれの昆虫の生存率にも明確な影響を与えなかった.「春陽」と「夢十色」はすべての貯穀害虫に対して発育期間の延長,成虫体重の減少などの耐虫性を示す傾向が顕著であった.このような耐虫性傾向はこれらの品種の玄米が含有するアミロースの量が要因の一つである可能性が示唆された.
著者
吉川 翠
出版者
家屋害虫研究会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.111-118, 1995-12-01
参考文献数
11

Ultrasonic flea-and-tick control devices have been marketed as repellents of mites in Japan since 1993. The efficacy of three types of devices was examined using three kinds of living mites : Dermatophagoides pteronyssinus (D. p.), Chelacaropsis moorei (C. m.) and Ornithonyssus bacoti (O. b.). A black flockpaper, 415mm in length and 50mm in width, was fringed by double-faced tape 15mm in width to avoid escape of mites. The length of the paper was divided into 8 sections of I -VIII, including one side of the tape as section I . Food for attracting mites was prepared on the tape of section I . Food was mixed powder for D.p., living cheese mites for C. m. and dry ice placed on cotton for 0. b. About 100 mites of D. p. starved for 24 hours were placed between 1V and V of a flockpaper. This paper was kept for 24 hours in a dark condition in a plastic cage in which an ultrasonic device was set over the food to expose I -IV. About 30 mites of C. m. starved for 24 hours were placed between IV and V to be exposed to ultrasound for 4 hours and 5-15 mites of O. b. starved for 2 weeks were placed between IV and V to be exposed for 3 hours. After exposure, the mites on each section were counted. The experiments on O.. p. and C. m. were repeated 5 times with each device and totaled in each section of each device, while that of D. b. was repeated 3 times and totaled in the same way. Sections I-IV and V-VIII for each kind of mite and device were added together and compared with the control which were done without the device in the same manner as with the device. Sections I-III, IV-V and VI-VIII for each kind of mite and device were also totaled to check mite movements and compared with the control. There was no significant difference in the number of any kind of mite between the exposure and control groups found on I -IV and V-VIII with any device. About 50% of D. p. were found on IV and V with each device also showing that mites of D. p. were not affected by the ultrasound while there were more C. m. and O. b. on I-III than on IV-V or VI-VIII being no efficacy of the sound with any device.
著者
辻 英明
出版者
日本家屋害虫学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.87-99, 2000-01-30
参考文献数
41
被引用文献数
1