- 著者
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古橋 英枝
- 出版者
- 一般社団法人 情報科学技術協会
- 雑誌
- 情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
- 巻号頁・発行日
- vol.68, no.12, pp.573, 2018-12-01 (Released:2018-12-01)
今月号の特集タイトルは「人工知能(AI)について」です。近年「機械学習」や「ディープラーニング」といった言葉を耳にすることが多くなり,自動運転技術や囲碁の対局等が大きなニュースになるなど,人工知能の技術が日々進化し,生活レベルでも身近なものになりつつあります。そこで,人工知能技術が学術情報流通においてどのように関わっているのか/関わってくるのか,また今後インフォプロが人工知能とどう関わり,付き合っていくべきかなどについて,身近にある人工知能技術や実際の活用事例などを踏まえながら必要な知識を分かりやすく提供することを,本特集の目的としました。国立情報学研究所の相澤彰子氏には,学術論文を中心とする学術情報の検索システムにおける人工知能の活用を事例として,人工知能の背景にある解析技術について,現状と課題を概観していただきました。骨董通り法律事務所の出井甫氏には,内閣府が今年公表した第5期科学技術基本計画において提唱されているSociety 5.0の話題を交えつつ,著作権法を中心に,人工知能によって生成されたものに関する知的財産権の現状と課題について,考察していただきました。京都大学の西田豊明氏には,人工知能における,倫理,法,社会の分野を総称したELSI(Ethical, Legal and Social Issues)と呼ばれる観点での取り組みについて,セキュリティやプライバシー等,慎重な検討が必要な点から利活用に向けた動きまで,詳細に執筆いただきました。そして,このような人工知能をめぐる歴史的な背景や技術発展,著作権やELSI等,利活用が進む現在において念頭に置かなければならない観点を前提に,人工知能を利用したサービスについて2本ご執筆いただきました。朝日新聞社メディアラボの田森秀明氏,人見雄太氏,田口雄哉氏には,ラボにおける人工知能研究の取り組みとその成果について,近畿大学アカデミックシアターの寺本大修氏と株式会社エイド・ディーシーシーのスガオタカヒコ氏には,本のマッチングサービスの開発に至る経緯から仕組みやサービス開始後の反響等についてご紹介いただきました。相澤氏のまとめを一部引用させていただくと,人工知能の活用目的は「研究そのものを代替することではなく,AI技術の助けを借りて,より有望な知識の候補を,より素早く見つけ出して,ユーザに提示することである。」とあります。本特集をご覧になった読者が,今後「人工知能」と対面していく中で,どのような観点を持ち,どのような姿勢で考えていけばよいのか,少しでもヒントになれば幸いです。(会誌編集担当委員:古橋英枝(主査),稲垣理美,炭山宜也,長屋俊,松本侑子,南山泰之)