著者
井上 大介
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.244-248, 2020-05-01 (Released:2020-05-01)

人間社会の歴史において犯罪行為が途絶えたことがないのと同様に,サイバー空間における攻撃行為(以下,サイバー攻撃)もまた途絶える気配はなく,むしろ攻撃対象の拡大や攻撃に用いられる技術の高度化が進んでいる。本稿では,ここ数年のサイバー攻撃全般の動向を概観するとともに,サイバー攻撃大規模観測・分析システムNICTER(ニクター)の観測に基づく無差別型サイバー攻撃の動向について詳説し,感染IoT機器の現状とその対策の一つであるNOTICEの取り組みについて紹介する。
著者
松原 恵 小宮山 史 山本 和明
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.285-290, 2018-06-01 (Released:2018-06-01)

国文学研究資料館(国文研)が進める歴史的典籍NW事業では,画像公開している古典籍をもっと自由に活用してもらう活動にも取り組んでいる。そのなかでも特に反響の大きかったのが「江戸料理」に関する事業で,人文学オープンデータ共同利用センター(CODH)などの研究機関や企業等とのコラボレーションに進展し,多くのメディアにも取り上げられた。そのあらましを述べたうえで,企業と連携していくなかで見えてきた可能性と,課題について考える。
著者
高久 雅生
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.192-196, 2020-04-01 (Released:2020-04-01)

本稿では図書館業務に関連するプログラムツールの開発事例を紹介し,それらのツール開発にかかわる要素を解説する。これまで筆者が開発してきたツールの事例として,PDFチェックツール「pdf-checker」,junii2メタデータ検証ツール「JuNii2 Validator」,Linked Open Data(RDF/Turtle)公開用ツール「ttl2html」などを取り上げ,それらのツールが内在する業務ニーズや開発動機,問題解決のために設定した業務フローの設計,ツールの入出力形式やユーザインタフェース,作業環境や代替ツールや代替手段といった関連する諸要素について解説する。
著者
森 未知 星野 咲希
出版者
Information Science and Technology Association, Japan
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.134-139, 2020-03-01 (Released:2020-03-01)

国立女性教育会館の専門図書館「女性教育情報センター」では,四半期毎に図書のテーマ展示を行っている。今までに「女性のしごと:広がるフィールド~理系,土木,建築,農業,物流~」「ロールモデルを見つける!理系女性の伝記」といった,理系女性に関する展示を行った。女性アーカイブセンターでは企画展示を「チャレンジした女性たちからチャレンジする女性たちへ」というシリーズで行っており,化学,建築,宇宙,医学等に関わる女性たちを取り上げた。本稿では,それらを踏まえて「女性研究者を支援する」というテーマで図書の誌面展示を行うとともに,読者自身も情報を探し,展示を行うために使える国立女性教育会館のサービスを紹介する。
著者
佐藤 卓己
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.230-235, 2012-06-01 (Released:2017-04-18)
参考文献数
11

デジタル・テクストとして物理的存在を欠いた電子ブックの普及は,「書物」の再定義をせまっている。しかし,電子ブック登場以前から,書物はすでに大きな変容を遂げてきている。本稿では比較メディア論の視点から,書物の変容を1920年代のラジオ放送開始,1930年代のペーパーバック革命において検討した。それは「書物のラジオ化/雑誌化」,すなわち「書物の広告媒体(メディア)化」の系譜である。こうした「書物のメディア化」の最終段階として,広告料収入で運営されるメディア企業,Googleによるライブラリープロジェクトが登場する。ウェブ2.0時代のコミュニケーション状況において「書物のデジタル化」がもたらす問題点を整理した上で,電子ブックを既存の書物のリテラシーに接合する必要性を指摘した。
著者
井上 能行
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.21-26, 2015-01-01 (Released:2017-04-13)

東日本大震災から4年近くが経つ。岩手,宮城の津波被災地では復興が進む一方,福島第一原発事故を抱える福島県では未だに12万人を超える人が避難を余儀なくされている。福島県内では政治不信,科学者不信に加えて,マスコミへの不信感も強い。不信の理由は,福島県の現状が伝わっていない,というものだ。象徴的な出来事がマンガ「美味しんぼ」騒動だ。作者の意図はどうであれ,マスコミが大騒ぎし,残ったのは風評被害だけだった。マスコミが伝えていることと,住民が伝えてほしいと考えることのギャップはどこから生まれるのか。解消法はないのか。福島市に住んでいる記者の視点から考察する。
著者
今井 雅子 高橋 礼恵 戸田 智美 三沢 岳志 源栄 克則
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.34-40, 2020-01-01 (Released:2020-01-01)

本研究では,投資ファンドとして先端技術を持つ投資先を選定するという設定のもと,社会課題を解決するための先端技術の中から,技術革新や市場拡大が期待される家庭用サービスロボットに着目し,技術動向分析および技術動向予測を行った。これらの情報と研究メンバーの想像する将来の生活から,ニーズはあるが,現在製品が普及していない家庭用調理ロボットを2030年製品化のターゲットとして選択した。この家庭用調理ロボットについて,理想とする将来像と現状の技術とのギャップから,把持技術,安全技術,味のデジタル化技術をキー技術として特定し,これらの技術において先端技術をもつベンチャーを探索し,最終的に2社を投資先として選定した。
著者
松田 真美 黒沢 俊典 林 和弘
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.41-46, 2020-01-01 (Released:2020-01-01)

2010年から,3年に一度,10年にわたりMEDLINE収録 国内医学雑誌の採録数,電子化状況,インパクトファクターなどについて定点観測を行い経時変化を分析した。この間に,英文誌の割合の増加,海外プラットフォームの割合の増加,国内プラットフォームのJ-STAGEへの集約,インパクトファクターの上昇などの傾向が見られた。2017年に採録数が急減したが,多くはMEDLINEの収録ポリシーの変更に対応できなかったジャーナルであり,電子データの重要性が明らかとなった。
著者
岸田 和明
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.62-67, 2007-02-01 (Released:2017-05-09)
参考文献数
14
被引用文献数
2

本稿では,シソーラスや件名標目表をはじめとする統制語彙に関して,その基本的な機能や限界を整理した上で,インターネットが高度に発達し,サーチエンジンが広く普及した現在における統制語彙の意義と役割について議論する。具体的には,再現率向上および精度向上のための装置としての統制語彙の機能を確認した上で,検索実験や種々の実証研究等で明らかになっている,その限界について述べる。次に,その点を踏まえ,専門的データベースの検索におけるその意義,ウェブなどの全文検索におけるその意義,複数根拠を提供するための表現としての意義について議論する。さらに,今後の可能性として,シソーラスの自動構築や索引語の自動付与,オントロジやフォークソノミーとの関連についても触れる。
著者
緑川 信之
出版者
情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.238-243, 2007-05

フォークソノミーという用語はフォーク(folkまたはfolks)とタクソノミー(taxonomy)の合成語である。 Wikipediaによれば,フォークソノミーは,インターネット上での情報検索の方法論であり,協同的かつ自由に付与されるタブで構成されている。このダグによって,ウェブページやオンライン上の写真,ウェブリンクなどのコンテンツがカテゴリ分けされる。本稿では,フォークソノミーに関するいくつかの論文・記事を分析し,フォークソノミーの新奇性がどこにあるのかを明らかにした。The term "folksonomy" is a compoud of the words folk (or folks) and taxonomy. Acording to the Wikipedia, a folksonomy is an Internet-based information retrieval methodology consisting of collaboratively generated, open-ended labels that categorize content such as Web pages, online photographs, and Web links. In this paper, some articles on folksonomy were critically reviewed and the novelty of folksonomy was revealed.
著者
河西 由美子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.10, pp.514-520, 2017-10-01 (Released:2017-10-01)

「情報リテラシー」の原語であるinformation literacyという用語について,英語圏では,図書館に関係した概念・運動と認識されるのに対して,日本では,情報機器やデジタルデータの取り扱いなど「ITリテラシー」という狭義の概念として定着しているように思われる。本稿では,1980年代の米国において重要な教育概念となり,その後世界的な潮流となった情報リテラシーの意義と,日本の教育,ことに情報教育に及ぼした影響について歴史的経緯を解説し,日本の学校図書館における情報リテラシー教育の課題と展望を述べることとしたい。
著者
田森 秀明 人見 雄太 田口 雄哉
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.12, pp.591-595, 2018-12-01 (Released:2018-12-01)

朝日新聞社メディアラボは,新規ビジネスの開発や出資・投資,研究開発などを主なミッションとし,2013年9月に発足した新しい部署だ。発足当初より研究開発(R&D)がスコープにあり,新技術を積極的に取り入れ,将来のビジネスにいかす活動を進めている。近年では自然言語処理への取り組みは新聞社には必要な技術分野として,メディアラボのみならず社内のIT部門である情報技術本部,更には社外のベンチャー企業などとともに取り組みを広げている。本稿では,メディアラボの人工知能,特に機械学習や自然言語処理の取り組みについて発足当初の取り組みや,最近の成果を紹介する。