著者
田中 伸久 小林 貞 田中 英文 佐々 学 萱原 伊智郎 山口 安宣 林 治稔 小澤 邦寿
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1-5, 2004
参考文献数
12
被引用文献数
1

群馬県内において,ユスリカ幼虫が上水道給水栓から発見される苦情事例が発生した.ユスリカは,ヨシムラツヤユスリカおよびハモンユスリカ属の幼虫であり,これらは浄水場内でも確認されたことから,浄水場内のユスリカ幼虫が給水栓に達したものと推測された.また,前塩素濃度を上げる,凝集剤 (PAC) を多めに入れる,濾過機の逆洗回数を増やす,清掃を行うなどの積極的かつ厳重な管理によって,このような事例は防ぎうることが示唆された.
著者
高橋 朋也 藤野 全弘 白神 弘介 辻 英明
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.13-15, 1999

<p>蚊の被害が著しい,関東のある工場で調査を行い,次の結果を得た.</p><p>1.アンケート調査の結果,蚊の被害は工場全域に及び,その度合は労働環境悪化にまでもつながるものであった.主要加害種はイエカ属,特にチカイエカで,その発生源も確認できた.</p><p>2.捕獲調査の結果,捕まった蚊の99%がイエカ属で,捕獲地点近くのし尿浄化槽でチカイエカの成虫が多発活動していることが確認され,本工場の主要加害種はこれらであると云える.</p>
著者
中野 敬一
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.85-90, 2003-10-30 (Released:2019-07-11)
参考文献数
12
被引用文献数
4

屋外公共施設のゴキブリ相と季節消長について,2000~2002年に東京都港区の屋外公共施設で夜間観察と粘着トラップによる捕獲により調査を行った.確認されたゴキブリの種類はクロゴキブリとヤマトゴキブリであった.夜間観察ではクロは7~10月に,ヤマトは4,5,10,11月に多く見られた.クロは成・幼虫ともに同じ時期に確認数が増加したが,ヤマト成虫は5~7月の幼虫の少なくなる時期に多くなる傾向があった.また,確認された幼虫はクロもヤマトも大型の個体が多かった.捕獲した幼虫の前胸背幅を測定した結果,クロは2~4mmの小型幼虫が,ヤマトは4~8mmの大型幼虫が多く捕獲された.
著者
金山 彰宏 小曽根 恵子
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.9-13, 1997-09-25 (Released:2019-07-11)
参考文献数
8
被引用文献数
3

潜伏場所から出て,活動場所で行動するチャバネゴキブリの夜間の活動を,カメラを用いて観察した.観察の結果,雄成虫の活動は極めて活発で,餌場はもとよりその周辺部にも広く分散する様子が観察された.一方,卵を持った雌成虫では,その活動範囲は非常に狭く,潜伏場所に潜む個体数に関係なく夜間の行動は少なかった.卵を持たない雌成虫は,餌場に集中する傾向が強かった.雄雌成虫が示す行動パターンは雌雄成虫,幼虫が混在した条件でも大きく異なることはなかった.食堂内の開放された場所に設置した粘着式トラップに捕獲されたチャバネゴキブリ成虫の構成比をみると,雄成虫は64%,卵を持たない雌成虫は32%,卵を持った雌成虫では4%であった.このことは実験室内で観察されたチャバネゴキブリ成虫の行動特性を良く現していると思われる.
著者
小曽根 惠子 金山 彰宏 小曽根 努
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.32-36, 1995-10-31 (Released:2019-07-11)
参考文献数
6
被引用文献数
4

雑居ビル地階の食室内に生息するゴキブリを用いて放逐実験を行い,実地におけるチャバネゴキブリ成虫の移動範囲を調査した.横浜市内の和風食堂(9.7×7.0m2)において,生け捕り式トラップに捕獲されたチャバネゴキブリ成虫にマーキングをして放逐,再捕獲を行った.再捕獲には粘着式トラップを用いた.雄および未抱卵雌を採集地点と異なる食堂入口付近で放逐した場合,多くの個体が厨房付近で再捕獲された.この移動は,エサ・水を求めての移動と思われた.雄および未抱卵雌を厨房で放逐し,放逐翌日に殺虫剤処理を行い,ゴキブリの1日の移動範囲を調査したところ,マーク個体は放逐場所のごく周辺で再捕獲された.また抱卵雌を食堂の入口および厨房近くの倉庫で放逐したが,いずれも移動範囲は放逐場所のごく周辺に限られ放逐場所の違いによる行動の差は見られなかった.
著者
辻 英明
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.25-30, 2003-05-30 (Released:2019-07-11)
参考文献数
9
被引用文献数
3

When sticky traps were placed at the inside edge of closed windows,a closed door,and in a mail box attached on the door,very small insects with body lengths of about one millimeter or less were caught depending on the operation of a ventilation fan in the room. No insects were caught when the ventilation fan was not operated. This suggests that minute contaminant insects invade structures through small crevices around closed doors,windows,and even incomplete walls and floors,depending on the operation of ventilation fans. Moderate sized insects also invaded another room near by through an incompletely closed window depending on the operation of the same ventilation fan above used. Substantial number of insects even went out during the fan was stopped. The dominant insects were moth flies, chironomid midges, and fungus gnats; this coincides with a trend which is often observed in many industrial facilities.
著者
辻 英明 菅野 格朗
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.113-116, 2003
参考文献数
3
被引用文献数
7

前報において,閉め切った室内に微小な昆虫が入る主要因は換気扇稼働(室内陰圧化)に伴う隙聞からの吸引であること,また吸引の影響は照明による誘引より大きい事例が示されている.そこで今回は,市販の給気用換気扇に防虫用フィルターを追加装着して室内に給気したところ,問題の微小昆虫の侵入を防止できた.この防虫用フィルターの追加装着による換気扇モータ一部の温度上昇は1℃にとどまり,負荷の増加も少ないことがわかった.
著者
岡田 祐一 伊藤 景子 鳥居 由美 今村 太郎 宮ノ下 明大
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.109-115, 2004-09-15 (Released:2019-07-11)
参考文献数
15

七味唐辛子とその原料7種類 (赤唐辛子,黒ごま,ちんぴ,山椒,麻の実,けしの実,青のり) におけるノシメマダラメイガの発育 (1齢幼虫から成虫) を調べた.その結果,麻の実,黒ごま,けしの実,ちんぴでは成虫まで発育が見られ,赤唐辛子,青のり,山椒では全く発育しなかった.これまで本種が七味唐辛子のどの原料を食物としているかは不明であったが,主成分の赤唐辛子では発育せず,黒ごまや麻の実といった種子系原料を利用することが確認された.米糠で発育を見た場合,平均して約40日 (37~54.5日) で羽化しているが,七味唐辛子の原料では,米糠に比べて大部分の個体は2~3週ほど羽化が遅れ,最長では70日以上遅れた個体があった (51~111日).また,羽化率も明らかに低かった.
著者
稲岡 徹 宮田 弘樹
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.95-101, 2004-09-15 (Released:2019-07-11)
参考文献数
8

工場敷地内の外灯の照明光源を水銀灯から高圧ナトリウム灯に変換したときの飛来昆虫数に与える影響を調べた.1.実験に用いた高圧ナトリウム灯の紫外線放射量は水銀灯の約1/60,水銀灯から高圧ナトリウム灯への変換によって外灯への誘虫性は約1/2に低下した.2.外灯に近い施設周辺では,外灯照明の誘引作用により,建物との距離に応じて昆虫の密度が高まり,そのため施設内への昆虫の侵入数は,照明のない場合に比べ増加していると思われる.3.外灯の光源を水銀灯からナトリウム灯に変換すると,その周辺の施設内への昆虫の侵入数も減少するが,減少率は外灯自体への飛来数ほど顕著ではなく,20%前後であった.4.外灯間の距離が28-45mという実験条件では,各外灯は独立して昆虫を誘引し,水銀灯とナトリウム灯を同時に点灯した場合にも,各外灯間の相互影響は認められなかった.5.水銀灯から高圧ナトリウム灯への変換によって,鱗翅日・膜翅目・半翅目・鞘翅目では飛来数は約70%減少したのに対し,双翅目のユスリカ類やコバエ類では30-40%の減少率であった.
著者
矢部 辰男 TATSUO YABE 神奈川県衛生研究所 Kanagawa Prefectural Public Health Laboratories
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.35-41, 2000-05-31

家ネズミ類3種における以下のような特性の違いは,種特異的な食品被害をもたらす.1.ドブネズミは雑食性で,植物質のほかに獣肉・魚介類などの高タンパク質食品を好む.クマネズミ類は種実類(種子・穀類および果実類)やその二次製品を,ハツカネズミは種子・穀類やその二次製品を好み,高タンパク質食品をあまり選択しない.このような食性の違いは消化・代謝能力の違いに起因すると思われる.2.渇きに対する強さを比較すると,ドブネズミとクマネズミの間に大差はないが,ハツカネズミは渇きにきわめて強い.しかし,ドブネズミは,高タンパク質食品に含まれる窒素分の排出のために,多量の水分を要求する.その結果,ドブネズミが最も渇きに弱い.渇きをいやすために,ドブネズミやクマネズミが水気に富む植物質を積極的に食べることがある.ハツカネズミも授乳中には,多量に必要とする水を求めて水気に富んだ植物を食べることがある.3.ハツカネズミはしばしば小さな種子だけを選択的に食べることがあるが,これは体の小さいことを反映したものであろう.4.ドブネズミには貯食性があり,この習性は大量の食品を汚損・消失させる.
著者
城戸 毅
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.45-47, 1992-11-06
被引用文献数
4

食品を加害する蛾類には,ノシメマダラメイガ・スジマダラメイガ・スジコナマダラメイガ・チャマダラメイガ・バクガ等が知られており,加工食品工場では重要な害虫として問題視されている.大型食品工場においては,工場内環境がほぼ一定であるため,年間を通してこれら蛾類の発生が見られるようになって来ている.これら蛾類の発生モニターとして最も有効であるのは,フェロモントラップとされている.食品害虫用の性フェロモントラップの利用法は,1.成虫発生の早期発見(発生予察)2.発生場所の探知・限定3.定位阻害4.大量捕獲5.未発生の高度な確認・証明が挙げられる。そこで,フェロモントラップを使用してのモニタリング調査及び防除対策を行っている某食品工場の過去3ヶ年間のデータをとりまとめて報告する.
著者
渡辺 護 品川 保弘
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.14-20, 1997-09-25
参考文献数
5
被引用文献数
3

Since 1995, we have conducted the research for the control of Ororo-tabanidfly, Hirosia iyoensis at some mountainous areas in Toyama Prefecture, central part of Japan, where a great number of Ororo-tabanidflies occur every year. The effect of traps baited with CO_2 gas to H. iyoensis was studied. These canopy traps were effective in mass-capturing Ororo- tabanidflies. The performance of pyrethroid insecticides and a repellent were also investigated. Pyrethrum extract, pyrethrin and prallethrin showed fast knock down effects against Ororo-tabanidflies. And, also deet had a repellent action.
著者
辻 英明 志澤 寿保
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.16-21, 2000-05-31
被引用文献数
6

数種殺虫剤を用い,直径5.5cmの処理ろ紙面の中心の無毒餌と,無処理面中心の無毒餌に接近摂食する個体数を比較し,処理面通過接触による死亡の起こり方も観察した.ペルメトリン水性乳剤処理(10倍希釈0.4cc)ろ紙は激しく忌避され(50分〜78分後3区平均87.7%忌避),死亡率は低かった(6日後平均5.6%).フェニトロチオン乳剤処理(10倍希釈0.4cc)ろ紙にはやや忌避性があったが(4区平均42.3%),長期間後に若干の死亡がみられた(6日後平均37.5%).ダイアジノンMC剤処理(10倍希釈0.4cc)ろ紙では忌避は少なく(2区平均-39.6%),ホウ酸粉末に次ぐ死亡率が得られた(6日後平均83.3%).プロペタンホス乳剤処理への忌避は殆どなかったが(10倍希釈で-61.3%,3倍希釈で16.4%),死亡率は低かった(10倍希釈3区6日後平均5.6%).ホウ酸粉末処理(200メッシュ篩過紛50mg)ろ紙に対する忌避は少なく(3区平均4.3%),殺虫効果は最も高く,かつ最も速やかであった(6日後3区100%).ホウ酸粉末剤+プロペタンホスのエアゾール剤(不快害虫用市販品)200mg(乾燥後の重さ)を処理したろ紙上(直径11cm)に市販ベイト(ヒドラメチルノン)を置いた場合,ベイト容器への侵入は阻害されず,無処理ろ紙上にベイトがある場合より1〜2日速くゴキブリが全滅した.
著者
平林 公男 山本 優 武田 昌昭 花里 孝幸 中本 信忠
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.91-101, 2003-10-30
参考文献数
34
被引用文献数
2

諏訪湖周辺地域においては,ユスリカ類の成虫が恒常的に大量飛来し,周辺住民や観光客から不快害虫として嫌われている.本研究では,湖から発生するユスリカ成虫の防除対策を検討するたあに,成虫の飛翔行動(飛翔時間と飛翔高度)のパターンを調査し,その特徴を把握することを目的として,1989年4月18日から20日まで,同年6月5日から7日まで,1999年6月5日から6日まで,2000年9月4日から6日までの期間,観測を行った.調査は湖東岸に位置する信州大学山地水環境教育研究センターにて行い,ライトトラップを異なった高さ(地上1m,9m,16m)に1器ずつ設置し,オオユスリカとクロユスリカについて捕獲数を調べた.オオユスリカ成虫は16mに設置したトラップで最も多く捕獲されたのに対し,クロユスリカ成虫は,9m設置のトラップで最も多く捕獲された.飛翔時間帯を明らかにするために,調査期間中,2時間おきに調査した結果,オオユスリカ成虫の場合,季節により異なり,春と秋では18:00から20:00まで,夏は18:00から翌朝の6:00までの間,捕獲数が多かった.一方,クロユスリカ成虫の場合は,発生期間をとおして18:00から20:00に多かった.以上のことから,飛翔高度は種ごとに異なり,また,特にオオユスリカについては,季節により飛翔時間帯が異なることが明らかとなった.
著者
立岩 一恵 冨室 光司 山内 章史
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.31-34, 1997-09-25
被引用文献数
2

Two kinds of marketed spices, cayenne-pepper powder (Shichimi-togarashi) and curry powder (Kare-ko), were tested as food for Indian meal moth larvae, Plodia interpunctella (H.). When eggs were introduced into newly purchased spices, no larvae developed. Even young 5th instar larvae placed on the spices could not develop, and died, in the newly purchased spices. After one or two months of air-exposed aging of the newly purchased spices, however, about 50% of introduced eggs (hatching larvae) grew, pupated, or emerged into adults in cayennepepper powder containers, but no larvae developed in the curry powder containers yet. After 6 months of aging of the newly purchased curry powder, one of 30 introduced 5th instar larvae could emerge into an adult. These results suggest that the newly purchased spices contained some factor(s) killing Indian meal moth larvae, and the factor(s) would fade out during the aging periods of the spices under the air-exposed conditions.
著者
立岩 一恵
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.21-24, 1998-04-30
被引用文献数
3

Two kinds of marketed spices, cayenne- pepper powder (Shichimi- togarashi) and curry powder (Kare-ko), were tested as food for cigarette beetle larvae, Lasioderma serricorne (F.). When adults were introduced into newly purchased spices, second generation insects did not occur in most samples. Even 3rd or 4th instar larvae placed on the spices could not develop but died in the newly purchased spices. After one or three months of aging of the newly purchased spices, introduced adults produced second-generation adults, and larvae placed on the spices could emerge into adults. These results suggest that the newly purchased spices contained some factors to kill cigarette beetle larvae, and the factors would fade out during the aging periods of the spices under the air-exposed conditions.