出版者
東北地理学会
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.94-152, 2014 (Released:2015-08-01)
著者
酒井 宣昭
出版者
The Tohoku Geographical Association
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.19-29, 2004
被引用文献数
1

地場産業の産地存続に必要な機能としては技術伝承, 原料および市場の確保があげられる。本研究では宮城県の鳴子, 遠刈田, 弥治郎こけし産地を例に, 近年の技術伝承形態, 原木の入手形態, 流通販売形態について検討し, その特徴を明らかにした。<br>技術伝承についてみると,「家」での技術伝承形態のみが一部の事業所において存続している。多くの事業所では経営難が続き, 子に他の職業を薦める傾向にある。原料の入手についてみると, 伝統的に使用してきた原木を現在も継続的に入手しているため, 特に原木の量の制限などに関する問題はみられない。しかし, 一部の事業所では経営難という状況から原木の購入資金が不足し, 入手量を制限せざるを得ない状況にある。製品は各事業所が伝統こけし, 創作こけし, 木地玩具を生産している。なかでも需要の多い伝統こけしの生産が中心である。流通販売形態についてみると, こけし産地には産地問屋があるものの, 産地問屋の取引先の需要減少に伴い, こけし産地の事業所との取引回数や量は少なくなっている。また, 小売店などへ卸す経路も縮小している。そのため, 各事業所での販路を開拓する必要があるが, 独自の経営戦略を持って安定した販路を確保している事業所は少ない。
著者
野村 幸加 吉田 圭一郎
出版者
東北地理学会
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.225-233, 2009 (Released:2012-03-15)
参考文献数
16
被引用文献数
1

本研究は,東京ディズニーランドに対して抱くイメージを,その対象者の地域的な背景,特に対象者との距離に着目して明らかにした。居住地の異なる大学生を対象に,SD法に基づいた評定尺度法調査を行い,因子分析を適用して,イメージの構成要素を抽出した。また,因子得点をもとに,東京ディズニーランドまでの距離によるイメージの差異を検証した。因子分析の結果から,東京ディズニーランドのイメージは,主に「心理的因子」,「視覚的因子」の2つの要素によって構成されていた。第1因子である心理的因子には,「わくわくする」「楽しい」など対象者の主観的な感情が表れており,第2因子の視覚的因子は「静か」「緑が多い」といった景観を客観的に捉えたものであった。スピアマンの順位相関係数によると,心理的因子は距離と関係があり,その理由としてカリギュラ効果が考えられた。また,訪問回数を介して距離が視覚的因子に影響を与えていると考えられた。
著者
目代 邦康 小泉 武栄
出版者
東北地理学会
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.205-213, 2007 (Released:2010-04-30)
参考文献数
20
被引用文献数
1

佐渡島大佐渡山地稜線周辺には, 裸地, 草地が, 標高800~1,000mの尾根にパッチ状に分布している。そこでは, ブナの偏形樹が見られ, 氷期の遺存種であるイブキジャコウソウ, タカネマツムシソウなどの高山植物が生育している。裸地, 草地は, 北西―南東方向に伸びる谷の延長線上の, 北東―南西あるいは南北にのびる尾根にのみ分布している。そこでは, 冬季の季節風が, 谷沿いを吹き抜けて稜線を吹き越す場所である。強風は, 冬季には積雪を吹き払い, さらに地表付近の細粒物質も除去する。そのため, 高木, 低木の定着, 生育が困難となっている。このような環境のため, 局地的に高山帯と同様の景観が作り出されている。
著者
蘇徳斯琴
出版者
東北地理学会
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.3-14, 2016 (Released:2016-09-15)
参考文献数
19

本研究の目的は,内モンゴル自治区における生態環境に留意し,草原地域における定住化政策や農地開発といった土地利用政策を持続可能な開発の視点から再検討することである。「遊牧方式」による牧畜業は,歴史的な知恵が蓄積された伝統的な生業であった。しかし,「遊牧方式」を根本的に否定した定住化放牧を中心とする草地利用政策の実施は,草原地域の生態環境に適合するものではなかったため草地劣化の一因となっている。また,莫大な人口を抱える中国は,農地確保が食料安全保障の観点から常に重要課題となってきた。そのため,内陸部の乾燥・半乾燥地域に位置する内モンゴル自治区においても農地開発が進められてきた。ところが,自然条件を考慮しない農地開発は,農地としての利用に適さなかったばかりか草地にも還元することが不可能なほどに生態環境を悪化させている。草地劣化や草原開墾は,当該地域の土地利用の持続性や国内の食料確保にほとんど貢献できなかったことを示す現象であると言ってよい。以上から,今後の土地利用政策は,持続可能な開発の視点から科学的見地を最大限に活用した環境保全と食料安全保障の両立を追求すべきであると考える。
著者
勝又 悠太朗
出版者
東北地理学会
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.64-77, 2023 (Released:2023-07-06)
参考文献数
29

本稿では,奈良県の医薬品産業における企業の存立形態を明らかにした。当地域の医薬品産業は地場産業として成立した配置薬生産を起源とする。しかし,配置薬の生産は減少しており,それを専業で生産する企業は一部に限定されている。他方,配置薬だけでなく一般薬や医薬部外品,健康食品などを生産し,生産品目の多品目化を進める企業がみられるようになった。さらに,大手企業をはじめとする医薬品企業やドラッグストアからの受託生産を主軸とする企業も登場した。こうした企業は,当地域の医薬品産業の中では規模が大きく,医療用薬を主要生産品目とする点に特徴がある。このように,当地域の医薬品生産企業の存立形態には変化が認められる。そして,全医薬品の生産額に占める配置薬の割合が低下する一方で,生産品目の多品目化と受託生産が増加した結果,当地域の医薬品の生産額は2000年代半ば以降も増加傾向を示している。ただし,配置薬生産の減少は企業が奈良県に集積するメリットを低下させている。また,受託生産の拡大は生産額の増加に寄与するが,受託元企業による生産のグローバル化の推進や当産業をめぐる制度の変化などの影響を受けやすいものであるといえる。
著者
熊谷 誠 南 正昭
出版者
東北地理学会
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.77-93, 2021 (Released:2022-01-14)
参考文献数
16
被引用文献数
4 4

釜石市唐丹町本郷は,三陸の津波常襲地にあって,昭和三陸津波後の高所移転集落として知られる。かつて山口弥一郎は,元の集落位置へ戻る「原地復帰」への懸念を指摘したが,「原地」には防潮堤建設等により居住はできなくなっていた。一方で,昭和津波浸水域を含む「低地」への居住が拡大していた。東日本大震災では,高所移転地では浸水被害を免れた一方で,「低地」は壊滅的な被害を受けた。東日本大震災後の復興事業に伴い,同津波浸水域への居住は法的に禁止され,「低地居住」への懸念も解消された。本稿は,唐丹本郷におけるこのような変遷の過程を,「低地居住」の実態と要因群も含めて,明らかにした。

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出版者
東北地理学会
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.32-39, 1999-03-15 (Released:2010-04-30)
著者
木村 和雄
出版者
The Tohoku Geographical Association
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.1-18, 1994-03-25 (Released:2010-04-30)
参考文献数
34
被引用文献数
2 2

阿武隈高地北部は侵食小起伏面の発達が良好であるが, その層序的, 編年的位置づけは確定していない。本稿は先第三紀の基盤岩類とは区別される表層堆積物の分布, 堆積構造を調査し, それらの層序と侵食小起伏面との編年上の関係を検討した。侵食小起伏面は高位から, 高位面群 (750-1,000m), 中位面群 (550-730m), 低位面群 (300-550m) に区分され, いずれも陸上削剥によって成立したと考えられる。侵食小起伏面の形成と関係する堆積物は下部中新統と鮮新~更新統に大別される。下部中新統は調査地域北部に発達し, 下位より, 河成の砂岩および円礫岩互層を主とする比曽坂層, 陸成の亜円礫岩や海成砂岩からなる塩手層, 火砕岩類からなる霊山層で構成される。これら中新統は高位面群を開析する化石谷に分布し, 中位面群によって切られる。鮮新~更新統は山地西縁に分布し, 河成砂礫層である三春砂礫層と火砕流堆積物の白河層からなる。これら鮮新~更新統は低位面群を開析する旧河谷を充填するように堆積している。これらの調査結果から, 阿武隈高地北部の侵食小起伏面は層序的に次のように規定できる。高位面群は新第三紀より前に形成され, 中新世の初めには開析を受けていた地形面である。中位面群は中新世前期以降に形成され, 中新~鮮新世には開析されていた可能性が高い。低位面群は中新世後半以降から形成され, 鮮新~更新世境界頃から開析され始めた地形面である。侵食小起伏面は年代的にみて, 比較的平穏な構造運動と相対的な高海水準とが一致する時期に形成された可能性がある。
著者
藤田 佳久
出版者
The Tohoku Geographical Association
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.273-286, 1998-12-15 (Released:2010-04-30)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

本稿は, 1901年に中国貿易を扱い得るビジネスマンの養成を目的として上海に開設された東亜同文書院の学生達が1907年から1942年にかけて行った中国調査旅行の実態を明らかにし, 彼らが記録した調査報告書および日誌の資料的価値について説明した。書院生の旅行コースは全体で700コースに及び, 中国全土をカバーするとともに, 調査テーマも中国社会を知る上でバランスのとれた内容であった。調査報告書は日本人の手になる初の本格的中国地方誌であった『支那省別全誌』(18巻) および『新編支那省別全誌』(18巻刊行計画中9巻まで刊行) に最大限に活用された。日誌は状況証拠として間接的に利用された程度であった。しかし, 日誌は清末から民国期の混乱期に, 中国全域をとらえる研究が空白になった部分を埋めることができる貴重な資料である。

1 0 0 0 OA 書評/学会記事

出版者
東北地理学会
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.124-130, 2021 (Released:2022-01-14)
著者
杉浦 直 小田 隆史
出版者
東北地理学会
雑誌
季刊地理学 = Quarterly journal of geography (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.157-177, 2009-09-15
参考文献数
27
被引用文献数
3 3

本論文は,サンフランシスコ・ジャパンタウン(日本町)における一施設「ジャパンタウンボウル」の売却問題(2000年)及びその跡地に建った住・商混合施設「1600ウェブスター」への大手コーヒーショップ・チェイン「スターバックス」店舗進出問題(2005年)の経緯とそこにおける諸活動主体(アクター)間の対立を分析・検討し,それを通じてエスニック都市空間における場所をめぐる葛藤の性質・構造とその意味を考察したものである。このサンフランシスコ日本町における一連の場所をめぐる葛藤の過程のなかで最も強い対立を示したアクター関係は,日本町に進出を企てる外部資本と日本町諸組織との間であり,それは地価にふさわしい経済的開発と地域経済再編を志向する資本主義的都市過程とローカル・エスニック・コミュニティの維持・保全を志向するエスニックに意味付けられた特殊な都市過程との対立として捉えられる。そしてその意味を地理学的に考察するとき,上記の対抗関係はMerrifield (1993) が提示した資本による「想像された空間(conceived space)」とコミュニティの現実の「生きられた場所(lived place)」との対抗関係であり,それらの間の弁証法的調整の過程であると言うことができる。