著者
高橋 喜和 依田 稔
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.1141-1149,1202, 1999-10-20 (Released:2009-11-10)
参考文献数
36

食用油脂の水素添加は, 液状油から固形脂に改質させる一つの方法で, 加工油脂メーカーにとっての必須工程として発展してきた。基礎的な水素添加の内容について概説し, さらに, 最近の水素添加法として, 固定床触媒利用による連続式硬化や超臨界での硬化などの新しい硬化方法の開発, それに伴なうニッケル触媒, 貴金属触媒の進歩や装置周辺で1の改良の動きなどを含めながら概説する。
著者
臼杵 靖剛
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.1075-1086, 1997-10-20 (Released:2009-10-16)
参考文献数
68
被引用文献数
1

糖脂質GM3は細胞増殖の密度に応じて増加する。細胞膜のGM3は細胞増殖機能の重要なモジュレータである。一部分のGM3の代謝回転は末端に存在するシアル酸残基によって調節されている。GM3代謝酵素すなわちシアリターゼとシアル酸転移酵素の活性は細胞分裂している細胞において変化する。両酵素は, 上皮成長因子受容体のリン酸化のGM3が介在する阻害反応とともに, 細胞増殖制御において機能している。2-デオキシ-2, 3-デヒドロ-N-アセチルノイラミン酸 (NeuAc2en) はGM3シアリダーゼの有効な阻害剤であり, 細胞増殖阻害効果を示す。新しいインフルエンザウイルス感染の治療法の開発にNeuAc2enよりコンピューターを利用して分子設計された類縁体 (強力な阻害剤) が用いられた。CMP-シアル酸は生理的条件でNeuAc2enを非酵素的に生成する。生成したNeuAc2enは細胞のシアリダーゼ活性を調節している可能性が指摘できる。GM3シアリダーゼとシアル酸転移酵素の細胞内での機能を明らかにするためには, 細胞内の酵素存在部位にターゲッテングされるNeuAu2enおよびCMP-シアル酸の新タイプの類縁体が分子設計される必要がある。
著者
武林 敬
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.48, no.9, pp.861-869,928, 1999-09-20 (Released:2009-11-10)
参考文献数
3
被引用文献数
5

粉体を扱う業界において, 紛体そのものの製品化を行うことは少ない。その理由として, 紛体の特性, 粒子形状および粒子径によって, 本来必要とされる紛体なお持ち味が十分に生かしきれないことが多いためと考えられる。その場合, 目的用途に合わせた形に造粒したほうが, ハンドリングあるいは後工程の操作が非常に容易となる。ここでは, 一般的な流動層造粒について解説を試みる。
著者
栗原 和枝 中井 康裕
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.1191-1202,1301, 2000-10-20 (Released:2009-11-10)
参考文献数
25

界面活性剤の形成する分子集合系の相互作用ならびに特性評価に対する表面力測定の適用を紹介する。表面力測定装置 (SFA) や原子間力顕微鏡 (AFM) について簡単に説明し, 分子集合系に関する詳細な研究が紹介されている。具体的には1) アンモニウム界面活性剤の自発的なベシクル形成に対する対イオンの効果の解明, 2) 塩添加によるベシクルの融合と凝集の機構と相互作用測定, 3)生体リン脂質の二分子膜間相互作用, 4) アミノ酸 (グリシン) 基間の水素結合相互作用, 5) 金属キレート脂質単分子間相互作用とキレート基であるイミノ二酢酸基の異なる解離状態, pH依存, ならびに銅錯体形成過程の評価, 6) 疎水性粒子または親水性粒子と気泡間の粒子-気泡相互作用における界面活性剤の影響の研究について述べられている。
著者
早瀬 文孝
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.1137-1145, 1997-10-20 (Released:2009-10-16)
参考文献数
45
被引用文献数
7 7

メイラード反応は食品の加工, 貯蔵時の化学的成分変化の中で最も重要な反応の一つである。この反応は非酵素的に進行し, 土壌中や生体内においても進行する。メイラード反応は酸化的反応と非酸化的反応に類別できる。酸化的反応において, グルコースの自動酸化や酸化的糖化反応 (glycoxidation) によって後期段階反応生成物 (AGE) が生成する。その反応過程に活性酸素が生成する。非酸化的反応においては3-デオキシグルコソン (3DG) のようなデオキシオソンが生成し, AGEの生成へと反応は進行する。一方, AGEの一種でもあるメラノイジンはヒドロキシルラジカル, 過酸化水素, スーパーオキシドのような活性酸素を強力に消去する。この消去活性はメラノイジンの抗酸化性や脱変異原性発現機構の一つとして説明できうる。
著者
村上 千秋 高橋 次郎 新保 國弘 丸山 武紀 新谷 〓
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.423-427,460, 1997-04-20 (Released:2009-10-16)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

有機培養及び無機培養におけるクロレラの脂質について調べた。1) 中性脂質量は乾物量当たり2~3g/100gであった。これらには両培養方法ともワックスエステルが 80%, トリアシルグリセリンが20%含まれていた。2) リン脂質は有機培養では8.6g/100g, 無機培養では6.2g/100gであった。これらの組成 (PG, PC, PE, PI) は両培養とも類似していたが, 脂肪酸組成は著しく異なっていた。3) 糖脂質は両培養とも5.7g/100gであった。これらの組成 (MGDG, DGDG, SQDG) 及びその脂肪酸組成は両培養で異なった。4) C16 : 4及び C18 : 4 の両脂肪酸は糖脂質及び PG を除くリン脂質で検出されたが, トリアシルグリセリンには検出されなかった。5) C16 : 1のトランス酸は PG のみ含まれていた。その含有量は有機培養で1.6%, 無機培養で2.3%であった。
著者
深澤 透 堤 崇史 東海林 茂 荏原 紘 丸山 武紀 新谷 〓
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.247-251,261, 1999-03-20 (Released:2009-11-10)
参考文献数
11
被引用文献数
4 18

5種類の有機リン系農薬 (ジクロルボス, パラチオンメチル, マラチオン, クロルピリホス及びクロルフェンビンホス) を大豆油に添加し, 脱ガム, 脱酸, 脱色及び脱臭工程を行った後の精製油中の農薬残留量を測定した。得られた結果は次のとおりである。 (1) 脱ガム処理では原油中の各リン系農薬はわずかに減少した。 (2) 脱酸処理では脱ガム油中のジクロルボスは明らかに減少したが, 他の農薬は約80%以上残存した。 (3) 脱色処理では吸着剤による脱酸油中のジクロルボス及びクロルフェンビンホスの減少率はそれぞれ約70%及び60%であった。一方マラチオン及びクロルピリホスの減少率はそれぞれ約30%及び5%であった。パラチオンメチルは活性炭を含む吸着剤を用いると極端に減少した。 (4) 260℃の脱臭処理により全農薬が完全に除去された。 (5) 原油中のリン系農薬 (ジクロルボス, パラチオンメチル, マラチオン, クロルピリホス及びクロルフェンビンホス) は一般の精製処理により完全に除去されることを確認した。
著者
飯田 隆雄
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.439-448,503, 1999-05-20 (Released:2009-11-10)
参考文献数
48

ダイオキシン類は都市ゴミや産業廃棄物等の焼却から発生し, 生活環境を汚染してきた。その結果, 食品を介した人体汚染が進み, 内分泌撹乱物質としても心配されている。油症は今から30年以上前に西日本一帯で発生した食用ライスオイルによる大規模な食中毒事件である。一見, ダイオキシンと何ら関係がないように見えるが, 実はライスオイルに混入していたポリ塩素化ダイベンゾフランをはじめとする, いわゆる, ダイオキシン類が原因で発生している。また, 台湾においても同様の事件が発生している。2, 3, 7, 8-四塩化ダイベンゾ-p-ダイオキシン (TCDD)はサリンの2から10倍も強い毒性を持つといわれ, 1997年2月にIARC (International Agency for Research on Cancer) はフランスのリヨンで開いた専門家会議でTCDDをヒトに対して発がん物質であるというカテゴリーに分類した。我々は, 日本人の母乳や血液等のダイオキシン類による汚染を調査してきた。本稿ではこのダイオキシン問題について人体汚染中心に紹介し, さらに, ダイオキシン類と日本の油症および台湾のYuchengについて概要を述べた。
著者
金子 秀雄
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.1049-1055,1198, 1999-10-20 (Released:2009-11-10)
参考文献数
17

女性ホルモン様作用を有する植物エストロゲンは現在200種類が知られており, その中でもイソフラボン類のcoumestrol, genisteinおよびdaidzeinは強い活性を示す。これらのイソフラボン類は, エストロゲンレセプターに対して高い親和性を示す。イソフラボン類は, 内分泌撹乱作用で話題となっている合成化合物 (例 : bisphenol-A, 4-nonylpheno1) よりも強いエストロゲン作用 (in vitro) を示し, また, 日本人の場合は大豆製品を通じて大量のイソフラボン類を摂取しているために内分泌撹乱作用が議論されている。一方, イソフラボン類は骨粗巻症治療, 前立腺がん予防, 乳がん予防, コレステロール低下作用等の種々の薬効があると報告され, 植物エストロゲン類のリスク/ベネフィトの両面をよりよく評価するために, さらなる分子レベルの研究の進展が期待される。
著者
大西 正男 伊藤 精亮
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.1213-1225, 1997-10-20 (Released:2009-10-16)
参考文献数
53
被引用文献数
5 10 5

代表的な植物スフィンゴ脂質であるグルコシルセラミド (セレブロシド) は細胞膜と液胞膜の主要な脂質成分のひとつである。一般にスフィンゴ脂質は構造的な要因として膜を強固にする機能を有することが知られているが, 植物細胞では高含量のセレブロシドの存在は低温条件下での膜の流動性制御に対してマイナスに作用するとともに局部的な膜の相転移状態を引き起こす可能性がある。現在, 植物の低温傷害あるいは凍結傷害と関連したスフィンゴ脂質の役割について多くの研究がなされている。本総説では, 動物スフィンゴ脂質とは顕著に異なる植物スフィンゴ脂質の構造知見を概説し, その中で低温感受性と低温耐性植物から分離したセレブロシドの分子種多様性について述べるとともに, DSC分析から明らかになったセレブロシド分子種の熱特性ならびに低温ストレスに対する応答としてのセレブロシド組成の変化について説明する。また, 著者らの植物スフィンゴ脂質の代謝に関する最近の研究成果についても紹介する。
著者
高津戸 秀 糸川 恵美子 阿部 文一 鳴海 安久
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.727-730,735, 2000-07-20 (Released:2009-11-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

エノコログサ属植物に含まれるステロールのガスクロマトグラフィーによる定量を行った。アワ (Setaria italica) では, シトステロールは種子, 葉, 茎及び根の各器官においても最も多く含まれていた。また, シトスタノールは種子に局在し, スティグマステロールは葉及び茎に局在していた。エノコログサ (S. viridis), オオエノコロ (S. X pycnocoma) 及びキンエノコロ (S. glauca) についても種子, 葉, 茎の器官別にステロール含量を解明した。シトスタノールはこれら3種において, アワよりは少ないながらも検出された。オオエノコロの種子, 葉, 茎における主要植物ステロール (カンペステロール, スティグマステロール及びシトステロール) の含量はアワのそれと良く似ていた。キンエノコロとエノコログサでは, 葉及び茎での主要ステロール含量は種子と比べて著しく少なく, アワやオオエノコロの葉及び茎の主要ステロール含量とは大きく異なっていた。同じイネ科エノコログサ属植物において, このような相違点が見られたことは化学分類的に興味深い。
著者
矢作 和行 岩井 秀隆
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 = Journal of Japan Oil Chemists' Society (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.1133-1143, 1996-10
被引用文献数
1 3

香粧品における界面活性剤は洗浄用途とスキンケア用途に大別される。シャンプーにおける界面活性剤の応用はマイルドな界面活性剤の開発とコンディショニング効果の付与が大きな流れになっている。更にどの素材を組み合わせるかによって大きく性能が異なることから配合組成が重要となる。リンスではカチオン性界面活性剤が毛髪に吸着残留してはじめて機能を発揮することから,機能開発の指針も毛髪への吸着残留性並びに毛髪表面物性をいかに変化させるかという視点で応用開発が進んでいる。スキンケア化粧料では高機能化が求められ,様々な有効成分を安定に分散させるための界面活性剤の選択が重要になってきた。さらにリポソームや液晶のように生体類似の高次構造体からなる新しい製剤の開発も行われている。
著者
松崎 寿 青山 稔 馬場 明 丸山 武紀 新谷 〓 柳田 晃良 菅野 道廣
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 = Journal of Japan Oil Chemists' Society (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.625-630, 2000-06-20
被引用文献数
1 2

13カ国で製造された菓子類に含まれるトランス酸含有率を, ガスクロマトグラフィーと銀イオン薄層クロマトグラフィーを併用して分析した。<BR>総トランス酸含有率はアメリカ (27.1%) が最も高く, 次いでカナダ (22.3%), スイス (18.7%) 及びベルギー (15.0%) であった。オランダ, ノルウェー, スウェーデン及びイギリスの総トランス酸含有率は11~12%であり, デンマーク, フィンランド及びドイツのそれは6~8%であった。オーストラリア及びイタリアの総トランス酸含有率はそれぞれ3.5%及び3.1%であり, イタリアは最低値を示した。<BR>菓子類に含まれていた主要なトランス異性体はC18 : 1トランス異性体であったが, C20 : 1及びC22 : 1トランス異性体も7銘柄でみられた。<BR>菓子類の総トランス酸含有率と家庭用マーガリンのそれを比較したところ, カナダ, アメリカ及びイギリスでは菓子類と同程度の値であった。対照的に, ベルギー, デンマーク, ドイツ及びオランダでは家庭用マーガリンよりも菓子類が高い値を示した。
著者
古谷野 哲夫
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 = Journal of Japan Oil Chemists' Society (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.1185-1191, 1999-10-20
被引用文献数
1 2

近年の油脂結晶化技術の進歩について, 特にココアバター及びこれに関連したトリアシルグリセリン (TAG) 類について概観した。ココアバターの主要構成成分である, POP, POS, SOSの多形現象をココアバター多形と比較検討し, さらにこれらTAGの結晶化挙動の解析結果から, チョコレート製造におけるテンパリング工程で起こっている現象を考察した。また, 従来のテンパリング工程に変わる方法として, BOB (β<SUB>2</SUB>型) 油脂結晶粉末添加法とこれにより得られるブルーム防止法についてまとめた。さらに, OSOとSOSが等量で分子化合物を形成する特徴を利用し, チョコレート物性を大きく変化させる方法を紹介した。