- 著者
-
井上 芳光
山瀧 夕紀
谷 玲子
- 出版者
- 日本生理人類学会
- 雑誌
- 日本生理人類学会誌 (ISSN:13423215)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, no.1, pp.1-6, 2006
- 参考文献数
- 15
本研究では,母親の運動経験や活動性が幼児の運動量や運動能力に及ぼす影響を検討するため,健康な2〜4歳児男女75名に対して日常生活下の歩行量と3種目の運動能力テスト(テニスボール投げ・20m走・立ち幅跳び),彼らの母親に対して日常生活下の歩行量および運動歴・運動スポーツに対する価値観などを問うアンケート調査をそれぞれ実施した.アンケート結果と母親の日常歩行量の関係において,母親の運動経験年数が多い者が少ない者より日常歩行量が有意に多かった.アンケートで母親が『活動的である』および『外に出かけることが好き』と回答した2・3歳児の日常歩行量は,母親が『活動的でない』および『家の中で過ごすことが好きだ』と回答した2・3歳児の歩行量より有意に多かった.なお,この関係は4歳児ではみられなかった.日常生活下の歩行量において,母親と子どもとの間に有意な正の相関関係が2・3歳児でも4歳児でも認められた.走・投・跳に関する子どもの運動能力テストと子どもの日常歩行量の関連性において,2・3歳児では,ボール投げvs.歩行量に有意な相関が認められなかったものの,20m走や立ち幅跳びは歩行量と有意な相関関係を有した.4歳児では20m走や立ち幅跳びとともに,ボール投げでも歩行量と有意な相関傾向がみられた.以上の結果,母親の運動歴が母親自身の日常歩行量に影響し,それと母親の活動性が子どもの歩行量に反映し,ひいては子どもの運動能力にも影響する可能性が示唆された.