著者
柴山 元彦 平岡 由次 池田 正
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第III部門, 自然科学・応用科学 (ISSN:13457209)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.9-14, 2005-09-30

兵庫県神戸市などに位置する六甲山地の花崗岩体において自然放射線量率(地表γ線)の測定を行った。測定地点は、六甲山の花崗岩分布地域で124点である。測定結果の平均値は80.3±22.8nGy/h、となり、これらの値は日本の花崗岩の平均値(73±24)と比べると少し高い。Γ線量率の強度分布は岩体の北西部に向かって次第に高くなる傾向がみられた。また、六甲山体中に領家帯と山陽帯の花崗岩の境界線が存在しγ線量率に顕著な差が生じた。領家帯に属する花崗岩の平均γ線量率は54.6nGy/h、山陽帯に属する花崗岩の平均γ線量率は85.1nGy/hとなった。この傾向は大阪府においても同様な傾向が報告されている。
著者
高橋 哲也 中須賀 巧 赤松 喜久
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 第3部門 自然科学・応用科学 (ISSN:13457209)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.43-51, 2010-09

本研究の目的は,恒常性のある「見る」運動(一点注視)と多様性のある「見る」運動(分散注視)が,それぞれクローズドスキルの運動学習に及ぼす影響を明らかにすることであった。本研究ではクローズドスキルの運動課題としてダーツを用いて行われた。Day1からDay3までの練習期間において,分散注視型の注視課題を与えた群の得点は低い値を示し向上もみられなかった。しかし,注視課題を与えずに行ったPost Test及び保持テストの得点がPre Testの得点を上回った。また,一点注視群の得点との間には逆転現象が見られた。本研究で得られた結果は,多様性注視課題をもって練習を行うことで,多様性筋運動による練習と同等もしくはそれに近い効果が得られる可能性があることを示唆している。The purpose of this study was to show clearly the effects of "closed observation" and "dispersed observation" give the motor learning of the closed skills. In this study we used darts as the motor task. During practice period, Day1 to Day3, "dispersed observation" group showed low scores and their scores didn't improve. However, in post test and keeping of skills test, their scores exceeded pre test and reversed "closed observation" group's. The results of this study showed possibility of to practice with "variability vision control" is equal or nearly to practice with "variability movement".
著者
町頭 義朗 佐藤 克明
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第3部門, 自然科学・応用科学 (ISSN:13457209)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.7-15, 2012-09

平面上に4点を与えたとき,その4点を通る放物線が存在するための必要十分条件は,4点が凸四角形の頂点となることである。また一般に,その時2本の放物線が存在する。放物線はコンパスと定規だけでは作図出来ないが,4点が与えられたときに,その4点を通る放物線の焦点と準線をコンパスと定規で求めることは可能である。本論文では,その求め方を論じ,幾何学ソフトウェアKSEG で,4点を通る放物線を描くやり方を述べる。
著者
柴山 元彦 中川 康一
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第III部門, 自然科学・応用科学 (ISSN:13457209)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.89-96, 2001-08

1999年9月21日,台湾中部を震源とするマグニチュード7.3(Mw)の強い地震が起きた。この地震によって地表に現われた東籠埔地震断層は南北方向で,長さ80kmにのぼる地震断層である。今回初めて,この断層を横断する7測線について,放射能探査を行った。その結果いずれの測線においても断層部分で高濃度の放射能が検出された。筆者らは,兵庫県南部地震の地震断層である野島断層でも高放射能値を観測してきたが,台湾でもこれが検出された結果となった。The Taiwan Chi-Chi great earthquake, Magnitude 7.3 (Mw) occurred in central Taiwan at 1:47am on September 21st, 1999. As a result of the earthquake, the Cher-Lung-Pu Earthquake Fault that was in north-south direction was exposed on the surface for over 80km in length. The radioactivity survey was carried out along seven observation lines, across the fault. The high radioactivity peaks have been observed over the fault line. Similar phenomenon has been observed by the authors across the Nojima Fault and other earthquake faults in Japan. This type of phenomenon is reported for the first time in the earthquake faults caused by this Taiwan great earthquake.
著者
白石 龍生 長光 李恵 千田 幸美
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第3部門, 自然科学・応用科学 (ISSN:13457209)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.51-56, 2011-09

女子大学生を対象に,携帯電話を介したインターネットへの依存と自尊感情とのかかわりについて調査を行った。自尊感情が低いものほどインターネットに依存する傾向が強いと考えていたが,両者には強い相関関係は認められなかった。今後は,メールの回数や時間などについても明らかにする必要があると考えている。自尊感情を育むにはどうすればよいか継続的な研究が望まれるところである。In recent years, there are many people who take mobile phone. They access the internet by mobile phone. The present study examined the relation between the tendency toward internet dependence and self-esteem as life skill. 242 college students were answered the questionnaire including the tendency toward internet dependence, the time of using mobile phone, the duration of using mobile phone for a day and self-esteem. Self-esteem was assessed by Rosenberg's self-esteem scale. 41.5% of the subjects started using mobile phone since junior high school age. Mean score of the tendency toward internet dependence was 7.74 (SD4.22) and mean score of self-esteem was 25.35 (SD3.05), respectively. The subjects used mobile phone over 150 minutes for a day indicated high score of the tendency toward internet dependence significantly. There was not a close relationship between the tendency toward internet dependence and self -esteem. It is necessary to investigate the effect of another life skill on the tendency toward internet dependence.
著者
小倉 和幸 新井 彰 定金 晃三 松本 桂
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第3部門, 自然科学・応用科学 (ISSN:13457209)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.75-89, 2014-09

我々は大阪教育大学天文台51cm反射望遠鏡(以下51cm望遠鏡)における分光観測システムを構築した。これまで51cm望遠鏡を利用した撮像・測光観測によって様々な成果を挙げてきた。51cm望遠鏡での撮像・測光観測に加え分光観測が可能になればさらに学生の研究テーマが広がるとともに,設置から20年が経過する51cm望遠鏡の利用価値を大幅に高めることにつながる。そこで我々は小型望遠鏡での使用を想定して開発されたLHIRES IIIを用いて分光観測システムの構築に向けて機材の調節と試験観測を行った。その結果,明るい天体についてのスペクトルを得ることができた。本稿ではオリオン座δ星といっかくじゅう座V959 (2012年いっかくじゅう座新星)のスペクトルを用いて分光観測システムの性能を概算した。その結果,連星系のスペクトル変化や,明るい新星のスペクトルを観測可能であることが示せた。いくつかの課題点は残るが51cm望遠鏡による分光観測の基礎が構築できた。We developed a spectroscopic observation system of the 51cm telescope as an additional means of astronomical observation at Osaka Kyoiku University. While the 51cm telescope has been used for photometric observations and yield many scientific results, we can naturally expect that spectroscopic observation should bring more valuable information on astrophysics for us. We use LHIRES III sectrograph to construct the system of spectroscopy, and obtained optical spectra of some bright astronomical objects. We evaluated the performance of the system, especially by using the spectra of δ Ori and V959 Mon (Nova Mon 2012). Those tests indicated that we were able to obtain essecial informations required for astrophysical researchs of binary systems and classical novae, and the system is a promising tool for spectroscopic investigations of relatively bright objects by the 51cm telescope.
著者
小川 力也 長田 芳和 紀平 肇
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第III部門, 自然科学・応用科学 (ISSN:13457209)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.33-55, 2000-08
被引用文献数
3

日本の固有種イタセンパラ(コイ科タナゴ亜科)は, その狭い分布域と絶滅の危機から, 天然記念物と絶滅危惧IA類に位置づけられている。本種を河川の中で保護・増殖するためには, 本種と本種が卵を産みつける二枚貝が繁殖する環境の特徴を明らかにする必要がある。そこで今回は, 淀川に生息するイタセンパラと生息環境に関するこれまでの研究をレビューした。また, 文化庁と環境庁の許可を得て, 本種の産卵, 貝内の卵・仔魚のはじめての写真を掲載した。本種は秋に産卵し, 仔魚はほぼ半年の間貝内で越冬した後に泳出する。淀川のイタセンパラの本来の繁殖場所は, 下流域に発達した河川内氾濫原に存在する池(通称ワンド)の中でも, 本流から隔離された小型の浅い池であることが示唆された。それらの池の水位は, 伏流水を通じて本流の水位と同調して変動する。そのため, 池には本流水が冠水し直接流入する時期(増水時)と氾濫原内に低水位で孤立する時期(減水時)が季節的に繰り返される。イタセンパラの繁殖に関する生態学的研究は, この観点にたって行なうことが重要である。The Japanese endemic bitterling, Acheilognathus longipinnis Regan was designated as both a natural monument and a critically endangered species for the reason of its restricted distribution and a sense of crisis of extinction in Japan. It is evident that the investigations on habitats of A. longipinnis and mussels were necessary for the purpose of preservation of the bitterling. In this paper, we summarized the studies that were carried out at the Yodo River, Osaka Prefecture, Japan. The first photographs of egg deposition into a mussel and eggs/larvae in the mussel were also published by permission both of the Agency for Cultural Affirs and the Environmental Agency. A. longipinnis deposittheir eggs in autumn, and larvae swim out from the mussel in May and early June, after passing the winter in the mussel during a half year. It was suggested that A. longipinnis mainly reproduced in small and shallow pools in the floodplain formed in the lower reach of the Yodo River. The floodplain pools where isolated from the main channel were filled occasionally by river flooding mainly in early summer and autumn. On the other hand, a small water body was remained in the pools through groundwater seepage in the lower water state of the river in winter. We must reseach the habitats both of A. longipinnis and mussels from the viewpoint of seasonal fluctuations in water level of the floodplain pools.
著者
神鳥 和彦 松木 美栄 石川 達雄 広瀬 明浩
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第III部門, 自然科学・応用科学 (ISSN:13457209)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.23-32, 2006-09-29

今日,教育現場における大きな問題の一つである理科離れの原因として,子供達の身の回りのものに対する好奇心の低下が考えられる。理科の授業で行われる実験は,理科に村して好奇心を子供達に持たせる機会となるにも関わらず,その実施状況は分かっていなかった。そこで,大阪,京都,奈良の3府県の公立中学校で,これまで行われてきた化学・生物・物理のアンケート調査に続き,地学の実験実施状況を調査した所,これまでに行われてきた実験よりも大きく実施率が低下している事が分かった。これは,地学分野が時間的,地理的,経済的に実験を授業で取り入れ難い教科であるというばかりでなく,教師の経験や知識の深さ等も影響しているものと考えられた。今回の結果から,地学という教科が,今日の教育においてどのような位置付けをされているのかを,今一度考える必要性が示唆された。
著者
垣本 徹
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第3部門, 自然科学・応用科学 (ISSN:13457209)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.27-35, 2011-09

マイクロマウス競技はその歴史は古く,日本では1980年から開催されている草分け的なロボットコンテストである。本研究室では2004年度より6年間に渡り,マイクロマウスの開発をおこない,フレッシュマンクラスに延べ12試合に出場した。結果は完走し記録を残すこと3回,特別賞,ニューテクノロジー賞を計4回受賞することができた。駆動系では,四足歩行マウスの試作や車輪駆動用に模型用サーボモータを利用するなどの試みをおこなった。また,正確な1区間走行をおこなうために方位センサやロータリーエンコーダ,測距センサ,光学センサなどを用いた。迷路探索アルゴリズムには拡張左手法,求芯法,足立法を用いた。We have developed the micromouse for six years from 2004. And, we participated in the All-Japan Micromouse Contest 12 times, and were able to reach a goal three times. In addition, we won the new-technology prize twice and special prize twice. Driving system of the micromouse is using a pulse motor or a modified servo motor for radio controller model, and the detection system for wall is using electric compass, rotary encoder, distance sensor, and reflection type optical sensor. The algorithm that searched for the maze used the improved Wall Following, the method advanced toward center-goal, and the Adachi Method.
著者
鯖田 秀樹
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第III部門, 自然科学・応用科学 (ISSN:13457209)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.147-154, 2000-01

言語に関する諸現象のなかには自然現象と似ているものが数多く見出される。そのような現象の解明,解釈には単に歴史的いきさつを考察したり,他言語との比較つまり比較言語学的考察のみにたよるより,自然現象の解明に用いられる手法による方が分かりやすい場合がある。逆に自然現象の解明,理解に言語現象との類推を用いることができる。この論文(I)では前者について2,3の試みをしている。冠詞の生成に関する考察から近未来において日本語にも冠詞が現出する可能性が考えられることが述べられている。ついで,イタリア語の名詞の語尾に関して,組合わせの考えからa, e, i, oが使われることを示し,歴史的いきさつがあるにしろ,現在の形をとらざるを得ないことを示している。自然現象の理解に言語の現象がヒントになること等の考察は論文(II)に述べられる。There are many linguistic phenomena which have common properties with phenomena in Nature. Usually, one uses the methods of comparative linguistics to clarify these phenomena or studies them from the historical point of view. But, it is better to study them with the scientific methods in some cases. Conversely, we can use analogy between linguistics and natural science to investigate phenomena in Nature. We try to study the former case in this short article (I). From the historical investigations of appearance of articles we may say that there will also appear the words, 'articles' in Japanese language. Next, for the declension of noun in Italian language it is shown from the combinatorial analysis that four cardinal vowels, a, e, i, o, can be used as present forms. Apart from the historical details it is only mathematical fact. The case where methods to study linguistic phenomena help us to investigate phenomena in Nature will be treated in the paper II.
著者
山口 要子 永井 由美子 山川 正信
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第3部門, 自然科学・応用科学 (ISSN:13457209)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.15-22, 2015-02

整容における毎朝の整髪が患者のリハビリ意欲や身だしなみに及ぼす効果について検討した。整髪後のフェイススケール得点は整髪前に比べて有意に改善された(p<0.05)。また,整髪前後の気分変化では整髪後に気持の穏やかさ(p<0.01),体調・疲労感(p<0.05)において有意な改善を認めた。整髪により患者が気持ちがよいと感じることと,リハビリ意欲との間に関連を認めた(p<0.05)。整髪による身だしなみへの波及効果については,更衣し服装を整える,化粧を行うなどの変化が見られ,更衣し服装を整えたこととリハビリ意欲との間に有意な関連が認められ(p<0.05),整髪はリハビリ意欲の改善につながることが明らかとなった。
著者
下村 奈々子 黒田 圭子 松本 鉄也
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第3部門, 自然科学・応用科学 (ISSN:13457209)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.57-64, 2014-02

大阪教育大学の学生32名を対象とし,心拍変動に対する精油の効果について検討を行った。精油はイランイラン,ローズマリー,ペパーミントを使用した。心拍変動は精油吸入前の前後で比較した。心拍変動の高周波(High Frequency: HF)成分,低周波(Low Frequency : LF)成分を測定し,副交感神経の指標にはHF成分,交感神経活性の指標にはLF/HFを用いた。精油の嗜好調査も行い,心拍変動に対する精油の効果におよぼす嗜好の影響も検討した。 選択した精油を好きな場合には副交感神経機能が活性化し,そうで無い場合には交感神経機能が活性化する傾向を認めた。特に,ローズマリーを好きな群ではLF/HFは有意に減少した。 ローズマリーは交感神経機能を活性化する報告が多いが,その匂いが好みの場合には精油が持つ本来の効果を越えて副交感神経機能を活性化することを示唆している。すなわち,精油自体の特徴,効能も重要であるが,さらなる副交感神経機能の活性化を得るためには各々の精油の嗜好を考慮する必要がある。
著者
石原 真穂 坂口 守男
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第3部門, 自然科学・応用科学 (ISSN:13457209)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.17-35, 2014-09

本研究は,アンケート調査と味覚測定により,睡眠習慣や気分状態が,味覚感受性にどのように影響を及ぼすのかについて明らかにすることを目的とした。対象は20代から30代の男女72名である。対象特性の把握では,分布の偏りの検討や全国統計と比較し,平均的な集団であると確認された。その後重回帰分析を行い,甘味の検知,塩味の検知と認知,酸味の検知閾値において,睡眠の質と相関関係にあり,また睡眠の質に影響を及ぼすことがわかった。本研究から,生活習慣病の要因である食習慣と睡眠習慣は相互に影響を及ぼしている可能性が考えられ,生活習慣病へのアプローチは両者を包括した形で進めて行くべきことが示唆された。This study aims to reveal how adults' sleeping habits or their profile of mood states influences taste sensitivities. Preliminary investigations of 72 Japanese participants in their 20s and 30s confirmed that their lifestyle, sleeping habits, profile of mood states, and taste sensitivity were normal in Japan. Their taste sensitivities for detecting and recognizing sweetness, saltiness, sourness, and bitterness were examined. Correlations were recognized between each of the sensitivities for detection sweetness, saltiness, and sourness, moreover for recognizing saltiness and the quality of sleep. This result indicates the possibility that the quality of sleep and taste sensitivities, which may change dietary habits and therefore cause lifestyle-related-diseases, affect each other. Simultaneous approach for improvements in sleeping habits and dietary habits should be effective to prevent lifestyle-related-diseases.
著者
永井 由美子 奥野 めぐみ 山下 茜
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第3部門, 自然科学・応用科学 (ISSN:13457209)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.37-44, 2012-02

本研究は,休息時における歯磨き行為による疲労回復の効果について検討したものである。実験は計算課題を20分間行った後,10分間の椅座位安静とした。次に休息時に歯磨きをする群(歯磨き群)と歯磨きをしないで立った状態(立位待機群)とした。さらに10分間の安静を保った。安静時には生理的反応として心拍変動とフリッカー値を,心理的反応としてPOMS短縮版により感情・気分の状態を測定した。被験者は大学生(男子16名,女子14名)とした。実験Aでは,歯磨き群16名と立位待機群14名で比較を行った。実験Bでは,歯磨き群のみを対象とし,男子8名と女子8名で性別による比較を行った。 実験Aでは,副交感神経活動は,計算後と休息後の変化量が歯磨き群に比べて立位待機群が増加する傾向を示した。フリッカー値は,歯磨き群が立位待機群と比較して計算後よりも休息後の方が有意に高いことが認められた。POMSでは,T得点の変化量において歯磨き群の方が立位待機群に比較して疲労が軽減し,活気が上昇することが認められた。実験Bでは,男子の方が女子よりも歯磨きをすることによりフリッカーの値が有意に高いことが認められた。以上の結果から休息時の歯磨きは,身体をリラックス状態にさせて,大脳皮質の活動水準を高くして,疲労の気分を軽減することが示唆された。The purpose of this study examined the effect that recovery from fatigue by tooth brushing behavior in rest was restorativeness. The experimental condition assumed it a group of tooth brushing and a group of standing readiness. A subject calculated an experimental procedure for 20 minutes and rest for 10 minutes, rest of presence tooth brushing, and rest for 10 minutes more. In experimental A, we compared a measurement item with a group of tooth brushing between a group of standing readiness. In experimental B, only a group of tooth brushing does subjects, and subjects were eight male and eight female. In experimental A, quantity of change after rest compared parasympathetic nerve with a group of tooth brushing after calculation, and a standing position readiness group showed the determination which increased. A group of tooth brushing compared flicker value with a group of standing readiness, and rest was significant, and a high thing was recognized from the calculation back. In POMS, a group of tooth brushing compared it in a standing readiness group in quantity of change of a T score, and fatigue reduced it, and that animation rose was recognized. In experimental B, flicker value was significantly high was recognized by male tooth brushing its teeth than female. As for the tooth brushing of rest, as for the subjects, relaxation was in a condition by this study. Therefore, as for the tooth brushing behavior of rest, this study was suggested that it was effective methods.
著者
坂口 守男 朝井 均 朝井 忠 弓庭 喜美子
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 3 自然科学・応用科学 (ISSN:13457209)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.39-48, 2007-09

「生活の場で見るメンタルヘルス」の第二回目として過疎地で生活する高齢者のメンタルヘルスについて論じた。過疎地における高齢者の生活上の負荷を検討するために6つの事例を提示した。事例1は強盗によって安全感が揺るがされたケース,事例2は家庭内不和のため家族から離れて孤独の中で生活しているケース,事例3は夫に支えられて生活している認知症のケース,事例4は妄想的言動が顕在化したケース,事例5は夫を不慮の事故で失い一人暮らしを続けているケース,事例6は夫を癌で亡くして一人暮らしを続けているケースである。これらのケースに見られる恐怖体験,知的能力の低下,精神症状の出現,配偶者との死別などは過疎地の高齢者の生活をしばしば妨げる要因となる。しかし長年住み慣れた自然との結びつきや人と人との程よい精神的距離は過疎地ならではのものであり,高齢者のメンタルヘルスにとって特に重要なものである。また,配偶者の死亡原因の分析では大量飲酒者,喫煙者は悪性腫瘍,中でも胃癌の罹患率が高く,その平均死亡年齢は65.8歳で全体の平均死亡年齢よりも5歳低くなった。残された者の生活上の負担やその後のメンタルヘルスへの影響の甚大さを鑑み,配偶者の大量飲酒と喫煙に関してはそれぞれの「生のストーリー」をよく理解した上で健康教育活動を展開する必要性があることを指摘した。Mental health of senior citizens who lived in a certain depopulated village were studied. The population of this village is only 577 (male is 282, female is 295). Elder people aged 65 years and older are 229 and occupy 40 % of the population. 52 of them are living alone (male is 19, female is 33). We investigated factors which disturbed the living of 40 elder people (33 females and 7 males) in the depopulated area through door-to-door survey. A fear experiences, a fall of intellectual activity, the onset of mental symptoms and bereavement with spouse were regarded as factors which interfere with the living in the depopulated area. Nature and rural human relations were considered good factors for the living there. 28 women of a single life lost their husbands in a disease. 16 of their husbands were a large quantity of drinker and smoker. 8 of them died of carcinoma and 3 died for cerebrovascular disorder. Positive health activity for such drinkers and smokers need to be practiced to make them stop liquor and cigarettes. But it will not be effective too much if we do not understand the living background that they came to often drink and smoke.
著者
榎木 泰介 今井 唯 山中 にな子
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第3部門, 自然科学・応用科学 (ISSN:13457209)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.49-55, 2014-02

本研究は,大学体育会アメリカンフットボール部に所属する男子大学生70名を対象として,スポーツ活動における障害と外傷の発生について検討を行った。集計を行った2011年と2012年に発生した障害および外傷を対象に,発症の部位について,負傷者の属性(ポジション・学年)と調査年度による比較を行った。発症部位の分類は,1)頭・頚部,2)体幹(腹部・背部)および腰部,3)肩,4)腕および手・指部,5)大腿部,6)膝関節,7)下肢および足部である。調査対象の集団について,それぞれの身体組成を反映する所属ポジションから3群に分け,バックス群(B群),ミドル群(M群),ライン群(L群)とした。 集計を行った2年間における総受傷件数では,2011年と比較して2012年で2.2倍に増加した。1人当たりの平均受傷件数をみると,B群とL群において,2011年と比較して2012年で有意に高い値を示した。学年間の比較では,M群において高学年群が有意な高値を示した。受傷部位では,2012年に膝関節の負傷が増加しており,特にM群で顕著であった。 今回の対象集団では,2012年度において運動(練習・試合)の強度・頻度・時間が高まり,受傷件数が増加したと考えられる。そのような状況において増加する可能性のある受傷部位は,L群では脳震盪を含む頭・頚部,M群では前十字靱帯損傷を中心とした膝関節,B群では肩関節であった。これらのスポーツ障害および外傷を未然に防ぐには,テーピングや可動域を固定する装具などの活用,ポジションおよび競技固有の技能を支持する骨格筋群を中心としたトレーニング,学年や運動能力を考慮した練習強度と年間計画の設定などが重要である。This study investigated the occurrence of sports injuries and disorders in 70 students who belong to the collegiate American football team. We collected and surveyed a large number of sports injuries, trauma, failure and disorders occurred in 2011 and 2012. The case reports were divided into 7 groups according to following body sites, 1) head and neck, 2) body trunk(abdomen, lib and back), 3) shoulder joint, 4) arm, hand and finger, 5) femoral region, 6) knee joint, 7) lower leg and foot. These data were compared by the year, position in football and school grade. In addition, we set three groups from the position reflecting their body composition profile. There were bucks group(B), middle group(M), and lines group(L). The total number of injuries was increased to 2.2 times in 2012 compared to 2011. The average number of injuries per player, L and B group were significantly higher in 2012 compared to 2011. In the M group, the upper grades(senior and junior)showed a significant higher injury rate than lower grade(junior and freshmen). Moreover, M group had a tendency that injured risk of knee joint site was increased in 2012. It is considered that increased playing time, intensity and frequency in practices and games in 2012 had strong correlation with significantly increased number of injuries. Distinctive injuries related with the football position were 1) head and neck damages including a concussion in L group, 2) knee ligament damages in M group and 3) shoulder joint damages in B group. To forestall these sports injuries, utilize of the equipments and sports taping for fixing the range of motion, introduce the physical training, athletic rehabilitation and physiotherapy with a focus on the playing movement that supports for position-oriented football skills.
著者
中山 匡 石沢 京香
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第III部門, 自然科学・応用科学 (ISSN:13457209)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.89-94, 1997-08

The cellular protein profile was produced by two-dimensional polyacrylamide gel electrophoresis (2D-gel electrophoresis) on whole cell extract of an halophilic archaea, Halobacterium halobium, which was prepared from late log-phase cells grown on basal salts' medium containing 10% Sehgal and Gibbon's complex medium (V/V) at 55℃. The 242 proteins were separated. Two-hundred and three of them were detected on the similar protein profile obtained from 40℃-grown cell extract by 2-D gel electrophoresis. Although significant overlap was noted during comparison of protein compositions obtained from between 40℃ and 55℃, only a few proteins (a total of 39) were newly detected from 55℃-frown cell extract and cataloged in reference to a standard polypeptide map (high-temperature specific protein : Htp). Polypepitdes (a total of 50) quantitatively increased (greater than 5-fold) and 28 proteins decreased (less than 1/5) during 55℃-cultuvation55度で培養したHalobacterium halobiumの細胞構成タンパク質を2次元電気泳動法で調べた。本条件で242種のポリペプチドが分離され,そのうち203種が40度培養で得られた細胞を構成する蛋白質と共通であり,39種が55度培養で新たに確認された(高温特異的タンパク質:Htp)。さらに11種のポリペプチドで40度培養時より5培以上その量が増加していた。また28種のポリペプチドで40度培養時よりその量が1/5減少していた。これらは高温で培養した本菌を構成するタンパク質の特徴であると考えられる。