著者
圷 洋一 Yoichi AKUTSU
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.127-137, 2002-03

社会福祉にかぎらずどの制度領域にも学問領域にも「対象」はある。社会福祉における「対象」の理解と把握(対象論)そして対応には特徴的な身振りや構えがみられる。本稿ではそこに「本質化」ないし「本質主義」をみとめ、これを批判的に検討する。社会福祉の対象論・対象化にみられる本質主義・本質化を反省していくための思考の枠組や立場として、本稿では「批判的福祉対象論」を設定する。そして社会福祉を「必要充足空間」としてとらえかえしその透明化をはかる。ここでの考察は、社会福祉のさまざまな局面や文脈における本質主義・本質化に理論的な反省を加えていくための準備作業でもある。
著者
Du Xiao-Ming 正山 征洋 Xiao-Ming DU Yukihiro SHOYAMA
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.119-130, 2011

本総説において以下の知見を得たのでこれらについて述べる。1)マウスを用いた金線連の薬理活性、特に肝障害改善作用について検討した。2)ボランテイアによる脂質関連障害の改善傾向を認めた。3)金線連の粗エキスから脂質代謝改善作用を指標として kinsenoside を単離し、本化合物が活性本体であることを明らかにした。ラン科に属する金線連(Anoectochilus formosanus Hayata)は台湾から沖縄にかけて自生しており、高血圧、肺障害、肝障害、小児の発育障害等に用いられてきた。原料の枯渇から金線連の近縁種が代用として用いられるようになってきた。かかる現状から研究材料を確保する目的で、金線連の完熟種子を培地へ無菌的に播種し、発芽後幼植物を得た。このものを液体培地で培養し、植物体を得て実験材料とした。金線連のエキスは四塩化炭素で誘導する肝細胞障害を抑制することが判明した。また、マウスの体重増加や肝重量増加を抑制した。さらにマウスの肝臓や血清中の脂質を低下させる作用が認められた。ボランテイアによる金線連エキスの臨床試験の結果、健常者には作用しないが、脂質やコレステロール、またその両者が高い患者に対しては VLDL や LDL、ALT、AST 値を下げることが明らかとなった。培養金線連を抽出しカラムクロマトにて成分の精製単離を行い、8種の化合物を単離し構造を明らかにした。その中で量的にも多い kinsenoside についてはX-線解析を行い、絶対構造を明らかにした。金線連エキスにつき脂質代謝を指標として分画を行い、kinsenoside がその活性本体であることを明らかにした。Kinsenoside を金線連エキス同様の評価系にて評価した結果、肝臓や子宮の脂質量低下作用があることが明らかとなった。脂肪肝を発症させたマウスに kinsenoside を与えて顕微鏡により調査した結果、0.2%の kinsenoside を与えることにより脂肪肝は改善されることが明らかとなった。
著者
黒山 竜太 下田 芳幸 Ryuta KUROYAMA Yoshiyuki SHIMODA
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.13-20, 2010

本研究では、大学生の感じるストレスに対してストレスコーピングのあり方がどのように関連しているか、特に先延ばし傾向が及ぼす影響について男女別に検討した。対象者は大学生315名であった。質問紙は、ストレスコーピングに関連のあるとされる共感尺度、先延ばし傾向尺度、対人ストレスコーピング尺度、ストレス反応尺度で構成された。「抑うつ不安」「不機嫌怒り」「無気力」からなるストレス反応について重回帰分析を行った結果、男子では全てのストレス反応に対して先延ばし傾向の影響が大きいことが明らかとなった。また、女子では先延ばし傾向よりも被影響性の影響が大きいことがわかった。以上よりストレス反応に影響を与える傾向やコーピング手段が男女で異なり、ストレス反応の低減のために男子は問題を後回しにしないことや独りよがりにならないこと、女子は男子の傾向に加えて周囲に影響を受けすぎないことが重要であることが示唆された。
著者
松本 知子 Tomoko MATSUMOTO
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.63-73, 2017-03

英語のコミュニケーション能力向上のための指導法についてはこれまで多く議論されてきたが、文法指導とコミュニカティブな学習とを統合する指導法についてはあまり議論されていない。これはコミュニケーション能力が文法の基礎力なしで向上することを暗示していると捉えられるかもしれない。また、このような見方で学習をする学習者は、文法学習を機械的な暗記による活動として捉えかねない。本研究は、「情報や考えを理解し、適切に伝えるコミュニケーション能力」の向上を目的とし、効果的なコミュニカティブ文法指導法について考察する。さらに、学習者にとって文脈の理解が助けとなる映画を利用した指導法について述べる。具体的には、過去形の「コア」である距離感に焦点をあて、助動詞 will と would や wonder を使った構文と wondered や was wondering を使った構文の丁寧さの度合いを理解できる方法について言及する。最後に、過去形のコアを活用して仮定法過去の指導法についても述べる。
著者
宮本 彩 Aya MIYAMOTO
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.59-69, 2019

本稿は、日本におけるアンプティサッカーの競技普及ならびに競技力向上に向けた取り組みの変遷をまとめるとともに、世界の動向を概説するものである。日本におけるアンプティサッカーの変遷は、各関係機関のホームページや過去に発行されたパンフレット、新聞等の掲載記事の情報を基に、①特定非営利活動法人日本アンプティサッカー協会、②国内のアンプティサッカー大会、③アンプティサッカー日本代表のワールドカップに向けた取り組みについてまとめた。世界の動向については、各関係機関のホームページ、書籍および学術論文を基に、①アンプティサッカーの歴史、②最近の競技発展の動き、③学術研究についてまとめた。アンプティサッカーは、高価な専用器具を用いないため、気軽に楽しめるスポーツとして人気が高まっており、今後も世界的な競技普及が進むと推察される。
著者
安徳 勝憲
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.21-31, 2020-03

松下電器産業(現パナソニック)創業者松下幸之助(以下幸之助)は、戦後復興途上の昭和26年に市場調査のため訪米した。滞在中に多くの工場を視察した幸之助は、自社も含めた日本の製造業の遅れを痛感せざるを得なかった。3か月後、幸之助は日本の素晴らしい景観を生かしたインバウンド観光の振興こそが戦後復興の鍵ではないかとの考えを携えて帰国した。そして『文藝春秋』昭和29年(1954)5月号に発表した「観光立国の辨」において、①観光省を新設し、観光大臣を任命して、この大臣を総理、副総理に次ぐ重要ポストに置く、②国民に観光に対する強い自覚を促す、③各国に観光大使を送って、大いに宣伝啓蒙する、そして④いくつかの国立大学を観光大学に改編して観光ガイドを養成するといった具体的なインバウンド観光振興策を提言したのである。同年の外国人入国者数がわずか5万人足らずであったことを勘案すれば、幸之助の先見の明に驚かされる。その後も、工場立地による瀬戸内海景観の棄損に警鐘を鳴らすなど、幸之助は松下電器産業経営の傍ら、国内観光資源の維持の大事さを訴え続けた。本稿は、幸之助が「観光立国の辨」を発表するに至った軌跡をたどるとともに、「経営の神様」という呼び名にふさわしい厳密なソロバン勘定と緻密な論理の組み立て方を紹介するものである。没後平成24年(2012)、日本の観光振興へ多大な貢献をしたとして、幸之助は観光庁長官表彰を受賞している。

1 0 0 0 OA 大麻研究

著者
正山 征洋 Yukihiro SHOYAMA
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.265-274, 2008-03

マリファナはアサから生産され、世界各国地域により色々な名称で呼ばれる。マリファナは特異のカンナビノイドと称するアルキールフェノールを含有する。それらの中で最も強い幻覚活性を持つのが THC である。THCA 生合成酵素を新鮮なアサから精製・単離し、その性状を明らかにした。THCA 生合成酵素は CBGA から環を形成して THCA を生成する過程を触媒する。また、THCA 生合成酵素はいかなる補酵素も要求しないので内在性の FAD 等の補酵素を持つことが予想される。そこで THCA 生合成酵素をクローニングし、昆虫細胞系で大量発現し結晶化に成功した。X-線結晶解析により全構造を明らかにした。これにより FAD がヒスチジン、システインと結合しポケット付近に位置すること、チロシンが環形成に必須であることを明らかにした。THCA 生合成酵素はアサの腺毛で生合成されそこで大麻成分を生合成することが明らかとなった。
著者
野嶽 勇一 深澤 昌史 榊原 隆三 Yuichi NODAKE Masashi FUKASAWA Ryuzo SAKAKIBARA
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.239-248, 2010
被引用文献数
2

乳酸を環状に重合した化合物である環状重合乳酸(CPL)が、ガン細胞の増殖を強力に抑制することが見出されている。CPLのこの特異な生理活性が脚光を浴び、CPLを新しいタイプの機能性食品や抗ガン剤として応用するための試みが精力的に実施されている。 CPLはガン細胞のピルビン酸キナーゼおよび乳酸脱水素酵素の活性阻害に効果を示し、ガン細胞の解糖系を特異的に抑制する特長を示す。この結果、解糖系の機能が低下したガン細胞においては、エネルギーおよび細胞構成成分の産生・供給が停滞状態に陥る。また、CPLの作用によりガン細胞ではアポトーシスも誘導されることから、ガンの成長が抑制されることが示されている。現在では、ガン患者を対象としたCPLの臨床試験も実施されており、腫瘍の縮小や症状の改善に関する症例報告がある。
著者
立平 進 Susumu TATEHIRA
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.13-22, 2008-03

本稿は、平戸藩の窯業が、いつ頃から産業として定着したのかを考察するのが目的である。今日まで、あまり知られていなかった『平戸焼沿革一覧』を読み解きながら検証を行った。さらに『平戸焼沿革一覧』と『平戸藩御用窯総合調査報告書』の発掘事例とを突き合わせて検討することにより、歴史資料(文献)と考古学的な知見を関連付けた。結果は、松浦鎮信(天祥公)の時代に三川内焼が安定した産業となったことを論じたものである。
著者
嶋内 麻佐子 Masako SHIMAUCHI
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.131-141, 2001-03

利休歿後、利休の弟子七人衆の一人である古田織部により、その茶が継承された。織部は武将の茶としての展開を遂げ、茶室・茶の形態・露地・懐石・点前に至るまで、武家相応の茶の湯に置き換えることにより、利休の身分平等性を主とする作法やその技法、精神性からの脱皮を計ることに成功したと言える。 しかし、その事で草庵における茶の形態だけは、守られたと思われる。そのことは、町人的作法から生まれた利休の茶を改良し、かつての貴族時代に生まれた文化と、武家故実に基づく文化を合流させた慶長年間の武家相応の茶の湯が、織部によって出来上がったと言えるのではないだろうか。
著者
友池 敏雄 Toshio TOMOIKE
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.173-183, 2013-03

2011年の東日本大震災は、地震や津波および原子力発電所爆発事故まで引き起こしたため、この被災地からでる“ガレキ”は、放射能汚染と結びついて受けとめられた2)。国からの広域処理の要請で、受け入れの検討が行われた長崎市においては、同市内の被爆者団体は意見が分かれることもあった4)が、受入反対の意思表示を行なった3)5)。そこで、部分的ではあるが市民の意向を一定の範囲で把握すべく、一部長崎市民を対象に調査したところ、統計学的に有意差を見出せなかったが、“震災ガレキ”を長崎で受け入れるべきだとする人は78.49%存在していた。その中で、特に50~69歳代者には、積極的な受け入れ姿勢がみられた。40歳代や70歳代者も受け入れ姿勢は高く見られたものの、難色や拒否する人は他の年代者よりも2~3倍存在していた。これは、自らの子や孫への放射能による影響不安があったがためと考えられた。70歳代者は受け入れ拒否は低かったが、積極的でもなく中位だった。放射能からの影響不安では80歳代者も高かったため、高齢になるほど変化や不安から遠ざかり安泰な生活を望む傾向から来ていると推察された。しかし、もう一つの視点である、被爆者と一般市民との“ガレキ”受け入れ意識の差は見られなかった。尚、2012年7月26日、長崎市長は、“ガレキ”の受け入れの検討作業を中止すると発表した6)。
著者
VAN DEUSEN Brendan OWATARI-DORGAN John Patrick RAWSON Thom Brendan VAN・DEUSEN John・Patrick Owatari-DORGAN Thom RAWSON
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.1-11, 2016

本稿では、日本の大学において、外国語としての英語を学ぶクラスのためのアクティブラーニングのビデオプロジェクトについて考察する。このリサーチプロジェクトの目的は、次の問いを調査することである : 1)学生の英語力にこのプロジェクトはどのような効果があるのか、 2)英語力以外のどのようなスキルを学生は身につけるのか。これらの問いに答えを出すために、このプロジェクト実施の前後に、学生が認識している効果と困難さに関する意見を把握するためのアンケート調査を実施した。これらの結果と教員の観察、及び最終成果物に基づき、このプロジェクトは、学生の英語コミュニケーションスキル、協力するスキル、プロジェクトのプランニングスキル、そしてメディア制作のスキルの向上に寄与したと言える。また、テクノロジーの役割は有益であることが見て取れたが、時に、プラスの面とマイナスの面の両方が見られる場合もあった。さらに、統合カリキュラム内でプロジェクトを実施することの含意についても論じている。This paper discusses the implementation of an active learning video project for an English as a foreign language class at a university in Japan. The goal of this research project was to investigate the following questions: 1) How did the project benefit students'English? 2) What non-English skills did the students acquire ? A questionnaire was administered before and after the project to gage students' opinions about the perceived benefits and difficulties of the project. Based on these results, teacher observation and an analysis of the end product, this project helped students improve skills for English communication, collaboration, project planning and media production. The role of technology was observed to be positive, though it both enables and hindered students at times. Implications for implementing projects within an integrated curriculum are discussed.
著者
宮良 俊行 Toshiyuki MIYARA
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.51-58, 2014-03

文部科学省は2010年「スポーツ立国戦略―スポーツコミュニティ・ニッポン―」を策定した。そこでは、「スポーツ立国戦略の目指す姿」として、スポーツに親しみ、スポーツを楽しみ、スポーツを支える(育てる)ことによって、「スポーツの持つ多様な意義や価値が社会全体に共有され、『新たなスポーツ文化』を確立することを目指す」ことがあげられている。「5つの重点戦略の目標と主な施策」の5つ目には、「社会全体でスポーツを支える基盤の整備」があげられ、「地域」におけるスポーツの位置付けがなされている。宮良、小島(2012)は、『現在「スポーツによるまちづくり」という言葉に表現されるような、いわゆる地域社会の機能回復すなわち「コミュニティ」の再生をスポーツに委ねることは、これまで政策の場面において様々な視角から特集され、研究についても長期に渡って議論されてきた。』と分析し、様々な課題を提示している。一方、日本の多くの地域では、過疎化が進んでいる。地方自治体においても高齢化に伴う医療費負担の問題が深刻さを増している。このような状況において「スポーツによるまちづくり」は本当に可能なのであろうか。本研究では、「スポーツによるまちづくり」に関する事例として熊本県南関町の取り組みを報告する。
著者
乙須 翼 Tsubasa OTOSU
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-12, 2010

アメリカにおいて、飲酒や賭博、暴力や動物への虐待を伴う娯楽への批判が本格的になされるのは、1820年代、30年代以降のことである。中流階級の人々を中心に行われた社会改革で、古くからある娯楽の多くは姿を消すか、形を変え、娯楽に対する人々の眼差しや態度は変化していく。本稿はこういった変化が見えつつあった18世紀末の娯楽批判の特徴を捉えるものである。アメリカでもいち早く社会改革が進められたフィラデルフィアの娯楽批判の言説空間では、古くからある娯楽が怠惰や浪費、貧困、犯罪と結びつくものとして批判される。またそれと同時に、健全な家庭生活や勤勉の精神、名誉、時間、健康、他者や動物の悲劇や痛みへの感受性といった諸価値がそこでは提示される。つまり、18世紀末の娯楽批判の言説空間とは、19世紀初頭の本格的な社会改革を支える「ミドリング・クラス」の価値観を提示、創出する、そういった場でもあったのである。In America, it was from the time of social reform that the people drastically changed their view and attitude to amusements in their leisure time. Middling-class reformers mainly attacked amusements which belonged drinking, gambling and violence to human and animals in the early nineteenth century. Consequently, these amusements were disappeared or were changed to rational leisure or sports. This study focuses the criticisms of amusements in the late eighteenth century Philadelphia where a capital of American social reform, and captures the features of them. In critical essays, reformers attacked traditional amusements because they made people idle, extravagant, poor and criminal. Furthermore, in the critical essays, some values were emphasized: healthy family life, spirit of industry, honor, time, health, and sensibility to tragedy and pain of others. In short, the criticism of amusements at that time was a place where the key values were created and presented to the people, that of "middling class" who would lead American social reform.
著者
乙須 翼
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.1-13, 2018

本稿は、18世紀末フィラデルフィアの無償貧困児教育の特徴を、1790年に設立されたアメリカ初の日曜学校団体ファースト・デイ・ソサイエティ(FDS)の教育活動の分析を通して捉えるものである。公教育論者ベンジャミン・ラッシュがその設立に深く関わった FDS は、宗派を問わず全ての貧困児を対象に聖書による読み書き教育を行い、教師による日曜礼拝への参加促進と生徒の行動監視により、貧困児のモラルの改良と安息日の保護、そして社会の安寧を成し遂げようとしていた。しかし、公教育にも近い特異な理念を掲げた FDS は、教育活動を展開する中で、任意団体としての財政基盤の弱さや、貧困児や教師、寄付者や親、FDS の役員といったアクター同士の衝突や思惑のずれによって生じる様々な困難に直面し、初期教育理念を修正していった。FDS が直面した困難は、公教育理念に近い教育活動を18世紀末に実践することがいかに困難であったかを示している。This study aims to describe the features of free education for poor children in late eighteenth-century Philadelphia. It focuses on the education of the first Sunday school society in America,"The Society for the Institution and Support of First-day or Sunday Schools"(the FDS). This voluntary association was established in 1790 and was strongly backed by Benjamin Rush, one of the most famous advocators of public education during the nation's Founding Era. The educational policy of the FDS was unique. The FDS welcomed uneducated, poor children of all religious faiths and denominations and provided free instruction in reading and writing using the Bible. Professional teachers were responsible for, not only providing instruction to children but also inspiring them to attend their own religious Sunday worship either after or before school, and closely monitoring and disciplining the children. Adopting this educational policy, the FDS was aiming to reform the unruly behavior of the poor children and preserve the sanctity of the Sabbath and peace in society. However, the FDS faced a number of difficulties. These were caused by conflicts and interactions among actors such as poor children, teachers, financial contributors, parents, and the FDS members, as well as by financial difficulties brought about by being a voluntary association. The difficulties the FDS faced suggest that an educational policy that was similar to that of public education was not easy to practice in late eighteenth-century Philadelphia.
著者
石倉 健二 高島 恭子 原田 奈津子 山岸 利次 Kenji ISHIKURA Kyouko TAKASHIMA Natsuko HARADA Toshitsugu YAMAGISHI
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.167-177, 2008-03

本論は、近年、高等教育学界において注目を集めている「初年次教育」がいかなるものであるかを、国内外の動向をレビューしつつ検討したものである。M・トロウが明らかにしたように、大学入学者数・率の上昇は、大学教育の変質を必然的に伴うものであり、日本やアメリカ等、トロウの言うマス段階からユニバーサル段階に達した高等教育においては、その質的変化に伴う新たな教育が要請されることになる。「初年次教育」とは、そのような新たな教育形態の一つであり、特に、新入生の大学への適応を支援していくためのプログラムである。その背景には、大学教育のユニバーサル化により、必ずしも大学が期待する学習文化を持たない学生が多数入学し、結果として大学にスムースに適応できない学生が多数存在するということがある。高等教育のユニバーサル化を早期に経験したアメリカにおいて、初年次教育の理論・実践には一定の蓄積があるが、日本においては、アメリカの事例を参照しつつ、各大学が試行錯誤を行っている段階であり、初年次教育が十分に深化されているとは言えない状況である。大学全入時代を迎える日本の高等教育において、初年次教育の必要性はますます高まるであろう。このような視角のもと、今後、具体的な初年次教育のあり方を構想することが求められるであろう。
著者
小林 徹 Tohru KOBAYASHI
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.149-156, 2005-01

茶道は平和を追求する作法であり、現代社会に受け継がれている。作法は無駄のない動作と静寂のなかにその価値がみいだされる。武士道は戦う武士が勝利のために規範とするものである。規範のなかに現代人が守り伝えるべき約束事は存在する。しかし武士が存在しない現代においては新しい規範をつくって精神的拠り所とする試みが必要である。
著者
大西 良 辻丸 秀策 池田 博章 Ryo ONISHI Shusaku TSUJIMARU Hiroaki IKEDA
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.175-182, 2017-03

本研究の目的は、一般市民を対象に質問紙による調査を実施して、「子どもの貧困」に対するイメージや貧困が子どもの成長に与える影響(問題)等に関する認識の実態を把握することであった。調査の結果、市民の約8割が国民の生活水準の低下(貧困化)を感じ、また4人のうち3人が子どもの貧困問題を身近な問題として捉えていることが分かった。また「貧困」に対するイメージについては、「身近」で「怖いもの」という認識を抱いている者が多く、さらに「貧困」が子どもに与える影響(問題)については、「進路選択・進路実現の問題」、「心理(こころ)の問題」、「衣食住の問題」が上位に挙げられた。子どもがごく普通の生活をするために必要な物や事柄(必需品)では、「病気やケガをした際に病院へいく」、「遠足や修学旅行などの学校行事への参加」、「休日等で家族と一緒に過ごすこと」などがすべての子どもに絶対与えられるべきであるものとして上位にあがった。その一方、教育の機会や教育用品に関しては、経済的な理由で与えられなくても仕方がないという意見も多くみられた。このような結果を踏まえて、考察では、「関係性の貧困」と「機会の貧困」が子どもの成長や将来に負の影響を与えることについて述べ、相対的貧困がもたらす本質的な問題について論じた。
著者
田渕 幸親
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.51-60, 2004-01-31

日本のインドシナ進出に関する研究は、多様であり多彩であるけれども、おおむね政治力学主導型で進められてきた。海外における研究もまた同様であった。新たな視角での研究が求められていることを示すための基礎的作業として、これまでの研究を整理してみたのが本稿である。
著者
岩本 敏夫
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.117-128, 2005-01-31

わが国の空港整備は配置的側面から見ると、全国的に既成したと考えられる。しかし、多くの地方空港が運用の低迷に苦慮している。開港6年を経た佐賀空港も例外ではない。近接する福岡空港に需要の多くが集積しているためである。しかし、福岡空港は処理能力の限界が目前である。対応策として2案がある。現福岡空港を廃港にして滑走路2本を備えた新空港と交代させる案と、佐賀空港と新北九州空港を加えた3空港による機能分担案である。本稿では佐賀空港を事例として、地方空港設置の経緯を整理し、既存の社会資本活用推進の立場から地方空港の展望を考察する。