著者
金澤 由佳
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.135-147, 2018-03

『犯罪白書』には精神障害者による犯罪という項目がある。そして、「刑法」「医療」「福祉」を中心にこれまでに多くの学際的な研究が『犯罪白書』を引用し、精神障害者の犯罪率は一般刑法犯に比べて低いこと、一方で特定の罪種についてはより高い犯罪率を示すことなどを指摘してきた。精神障害者による犯罪は『犯罪白書』が刊行された当初より、継続して語られてきた重要項目の1つであるが、時代をさかのぼって『犯罪白書』をみるならば、刊行当初は「精神障害」という用語が示す定義自体もあいまいであり、一般刑法犯に占める精神障害者の比率やその罪種別の割合も示されていなかった。そこで、本研究では、『犯罪白書』における精神障害者の定義や精神障害者による犯罪率の変遷について着目し、全57冊の『犯罪白書』を概観した。『犯罪白書』を引用する場合は、本研究で明らかになった『犯罪白書』における定義や特徴を念頭におき、誤解や偏見を招かないよう留意する必要性があると思われた。
著者
金澤 由佳
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.135-147, 2018

『犯罪白書』には精神障害者による犯罪という項目がある。そして、「刑法」「医療」「福祉」を中心にこれまでに多くの学際的な研究が『犯罪白書』を引用し、精神障害者の犯罪率は一般刑法犯に比べて低いこと、一方で特定の罪種についてはより高い犯罪率を示すことなどを指摘してきた。精神障害者による犯罪は『犯罪白書』が刊行された当初より、継続して語られてきた重要項目の1つであるが、時代をさかのぼって『犯罪白書』をみるならば、刊行当初は「精神障害」という用語が示す定義自体もあいまいであり、一般刑法犯に占める精神障害者の比率やその罪種別の割合も示されていなかった。そこで、本研究では、『犯罪白書』における精神障害者の定義や精神障害者による犯罪率の変遷について着目し、全57冊の『犯罪白書』を概観した。『犯罪白書』を引用する場合は、本研究で明らかになった『犯罪白書』における定義や特徴を念頭におき、誤解や偏見を招かないよう留意する必要性があると思われた。In 1960, the "crime white paper" first acknowledged crime by mental disorders. Many interdisciplinary studies quoted in past "crime white papers" mainly focused on criminal law or medical care or welfare etc. Comparing mental disorder crime rates to general criminal crime, it was pointed out that the mental disorder crime rate was lower than the general criminal crime rate. However, there are mental disorder crimes which are higher than the general ones. Analyzing crimes by mental disorder vs general crime was one of the important discoveries which still continue today. This new idea to separate the mental disorder data from the general crime data had been debated and talked about after the publication of this particular crime white paper. Before 1960, the definition of mental disorders was vague, unclear. Therefore the "crime white papers" stated their observation without differentiating between mental disorder and general crime. My intention in this study is to identify the changes in the "crime white papers" from 1960 to 2016 both in definition and crime rate data. Therefore I examined all 57 "crime white papers". Trying to remain neutral, I read each crime white paper and examined its respective definition and its history of process.
著者
立平 進 Susumu TATEHIRA
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.45-54, 2007-01

民俗学は、ある特定の地域を限って調査する場合が多く、所定の調査項目に従ってではあるが、主な手段として、いろいろな分野(角度)から聞き取り調査を実施することになる。その際、調査対象地域をどのように設定するのかという基本的な命題がある。調査対象地としての地域は、ただ単に地理的広がりの範囲を対象とするのではなく、民俗学的な領域について、その範囲を確定する必要があるからである。地域を認識することについて、過去に必ずしも充分に研究されてこなかった経緯がある。ほとんどの場合物理的に地理的広がりを地域として認識していたためである。ある地域に住む人々は、どのような広がりの中で生活していたのか、あるいは自らの生活範囲について、どのように認識しているのかということが問題であるのだが、これが民俗学的に明確に示された例は少ない。本稿では家と屋敷と村境について、比較的容易に境を示すことができる事例が抽出できたため、これを報告しながら境を区切るものは何かという表題に近付いていく手ががりとした。ここで取り上げたサブタイトルに記す「家札・門札・免札」は、民俗資料として、特に信仰の民具というべきものである。その信仰に触れながら、民具として機能している実態を考察した。
著者
平井 美津子 Mitsuko HIRAI
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.13-20, 2014-03

英語は、歴史上主に4回ラテン語と接触し、多くのラテン語が流入した。その中でも近代英語前期には、学術用語をはじめとして極めて多くのラテン語が英語に流入した。今回、英語の学術用語、特に医学用語の形容詞形に注目し、その語源と英語での初出年を調査し分析した。その結果、ラテン語由来の形容詞形は85%近くを占めることがわかった。一方、ゲルマン祖語に由来する古英語を語源とする形容詞形は10例で、いずれも接尾辞 -y が添加されたものであった。
著者
平井 美津子 Mitsuko HIRAI
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-9, 2013-03

ラテン語は現在、死語といわれている。しかし今も英語、特に自然科学分野の書物や文献の中で生き続けている。英語の多くは古典語、すなわち古典ギリシャ語やラテン語に由来しているといわれている。今回、まずラテン語の歴史および学術用語の構造について概説した。そして、自然科学分野の英単語に多く残っているラテン語由来の英語の不規則な複数形を取り上げ、英語への導入年代を調べた。その結果、多くの不規則な複数形は、ラテン語の主格名詞の複数由来で、16~17世紀に英語に導入されたものであることがわかった。18世紀には英語の文法が確立し、国際語として英語が拡大するのに伴い、ラテン語の影響力は衰えていった。
著者
安部 直樹 Naoki ABE
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.13-22, 2007-01

中国より渡来した茶は、僧侶、公家、武士等に広まっていき、やがて足利、織田、豊臣らの大名によって茶道として定着していくのであるが、公家の茶、町人茶、大名茶はその理念、形態等に多少の違いがある。更に織田信長、豊臣秀吉の茶と織部、遠州、石州等の茶道にも若干の相違がある。ヘウケモノとしての古田織部、綺麗さびを特徴とした小堀遠州、武士のあつまりである分相応の茶の片桐石州、この3人の茶道をとりあげ大名茶としての理念にせまってみた。
著者
ヴィラーグ ヴィクトル
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
no.20, pp.65-75, 2020-03

近年、ソーシャルワークにおける国際的な諸基準は性の多様性について明確な立場を示しているが、日本の専門職界においてLGBTに関する取り組みはまだ少ない。本稿は、日本を含めて性的マイノリティの実態の把握と関連基準の比較を目的とする。この目的を達成するために、本稿は4部構成となっている。 第一部は、性の多様性をソーシャルワークにおいてどのように理解すれば良いかについて論じ、クライエントの性をアセスメントするために、身体・心理・社会・文化的・スピリチュアルな枠組みを採用している。第二部は、世界中と日本のLGBTについて入手可能な国内外の量的データをまとめている。第三部は、性の多様性に関するソーシャルワークの専門的な基準に係る国内外の文書を比較している。第四部は、理論的モデルのレビューに基づき、LGBTに特化して、反差別的及び文化的力量アプローチに基盤をおいたソーシャルワークの原則を整理している。
著者
俵 寛司 Kanji TAWARA
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.23-38, 2017-03

本稿は、2004年11月から2005年2月まで実施された長崎県対馬市「まちなみ景観建造物等調査事業」、すなわち旧対馬藩城下町に所在する歴史的建造物を対象とする市民協働の調査と、その対象の一つである「半井桃水生家跡」の保存問題について分析することを通じて、現在の日韓国境、対馬における景観・文化資源の在り方について考察する。厳原町市街地に分布する近世~近現代の歴史的建造物について分布調査および個別遺構の調査を行った結果、全体で436地点の遺跡分布が明らかとなり、11件の遺跡について個別調査を実施した。その一つ、「半井桃水生家跡」は、明治・大正時代に活躍した対馬出身の文学者、半井桃水(1860-1926)の生家跡に推定されていたが、2005年に解体されたことは、現代のまちなみ景観と遺跡保存の問題を示す象徴的な出来事である。本稿で論じた景観まちづくりと遺跡保存の密接な連携の必要性は、国際的にもますます大きくなっており、対馬はその重要な役割を果たすことが期待される。This paper examines current issues on the close relationship between townscapes and conservation of the historic sites in Tsushima Island on the border between Korea and Japan. This will be based on the Research Project on the Buildings of Townscape in Tsushima City, Nagasaki Prefecture with civic collaboration from November 2004 to February 2005. This also analyses conservation problems on the historic site of Tosui NAKARAI's birthplace [半井桃水生家跡]. This Research Project was carried out by both the general survey and intensive research, thus, they have revealed distribution of the 436 historic sites and 11 detailed features around Izuhara-town as the central area of Tsushima now and the former capital of the Tsushima clan, during the Edo period [1603-1868]. One of these sites has been believed as the birthplace of Tosui NAKARAI [半井桃水 1860-1926], a famous novelist during the Meiji and Taisho eras born in Tsushima. Athis site was demolished that building in 2005 and it was a symbolic event to indicate the contemporary issues. As necessity of the close relationship between the townscapes and conservation of the historic sites has increased in the world context as well, Tsushima will be expected to play such an important role today.
著者
内田 智子 Tomoko UCHIDA
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.1-11, 2017-03

大槻文彦(1897)『広日本文典』『広日本文典別記』「文字篇」に見られる用語、概念(「母韻」「発声」「単純音」「成熟音」)について考察した。大槻の「母韻」の語は、現在の「母音」に該当し、悉曇学に由来することが明らかとなった。大槻の「発声」は、現代の「子音」に対応する概念である。一方で、幕末の音義派は、「父音」「母音」「子音」の3つの用語を使用し、明治時代には、音義派に由来する「子音」と、洋学に由来する「子音」の2種が使用されていた。大槻の「単純音」の語は、「母韻」と同じ意味で使われており、「ア行音」を意味している。大槻がいわゆる母音に2種の語を当てた理由は、悉曇学にある。「成熟音」の概念は、伝統的音韻学の「仮名反切」に原型があり、音義派の手法を用い、それをオランダ語に適用した「蘭学」の影響の下に生まれた。伝統的音韻学の手法を蘭学に適用した結果が、大槻の記述に流れ込んでいる。This paper examines the features of the terms and the concepts of the "Boin" ,the "Hassei" ,the "Tanjun-on" and the "Seijuku-on" referred to in "Konihonbunten" and the "Konihonbunten Bekki" of OTSUKI Fumihiko published in 1897. It has become obvious that the "Boin" corresponds to today's "vowel" and derived from the "Shittan-gaku", whereas the "Hassei" corresponds to today's "consonant". On the other hand, the Edo period, the "Ongi" school used three words of the "Huon", "Boin" and "Shion". In the next Meiji period, two types of the "Shion(子音)", derived from the "Ongi" school and the Western studies, were used. The "Tanjun-on" is equivalent with the "Boin(母韻)" and both indicate the "Agyo-on". The course for this phenomena is to be able to trace back to the "Shittan-gaku". As for the "Seijuku-on", its original concept is to be found in the "Kanahansetsu" of the traditional phonology. It was created as a result of the application of the "Kanahansetsu" for Dutch under influence of the Western studies with the methods of the "Ongi" school. This application eventually led to OTSUKI's description in "Konihonbunten" and "Konihonbunten Bekki".
著者
小坂 智子 Satoko KOSAKA
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.83-86, 2004-01

長崎の平和公園に設置されている、北村西望作《平和祈念像》は、公共空間におかれている彫刻作品のはらむ諸問題を様々に指し示している。この研究ノートではその問題を整理し、いくつかの考え方を提示することを試みた。
著者
中野 はるみ Harumi NAKANO
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.235-249, 2001-03

In this paper I have described about the auxiliary 'つ(tsu)' 'ぬ(nu)' that was used from ancient times until the Kamakura Period, and the difference from the similar expressions 'たり(tari)'. The modern word '~てしまう(~teshimau)' implies the ancient auxiliary 'つ(tsu)' and 'ぬ(nu)'. I tried to make clear the characteristics of Japanese which has the originarity idea for the objective expression and the subjective one. That's means Modality.
著者
武 秀忠 正山 征洋 Xiuzhong WU Yukihiro SHOYAMA
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.139-146, 2021

COVID-19 が中国で確認され全世界へと蔓延し現在に至っている。中国では傷寒雑病論に収載される小柴胡湯、大青竜湯、五苓散を組み合わせ、21種の生薬を配合した新処方、"清肺排毒湯"が創出された。本処方は214名の患者に対して、90%以上の総有効率が見られ、そのうち60%以上の患者は臨床症状と画像診断で著しく改善され、30%の患者の症状は安定し重症化には至らなかった。清肺排毒湯を解析すると発熱・咳・インフルエンザ等に有効な麻黄、桂皮、杏仁、甘草を配合する麻黄湯が浮かび上がった。そこで麻黄湯の論文調査を行った結果、麻黄湯の有効性が明らかとなり、特に縮合型タンニンの抗ウイルス作用が強いことが判明した。アユルベーダで用いられてきた穿心蓮も麻黄湯同様な作用が認められ、広範囲の疾病に使われてきた。論文調査を行った結果、臨床的に抗ウイルス作用が明らかとなり、その活性成分はアンドログラフォリド類であった。これらの結果から麻黄湯加穿心蓮が COVID-19 に有効であろうとの結論に至った。
著者
平井 美津子 Mitsuko HIRAI
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.45-53, 2009-03

古典ギリシャ語は、古代から近世にかけて西欧文化に大きな影響を与えた。特に医学の分野では、古典ギリシャ語を語源にする用語が多く、そのため難しいと思われがちである。しかし、その語源を理解することがほとんどないままに、単語を習得していかなければならない。今回、古典ギリシャ語と関わりの深いギリシャ神話にまつわる医学英語を取り上げた。物語には興味深いエピソードも多く含まれ、ギリシャ神話を通して、その語源を知ることによって、医学英語に対する興味を引き出すことができるものと考える。
著者
中根 允文 Yoshibumi NAKANE
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.205-212, 2007-01

いま、長崎県における精神科医療の展開に関する歴史を、長崎大学医学部精神神経科学教室の初代教授である石田昇の成果を中心に振り返りつつある。完成させるには今しばらくの情報収集が必要であり、その途中経過として、ここには研究ノートの形で紹介してみたい。現在、長崎県下には39ケ所の精神科病院があり、総数で8,415ベッドが精神科疾患の患者のために準備されていて、入院患者数は7,059人である(図1)。彼等の平均入院日数は440.9日(図2)であり、利用率は83.5%(図3)になっている(いずれも、平成14年6月末現在のデータ)。長崎県の人口と比較したとき、ベッド数は万対55.2床(図4)、入院数は万対51.7人となる。全国の動向と比較したとき、全国でベッド数が万対28.0床、万対在院患者数が26.0人、そして平均日数は364日であり、いずれもその数値が大きく全国を上まっている。医療全体に関わる統計データで、西日本地区が東日本に比して全体的に高い数値をみており(病院数・病床数が多い、個人当たりの医療費が高いなど)、精神科医療では更にその傾向が顕著である。しかし、長崎は同傾向が更に著しくなっているのである。いつの頃から、このような傾向が目立ってきたのであろうか。長崎の精神科医療に関するハードの面が充実していること自体は歓迎すべきであろうが、実際はその内容が問われるべきであることも事実である。ここでは、長崎県における精神科医療の全般について広く言及するゆとりはなく、まずはその展開に大きく寄与した故石田昇教授の足跡をたどりながら、若干の考察を試みてみたい。
著者
濱崎 直孝 Naotaka HAMASAKI
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.275-281, 2008-03

血栓性素因とは血栓症を発症しやすい体質のことである。欧米白人種の血栓性素因は、凝固系第五因子の1箇所の変異(Factor V Leiden(R506Q))であることが10年余り前に判明し、欧米白人に対する血栓症対策は急速に進歩した。しかしながら、黒人やアジア人など欧米白人以外の人種では、Factor V Leiden(R506Q)を保因している人は皆無であり、これらの人種での血栓性素因の解明がいそがれていた。我々は日本人ならびにアジア人における血栓性素因の解明を目指して研究を行ってきた。その結果、日本人の血栓性素因は凝固制御系因子 Protein S 遺伝子変異であることが判明した。その後、最近になり、我々の結果を裏付ける結果がタイ、台湾、中国(香港)から次々に発表され Protein S 凝固制御系因子の異常が日本人のみならずアジア人の血栓性素因であることが証明されつつある。凝固制御系因子 Protein S は凝固系第五因子を制御することで過剰な血栓形成が起こらないように制御している因子であり、生体内では、凝固系第五因子と凝固制御系 Protein S のバランスが適切な血栓形成に重要な役割を果たしていることが推測される。今後は、凝固系第五因子と Protein S 凝固制御因子の関係を詳細に研究し、アジア人の血栓症発症予防ならびに治療対策を推進すべきと考えている。
著者
中村 敏秀 相澤 哲 Toshihide NAKAMURA Satoshi AIZAWA
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.179-186, 2006-01

日本のソーシャルワーク教育は多くの課題を抱えている。本稿では特にソーシャルワークとケアワークについての関係の明確化とソーシャルワーク実習教育の内容について論考した。そして、次のような結論を得た。ソーシャルワークとケアワークの定義は統合されるべきである。教育はこれを前提に行われるべきである。またソーシャルワーク実習教育は実習時間を大幅に増やすことと、実習指導者の資格認定が必要である。その結果、大学等での社会福祉教育はより実践的なものになろう。
著者
乙須 翼 Tsubasa OTOSU
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.1-13, 2012-03

本稿は、戦争や惨劇、差別や災害など、「人間の苦痛」に関連した場所や資料を保存、展示し、それらを鑑賞する行為、またその現象を、教育学的課題として検討しようとするものである。ダークツーリズム研究や戦争写真論などで指摘されるように、メディアを通じて語られる「人間の苦痛」や、博物館で展示される「人間の苦痛」は、教育的要素を持つと共に様々なメッセージを見る側に伝える。しかし、そこで指摘されている問題は、学校や博物館での平和教育や道徳教育において、「人間の苦痛」に関連する資料が多く用いられる教育現場の問題でもある。本稿は、「人間の苦痛」を語る際に孕む問題点を検討しながら、その問題を乗り越える可能性についても提示した。
著者
田中 誠 Makoto TANAKA
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.13-21, 2017-03

英語の習得には、まずは基本である中学英文法をマスターすることが重要である。中学英文法の重要性に関する研究はこれまでも様々なものが行われている。本稿では、それらの先行研究を参考に、TOEIC L&R の問題を解く上で、中学英文法の知識がどれくらい重要な役割を果たすのかを検証することにした。調査したのは、TOEIC 公式問題集7冊の Part5の540問についてであり、使用されている単語はすべて意味・用法がわかっていると仮定した場合に、中学英文法の知識だけで解ける問題がどれくらいあるのかを調査した。調査の結果、中学英文法の知識で解答できる問題は、540問中520問であり、その割合は96.3%であった。今回の調査結果は、筆者の予想を上回る数値であった。TOEIC の該当問題の大部分が中学校レベルの文法で解けるということが明らかとなったことで、TOEIC のような難易度の高い問題を解く際にも、中学英文法をマスターすることは重要であること、語彙力の強化が必要であることを再認識させられた。日頃の英語指導においても、コミュニケーションを重視するからこそ、この2点に重点を置いた指導は重要となる。
著者
正山 征洋 Yukihiro SHOYAMA
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.247-252, 2017-03

古来よりウマノスズクサ科植物による腎炎が知られておりその原因物質はアリストロキア酸で有ることが明らかになってきた。アリストロキア酸に対する高感度な分析法を開発するために、モノクローナル抗体の作成を行った。それを用いてアリストロキア酸に対するイースタンブロッテイング法を開発した。本法では多くの含有成分の中からアリストロキア酸のみが検出出来る。マウスにアリストロキア酸を投与して腎組織をモノクローナル抗体で染色するとアリストロキア酸の分布を確認出来た。さらにヒト腎細胞にアリストロキア酸を添加して培養し、抗アリストロキア酸モノクローナル抗体と免疫沈澱法によりターゲットタンパクを精製し、加水分解後マススペクトルによりα-アクチニン-4 と同定した。
著者
小林 徹 Tohru KOBAYASHI
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.67-77, 2002-03

1994年9月下旬に岐阜県八尾津において、杉原千畝(1941年リトアニア日本外務省職員として勤務中、ユダヤ難民に日本通過ビザを発行して避難の手助けをした人物として知られる)の業績を讃える式典が挙行された。参加者の中には日系元米兵及び救出されたユダヤ人や子孫が含まれており、その式典に著者も参加する機会を得て、以来7年間にわたり日系米人(多くは二世の世代)との交流を通じて様々な歴史的知見を得ることができた。本論は小林がまとめた日系米人年表である。第2次大戦後の日米関係の改善にあたって、二世、三世を中心とする日系米人の果たした力の源泉をこの年表からくみとっていただけたら幸いである。若干のまとめは年表の末尾に記述する。