- 著者
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早崎 将光
田中 博
- 出版者
- The Association of Japanese Geographers
- 雑誌
- 地理学評論 (ISSN:13479555)
- 巻号頁・発行日
- vol.77, no.9, pp.609-627, 2004-08-01 (Released:2008-12-25)
- 参考文献数
- 31
数日スケールの急激な気温変動イベントを対象とし,54年間(1948~2001年)のNCEP-NCAR再解析データを用いて,北半球全域における時空間分布と温暖化傾向に対応した発生回数の変化について調査した.本研究で使用した気温急変イベントは,個々の地点における日平均地上気温が3日以内で±20K変化した場合と定義した.発生回数の多い4地域(西シベリア,アラスカ,カナダ北西部,カナダ南東部)における広域気温急変イベントの発生期間は,大部分が寒候期(11月から2月)に集中していた.発生回数の極大時期は,西シベリア地域では11月・12月,北米大陸上では12月・1月と地域差がみられた.また,寒候期平均気温偏差に対する気温急変現象の平均発生回数を調査したところ,4地域ともに温暖偏差時の発生回数は寒冷偏差時に比べて15~25%程度減少しており,この傾向はとりわけ西シベリア地域とカナダ北西部地域で顕著であった.上記2地域における総観場の時間発展を明らかにするため,典型事例の合成図解析を行った.その結果,カナダ北西部地域での気温低下時には,アラスカ上でブロッキング高気圧が形成され,引き続いてカナダ北西部への寒気の南下がみられた.また,西シベリア地域における気温上昇時には,西シベリア低地から東アジア方面への寒冷域の南東への進行とそれに付随したシベリア高気圧の発達がみられた.これは,典型的な東ブジアへの寒気の吹出しパターンと対応していると考えられる.これらの結果は,将来的な温暖化傾向に伴い,地域的には日々のスケールの気温変動性が減少する可能性のあることを示唆している.