著者
津田 宏果 飯島 朋子 野田 文夫 Tsuda Hiroka Iijima Tomoko Noda Fumio
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 = JAXA Research and Development Report (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RR-09-001, 2009-07-31

ヒューマンエラーに対抗する有効手段として、航空機乗員に対してCRM訓練が実施されている。訓練の妥当性を検証し、訓練内容を改善していくためには訓練による効果を継続・調査することが必要である。一方、航空機乗員においてどのようなCRMスキルが発揮され、また欠如されているかを把握することも、安全な運航を達成するために重要である。JAXAではCRMスキルを実践的なものとして定着化させるため、CRMを実践するための乗員の行動指標(指標として明確に示される具体的な行動)を開発してきたが、本研究ではこの行動指標を用いて、乗員のCRMスキル行動を計測する手法を提案・開発した。開発した計測手法は数回の改良を重ね、最後に模擬LOFTを通して評価を行った。
著者
岡田 尚基 山本 幸生 Okada Naoki Yamamoto Yukio
出版者
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告: 宇宙科学情報解析論文誌: 第2号 = JAXA Research and Development Report: Journal of Space Science Informatics Japan Volume 2 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RR-12-006, pp.131-136, 2013-03-29

科学衛星や探査機では,コマンドの実行時刻やテレメトリデータの生成時刻を扱うための時刻系として,衛星時刻が使われる.衛星時刻は,オンボードのクロックを使って増加するカウンタであることが多い.衛星時刻はその衛星・探査機に固有の時刻系であり,かつ進み方も一定ではない.そのため,これを共通の時刻系に校正して使うことが行われる.我々は,宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所で科学衛星・探査機の時刻校正に適用する枠組みを整備している.この枠組みは,今後打ち上げられる科学衛星・探査機で,衛星運用からデータ解析に至るまでの各地上系システム に共通機能として組み込まれる予定である.
著者
冨田 健夫 坂本 博 高橋 政浩 高橋 守 佐々木 正樹 植田 修一 田村 洋 渡邊 泰秀
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-11, 2005-03

LE-7A の開発中に発生したパルス的な強い横推力の原因究明と対処のため,旧NAL 角田ではコールドフロー可視化試験,CFD 及びサブスケール燃焼試験を実施してきた。その結果,LE-7A エンジンで発生した横推力が,LE-7A で新しく採用したノズル形状設計によって発生したRSS,およびフィルム冷却構造部分で発生した剥離の急速な移動という2つの現象により引き起こされたことを明らかにした。さらに,各現象と横推力に影響を与えるパラメータを洗い出した。この成果は改良型のエンジン設計に反映され,パルス的な横推力を発生しないノズル設計に役立った。
著者
元田 敏和 塚本 太郎 南 吉紀 濱田 吉郎 Motoda Toshikazu Tsukamoto Taro Minami Yoshinori Hamada Yoshiro
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 = JAXA Research and Development Report (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RR-10-007, 2010-11-30

リフティングボディ形状の機体は,宇宙往還機の候補の一つとして考えられている.翼胴形状の航空機に比べて再突入時の空力加熱に比較的強い構造であること,より大きなペイロード容積を確保できること,ロケット先端のフェアリング内に収まりやすい形状であることなど有利な点が多い.揚力を利用して飛行するため,カプセル形状に比べればより柔軟な飛行制御が可能となる.その一方で,揚抗比が極めて小さく,飛行性能は通常の航空機に比べ劣り,低速での飛行制御が困難である.特に滑走路への着陸では,低速であるが精度の高い飛行制御が要求される.この技術課題の克服に向け,小型模型を用いたリフティングボディ飛行実験(LIFLEX)が計画された.飛行実証においては,着陸性能を確保する飛行制御系が技術開発の中心となる.実際に想定される外乱や機体モデル誤差などの様々な不確定要因の存在下において,求められる着陸性能を確保する必要がある.本稿では誘導制御系設計の概要について触れた後に,数値シミュレーションによるシステム評価と設計の改善について述べる.まず様々な不確定要素を組み込んだシステムを,数値シミュレーションにより評価した.次に,非線形システムの設計パラメタを直接最適化するために開発した手法を用い,不確定性に対するロバスト性を改善した.さらに今後の開発の参考資料とするため,小型模型実験機である本実験機固有の設計条件を見直し,より一般のシステムに適用可能な条件を用いて,システムを評価した.
著者
木元 一広 Kimoto Kazuhiro
出版者
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 = JAXA Research and Development Report (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RR-15-003, pp.1-15, 2015-12-15

Redmineはさまざまな業務に利用できる優れたチケット管理システムで,近年注目されているOSSの一つである.JAXA スーパーコンピュータ活用課では,2014年のJSS2 SORAスーパーコンピュータ導入を機にRedmineをベースにしたCODAシステムを構築・運用している.本稿では,Redmineの利用事例としてCODAを紹介する.合わせて,Redmineを一層効果的に活用するため,CODAの構築・運用経験から見いだされた定義や設定,運用の工夫を紹介する.
著者
井筒 直樹 福家 英之 山田 和彦 飯嶋 一征 松坂 幸彦 鳥海 道彦 野中 直樹 秋田 大輔 河田 二朗 水田 栄一 並木 道義 瀬尾 基治 太田 茂雄 斎藤 芳隆 吉田 哲也 山上 隆正 中田 孝 松嶋 清穂
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-22, 2008-02

科学観測用に使用されているゼロプレッシャー気球には,昼夜のガス温度差により夜間に浮遊高度が低下するという根本的な問題がある.これに対して,排気口がなく体積変化がほとんどないスーパープレッシャー気球は,バラストの必要がないため浮遊時間を大きく延ばすことが可能となる.しかし,皮膜に要求される強度が大きいため,小型の球形スーパープレッシャー気球を除いては実用化ができていなかった.我々は,この問題を解決することができるLobed-pumpkin 型気球を考案し,試験開発を行ってきた.多くの地上膨張試験,実際の飛翔環境における加圧破壊試験を繰り返した結果,設計上および製造上に多様な問題があることがわかり,順次これらの解決を図った.その結果,要求される性能を有するスーパープレッシャー気球の設計および製造方法が確立された.
著者
井筒 直樹 福家 英之 山田 和彦 飯嶋 一征 松坂 幸彦 鳥海 道彦 野中 直樹 秋田 大輔 河田 二朗 水田 栄一 Izutsu Naoki Fuke Hideyuki Yamada Kazuhiko Iijima Issei Matsuzaka Yukihiko Toriumi Michihiko Nonaka Naoki Akita Daisuke Kawada Jiro Mizuta Eiichi
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告: 大気球研究報告 = JAXA Research and Development Report: Research Reports on High Altitude Balloons (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RR-07-009, pp.1-22, 2008-02-29

科学観測用に使用されているゼロプレッシャー気球には、昼夜のガス温度差により夜間に浮遊高度が低下するという根本的な問題がある。これに対して、排気口がなく体積変化がほとんどないスーパープレッシャー気球は、バラストの必要がないため浮遊時間を大きく延ばすことが可能となる。しかし、皮膜に要求される強度が大きいため、小型の球形スーパープレッシャー気球を除いては実用化ができていなかった。我々は、この問題を解決することができるLobed-pumpkin型気球を考案し、試験開発を行ってきた。多くの地上膨張試験、実際の飛翔環境における加圧破壊試験を繰り返した結果、設計上および製造上に多様な問題があることがわかり、順次これらの解決を図った。その結果、要求される性能を有するスーパープレッシャー気球の設計および製造方法が確立された。
著者
歌島 昌由
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.4-45, 2005-11

世界のラグランジュ点ミッションについて 1978 年8 月打上げのNASA のISEE-3 (International Sun-Earth Explorer-3)により、ラグランジュ点を利用する新しいミッションの世界が開かれた。ISEE-3 は太陽-地球系L1 点のハロー軌道に投入された。太陽-地球系L1 点は主に太陽観測に利用され、1995 年12 月に打ち上げられたESA/NASA 共同ミッションのSOHO (Solar Heliospheric Observatory)が現在もハロー軌道から太陽観測を続けている。太陽-地球系のL2 点においては、2001 年6 月に打ち上げられたNASA のWMAP (Wilkinson Microwave Anisotropy Probe)が最初のミッションである。太陽-地球系のL2 点は、その位置の特性から天文衛星に適した場所であり、今後もHerschel (ESA, 2007 年打上げ予定), Planck (ESA, Herschel と相乗り打上げ), JWST (NASA, 2011年打上げ予定), GAIA (ESA, 2011 年打上げ予定)などの天文衛星の打上げが計画されている。日本の将来計画 日本においても、太陽-地球系L2点から観測する幾つかの天文衛星の検討が行なわれている。赤外線天文衛星SPICA (Space Infrared Telescope for Cosmology and Astrophysics), 高精度位置天文観測衛星JASMINE (Japan Astrometry Satellite Mission for INfrared Exploration), 太陽系外地球型惑星探査衛星JTPF (Japanese Terrestrial Planet Finder)などである。JASMINE はサーベイ観測型ミッションであり、サイズの小さいリサジュ軌道が適しているが、SPICA, JTPF などはポイント観測型ミッションであり、どちらかと言うとサイズの大きいハロー軌道が適している。2005 年3 月に発表されたJAXA 長期ビジョン . JAXA 2025 . には、『月や地球重力圏界(ラグランジュ点)を太陽系に広がる人類活動のための新しい場として活用する「深宇宙港構想」の実現をめざす。』という記述が盛り込まれている。ラグランジュ点軌道の保持の方法 太陽-地球系L1、L2 点周りの軌道は、発散時定数が約23 日の不安定軌道であるため、少なくとも数ヶ月間隔の精密な軌道保持制御が必須である。しかしながら、姿勢制御系などからの大きな外乱がなければ、年間1m/s 程度のΔV で軌道保持できる。これを実現するため、正確な摂動モデルの下でΔV ゼロの基準軌道を前もって設計しておき、それに追従する様に数ヶ月間隔で保持制御が行なわれている。欧米での基準軌道の設計法 欧米では円制限三体問題の3 次以上の解析解を求め、それを初期軌道として、各半周軌道の位置・速度のmatching 条件を満たす解を数値的に求める事で、ΔV ゼロの基準軌道を設計している。この方式はSOHO に対して初めて適用された。本報告のハロー基準軌道の設計法 上記の欧米の方法は高次解析解を必要とする難点があるため、本報告では、非線型計画問題の解法の一つである逐次2 次計画法 (SQP 法; Sequential Quadratic Programming)を使い、高次解析解を求める事なく、ΔV ゼロのハロー基準軌道を設計する方法を示す。摂動としては、地球公転軌道の離心率の影響と月潮汐力を考慮した。この他の摂動として、太陽輻射圧と惑星潮汐力があるが、輻射圧はほぼ一定の加速度であり惑星潮汐力は小さいので、本報告の手法は実際の太陽系モデルにも適用できると考えられる。なお、本報告は、2005 年2 月に発行された『太陽-地球系L2 点周りのリサジュ基準軌道の設計』のハロー軌道版である。
著者
渡邉 光男 長谷川 敏 島垣 満 橋本 知之 中村 憲明 永浦 克司 吉田 義樹
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-7, 2007-02

LE-7 液体酸素ターボポンプ開発の初期段階において、軸の回転速度よりもわずかに速い(軸の回転速度の約1.1〜1.3倍)回転非同期の軸振動が現れたが、インデューサ入口部のケーシング形状を変更することによりほぼ完全に抑制することができた。液体水素ターボポンプでも旋回キャビテーションによりインデューサが疲労破壊を起こしたことが、H-IIロケット8 号機のLE-7 エンジントラブルの原因のひとつとされた。インデューサに発生するキャビテーションに起因する不安定現象の解明に資するため、インデューサ入口流れを高速度ビデオ、PIVにより可視化しその検証を行った。
著者
村上 義隆 滝沢 実 内田 忠夫 中野 英一郎 大貫 武 堀之内 茂 坂田 公夫
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-60, 2004-10

航空宇宙技術研究所(NAL)の次世代超音速機技術研究開発プロジクトは平成9 年に開始し、ロケット打ち上げ式の小型超音速無推力実験機NEXST-1(以下、ロケット実験機)の詳細設計は平成12 年3 月に完了した。その後実験機およびNAL735 ロケットブースターの製作ならびに地上試験を経て、平成13 年11 月30 日に完成した。飛行実験は平成14 年3 月から約1 年間、南豪州ウーメラ実験場内で4 回実施する計画であったが、平成14 年7 月14 日第1 回飛行実験はロケットブースター点火直後の実験機異常分離によって失敗に終わった。この結果、実験システムは通信系を含めて見直す事になったが、本報告はオリジナルの設計および試験ならびに第一回飛行実験を通じた運用実績についてとりまとめたものである。ロケット実験機の通信系統は(1)飛行追跡用のレーダ・トランスポンダ系、(2)データ伝送用のテレメータ系、(3)非常飛行停止用のコマンド系の以上3 つの通信系システムで構成されている。設計は、ウーメラの実験場環境を考慮しており、アンテナパターン試験および噴煙損失を考慮した電波リンク解析によって事前評価した。また現地における地上確認試験にも触れた。
著者
雛田 元紀 稲谷 芳文 伊地智 幸一 牧野 隆 松田 聖路
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-11, 2005-03

The Unmanned Space Experiment Recovery System (USERS) was launched on September 10th, 2002 from Tanegashima Space Center with the H-IIA launch vehicle. On May 30th 2003, the re-entry and recovery operations were successfully conducted, bringing experiment samples and beneficial information back to Earth. USERS became the first national project to succeed in recovery from orbit. In this paper, USERS mission outline is introduced first. Followed by are discussion on the key characteristics of Reentry Module (REM), result of design and development, evaluation of re-entry and recovery operation and flight data. Finally, the obtained reentry system technologies through this project are summarized.
著者
渡辺 安 村上 哲 藤原 仁志
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-33, 2004-03

2次元超音速インテークでは,超音速ディフューザ部の側壁形状はインテークの空力性能に大きく影響をおよぼす部分であり,側壁形状が空力性能に及ぼす影響を明らかにすることを目的として,風洞試験およびCFD解析を実施した。側壁形状の影響が顕著に現れるマッハ1.5以上の条件に対して風洞試験を行ない,横流れ偏角やランプ可変形状が異なる条件における空力特性を取得し,側壁形状の影響を詳細に調べた。その結果,バズが発生するまでの亜臨界作動域における安定な作動域は側壁が大きいほど広く,性能が良いことが明らかとなった。一方,超臨界作動域では,マッハ数が高く側壁が大きいほど,また横流れ偏角が大きいほど亜音速ディフューザ内の流れは剥離しやすくなり,性能が低下することがわかった。さらにCFD解析により,インテークの流れ構造を詳細に調べた結果,側壁形状はサイドスピレージに影響を及ぼすため,インテークに流入する流管形状が変化し,その結果として,小さい側壁形状ではバズが発生しやすいことが明らかとなった。また,大きい側壁形状では衝撃波システムの逆圧力勾配の影響で,剥離しやすい境界層が亜音速ディフューザに流入することがわかった。そして,境界層の形状係数が有る程度以上になると,亜音速ディフューザ内で境界層剥離が生じ,空力性能が低下することが明らかとなった。
著者
施 勤忠 安藤 成将
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.P1-14, 2005-02

宇宙機には衛星分離機構、ソーラパネルやアンテナなどコンポーネントの展開機構に火工品が広く採用されている。これら機構の作動による衝撃は数千G に及ぶ非常に高い加速度と数十kHz の高周波成分が生じる。その結果、多くの場合において、加速度センサへ過大な応力が印加されることなどによって計測された加速度に「ゼロシフト」が発生してしまう。このようなゼロシフトを「完璧に」防ぐ方法はないと考えられているが、宇宙機開発の検証試験現場においては、実用上使用可能補正手法の開発が望まれている。本稿では、実用上重要な2 つの課題であるゼロシフトの判定方法、及び補正手法の手順の確立や信頼性について検討した。ゼロシフトの判定方法については、正・負SRS(Shock Response Spectrum)による判定法と速度による判定法がある。補正手法については、衝撃などの瞬時現象に最も適しているウェーブレットを用いた補正手法の手順を確立し、手法の信頼性について基礎実験による検証を行ない、本手法の有効性を確認した。
著者
保江 かな子 口石 茂 橋本 敦 村上 桂一 加藤 裕之 中北.和之 渡辺 重哉 菱田 学
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.1-18, 2013-03

風洞試験で計測した模型変形データを用いて, Computational Fluid Dynamics(CFD)表面格子を修正する方法を検討する.JAXAではマーカーを使ったステレオ写真法により風試模型の模型変形量を計測しており,計測したマーカー座標値を使うことで主翼の変形則を同定し,変形後の形状を定義することができる.本報告では,計測したマーカー座標値を使って変形後の形状を同定し, CFDの表面格子が通風時の風試模型形状と一致するように修正する方法を検討する.ここでは三種類の変形手法を検討する.そして,実際に模型の変形量を計測した DLR-F6FX2Bモデルに対して本手法を適用し,変形モデルの検証をおこなう.また,変形前後の形状に対して Reynolds-averaged Navier-Stokes(RANS)解析を実施することで,変形を考慮していない場合と考慮した場合とで空力特性にどの程度影響を及ぼすかを検討する.
著者
苅田 丈士 工藤 賢司
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-23, 2004-03

シミュレーションモデルを用いて、単段式スペースプレーン用固定形状複合サイクルエンジンの作動状態およびエンジン性能を計算した。求められたエンジン内の諸量を用いてエンジンの冷却要求、スペースプレーンのピッチングモーメントについて検討した。エンジンはエジェクタージェット、ラムジェット、スクラムジェット、ロケットの各モードで作動する。エンジン作動中は固定形状とした。エジェクタージェットモードおよびラムジェットモードではエンジン出口に第2スロートを設けることなく、亜音速燃焼ガスをチョークさせる。推進剤は液体水素、液体酸素である。高飛行マッハ数域では冷却剤流量が量論混合比流量を上回り、マッハ9以上では比推力の低下をもたらした。空気吸込み式エンジンの有効適用範囲はマッハ11までであった。エンジンはスペースプレーン下面に取り付けられることが想定されている。このような取り付け状態であっても、空気力の作用しない宇宙で、機体のピッチングモーメントは釣り合いを取ることができることを示した。
著者
小曳 昇 齊藤 茂 青山 剛史 梁 忠模 赤坂 剛史 田辺 安忠
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-23, 2008-02

JAXA と川田工業株式会社が、独自のヘリコプタ騒音低減技術開発のため2002 年より実験・解析の両面から共同研究で実施しているアクティブ・タブについての研究結果について報告する。実験結果より、アクティブ・タブが約3dBの騒音制御能力を有しており、ヘリコプタ騒音低減技術として有望であることを実証した。同時に、ホバ及び前進飛行条件におけるアクティブ・タブのブレード揚力、翼端渦、騒音に対する効果を数値解析により評価した。数値解析には3 次元非定常オイラーCFD コード及びFW-H 式のformulation1 に基づく音響解析コードを用いた。アクティブ・タブの動きに対応するため、CFD 計算の各時間ステップで計算格子を時々刻々切り直している。解析結果から、下反角を付したアクティブ・タブがBVI (Blade/Vortex Interaction) 発生時にブレード揚力を変化させることによるブレード/ 渦間距離の増大を可能とし、BVI 騒音低減に十分な効果のあることが明確に示された。
著者
山田 竜平 山本 幸生 桑村 潤 中村 吉雄
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.121-131, 2012-03

1969年から1977年にかけてNASAのアポロミッションで得られた月地震データは地球以外の天体で得られた最初の地震記録である.このデータは,取得以来40年経った現在でも解析が続けられており月の地球物理学研究において主要な役割を果たしている.一方で,得られた月地震データセットの全てが,現在のデータ公開機関でアーカイブされ,公開されているわけではない.また,多くの公開データのフォーマットが一般の地震学で使用されるものと異なるため,現状,ユーザーが必要なデータと情報を取得し,解析研究を行うのに敷居の高さを伴っている.そこで,本研究では,これまでよりも容易にユーザーが要求する月地震データとそのメタデータを取り出し,解析に供することができるApollo月地震データ公開システムを開発した.この開発のため,まず我々はほとんど全ての月地震データのアーカイブとデータ解析に必要となる情報の収集と整理を行った.そして,デコードしたデータから構成されるリレーショナル型データベースとデータベースへアクセスするアプリケーションを開発し,Web上でユーザーが要求する月地震データを検索して取得できるようにした.本研究で開発した公開システムを通して,より多くのユーザーが月地震データにアクセスできるようになり,解析研究を通して,月惑星科学を更に進展させていくことが期待される.
著者
斎藤 芳隆 飯嶋 一征 松坂 幸彦 松嶋 清穂 田中 茂樹 梶原 幸治 島津 繁之
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.1-16, 2012-03

スーパープレッシャー気球とゼロプレッシャー気球からなるタンデム気球は高度を変えながら長時間飛翔する飛翔体である.このシステムにおいてはスーパープレッシャー気球に高い耐圧性能が要求される.20 μm 厚のポリエチレンフィルムに,ベクトランで作った菱目の網をかぶせた直径3 m のかぼちゃ型気球を製作し,地上で膨張,耐圧試験を実施したところ,正常に展開し,9,600 Pa に耐えることが実証された.これと同型の気球と2 kg のゴム気球からなるタンデム気球を,2011 年6 月1 日に大樹航空宇宙実験場より放球し,日昇をまたいだ飛翔性能試験を実施した.その結果,昼夜でスーパープレッシャー気球の皮膜温度は30 度変化すること,ゴム気球の夜間の浮力は地上での値と比較して5 % 減少することがわかった.これらの情報は,今後,スーパープレッシャー気球の要求耐圧を定量化するためや,同様のシステムを飛翔させる際のゴム気球の設定浮力を設定する際に極めて有用である.今後,大型のタンデム気球システムの開発を進めると共に,科学実験への応用を行なう予定である.
著者
村上 淳郎 工藤 賢司 平岩 徹夫 鎮西 信夫 苅田 丈士
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-18, 2005-03

水冷スクラムジェット燃焼器の自発着火燃焼性能を、空気総圧、空気総温、燃焼器長さ、壁温そして燃料噴射型式をパラメータとして調べた。水冷スクラムジェット燃焼器には、マッハ数2.5、空気総圧1.0, 1.5, 2.0 MPa、空気総温1200〜2600 K の高温模擬空気が流入する。高温模擬空気は水冷式の高温模擬空気発生装置(VAG)で生成した。水冷スクラムジェット燃焼器は、超音速ノズルを有する水冷スクラムジェット燃焼器試験装置に直結した。燃焼状態は燃焼器内の温度上昇により調べた。燃料垂直噴射時の自発着火性能は、空気総圧が増加すると着火限界空気総温が高くなる傾向にあった。この条件は第2限界付近であった。空気中のH_2O の存在は、高い空気総圧のときに更に着火を遅らせた。空気総温が高い状態では、圧力の上昇によって自発着火性能は改善された。燃焼器が長くなったときの自発着火性能は、垂直噴射では向上した。しかしその度合いは、空気総圧が高くなるほど小さくなった。平行噴射では、自発着火性能は低かった。水冷スクラムジェット燃焼器の着火限界空気総温は、無冷却スクラムジェット燃焼器より高かった。これより着火源は、剥離領域等の燃焼器壁面付近に存在すると考えられた。
著者
田中 孝宗 田中 良昌 佐藤 由佳 池田 大輔
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.127-134, 2015-03

オーロラは多くの人を魅了する自然現象だが, 惑星間空間, 磁気圏, 電離圏などの多くの領域にまたがる現象であり, その物理モデルは完全には構築されていない. そこで, 我々は観測分野を横断し, 関連するデータを組み合わせながらデータ指向型科学の手法を用いて, オーロラの出現や形状等の予測を行うための研究を進めている. このような予測を実現するためには, いつ, どのようなオーロラが発生したのかという正解データを準備し, これを訓練データとして用いる必要がある. そこで本論文では, 将来の機械学習によるオーロラ画像自動判定において良質な訓練データを得る準備として, 国立極地研究所が公開している全天オーロラ画像に対して, オーロラの有無や, 規模, 雲の有無によって自動的に分類する画像処理の手法を適用し評価を行う. 形状特徴による分類が可能になる局所特徴量を用いた手法と色のヒストグラムを用いた手法は, 予備実験の段階で必要な精度がでないことが分かった. 一方, HSV カラーモデルの閾値を満たす画素数でオーロラの有無を分類した場合, 正答率が92.3%であり良好な結果を得た.